ぐらんぶる〜もう1人の少年を添えて〜   作:夢見969

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小躍りしている969です。
大人の林間学校は次回に持ち越しとなった為、また完全オリジナル回です。
はい、許せる方だけどうぞ…


三人娘!

ある日のこと。

モノ好きな和人は大学へ向かってまた何かを作っているし、耕平はアニメをまた見るらしく店には来ず、ケバ子も大学の友達と遊ぶようで今日は来れない。日中は珍しいことに千紗、奈々華さん、伊織だけという状態になっていた。

 

いや本当に珍しい。

何せ和人も一緒に住むことになってアイツと俺と耕平はセットみたいになっていたし。

 

「あ、伊織くん。午後からお客さん来るんだけど少し準備手伝ってもらえるかな?」

 

「勿論ですよ。 千紗、店の方頼む」

 

「わかった」

 

店の外に出るとボンベの準備、今回のお客さんはフルセットの貸し出しらしくいくつかサイズを見繕ってマスクやウェットを用意しておく。

ふむ、サイズ的に女性三人か。

これは誰の邪魔も受けずに女性と仲良くなるチャンスなのでは…?

予想するに夏休みを利用した女子会のようなもの。上手く行けばこの辺を案内したりも可能!

 

「どうしたの伊織くん?」

 

「いえ、人生が楽しいなって思いましてっ!」

 

ルンルン気分で準備を終え、千紗に気味悪がられながら昼メシを作っている最中のこと。

冷やし中華でもと2人並んでキッチンで野菜を切り麺を茹でていたのだが冷蔵庫を開けて驚愕する。 昨晩まで山のようにびっちり入っていた酒類がすっからかんになっているではないか。

酒がないPaBなんて心肺が機能していない生き物と同然だ。

 

「というわけで買ってくる」

 

「気をつけてね」

 

「あぁ。 なんか他にいるか? 飲み物とか」

 

「スポーツ飲料何本か」

 

「了解」

 

財布を持って奈々華さんに断りを入れて近くのコンビニへダッシュする。

コンビニに着くと店員が何も言わずにダンボールでバックヤードからお酒を出してきたので折りたたみ式の代車を借り、千紗に頼まれていたスポーツ飲料も何本か買ってレジを通す。

あまり他の利用客を見た事ないがこのコンビニの売上殆どPaBのアルコール代なんじゃないか??

 

「ありがとうございましたー」

 

「…おかしいな。スポーツ飲料とお酒数本だけだったら数百円のはずなのになんで万札が無くなったんだ?」

 

ゴロゴロと代車を押しながら首を捻る伊織。

まぁいいか。と考えるのをやめて店へ戻ろうとした時、声を掛けられた。

 

「すみません、ちょっと聞きたいんですけど」

 

「はい?」

 

スポーツ飲料に大量の酒と訳わかんない組み合わせを持った男に声を掛けてきた勇気ある女性は少し童顔で濃い茶色のショートヘア。目元にすこしソバカスがある快活そうな印象を持つ女性だった。

 

「この辺にあるグランブルーってダイビングショップ探してるんですけど場所ってどの辺ですか?」

 

ちらりと後ろを見れば二人の女の子。

片方はリボンで明るい髪をツインテールにした子。 もう片方は眼鏡をかけたクールっ子って感じ。

 

「この道真っ直ぐ行ったところですよ。 良かったら案内しましょうか?」

 

「え、悪いですよ。荷物多いし…」

 

「というか、俺も今からそこに帰るんですけどね」

 

「帰る…? もしかしてお店の人ですか?」

 

「半分…そうかな? 下宿してるんですよグランブルーに。とりあえず行きましょうか」

 

伊織自身ができる最大限のスマイルと優しい口調で女性3人をエスコートしようとする。 女性達は顔を見合せ、お願いしますと告げて伊織の後に着いてくる。

ふっ、和人め。彼女が居るからって出会いを捨てるのが間違いだ。 こういう出会いから色々始まるんだからなっ!!

と、まぁ1人馬鹿なことを考える伊織。

 

「あ、そうだ自己紹介してなかったですね。俺は北原伊織。 伊豆大学の一年生です」

 

「え、一年生? 大人びてたからてっきり同い年か上かと…私は篠崎里香。 北原の一個上ね」

 

童顔のせいで年下に見えてたとは言わない方がいいな。

 

「篠崎さんですね」

 

「良いわよ敬語なんて…里香でいいわ。 硬っ苦しいの苦手なのよねぇ…一応初対面だし年上かと思ってたから敬語使ってたけど」

 

「あー、それじゃあ里香さん…後ろの二人は?」

 

いきなり名前呼びをさせてくれる年上…もしや脈アリか…? いやいや、俺は山本ではないんだガッツかずに紳士的に行けば自ずと結果は着いてくる。 彼女がいる和人だって自ら行くことは無いしそういう点を見習えば…っ!

