東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん! 作:因田司
敵勢力は登場しません。
神綺様がアリスとの過去話を
うどみょん達に繰り広げていきます。
原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
YOUMU
~魔法の森
「神綺さん!」
恐怖が和らいできたのか、
私の喉から出てくる声はさっきと比べ、震えが少なくなった気がした。
「?何~?」
「アリスさんの話……詳しく聞かせて下さい!」
私は思わず神綺さんに頼んでいた。
そしてすぐに二本の剣をしまってないことに気付き、
慌てて背中の鞘に戻した。
アリスさんが「孤毒」にかかってしまった理由の一つに
「強い孤独感、深い心の傷」だと、永琳さんがテレビで仰っていた……
其を幽々子様と見ていた事を思い出した。
今度は閉め出さなかった。
私の中にある大切な情報……
アリスさんが其の感情を抱いた理由……
もしかしたら、アリスさんの過去にあるのかもしれない。
ならば、是非とも聞かなければ……!
「……続き、気になったのね?」
突然神綺さんが半目になった。
半腰の私の前でしゃがむ。
私はまたもや動けなかくなった。
今回は目と呼吸のために喉しか動かせなかった。
一方神綺さんは、半目のまま私のじっと見つめる。
そして、左手で私の顎を少し押し上げ、
右手の人差し指と中指、薬指の三本で私の喉をくすぐり始めた。
遊んでいるのか……
くすぐったくて仕方がない。其に……怖い……
もしかしたら、此処からいきなり手刀で
喉を貫かれるんじゃないか……?
つばを飲み込もうとしてもその為には喉は動かせなかった。
(うどんさん……)
私は、うどんさん達の方に目だけを動かした。
ただ、助けを求めたわけではなかった。
(私の方は大丈夫ですから、
貴方はリリーホワイトさんを守っていて下さい。
もう一人は何をするか分かりませんから……)
という、テレパシーでも伝わるかどうか怪しい
アイコンタクトをしたいが為だった。
しかしどうやら其が伝わったらしく、うどんさんは
リリーホワイトさんを堅く抱えながら、夢子さんの方に目を向けた。
夢子さんは瞬きもせず私の方を見ていた。
「さて、よーし……話そうか!」
神綺さんは私の喉から手を離して立ち上がった。
途端に、私は動けるようになった。
此が、魔界を作った神綺さんの……力なのか……?
其とも、只単に其の圧力に晒されて……緊張してただけなのか……?
さっきまで触られていた喉に手を当てながら考え込む。
「じゃあねぇ……三人とも、良い??」
突然神綺さんが「一番っ!!」って言うかのように
右手の人差し指高くあげた。
完全に油断していた。
考え込んでいた私は其を始終見ていたうどんさん達に比べ
反応が遅れてしまった。顔を急いで上げる。
しかし、其の指は既に下ろされ
ある言葉と一緒に私達に向けられていた。
「正座っ!!!」
ババッ!!!!!
正座には慣れていた。幽々子様のもとで働いていた時、
あの御方の前では無礼のないよう、いつも正座だった。
うどんさんも永琳さんの前で座る時はそうだったんだろう。
私の隣で正座をしていた。
「リリーホワイトさん、此処に座って下さい」
うどんさんが其の瞬時の出来事に呆気に取られていた
リリーホワイトさんに膝の上に来るよう急いで小声で催促してた。
彼女は其に答えてフヨフヨと飛んで其処に着陸した。
「速いわね……其のスピード、結構好きよ?
さてさて……」
正座する(リリーホワイトさんを除く)私達の前で、
静かに立つ夢子さんの隣で、神綺さんは話し始めた。
自らの翼を黒く変色させながら…………
「……さっきも言った様に、私は此処とは違う
魔界という世界を作ったの。つまり私は其処の神様っていうわけ」
何度聞いても驚いてしまう。
この人は、幻想郷とは違う次元で
幻想郷とは違う世界をたった一人で作り上げてしまった…
私が腰を抜かしてしまったのは、訳ない筈だったと
今更だが痛感した。
「そして、其と同時に私は、魔界に暮らす住民達も作ったの。
其の中で最強クラスなのが……此処にいる夢子ちゃん!」
神綺さんの隣で夢子さんがメイドらしくお辞儀をする。
人を……作り上げた??夢子さんも……!?
