太陽が傾き始め、景色に夕焼け色を付け始めようとする時間帯。
どうにか先程の場所からすぐのところで店を構えていた、コーヒーチェーン店が展開している喫茶店へと入り、運良く空いていた隅の席を確保し、注文したそれぞれの飲み物をすすりながら、それぞれが相手の出方を窺う。
「えぇと……。あの……その……」
耐えきれずまどかが口を開くものの、その声に永遠がびくりと反応したことで、再びまどかは口を閉ざす。昨日はあれほど活発で元気な感じだったのに、今日は一体どうしたのだろうか。永遠の実情を知る由もないまどかは、果たして自分になにか原因があったのだろうかと悩み、近くにいるであろうキュゥべえに助けを求めようとしたが、人間に関することを人外に頼るのはなんだか負けたような気がして、まどかは一人で悩み続けることにした。というか少しあたりを見回したものの、そもそも近くにいなかったことに、探してからようやく気づく。
それから更に数分の沈黙が流れたところで、意を決したかのように永遠が深呼吸し、俯いていた顔を上げる。そして若干逸らしつつではあるが、まどかの顔を見遣る。
永遠は自分へと暗示を掛ける。目の前の子は魔法少女だから気負わず自然体で。目の前の子は魔法少女だから気負わず自然体で。目の前の子は魔法少女だから気負わず自然体で。目の前の子は魔法少女だから気負わず自然体で。
よし、と意を決して口を開く。
「え、え、え え えっと……ご、ごめん、ね……。き、きき、昨日と、ちち違ってあ、あれだけど。き、気にしないで」
結局どもる。
冷や汗だらだらで、視線も合わすことも出来ず、明らかに挙動不審な彼女に対して、まどかは女神の如き器の大きさでそれをスルーした。その対応に永遠は心から感謝した。なんだこの子、もしや天使、いや女神か、と。永遠の中でのまどかの評価がストップ高になった。
そんな永遠の心の内は関係ないとばかりに早速本題へと突入する。
「あの、お話っていうのは、私じゃなくて、私の友達のさやかちゃんのことなんですけど。えぇと、さやかちゃんっていうのは、昨日一緒にいた、髪の短い子のことで……覚えてますか?」
永遠は無言で頷く。
昨日の今日だ、関わった相手も多くないため、さすがにそれくらいは覚えている。
「それで、私とさやかちゃんがちょっと前に、キュゥべえに魔法少女になって欲しいって言われてて、でも私たちはまだお願いを決めてないから契約はしてないんですけど……」
その辺のこともキュゥべえが言っていたことをなんとなく覚えている。その後のマミの行動のことも。どこの魔法少女も、後輩が欲しい時に使う手は同じなんだなとちょっと微笑ましく感じたものだ。魔法少女という存在自体が絶対的なマイノリティだからこそ、仲間を求めながらも自分と同じ轍は踏ませない。魔法少女とは何たるか。それを示すには実際に見せるのが一番いい。その結果が、魔法少女体験ツアー。
ほんの少しだけ、昔のことを懐かしむ。自分にもそんな頃があった。何も知らないうちが、一番平穏だった。
宙に浮かぶ思い出に少しばかり現を抜かしかけたがすぐに現実に戻り、目の前の少女、鹿目まどかの顔……の少し下を再び見据える。
「ほんとはマミさんに聞きたかったんですけど、毎日毎日私たちと一緒だとマミさんも疲れちゃうかなって思って。……それに昨日も魔女と戦って、あと少しで……」
ぱくり。
一瞬の判断の違いでそうなった可能性もあった。
永遠に助けを呼んだ時のほむらの尋常ならざる様子は、もしかすると今とは違う未来を、結果を体験していた故なのかもしれない。
なればこそ、あの場で助けることが出来てよかったと彼女は今でも本当に思う。失う恐怖など、何度も経験したいものではないのだから。
成る程状況を考えれば確かに自分の許へと聞きにくるのは理解出来ないでもない。
彼女は考える。