 

「えっと、綾野珪子ですっ! 里香さんより二つ下…ですっ」

 

「朝田詩乃よ。歳は珪子と同じ」

 

「二人とも受験生なんだけど勉強ばかりで気を張っちゃうからお姉さんが気分転換にダイビングに連れてきたってわけ。最近知り合いが始めたみたいで私も興味あったし」

 

「仲がいいんだな?」

 

「まぁ付き合いが長いからね」

 

あーだこーだと話しながら移動をする。もとよりそんなに離れた位置では無いのであっという間に店に着いてしまった。

 

「おっと着いたぞ。ここがダイビングショップ、グランブルーだっ!」

 

別に自分の店という訳じゃないのだけれどダイビング目的でここに訪れた彼女たちを見ると何だか、その店に住んでいる自分まで誇らしくなった。

 

「奈々華さん、千紗ただいま」

 

「おかえり伊織」

 

「おかえりなさい伊織くん。 あら? 後ろの子達は」

 

「今日のお客さんみたいですよ?」

 

「予約してた篠崎です。 すみません時間より早く来ちゃって…お昼時みたいですし…」

 

「ううん、大丈夫よ。 あ、せっかくだし一緒に食べる?」

 

まぁ、食材はそこそこ有るし作れなくも無いか。

 

「いえいえ! お気になさらずっ!」

 

「私たちは先程食べて来たので」

 

「は、はいっ! 大丈夫です」

 

申し訳なさそうにする人たちをこれ以上誘うのもアレだろうし…と、店のソファにとりあえず座ってもらって伊織はさっさと冷やし中華をかき込んでいく。 今日の体験ダイビングには着いて行けないのは分かっている。ならば予定の時間までまだ暫くある今、話して仲良くなるしかないっ!

 

「ごちそうさま!」

 

「はやっ」

 

「何言ってるんだ千紗。俺はいつもこうだろ?」

 

ゴミを見る目で見てくる従妹を無視し冷蔵庫から冷えたジュースを取り出してお客さん三人に渡して近くに座る。

 

「ありがとう北原。 ここに住んでるのは北原とお店の人だけ? 三人にしては随分広いわよね」

 

「ん? あぁ、いやオーナーは今日は用事があって出掛けてるし、もう一人の居候も用事で居ないんだ」

 

「へぇ、もう一人はどんな人なの」

 

朝田ちゃんが少し気になったのか伺うような感じで聞いてくる。 和人に興味を持たれるのは癪だが聞かれたからには一応答えよう。

 

「クズだな」

 

「「「クズ!?」」」

 

「ん、どうかしたか?」

 

「い、いや何でもない。クズの他には…?」

 

「他? 他……」

 

和人はムカつくがまぁ友人だ。 悪友の方がしっくり来るかもしれないがあいつのイメージって言われると中々難しいものがあるな。

 

「あー……まぁ悪い奴ではないな。もう何だかんだ三ヶ月もほぼ一緒にいるし」

 

「確かに、伊織と桐ヶ谷くんと今村くんは朝から夜までずっと一緒に居るよね。昨日も…というか朝まで騒いでたし」

 

「仕方ないだろ先輩達と梓さんが寝なかったんだから!」

 

そう、昨夜もどんちゃん騒ぎをしていたのだ。だと言うのに先輩達も和人もよく朝早く起きて大学になんて行ったものだ。

そういえばそれでアルコールが無くて自然とコンビニで買ったのか。我ながら習性とは恐ろしい。

 

「仲良いんですねっ」

 

「あー、事ある毎に人を貶めようとしてくるけどな」

 

「伊織の自業自得が殆どでしょ。桐ヶ谷くんも時折悪いけど」

 

「ケバ子に裸にひん剥かれたしな」

 

「「「裸!?」」」

 

この三人は一体どうしたのだろうか。

裸なんて人間として当たり前の姿だというのに。呆然としている三人を他所に奈々華さん達も昼飯を食べ終え、食後の軽い運動がてら里香達と周囲を歩いてくる予定らしい。

 

