感想、お気に入り、物凄く嬉しくてどんどん書いちゃいます。
書けば書くほどぐらんぶる本編のストックが無くなっていきます。助けて。
次回は少し遅れてしまうかもしれません…申し訳ないです…
「来週辺り、小学校に行かないか?」
耕平が爽やかな笑顔で突然そう言った。
「小学校?」
「小学校」
「通うんじゃなくて?」
「通うんじゃなくて」
千紗と愛菜の質問にも真面目に頷き返答をする耕平にみんな揃ってHAHAHAHAッ!! と笑いながら四人は身を寄せ合う。
「俺と和人がヤツの注意を引くからそのうちに」
「わかってる通報ね」
耕平を羽交い締めにしている間に千紗の携帯はコールを鳴らしている。まさか身内から犯罪者を出す事になるとは…!
「待て待て待て待て。この程度の事で警察の手を煩わせるな!」
「この程度だと!?」
「充分に重大な案件だと思うんだけど…」
こいつの常識はいったいどうなってるんだ。
「色々言いたいことはあるが俺は
「私も
「
「お前ら俺を何だと思ってるんだ!!?」
そりゃ二次元大好きな危ないヤツだろう。
「そもそも俺は三次元の小学生には興味が無い!!」
「小声で予防線を張るな」
「
ジト目で見つめる俺たちを無視して耕平がスマホの画面を見せてくる。 なになに…学校に泊まろう? へぇ、廃校を宿泊施設として貸し出してるのか…
ゲームの中では色んなところで寝泊まりしたがこういうのはやった事ないから楽しそうだな。
「楽しそうだねっ」
「耕平にしちゃ上等な提案だが…何を調べたら小学校に行き当たったんだ?」
「何故目を逸らす貴様」
本当に事案にならないことを願うが企画としてはいいものだ。経緯を知らなければに限るが。
愛菜が耕平のスマホを持って先輩方に伝えに行くと口を揃えて丁度いいと言い出した。
嫌な予感がする。
「夏らしく合宿でも…と思っていたんだがサークル予算が厳しくてな」
「安くて大勢泊まれる場所が欲しかったところなんだ」
「じゃあ予約しますか」
「車は何台いります?」
「いや今回の合宿なんだが学年別行動にしようと思う」
「たまには横の繋がりも大事にするといい。 特に和人は来年、ここに居る訳じゃないからな」
そうだ。まだ時期こそ未定だがずっと伊豆大学に通うわけじゃなく、アスナと共に渡米する予定なのだ。 伊織や耕平とバカをやれるのもそう長くない。
「そうか、それじゃあ俺たちだけで車を借りて時間通りに現地集合しろってことですね」
「道中は好きな所に寄り道していいからな」
だったら、と伊織達と集まって当日の予定を立てていく。運転は愛菜、飯の用意は男子三人、千紗は場所のピックアップと役割分担をしていく。
先輩達の邪悪な笑いに気がつく事もなく。
そして当日。
愛菜の運転する車に荷物を詰め込み乗車すると各々のスマホに入っている音楽を掛けて何繋がりかを当てるゲームが始まった。
…あまり音楽入ってないんだがどうしたものか…
「「「「うーーーーーん」」」」
「さて何繋がりでしょーかっ」
「ケータイのCMソング!」
「ハズレー」
「ヒントをくれ! ヒント!」
「私が好きな番『テラスホーム主題歌』なんでわかったの!?」
だって愛菜だし。
考えたら自分の身の回りで愛菜みたいな恋愛!って感じの女性って殆ど居なかったような気がする。もちろん和人が知ることは無いだけなのだが。
「じゃあ次は俺の番だな」
「「「「アニソン」」」」
「せめて聴いてから答えろ!!」
「次は和人ね」
うげ…、と言いながらも一応こういう時の為に組んであるプレイリストを再生する。
聴こえてくるのはアコギの前奏と柔らかな女性の歌声。
「んん、何繋がりだ…?」
「ゲームのテーマソングとか?」
「彼女がハマっている曲繋がりとかだったら走ってる車から叩き出すからな」
唐突に死刑宣告をされたが一応違う。 アスナや知り合いに勧められてハマったってのは間違いじゃないけれど余計な事だし言わないでおこう。
「んー、あれ? この曲って神崎エルザじゃない?」
「あぁ、女性シンガーソングライターの?」
「伊織が憧れて自分で曲「千紗、それ以上続けたら揉むぞ…!!!」……ッ!!!!!」