昨日の魔女戦後のマミは気丈に装っていたが、明らかに精彩を欠いていたし、それは誰の目にも明らかだった。だからマミへの相談、つまりは負担になる事は避けたのだろう。そしてまだまだ本当に短い付き合いではあるが、これまでの様子を見たところ、ほむらは他人と付き合うような事をあまり好みそうではなかった印象を受けた。同族ゆえに感じたシンパシーというべきものをほむらから受けたのだ。
「実はさっき、ほむらちゃんにもいろいろお話を聞こうとしたんですけど、聞きたいことはほとんど話を出来なくて……」
もしかすると自分の許へ話を聞こうとする前に、ほむらに話を聞こうとしていたのかもしれないという彼女自身の予想は見事に合っていた。
他人を寄せ付けないオーラをまとっているほむらに話を聞こうとするのは、さぞ大変だったろうと心の中でその苦労を労う。かといって自分に対してもさほど変わらない、むしろ関係が薄い分余計に話しかけづらいのに、よく勇気を出して話しかけてきたものだと目の前のまどかを見ながら考える。自分なら出来ないことを当然のようにやってのけるまどかに対して少しばかり尊敬の色を込めながら。勿論目を合わせることは出来ないので、その視線は若干下にずれているが。
今のこんな自分を目の前の少女はどのように思っているのだろうか。魔法少女のペルソナを被っていない、ただの根暗な少女である現在の自分を、目の前の魔法少女候補生はどのように思っているのだろうか。もしかして表情に見せないだけで幻滅してるかもしれない。何ならもう見下してるかもしれない。それもしょうがないだろう。こんな陰気な人間とはもう関わりたくないと思っていても不思議ではない。
どんどん陰鬱な方向へシフトしていく自分の思考をなんとか頭の中だけで処理し、永遠はまどかの話を聞く体制を整える。
「それで、えっと……聞きたいことっていうのは、キュゥべえとの契約の事なんですけれど」
契約。その言葉だけであの白いぬいぐるみの姿が脳裏に浮かぶ。たとえ関係のないところでもその言葉を聞くだけで頭に浮かんでしまう。それほどまでに強烈な条件付けが彼女の中では成立してしまっている。それほどまでに、キュゥべえという存在は魔法少女たる彼女にとって大きなウエイトを占める存在なのだ。良い意味か悪い意味かはさておき。
一方通行の契約。何もかもを捨て去る覚悟の果てに人という器を捨て、魔法少女としての身体を手に入れる。幸か不幸かその存在の活動の核はソウルジェムに集約され、身体は他人とを識別し意思を表出するための外的な記号に過ぎなくなる。便利な生きた死体、ゾンビ、リビングデッド。
「私たちまだ契約のことは何にも分かんなくて。というよりも、魔法少女のこともまだ全然分かってなくて、だからこそマミさんからはよく考えてから契約しなさいって言われてて。だから魔法少女のこととか、お願いのこととか、他にもいろいろ考えているんですけど、結局なんにも分かんなくて」
困ったような顔。まぁそれは確かにそうだろうと永遠は目を伏せる。現代科学の常識に囚われている限り、魔法のことは中々理解出来るものではないと永遠自身が考えているからだ。魔力さえ供給出来れば、基本的には何でもあり、というのが彼女が考える、そして知りうる魔法というもの。勿論、魔法を発現させるための難易度の差はあるが。
「だから、魔法少女のことはあとで考えることにして、まずは魔法少女になるための、お願いについて考えることにしたんです」
それが今日の放課後までの話であるらしい。
魔法少女になる本人が持つ因果の量さえクリア出来れば、契約の際の願いはそれこそ魔法のように何でも出来る。過去現在未来を統合して、その願いを実現するだけの因果を本人が持つのでさえあれば、それこそ物理法則をねじ曲げることさえ——。
「何でもいいって言われると、逆にどんなお願いにすればいいのか分からなくなっちゃって、ずっと悩んでるんです」