「伊織くん、私と千紗ちゃんは体験ダイビングに行くからお店の方お願いね?」

 

「了解です。 里香さん達楽しんできてくださいっ」

 

笑顔で女性三人を見送ると店番と言ってもやることが無いのでとりあえずキッチンの片付けやら店内の掃除やらを始めると普段あまり気にしていなかったところまで気になってくる。 酔っ払って裸になって寝る場所なのだから綺麗にしなければ。

掃除機をかけ、雑巾がけをし床をピカピカにする。 これなら床で寝ても大丈夫だな! テーブルとかも綺麗にするか…などと掃除を行っていると時間は過ぎ、二時間ほど経っていた。

 

「ただいま…って伊織だけか?」

 

「おう、おかえり。 奈々華さん達はお客さんのダイビングにな」

 

「なるほど…梓さんももう少しで来るってさ。さっきすぐそこで会ったよ」

 

「お、なら飲んじまうか? そろそろ奈々華さんと千紗もお客さん連れて帰ってくるし」

 

「んじゃ、荷物置いてくる。時田先輩達にもメッセ飛ばしておくよ」

 

バッグを置きに部屋へと上がっていく和人を見送り冷蔵庫からキンキンに冷えたビールを取り出しておく。 どうせそろそろアニメを見終えた耕平と遊び終わったケバ子も来るんだろうし。

 

「ツマミになんか作るか?」

 

「冷蔵庫に叔父さんが捌いてくれてた刺身あるぞ」

 

カシュッ…、と鳴らし開ければ飲みながらキッチンに立ち刺身だけじゃ足りないだろうと2人してポテトを揚げたりテキトーに肉を焼いたりと作っていく。

 

「北原、桐ヶ谷なにをしてるんだ」

 

「やっぱり来たか耕平。これからみんな来るからツマミでもってな」

 

「パーティーでもやるのか」

 

どっさりと作ったツマミの量に耕平はやれやれと首を振りながらこいつもビールを飲み始める。時刻は15時とすこし。 まぁ飲み始めるにはいい時間だよな。

決して早くは無い(戒め)

 

「お客さんも来てるんだってさ。どうせいい所見せようとか考えてるんだろ」

 

「失敬な。俺はいつだっていい所しかないだろ」

 

「「ないな」」

 

コイツら前から思っていたが失礼な奴らだな。

 

「やっほー伊織、耕平! 和人はさっきぶり」

 

「おう、酒買ってきたぞ」

 

「昨夜は飲み過ぎたからなっ」

 

店の扉を開けたのは梓さんに大量の酒瓶を持ち運んでいる寿先輩に時田先輩。

なんの酒瓶かは気にしないでおこう。どうせ後で胃に入るんだし。

 

「これまた随分と作ったな」

 

「なんだ祝い事でもあったか?」

 

「お客さんで女の人が来ているらしいんですよ。それでこのバカが変に張り切ってるみたいです」

 

「なるほど伊織らしいな」

 

いつも以上の掃除を行い、料理もしてといつも以上に何だか働いた気がする伊織はビールが美味いと流し込んでいく。

耕平も和人も先輩方も次々とツマミを食べ酒を流し込んでいる姿を見ると楽しいな…なんて思っている自分は何時からおかしくなってしまったんだろう。

 

「ただいまぁ…って…わっなんだか凄い料理の量だねっ」

 

「ホント…あ、桐ヶ谷くんおかえり」

 

「千紗、ただい………ホァ!?」

 

「どうした和人!? 人間からは出ないような声が出たぞ!?」

 

和人が大慌てでキッチンの物陰に隠れた。ついでに人見知りの耕平も俺の影に隠れた。

コイツは本当に人に慣れないな…

 

「いやぁ、思ってたよりも凄かったわ! これは確かにまた近いうちにやりたいなーって思うかも」

 

「そうね…受験が終わって大学生になったら…ゲーム以外の趣味を持つのもいいかもしれない」

 

「その時は誘ってね詩乃さんっ」

 

奈々華さん達が帰ってきたという事はお客さんも戻ってきたというわけで…耕平の反応は分かるが和人のはなんなんだ?

