同年代の友達を得たキリトがどうなるのか。自分にも分かりませんが頭を空っぽにして読んでいただけると幸いです。
それと飲酒は20歳になってから! 未成年飲酒ダメ絶対
綺麗な砂浜に透き通るような海。
吹く風が心地よく、腰を据えていたら眠ってしまいそうになるほどの快晴。
菊岡誠二郎が運転する車の助手席で和人はこれから少しの間暮らす事になる伊豆について考えていた。
和人がそもそも進むはずだった向こうの大学は一応九月の入学となっていたのだが昨今の情勢もあり多少時期が押すそうで、その期間だけでも…という菊岡の勧めもあり伊豆大学にある研究室に勉強をさせてもらいに行くことになった。
なんでも菊岡の知り合いが和人が帰還者学校のメカトロニクスコースの仲間達と作り上げた《視聴覚双方向通信プローブ》に興味を持ち今回の提案をしてくれたらしい。
所詮は学生が作り上げたもの、上の物ならもっと色々あるのだが、逆に学生でありながらそういうものを作ろうとした心意気を高く買っていた、と菊岡が口にしていた。
大学にコネがあるなんて何処までも読めない大人だな、と和人は考えるものの向こうに行くまでの期間でこちらでも学べる事はあると押してくれた点は素直に感謝している。
明日奈と共に向こうでやっていけるかという不安もあったし親公認の中になってからは明日奈は通い妻の様に桐ヶ谷家を訪ね泊まっていくことも多く、こうして彼女と離れて数ヶ月生活するのはSAOをクリアして以来(UWを除けばだが)初めてかもしれない。
「そろそろ着くよ。悪いね、僕の提案に乗ってもらって」
「いや…俺としては空き期間に勉強させてもらえるから全然構わないんだけど…どうしてなんだ?」
「キミには色々と世話になったからね。 多少勉学の場を整えてあげるくらいでも釣り合いが取れないぐらいに。 それにキミや彼女には
「確かに…俺が見てきた風景はそんなに多くないし仮想で見てきた物が多いから…こんな綺麗な自然を見るのは珍しいかもな」
車が止まったのはGrand Blueと看板が掲げられたダイバーショップ…らしい。
雄大な青…か。 確かに目の前に広がる海に相応しい店名だろう。
「キリトくんは中に入っててくれ。僕はここのオーナーに挨拶してくるからさ」
「あ、あぁ分かったよ…」
車のトランクからボストンバッグとアミュスフィアやら申し訳程度のスペックのPC(自宅にある物に比べるとだが)を詰めたダンボールを担ぎ店の扉を開いた。
「北原ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「耕平ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「「「「「アウトォ!! セーフゥ!!」」」」」
「「よよいのよいぃぃ!!!!」」
全裸の男達が全力で野球挙をやっていた。
目眩を感じ扉を閉めようとしたのだが和人の肩に凄まじくごつい手が置かれた。というよりガッツリ掴まれている。
ギチギチとかつてSAOで戦ったボスに近しい圧倒的なまでの圧力を発する気配を背後に感じる。
「おぉ、お前が今日から伊織と同じくここに住み込むことになる桐ヶ谷和人だな?」
「こりゃ今年は豊作だなァ?」
「確かに俺は桐ヶ谷和人ですが…」
ダラダラと凄まじい汗を流しながら首だけを動かし振り返ると、そこには巨大な筋肉が居た。
しかも二人。
「それじゃあ、僕は帰る。 元気に頑張るんだよ」
「ま、待ってくれ菊岡さん!? これは、これは一体!!?」
無情にも走り去っていく車を眺めるしか手はなく、和人は筋肉に引き摺られ全裸男が野球挙をしていた店内に入る事になる。
「助けてくれぇぇええ!?」
■■□■■
「よーし、和人ぉ! 何飲む? ビールでいいか」
「いや、俺は「そぉれ、焼酎だァ!!」ぐぽぁぁぁぁぁ!!!?」
「あのリア充のようなやつも俺達の仲間入りか…」
「まぁ、仲良くしてやろうじゃないか耕平」
容赦なく注がれるアルコールに為す術もなく和人は倒れ込む。
和人自身、アルコールに弱い…ということは無い。というのも幼い頃に母親に少し飲まされた事も多少なりあったし、VRMMOの中で酔いはしないもののアルコールの味にはそこそこ慣れていた。
しかし、それはそれ。
「いい飲みっぷりじゃねぇか」
「あんたら正気かぁ!!?」
「それは俺も思った」
「しかし今更だ。諦めるんだな桐ヶ谷」
同意と諦めを促してきたのは黒髪の少し爽やかなイケメンと金髪の美形。
「おっと、俺は北原伊織だ。伊織でいい」
「今村耕平だ。同じく名前でいい」
「あ、あぁ…よろしくな? それで、その……ここはいったい…」
「よくぞ聞いた! って言いたいところだが知ってるだろう? ここはダイビングショップのグランブルー。 そして俺たちは伊豆大学のダイビングサークルだ」
「伊豆大学…あ、えっと…桐ヶ谷和人です。事情があって少しの間ですが大学の研究室で勉強させてもらいます」
「伊豆大学といや俺達の後輩になるな。寿竜次郎だ、よろしくな和人」
「時田信治だ。よろしくな」
初手に拘束、酒を口に流し込んできた相手とは思えない程の素直な自己紹介を受け和人は少し胸を撫で下ろす。色々問題はありそうな四人組ではあるが悪い輩ではないのだろう。