自由も過ぎると、不自由を感じるという奴だろうか。永遠はそんな事をふと考える。そして自分の願いの事を思い出す。ーー尤も、その頃のことはもうあまり思い出せないが。
自分が契約した時も、キュゥべえは同じように言っていたのだろうか。あの常套句は言っていた覚えはあるが、その他の事はあまり覚えが無い。そして自分の願いに関しても、ほとんど選択肢がなく決まっていたようなものだったので、これほどまでに悩む事は無かった。
故に、永遠はそれだけ悩む事の出来るまどかを羨んだ。それだけ、思い浮かぶ願いがあるということに。優劣をつけることが出来ない大切な願い事がそれだけ沢山あることを。
「あ、それでお願いに関する事はさやかちゃんのことなんですけれど……。さやかちゃんは幾つかの願い事の候補は上がっているみたいなんですけれど、その中のどれにするか悩んでいるみたいで……」
それ自体は全く問題のない事であり健全なことだ。それだけならば、恐らく自分へと相談することはないだろうと永遠は考える。
ならば。
その願い自体に相談させる程の何かがあるということだ。もしや世界征服とか億万長者とかを願っているのだろうかと一瞬だけ考える。
「魔法少女になる為の、契約する為のお願いがーー他人の為っていうのは、どう思いますか?」
まどかの問いは彼女にとって非常に複雑な意味と価値を含んだものであり、それ故に、
「……」
答える術は、持っていなかった。
良い事だと答えれば、それは自分に嘘をつく事になる。悪い事だと答えれば、自分の全てを否定することになる。長くはない、しかし決して短くはなかったこれまでの自分の魔法少女としての人生を、否定することになる。
いつだって、彼女自身は選択に後悔し自問してきた。自分の願いは果たして本当にそれでよかったのかと。
まどかのその問いは、自分にそのまま向けられた問いのようにも感じられた。
お前のその願いは本当に叶えたい願いだったのかと。他の願いにしておけばよかったと悔やむことは無かったのかと。
ずっと、ずっと。頭から自らに投げかけたその問いが離れることはなく、その答えも未だに見つからずにいる。
だからこそ、答えられない。
しかし、だ。
答えられない立場にあるからこそ、言えることはある。自分のようにはなってほしくない。失敗の轍は踏ませたくないものだ。なるべくならば、魔法少女なんかにはなって欲しくない。ただ、それを言うのは自分のエゴに過ぎない。自分という存在を諦めてまで、叶えたい願いを持っていた魔法少女も、過去には居たのだから。そういった彼女たちの意思を尊重するためにも、永遠は中々口を開けずにいた。
言うべきことはある。まどかが望むものとは違えど、一つの結論を伝えるために口を開こうとしたその瞬間、永遠の意識のスイッチが切り替わり、彼女の世界が変化する。
「……きた」
「え?」
「魔女だ!」
椅子を倒す程の勢いで立ち上がり、窓の外を睨むようにして見渡す。先程までのおどおどとした姿はそこに一切ない、凛とした瞳に堂々とした姿。まどかにとっては昨日初めて会った時のような、目には見えない強さに溢れた魔法少女然とした佇まい。
まどかが頼るという結論に至った理由たる、その悠然とした在り方。それが、魔法少女として生きる宮湖永遠という少女の姿であった。
左手を軽く突き出し、指輪に偽装されているソウルジェムを浮き上がらせる。その姿勢のまま数秒ほど停止。何をしているのかとまどかが訝しむ直前で固まっていた永遠が再び動き出す。
「魔女が姿を表した。この感じだと、結界から顔を出して人間にちょっかいをかけてる可能性もある。急いだ方がいいかも。あの二人のことだから多分気づいているだろうけれど、私も念のために行ってくるね。さっきの質問にはごめん、また後日答えるということでいいかな」
胸の前で両手を軽く叩く。