 

「おかえりなさい里香さん。楽しかったようで何より」

 

「凄かったわ! 私も趣味にしようかしら少しカッコイイ感じしない?」

 

「あー、わかる。趣味でダイビングって聞くとなんかいいよなぁ…あ、よかったら三人とも食べていってくれ!」

 

「ありがとう北原っ。でもその前に……」

 

「そうねその前に…」

 

里香と詩乃が伊織ではなくキッチンの方へ視線を向けている。

 

「キリ…じゃなかった和人さん! 隠れてないで出てきてくださいっ」

 

「…は、和人?」

 

何故この女性群から和人の名前が出てくるんだ?と首を捻る伊織を他所に物凄くバツが悪そうな顔で和人が現れた。

 

「よ、よぉリズ! シノンにシリカも奇遇だな!?」

 

「あんたね…それは流石に無理があるでしょう」

 

「うっ、はい…仰る通りで」

 

まさか知り合い…だと!?

 

「だいたいなんで隠れたのよ? やましい事をしてる訳でもない……し?」

 

「あの、和人さんその手に持ってるのってビー「和人ぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」 ひゃう!?」

 

店内に響く雄叫びに珪子は若干脅え、里香に詩乃も何事かと伊織の方を向くがそこには既に修羅しか居なかった。

 

「貴様ァ…彼女だけでは飽き足らず可愛い女の子達とも知り合いだとぉ…? 貴様はラブコメの主人公か? アァん?」

 

「相変わらず訳分からないことを宣ってるが今はナイスタイミングだ…!」

 

取っ組み合いの喧嘩を始めた伊織と和人を呆然と見つめる三人に近寄るのは梓。

 

「こんにちは、私は浜岡梓。梓って呼んでね〜 三人は和人のお友達?」

 

「え、あ、はいっ…そのアレは?」

 

「ん? いつものじゃれあいかな。 可愛いし面白いよねぇ!」

 

「えぇ……」

 

「可愛いというかバカらしいですね…」

 

たかだか三ヶ月会ってないだけで何があったんだというテンションで伊織を返り討ちにしている和人。

里香は楽しそうではあるけど…と見つめ、詩乃はバカを見る目で呆れ、珪子に至ってはどういう感情なのか形容し難い感覚に襲われている。

 

「和人ー、伊織と遊ぶのもいいけど久しぶりに会ったんならちゃんとお話しないとっ」

 

「それもそうですね…えぇい離せ伊織! 後でちゃんとお前の事も紹介するから」

 

「さすが心の友だな」

 

ムカつく笑顔で飲み物取ってくる!と離れた伊織をゴミを見るような目で眺めながら大人しく里香達の前に正座した。

 

「あんた何してるの」

 

「ダイビングサークルに入ってました」

 

「なら別に隠れる必要ないじゃない」

 

「それはそうなんだけど…」

 

背後で半裸姿のままポージングを決める先輩を無視しながら言葉を続ける。

 

「もう昔の俺ではないと言いますか…」

 

「えっと、和人さんはいつでも和人さんですよ?」

 

純粋な珪子の視線がここまで痛いものかと和人は呻くも彼の肩に手を置いたのは梓だった。

 

「和人、大丈夫。 和人はここに来た時から何一つ変わってないよ」

 

「梓さん……いや、それはそれで嫌なんですけど」

 

変わってないと言われての現状はそれはそれで不服なので変わったことにしておいてほしい。

いつの間にやら梓さんも下着姿になっているのだがもう何度も見てきたうちに慣れたというか今更驚くことでもない。

 

「あ、あんた何やってんのよ!? っていうかいつの間に!」

 

「和人さん!?」

 

「…最低」

 

里香と珪子が顔を真っ赤にして声を上げ詩乃は侮蔑の視線を送ってくる。おかしい、まだ何もしていないはずだ。

 

「ありゃどしたの皆?」

 

「ふ、服!服着てください梓さん!」

 

「変態」

 

「不潔です!」

 

あー…なるほど?

 

「安心しろいつもの事だ」

 

「何時も見てるの!?」

 

「クズね」

 

「お、大人です…っ」

 

「シノンさんさっきから辛辣過ぎません?」

 

三者三葉の様子を見せる里香達にどう説明したものかと頭を悩ませていると伊織がようやく飲み物を持ってきた。

 

「何してるんだ?」

 

「ちょっと北原! あんたからも梓さんに服を着るように……って何であんたもパンツ一丁なのよ!」

 

「いやぁ…ここじゃあいつもだし…なぁ和人?」

 

「リズ…いや里香。ここでは、PaBでは常識が通用しないんだ」

 

彼女の肩を掴み真剣な眼差しで訴える和人にコクコクと首を縦に振って何とか理解してくれたようだと少し安心する。

詩乃は相変わらず冷ややかな視線をあびせてくるし珪子は顔を真っ赤にしている。

 