!だから、さっき神綺さんは彼女を「自信作」と言っていたのか……
「実はアリスちゃんも、魔界出身なのよ」
「!!じゃあ、アリスさんも……貴方が……!!」
「まぁ、そんな感じね……」
私は絶句した。
此の人が……アリスさんを……魔界の何もないところから……?
「あ、質問する時は手ぇあげてね?判った?」
「はい……」
従わないとマズそうだ……気を付けよう……
「で、私達はそんなこんなで楽しく暮らしてたのよね……」
ふと話を止め、神綺さんは両手を後ろに組んで
さっきまで私達がもたれていた大木を見上げた。
まるで、その時の魔界を思い出すかの様に………
「ところが、そんな中で突如異変が起きてしまったの」
「!?」
視線を私達の方に戻した神綺さんの顔が突然暗くなった。
其の目付きは、さっき私が感じたものと似ていた。
殺気すら感じた。
「幻想郷と言われている此処、人間界から
四人の人間と妖怪がやってきて突然暴れ出したのよ。
其の者たちの名前は……博麗霊夢、霧雨魔理沙、魅魔、幽香」
「!!」
れ、霊夢さん達が……神綺さんの世界で暴れた…!?
「ですが……どうして……??」
「!質問は手を上げて言う事っ!!……でも、良い質問だから答えてあげるわ」
……今のは流石にマズかった……次からは本当に気を付けることにしよう……
「どうやら、魔界の民間旅行会社の者達が、
魔界人を此の世界に勝手に送り出していた事が原因らしかったのよね……
其を訴えるために此方に乗り込んできたのよ」
?旅行会社……?
そんな企業が、あちらには存在するのか……
でも、これ以上深追いするのもアレだった為、
其処は黙っている事にした。
「私達は、暴れられるのはたまらないから
其を食い止めようと戦ったんだけれど、負けちゃってね……
もう魔界人を人間界に来させないと無理やり約束させられて
私は此処と、魔界を通ずるゲートを閉じたわ。
其で異変は終わりを告げ、魔界は平穏を取り戻したかのように見えた……」
「ところが、其を黙ってなかったのがアリスちゃんだったの」
「!」
突然アリスさんの名前が出てきたので、私達はびっくりした。
此の異変に、アリスさんがどう関わっていたのだろうか?
「魔界での防衛戦の際、霊夢達に負け、
さらに一方的に此方のせいにされたのがたまらなかったらしくて、
リベンジをするべく、もう一度彼女達に勝負を挑んだのよ」
「でももう一度コテンパンに返り討ちにされてね……
其の後、勝負をした彼女達に酷い事をされたらしいのよ。
何でも、雑用として酷使されたり、縛られて本を盗まれたり……
メイド服を着させられたり、ストーカーされたあげく
究極の魔法をラーニングされたりとか……」
内心苦笑いをする。
……霊夢さん達のことだ……
喧嘩を売ってきたアリスさんを正当防衛と称して成敗し、
逆に自分達のために利用したに違いない。
アリスさんもいろいろと苦労をしてたんだな……
「アリスちゃんは其でもぉう…完っ全に頭に来た様で
ある日、私の前でこういったのよ……
『アイツ等をブッ殺して!!神綺様、そして魔界の皆の屈辱を晴らすわ!!』
そして魔界を抜け出して、それっきり……連絡も一切来なかったわ……」
神綺さんは力なくうなだれた。
そんな事があったのか……
アリスさんはこうしてこの幻想郷にやってきたのか……
魔界に着せられた汚点を払拭するという、大きな使命を背負って……
(!もしかして……!)
アリスさんは霊夢さん達に三度やられるきっかけ……
西行妖の異変を起こした幽々子様を凄く憎んでいた。
もしかしたら其処に、其の人間界への怨み、そして個人での怨みが
彼女を後押ししてたのかもしれない……
ふと、私の頭にある疑問が浮かんできた。
「神綺さん……」
私は今度は手を挙げながら声をかけた。
「?んん?まだ質問があるの?」
「はい……魔界からの入口は閉じられたのに
貴方達は……どうして此処に……?」
「!あ……」
声を出したという事は、うどんさんも其に気付いたんだろう。
其から慌てて両手で口を塞いでいた。
「!其もいい質問ね!私が聞いてほしかったところ、
ピンポイントで指してくる!貴方、最っ高よ!」
ベタ褒めだった。
疑問に思ってくる。此の人は本当に魔界の創造神なのか……?