二人の座っていた席の周囲に貼られていた人除けの結界が解除され、店の騒々しさが二人の耳に入り込んでくる。その変化に一瞬気圧されそうになるがなんとかこらえ、永遠は出口へと歩き出そうと足を踏み出す。その一歩を踏み出したところでまどかの声によって呼び止められる。振り向き際にその呼び掛けで思い出したかのようにまどかへと口を開く。
「あ、そういえば。魔法少女の体験中なんだっけ。もしよかったら一緒に行く? 魔女退治が終わったら多分そのまま見滝原組の二人のどっちかに引き渡すことになるだろうけれど」
悩む時間はないとばかりにその言葉の勢いは強い。ならばとばかりにまどかは決断する。宮湖永遠。正直、よく分からない人だ。謎の多い目の前の魔法少女だが、不思議と悪げな雰囲気は感じられない。
まどかのただの直感であり勘以外の何物でもないのだが、彼女はそれを信じることにした。もしかすると向かった先に件の友人も向かっているかもしれない。永遠の誘いに乗る以外の選択肢はない。
「うん、じゃあ決定。とりあえず出ようか」
言われるがままに店を出て人気のない小路の裏道へと歩き出す。陽は更に傾き、影を濃くしている。そして人通りのない小路の死角へと移動してから、彼女は指に嵌めた指輪に偽装していたソウルジェムを再び元の姿に戻し、間髪入れずに変身する。一瞬で変身を終えたものの、まどかはその姿にほんの少しだけ違和感を覚えた。
「(あれ、なんだか見た目が昨日と少し違うような……)」
まどかの疑問はしかし言葉として発せられることなく、そしてそんな時間もなく。
「ちょっと急ぐから、ぴょーんと飛んで行きたいんだけど、抱えて飛んでいってもいいかな?」
ここから魔女の気配のする場所まではそう遠くはない。直線距離にして大凡1キロあるかないか、といったところ。急げば数分と掛からずに現場へと向かう事が出来る。
姿を隠匿する魔法を使いながら移動するのもいいが、やはりスピードを求めるのであれば、前回のように直線で移動できる上空を利用するのが常道。
あまり意味を理解しないまま、まどかが頷くのを確認して、その華奢な身体をさっと抱きかかえる。俗にいうお姫様抱っこ。まどかの小さな悲鳴を無視してそのまま飛ぶように空へと駆け上がり、屋根を足場にしてこれまた飛ぶようにして翔けていく。
空から見る景色は全然違う。
何度も体験している永遠にとって、それは新しい町での光景でしかないが、まどかにとってのこの体験はまったく違うものであった。
これが、魔法少女。これが、契約の力。
すごいという言葉しか出なかった。
魔女の結界の中で見せるものとは色が少し異なるその力は、やはり『魔法』そのものであった。
魔法の力にまどかは圧倒される。常識を越えた力、人智の及ばぬ領域の技術、夢のような能力。
契約という代償で得ることの出来る、人を越える力。心が踊らない訳が無かった。素敵、とただ一言思う。
「そろそろだね、もう降りるよーっと」
その声と共にふわりと浮いていた感覚から、突如重力を感じ、降下していることに気づいた。
まどかの短い悲鳴と共に、古さの目立つ工場の前へと降り立つ。
「ここらへんだよ。……って言ってるそばから魔女に囚われてる人たちを発見。助けるついでに魔女もやっつけないと」
まどかを地面に立たせ、こっちだよと軽く手を引きながら工場の中へと入っていく。
薄明かりに照らされた工場の中では十数人の老若男女が徘徊しているかの如くおもむろに歩き回り、何かの容器を運んでいると思われる人間の周りをうろうろとしている。
まだこちらには気づかれていない。
何をするつもりなのか、永遠には見当もつかないが、魔女に囚われている以上、碌なことをしでかさないのは火を見るよりも明らかだ。まどかにちょっと待っててねと言い残して永遠は音も無くその集団へと近寄り、そのうちの一人が持っていたバケツをひったくる。
「シンナーとか石油で火祭りパーティーでもやるのかと思ったけど、もっと静かでもっと面倒なことやろうとしてたみたいだね」