「とりあえず飲み物でも飲んで落ち着いて」

 

里香にはビール、詩乃と珪子は未成年だからとオレンジジュースを渡していく伊織。 和人にはウーロン茶を手渡した。

 

「…ウーロン茶にライターなんて近付けて何してるわけ?」

 

「まぁ見てろ詩乃」

 

また訳の分からない行動をし始めた和人を見ているとライターを近づけたウーロン茶に火がつき蒼白い炎が揺れる。

 

「伊織、せめて普通にビールにしてくれないか」

 

「お前を潰せばみんなが幸せだろ」

 

「…待って。とりあえずその火がついたモノは何?」

 

「「ウーロン茶だが?」」

 

「普通のウーロン茶は火がつかないわよ…!」

 

「そもそも和人さんってまだ未成「それ以上はいけない」あ、はい」

 

危なかった。それ以上珪子が言葉を続けていたら俺どころか伊織に耕平、千紗、愛菜の立場も危うくなるところだった。

 

「まあまあ、折角来たんだ。楽しんでいってくれ」

 

「和人の知り合いとなれば尚更な」

 

「時田先輩、寿先輩。 そっちの二人は今年受験生だからその手に持っている飲み物はダメですからね」

 

「わかっている。 無理強いはしないさ」

 

「何事も経験なんだがなぁ…」

 

「ちょっ、和人!?」

 

「諦めてくれ皆。こうなったら誰にも止められない」

 

和人に里香が詰め寄るがジョッキを持って既に遠い目をしている彼にはどうすることも出来なく宴の始まりを粛々と待っている。

 

「それでは皆様! "杯を乾すと書いて"!!」

 

「"乾杯"と読む!!」

 

「「「「「「かんぱーーーい!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またどんちゃん騒ぎしてる…どうせ脱いでるんでしょうけど!」

 

本当は来るつもりがなかった愛菜だが伊織から飲み会やってるぞ。 のメッセージが来ていたので顔を見せるぐらいはしておこうかなと思いお店にやってきた。扉を開ける前から既に盛り上がりが聞こえる。服なんか着ていないと諦め半分で扉を開けると…

 

「じゃんじゃん持ってきなさい!」

 

「嬢ちゃんいい飲みっぷりじゃねーか!!!」

 

「ちっ、なかなか…やりますね里香さん…っ!」

 

「あーら、北原? さっきまでの威勢はどうしたのかしら」

 

「和人、耕平…悪いが俺はここまでだ…っ」

 

「馬鹿な北原がやられただと…!? ビールだぞ!?」

 

「……はっ!? このビール…スピリタスが混ぜてあるぞ!?」

 

下着姿の伊織、耕平、和人は何時もの光景なのだがそこに初めて見る女性が居た。 もれなくその女性も下着姿なのだが。

 

「な、ななな!?」

 

「ケバ子やっと来たか」

 

「こんばんは愛菜」

 

「耕平、千紗! あの人誰!?」

 

「桐ヶ谷の知り合いらしい。最初は戸惑ってたが1時間もしないうちにあんな感じになった」

 

「ちなみにあっちの隅っこで座っているのも桐ヶ谷くんのお友達みたい」

 

千紗の視線の先にいる二人がペコりと頭を下げて来たので愛菜もつられて頭を下げてしまう。どうやらあちらの二人はマトモらしい。

 

「こ、こんばんは〜…吉原愛菜です」

 

「…どうも、朝田詩乃です」

 

「綾野珪子です。こんばんはですっ」

 

「えっと…和人のお友達…なんだよね?」

 

「不本意ながら」

 

「は、はい! いつも和人さんにはお世話になってて…えっと…はい」

 

…あー、これは酒が入った和人を見てなんとも言えない表情をしているのだろう。

 

「その、あいつは普段どんな感じなんですか」

 

「和人の普段…? うーん何時も大学に行って研究してるって聴いてるけど…その辺は千紗の方が詳しいかも。 ここにいる時は…伊織や耕平を止めてる側かなぁ」

 

「それにしては私たちが知ってる和人さんより何だかはっちゃけているような…」

 

「アイツらと一緒に居るとあんな感じになっちゃうのよねぇ…」

 

「で、でも良かったですね詩乃さん。和人さんが元気そうで!」

 

「いや良くないでしょ…お酒飲んで裸になって騒いで…アスナが知ったら卒倒ものよ?」

 