突然、伊織は助手席に座る千紗の背後から手を回して胸元へ手を近付けるが般若の形相をしながら凄まじい力で伊織の腕を掴み押さえ込んでいる。
「桐ヶ谷くん、今村くん。 伊織を取り押さえておいて」
和人が伊織の腕を捕まえ、耕平が首に手を回して締め上げるとワタワタと暴れるも千紗にその手を伸ばすことが叶わない。
神崎エルザの曲が止まり、代わりに千紗のスマホからまたアコギの前奏が聴こえてきた。聴こえてきたのだが何処か安っぽいというかチープな印象を受ける感じがした。
「聴いたことのない曲だな」
「伊織の様子だと知ってるのか?」
Uh〜♪
十年後 二十年後
まだ見ぬ いつかの
BOKUの為〜♪
(唄:北原父)
「伊織の自作曲」
「ギャァァァァァァァァ!!!!!!」
「和人、耕平しっかりと伊織を抑えておいて」
「「もうやっている」」
「放せぇえ! でなければいっそ殺せぇぇえええ!!!」
黒歴史を垂れ流されるのがここまで地獄だとは…まあ伊織のだしせいぜい笑えばいいのだが…どうやってこれを手に入れたんだ。
「栞ちゃんに伊織が夏休み帰省するつもりがないって手紙送ったら同封されてきた」
眠れない夜はMidnight♪
「栞ぃぃぃいいいいいいい!!?」
これは酷い。
………特に何にもないけど帰省したらベッドの下と棚の奥の物を処分しておこう。なんにもないんだけどなっ。
「桐ヶ谷くんは帰るんだっけ?」
「あぁ、プローブの方も一段落ついたし久しぶりに彼女に会いたいから」
「耕平、扉を開けろ。彼女が居るってバレてから事ある毎に話に出しやがって!!!」
「任せろ」
「アンタら後ろで遊ぶな!!」
愛菜に怒られてしまったので大人しくシートベルトを締め直し静かに座る三人。
ひたすら静かに前を見つめている三人。
愛菜からしたら正直気味が悪い。
「………」
「「「……………」」」
「…ごめん、騒いでいいからその気味の悪い真顔やめてくれない…」
「黙ってろって言ったり騒いでろって言ったりなんなんだケバ子」
「大体どこが気味の悪い顔だ。鬼神の如くケバいお前のメイクの方が気味が悪いだろう」
ケバッ子カフェの手伝いをした時に初めて見たがあれは本当に鬼神の如くケバかった。俺がもっと早くPaBに入ってて、伊織や耕平と同じタイミングで愛菜に会ってたとしたらきっと今みたく名前で呼ばずにケバ子と呼んでいただろう。
そんなどうでもいいことはさておきだ、車内では伊織作の2曲目がかかっているのにようやく気がつく。 作曲家の彼も思い出したかのように再び悶えているので耕平が顎に流れるように肘打ちを叩き込んで気絶させた。 相変わらず惚れ惚れするほどの体術スキルだ…
1時間と少し経った頃、車は拓けた丘の公園に到着しシートを広げて少し早めの昼食を摂ることとなった。完璧にピクニックだな。
ユイやアスナと一緒に新生アインクラッドの22層ではよくピクニックをしてるけどリアルのピクニックなんて……………
「俺の現実って実はとんでもなくまっさらなのでは?」
「何言ってるの和人」
「とても彼女持ちのセリフとは思えんな」
「それよりも飯にするぞ飯!」
一瞬ブルーになりかけるも伊織と耕平によって引き戻され車からデカいタッパーに詰め込んだ弁当を持ち出してくる。
「天気よくて良かったね」
「千紗がいい所見つけてくれたしな」
「あれ、耕平と和人も作ったの?」
「俺たちが昼飯の用意!」
「愛菜が運転!」
「完璧な役割分担だ!」
「……料理下手で悪かったわね」
「練習してたらすぐに上手くなるよ?」
蓋が開けられた中には弁当の定番、から揚げにだし巻き玉子(甘め)、ウィンナーや少し手間をかけた春巻きまで入っており主食も好みに合わせて幾つか具を用意したおにぎりにサンドイッチと五人分ということでかなり豪勢なメニューとなっている。 おかげで朝の仕込みに結構苦労した。
「ん、耕平の癖に意外だ」
「桐ヶ谷くんが作ったのも美味しい…っ」
「意外とはなんだ。失礼な」
「和人は置いておいて、耕平は【バカ・生活力ゼロ・運動音痴】が特徴だろ」
「お前ら何も分かっちゃいないな。ギャルゲの男主人公は料理上手特性が基本属性だぞ」
「「「なるほど」」」