バケツを人のいない方向に投げ飛ばし、とりあえず眠っていてねと小さく呟いて、念のために徘徊している一般人たちの首元を確認する。そしてそこにはやはりあった。
「魔女の口づけ。心の弱った人間を狙って操る魔女の常套手段。完全に取り去るには…結局のところ、魔女を倒さないとね」
突然の状況に動きの止まった隙を利用し、首元の魔女の口付けに軽く触れ、その効果をリセットさせると共に、一度意識を飛ばさせる。簡単な作業だ。状況を理解し、襲いかかろうとしてくる者もいるが、所詮は操られている身、永遠の身体に触れることなく、その全てが逆に意識を刈られることとなる。
「ぁ……仁美ちゃん!?」
全員を処理し終えたところで、まどかの声が永遠の耳に届く。そういえば一人制服を着ている少女がいたなとその方向に向き直ると、まどかと同じ制服を着ている少女がそこに横たわっていた。
「大丈夫だよ。魔女に操られていたから、それを無効化させて一旦眠らせただけ。怪我もないし心配ないよ」
飽く迄も永遠の行った行為は魔女の口付けによる効果をリセットさせただけ。除去には至っていない。まどかは仁美と呼ばれた少女のもとへと駆け寄り、その無事を確認する。永遠の言う通り意識を失っただけであり、静かな呼吸音と確かな脈拍を確認出来た。
無事を確認出来た事で余裕が出来たまどかは、再び回りの人たちを見遣る。集められた人たちはまさしく老若男女問わず、といったところであろうか。自分よりも明らかに年下の少年少女もいれば、社会人と思われる女性、壮年の渋さを身につけた男性などなど、そのラインナップは多岐に渡る。つまりは節操がない。
そしてまどかの視線の先は再度永遠へと向けられる。永遠は既にその他の人たちへの処置を終えており、倒れた人たちを出来るだけ身体に負担が掛からないように姿勢を変えて仰向けに転がす。
一部の人間は両手を胸の辺りで組まされ、きっちり綺麗にとはいかないものの、ある程度整列させた状態はある種の死体安置所のようにも見えなくはない。
作業を終え、永遠は工場の奥へとその視線を向ける。
「魔女の結界は恐らくこの奥かな。つまんない悪戯はやめて、とっとと天に召されなさい、と!」
奥へと繋がるであろう扉を、その立ち位置を変える事無く不可視の魔法で吹き飛ばす。暴風が扉にだけ直撃したかのように、蝶番ごと扉の奥の部屋へと消えていく。奥の部屋に人がいる可能性は考慮しないのかと、その荒っぽい行動を見ながらまどかは心配しそわそわするが、それは杞憂のようであった。
そのまま視線を向ければ、無人の奥の部屋の中心あたりか、微かに空間が歪んでいるように見えるところがあった。それが恐らくーー。
「どう、見える? あれが魔女の結界だよ。っていっても見たことあるか。どうする? ここからが本番だけど、着いてくるかな」
永遠が念のための確認をするかのようにまどかへと問いかける。その問いへの答えは両者ともに決まっているようでもあり、その逆の答えでもまったく自然は無く、だからこそ、まどかはそれが自然の流れであるかのように、一歩を踏み出した。
そして二人して奥の扉を潜り、いざ結界の中へ入ろうとしたところで、結界が再び大きく歪む。
「……あれっ」
その声は永遠のもの。疑問を抱く言葉でありながら、その声色は出鼻を挫かれたようなものを含んでいた。
大きく歪む結界は更に周囲を歪ませ、2メートル四方を歪ませたところで、吐き出すようにその内から人の姿を浮き上がらせる。
「えっ!?」
今度の声はまどかのもの。驚きを含んだ声でありながら、ありえないものを見たかのような色を含んだ声。
「あれ……まどか?」
「さやかちゃん!?」
その結界から出てきたのは、先程まで話題の中心に居た件の人物、美樹さやかであった。
それも、学校で別れた時の制服姿とは違い、明らかに普通ではない装束。
それはまさしく、魔法少女として変身を遂げた姿でそこに立っていた。
タイトル思いつかずに4年以上経ちました。次の話もまだタイトル思いついてません。