いや、さっき私は其を二度、その身をもって味わっただろう……!
神綺さんが質問に答え始めた。
「私達が敗れた後、私が人間界へのゲートを閉じたと言ったわよね?
もう、魔界の者が人間世界に来られないように。
でもその後、魔界人達は勝手に、しかも自力で人間界に行ける魔法を開発したの。
結局あの約束は知らぬ間に破綻を来してたってわけ」
……懲りないんだな、其の魔界の人達……
其程幻想郷に来たかったんだな……
手をあげてもう一言。
「……其で、神綺さん達も……?」
「そう!もう、無効になってるんだったら
私達もやっちゃえ!!……っていう雰囲気だったわね」
なんて……ルーズな……
思わず本当に苦笑いをしてしまう。
「!そうそう……人間世界からもう一回、
訪問者があったわ。其もとてつもなく大きい船に乗ってきてね」
「!?船……?」
リリーホワイトさんが声を出す。
しかし、神綺さんは其を気に留めなかった。
「でも今度は、私達とは関係がないらしいのよ。
何でも人間たちに恐れられ、人間たちの手により此方に封印された、
とある大魔法使いを復活させるために来たらしいのよね」
私は、其の話に聞きおぼえがあった。
手を挙げる。
「神綺さん…」
「!質問ね…どうぞ?」
「其の人って……もしかして、尼さんではありませんでした?」
「!確かそんな事を話してたわね…でも、どうして知ってるの?」
確信した。
其の人物は、最近幻想郷に建立した命蓮寺の住職、
聖白蓮さんに違いない。
私は前に幽々子様が仰っていた話を思い出す。
伝説の僧侶であり、弟である命蓮の絶命により死を恐れ、
妖力に近い術によって若返り、不老不死、長寿の力を手に入れた白蓮さん。
人間、妖怪と分け隔てなく接していたが妖怪との共存する事を望み
妖怪に加担していたことが人間達にばれ、悪魔扱いされ、遂には封印された。
其処が……神綺さんの創り上げた、魔界だったなんて……!
「……何を驚いているの?」
「!?い、いえ……!すみません、なんでもありません……」
「まぁその時は、其の人を連れて帰っておしまいだったんだけど……
アリスちゃんがいる事を聞いておけば良かったなぁ……」
そして私は、手を挙げた。
「?また質問ね?さてさてぇ……今度はどんなポイントを突いてくれるのかしら?」
「……いえ……質問ではないのですが……」
「?じゃあどうしたの?トイレに行きたいの?」
隣から、うどんさん達の視線を感じた。
神綺さんに気を配りながら隣に顔を向ける。
二人とも不安そうな目だった。
私は頷く。
うどんさん達も頷き返す。
此は……此だけは、言わないといけない……!
「アリスさんは……此の世界にいます。元気ですよ」
「!?本当!?」
神綺さんが、途端に表情を変えた。
傍で静かに話を聞いていた夢子さんも思わず反応していた。
「ただ……その……」
「!どうしたの!?なら場所も判るでしょ!?
お願い、言って!アリスちゃんが何処に居るかを…!」
神綺さんが私の肩を掴んできた。
懇願している。
まるで誘拐された子供の場所を知りたがる母親のようだった。
うどんさん達が半分立ち上がり、身構えた。
私は首を振った、二人を制した。
「大丈夫よ!アリスちゃんを誘拐して
身代金……っていうつもりじゃないから!
只会いたいだけなのよ……!だから……!!」
……此を神綺さんが聞いたら……どう思うだろう……?