「ちゃ、チャンス到来…っ?」

 

「…前から思ってたけど中々に図太いのよね珪子」

 

苦労しているんだな…としみじみ思いながらパンツ姿でもう1人の女性と腕を組んでジョッキを空にする和人を眺める。毎日がお祭り騒ぎのようなこの場所で色んな出会いがある。

 

「ALOでたまに遊ぶ時もあるんだ」

 

「愛菜さんもやるんですか?」

 

「うん、和人に誘われて伊織達と一緒にね? 珪子ちゃん達も?」

 

「私は別のゲームをやってることが多いけど…珪子達ともALOをやってるんです」

 

「是非今度一緒にやりましょうっ」

 

「あ、あはは…始めたばかりだから足引っ張っちゃうかもだけどね…」

 

たわいもない話をしていると和人が里香と呼ばれていた女性を背負って近寄ってきた。

 

「おーい詩乃、珪子。 里香に服着せてやってくれないか」

 

「あんた本当にそのうちアスナにブチ切れられるわ」

 

「里香さん、どうしちゃったんですか!?」

 

「いや、間違えて俺が飲んでたウーロン茶飲んじゃったみたいで…」

 

「あの火がつくヤツを飲んでるアンタはなんなのよ…」

 

すぅすぅ眠る里香に衣服を着せる二人といそいそと一人服を着直す和人。

 

「あれ桐ヶ谷くんどうしたの? 服を着るなんて珍しい」

 

「流石に日も暮れてるしな。 酔っ払った女の子を連れて女の子だけで宿泊先に行くのは危ないだろ?」

 

「至極真っ当なことを言ってるように聞こえるけどこうなったの和人の所為でしょ」

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとな」

 

「なによ突然」

 

里香をおんぶして歩く和人と詩乃、珪子。

風は生温いが月明かりが綺麗で少しロマンチックな雰囲気だが詩乃は相変わらず厳しい視線を和人にぶつけている。

 

「ん、久しぶりに会えてよかったってことだ」

 

「たまたまよ。 元々は里香が何処か旅行に行こうって言うから気分転換に着いてきたんだもの」

 

「キリトさんをビックリさせようって計画もあったんですけど逆に私たちが驚いちゃいました」

 

「申し訳ない…」

 

「あんたもあんな風にバカ騒ぎ出来るのね。それが意外だったわ」

 

「たまに子供っぽいキリトさんは知ってましたけどあんな風なキリトさんは初めてだったんで少し楽しかったですっ」

 

「全部聞いた上で付き合ってくれてるからな。ムカつくしウザいけど頭は上がらないよ」

 

「ま、良いんじゃない。 男同士の付き合いっていうのも。 クラインやエギルとは歳が離れてるし出来ないこともあるんだろうし」

 

「はいっ。少し目のやり場に困りましたけど…」

 

「シノン…シリカ…」

 

「でもアスナにはしっかり報告させてもらうから。今から言い訳でも考えておく事ね」

 

しっかりと釘を刺されてしまいどうしたモノかと考え込む和人にクスクスと笑う二人。

 

「んぅ……んん…」

 

「リズは随分ぐっすりだな」

 

「移動とダイビングで疲れた上にキツいアルコールを入れたらそうなるでしょ」

 

「それもそうか…」

 

「キリトさん、少し筋肉つきました?」

 

そういえばこっちに来てからなんだかんだ力仕事をする機会も増えたからか少し筋肉がついたのかもしれない。リズを結構な時間おんぶしているが疲れないし。 どちらかと言うと酒の件よりリズを長い間おんぶしてたって事を知られた方がアスナは怒る気がする。

 

「ダイビングショップの手伝いしてるからかもな。 ボンベとか重いからさ」

 

「ちゃんとお店の手伝いしてるんですね」

 

「そこまで疑われてたら俺は何も言えないよ…」

 

「そこの宿よ。ここからは私達がリズを運ぶわ」

 

背中から呑気に寝息を立ててる彼女を下ろし二人に受け渡すとよろよろとよろめきながらも肩を貸して宿へと向かっていく。

 

「今度はアイツら連れて帰るよ。その時はエギルの店でも行こう」

 

「期待せずに待ってるわ」

 

「アスナさんにもちゃんと連絡してあげてくださいねっ」

 

二人を見送り店へと足を向ける。少しぐらい遅くなっても構わないかとスマホを取り出してコール音聴きながら耳を当てると直ぐに声が聞こえた。

 

「もしもしアスナ? さっきな…」

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