「という事で、和人。 少しの間でもお前はもう立派なダイビングサークルのメンバーだ」
「なにがという事なんだ!? えっと…伊織、耕平? 説明してくれ」
「「そういう事だ」」
「どういう事だぁぁぁぁぁ!」
頭を抱え項垂れる和人。
実家を離れて未だ数時間、最速で彼は明日奈に会いたくなっていた。
そしてそんな項垂れている彼の上では全裸の男四人が浴びるようにアルコールを摂取している地獄絵図。
間違いなく地獄絵図である。
「お、俺は電子系の研究サークルに…」
「問題ない。 とりあえず飲んでから決めようぜ和人!(道連れは1人でも多い方がいいな)」
「Peek a Booはとりあえず飲んで腹を割り話し合う素敵な場所だぞ(俺と伊織だけじゃ先輩方の相手は無理だからな)」
「だから不穏な空気が隠せてないぞお前たち…」
ジリジリと躙り寄る変態に臨戦態勢を取りながら何とかここから逃げねばと模索するが四方から囲まれており最早絶体絶命。
そんな時、店の扉が開け放たれた。
「あ、キミが今日からウチに下宿する桐々谷和人くん?」
野郎共のような野太い声ではなく鈴のようで心地のいい声を発したのは栗色で長く伸ばした髪の毛に、出るところは出て引き締まっているところは締まっているスタイルがいい女性だった。
「グランブルーでインストラクターをやっている古手川 奈々華です。 よろしくね桐ヶ谷くん」
「マトモな人だ…!」
ようやく現われた常識的(?)な人物にさめざめと泣いていると奈々華と名乗った女性に続いてもう一人中へと入ってきた。
「古手川 千紗。よろしく」
「あぁ…桐ヶ谷和人だ。 なぁ、あの人たちっていつも…」
「伊織と今村くんは最近来たばかりだけどあっという間に染まったの」
「なんというか…キミも大変だな」
「そのうち慣れるよ……桐ヶ谷くんが普通である意味助かった。あっち側にはならないでね」
「それじゃあ、桐ヶ谷くんは2階の部屋に荷物置いて来てくれるかな? 夜には歓迎会やるからそれまでにある程度、荷解きしておいてね」
「か、歓迎会だなんてそんな…お世話になる身ですし…」
「「歓迎会…」」と呟いて遠い目をした伊織と耕平には後で話を聞かなくてはならないだろう。
荷物を持ち上に上がろうとするとかの二人も和人の荷物を持ち部屋まで来てくれた。
「悪い、助かった」
「気にするなよ。どーせこれから暫くは一緒に暮らすんだし」
「これから暫くは同じサークルだからな」
「俺ダイビングとかしたことないんだけれど…」
「気にするな!」
「俺達もだ!」
グッ!とサムズアップを取った伊織と耕平を物凄く冷めた目で見つめている和人。
「と言っても俺たちはこの前、少しだけ海に入ったけどな」
「あぁ、浅瀬だったとはいえ俺は知らない世界を知ることが出来た気分だった」
先程のふざけた様子とは打って変わって楽しそうに話す姿はなんと言うか、自分の好きな物を語っている時の笑顔に感じる事が和人には出来た。 この2人は海に魅せられたんだな、と思いながら荷解きを進めていく。
なんだかんだと伊織、耕平の両名も手伝ってくれたり時には伊織秘蔵のAVを部屋で鑑賞しようとして追い出したりと和人にとっては珍しく、年相応の男関係を築いている。
最後のダンボールを開いた時、耕平が中身を覗き込み声を上げた。
「これはアミュスフィアじゃないか」
「なんだ、桐ヶ谷もVRMMOやってるのか」
「あぁ、基本的にはALOだけどな。 伊織達も?」
「いや、俺は金が無くて結局手を出してないよ」
「俺は一時期やっていた。最近はこっちの付き合いが多いからログインすらしていないがな」
「そうなのか、空を飛ぶのは楽しいぜ? 良かったら伊織もやってみろよ」
「とは言ってもなぁ…ダイビングもタダじゃないから金がさ…」
「VRMMOは接続料も機材料も馬鹿にならないからな。 今の北原にはそんなものは無い」
「うるせぇ耕平。ゲームの中といえど空を飛ぶってのも楽しそうだなー…」
部屋に最低限の家具と荷物を配置し終えると三人は各々床に座り身の上話をし始めた。
伊織は従姉妹である古手川家に居候をし伊豆大学へ通っていて、耕平は伊織に嵌められる形でサークルに入会したと。
他にもこの後に青山女子大学から梓さんと呼ばれる女性とケバ子?と呼ばれるケバいのが来るらしい。
しかしダイビング…菊岡はもしやこうなることを分かっていて「現実の美しさ」なんてことを言ってたのかもしれない、と考えると本当に何から何まで抜け目のない人だと溜息をつきたくなった。
「機会があれば一緒にやろうぜ伊織」
「そうだな。その前にそろそろ和人の歓迎会の時間だ」
「楽しもうじゃないか、桐ヶ谷」
「そうだ歓迎会って俺はどうすればいいんだ?」
「簡単に挨拶して後は自由だよ。歓迎会なんて名ばかりだしな」
「名ばかり…?」
これは特に事件が起こるわけでもなく、SAOをクリアした英雄でもUWで星王と呼ばれた男でもなく、一男子として年相応の(裸の)青春を送るどうしようも無い物語である。
「杯を乾すと書いて」
「乾杯と読む!」
「「「「「「YAHHHHHHHH!!!!!!!!」」」」」」
「はぁ…バカばっか」