「今の所在は………誰も判らないです」
「!!え………」
神綺さんが一瞬表情を凍りつかせた。
そしてそのまま膝をついた。
私の肩からも手が離れる。
「其に彼女は……此の世界を……幻想郷を、支配しようとしているんです」
そういってハッとする。
言い過ぎてしまったかもしれない。
神綺さんはうつむいてしまったまま動かない。
髪で完全に目が隠れていた。
「?……神綺様?」
夢子さんが後ろから神綺さんに声をかけた。
其の額には大量の汗をかいてる。
本当に余程の事をしてしまったかもしれない。
私は神綺さんから距離をとり、
背中の楼観剣の柄に手をかけた。
隣にうどんさんも同じく距離をとって手をピストル状にしていた。
リリーホワイトさんは不安げな表情で、彼女の背中に捕まっていた。
すると、突然神綺さんが顔をあげた。
「良いもんっ!!そんなに会いたくないなら良いもんっ!!
此方から探し出してあげる!!」
顔を赤くして、頬を膨らませてすねていた。
私達は呆気に取られた。
リリーホワイトさんは此で二度目になる。
……本当に、本っ当に魔界を一人で創ったんだよね?
「行くわよ、夢子ちゃん!!」
「!か、かしこまりました……!!」
神綺さんが小さくジャンプした。
するとその足下に大きな穴があいた。
紫様のとは別のものだ……!
其のまま、穴の中に落ちていった。
夢子さんも慌てて其の中に入る。
そしてすぐに二人の上半身が出て来た。
ギョッとする。
「あ!アリスちゃんの事、教えてくれてありがとうね?バイバ~イ!!」
「し、失礼しました……!」
再び穴に入り、穴は消えてしまった。
茫然としていた。
どれだけ豆でっぽうを喰らった事だろう?鳩ではないが。
しばらくして穴のあった処を見ながら、私とうどんさんは一言。
「「……道、迷わなかったんじゃあ?」」
私達は森の出口に差し掛かっていた。
此の先にさっきとは別の人間の里がある筈だ。
「……アリスさんにあんな事があったなんて……」
「ええ……何だか、可哀想になってきました」
アリスさんは、魔界の数えきれない人全てを代表し、
其の人達を不遇により付けられた汚名から守ろうとしたのかもしれない。
そう、さっき私が命を賭してまでうどんさん達を守ろうとした様に………
其を思っていると、
私は、ある感情にとらわれている事に気が付いた。
泣きたくなっていたのだ。
アリスさんが可哀想だと思ったのもあるのかもしれない。
でもその時私には、別の感情があった。
「……みょんさん?」
知らない間に立ち止まっていた様だ。
うどんさんが振り向いて立っていた。背中のリリーホワイトさんも此方を見ていた。
「~~怖かった………!」
正直に言うと、其が本音だった。
あれほどの恐怖は此の先そうないかもしれないが、其程怖かったのだ。
相手はどれだけ滑稽に振る舞ってくれようとも、
私から畏怖の念が払われる事はなかった。
神綺さんの目から何かを感じたのも、其が原因だったのかもしれない。
泣いてはいけない、泣いたら情けないぞ……そう思っても、涙は止まらなかった。
私の脳裏に再生されていく……
神綺さんの冷たい瞳。自らの剣を振り上げられる音。
喉をくすぐる指の感触。
そしてうつむき、髪で目の見えない神綺さんの横顔。
「みょんさん……」
声がして、私は顔をあげた。
うどんさんが私の前に立っていた。
両手を広げている。
「来て下さい……みょんさん……」
躊躇いは不要なかった。
此の魔法の森での出来事は、今後も私の中でずっと残る事になるだろう。
だから其の分、うどんさんの胸の中は暖かく、安心できた。
うどんさんは、優しく頭を撫でてくれた。
リリーホワイトさんは何も言わずにうどんさんの後ろで
目一杯、自らの羽根を伸ばしていた。
そのせいか、まるでうどんさん自身が妖精になったかの様だ。
「……私も、貴方のピンチに気付く事が出来なかった……
ごめんなさい……みょんさん……」
「……二人が…二人が無事で……良かったぁぁ……!」
春の午後の日差しが、何処までも暖かだった。
如何でしたか?
全体的にシリアスでした。
たまには……良いですよね?
旧作ですので、神綺様と夢子さん
想像になっているのはご了承ください。
此の先でも再び彼女たちに出会う事があるでしょう……
次回は、其のころあの人は何をしていたかを書こうと思います。
それでは、次回もゆっくりしていってね♪