納得してしまった。 しかし耕平の作ったのおかずは本当に美味い。 伊織の腕前は普段、Grand Blueでの昼食や夕食の時に千紗と料理しているので知っていたが耕平は今朝一緒に作った時の手際の良さからなかなか驚いたものだ。
「ひぐっ……えぐぅ……ぶわぁぁぁぁ美味しいぃぃぃい…!」
「愛菜!?」
「何故泣きながら食う!?」
「だって耕平にも和人にも負けるなんて…!!」
「おい、耕平と同列に扱うのはやめてもらおうか」
「これから頑張ろ?」
「お前ら俺をなんだと…! 文句は金欠で外食が不可だった北原に言え!」
「酷い。最低。バカ」
「変態作曲家」
「酒クズ」
「曲の話はやめてくれぇえ!!」
尚も泣きながら昼飯に食らいつく愛菜が不憫で仕方がない。 自身の腕前の問題なのだが。
「ケバ子、こんど料理教えてやろうか?」
「伊織と耕平に教わるよりは和人がいい」
「貴様、人の親切心をなんだと…!!」
「しかし桐ヶ谷のも中々手が込んでて美味いな」
「師匠の腕が凄いからな。 教えてくれって頼んだ時はめちゃくちゃ渋い顔したのにいざ教えるってなったらスパルタでさ…」
「惚気…」「惚気だね」「死ねばいいのに」「地獄に落ちろ」
「酷くないか!? いや、機会があればお前達にも食べてほしいぐらい美味いんだよ! …あ、そうだ愛菜もその時は料理教えてもらえばいいじゃないか」
「え、いいのかなぁ…?」
「提案は嬉しいが和人はいいのか? 彼女の手料理を俺たちが食べても」
「ん? あー、皆なら別にいいかなってさ」
野島や山本達だったら首から上を土に埋めるが伊織達はここ三ヶ月ほどおはようからおやすみまで一緒に居るものだから若干、家族のような感じになっている。
「それじゃあ夏休みにみんなで和人の実家に行くか」
「都内だったか? 久しぶりに行くのもいいな」
「賛成っ」
なんか勝手に決まってしまったが何とでもなるだろう。
スグと母さんになんて言おう…
昼飯を食い終わると少し休んでから再び移動を始める。 近くにあった牧場でソフトクリームを食べたり、たまたま見つけた釣り堀で釣り対決なんかをしてみたりと五人で遊び倒し日が落ち始めた頃、件の小学校(廃校)に到着する運びとなった。
駐車場には車が既に数台止まっており先輩たちはどうやら先に到着していたようだ。
「随分早いみたいだな」
「お、来たな一年共!」
顔を見せたのは相変わらずガタイが良く、パーマを当てた髪の毛が特徴の東先輩だ。
「東先輩お疲れ様です。 結構早く来てたんですか?」
「色々と準備があったからな」
「準備? 言ってくれたら手伝いましたが」
「気にするな気にするなっ。そうだ携帯とかの貴重品はこのカバンに入れてくれまとめておくから」
アタッシュケースのようなカバンに皆、なんの疑いもなくしまい込み歩き出す。 その瞬間、和人は猛烈に嫌な予感に襲われた。
先輩達が先に来て準備、携帯等の通信機器を手放す。
まさか…な?
「校庭でキャンプファイヤーできるんだって!」
「体育館とか一通りの施設は使えるらしいな」
「教室でベッドで寝るなんて新鮮だし」
「周りに何も無いから迷惑もかからない」
「我ながらいいものを見つけたものだ」
「今度こそ素敵な心のアルバムを…!」
愛菜が目を輝かせてそんな事を息巻くが…無理だな。だって俺たちの貴重品が入ったアタッシュケースを持った東先輩はもう何処かに消えてるし…今から向かう廃校舎はどう見たって…!
陰鬱な雰囲気に吹き荒れる風は呻き声のようにも聞こえるほど不気味な空間。
そしてライトと共に置いてある紙には
肝試し!
屋上まで来ること
PaB先輩一同
「私の…アルバム………!」
「もうそのアルバム諦めろよ」
「これはこれで面白いかもしれないだろ」
「全裸とお化けも立派な青春の1ページだろ」
「もう嫌! 私、ここで終わるまで待ってる!!」
半泣きになりながら廃校の入口前でしゃがみこむ愛菜だが寧ろここで待っている方が怖いと思うんだが。
「まあそうビビるなって」
「どうせ巫山戯て遊びで作ったものだ」
「…ねえ」
千紗が先程の紙を裏返すとやけに達筆でこう記されている。
尚
この企画終了まで
全員酒を
断っている。
「「「「「……ひぇ」」」」」
あの生命=アルコールの先輩達がアルコールを断つだなんてどれだけガチで作り込んでいるんだ…!?
ライトを持って入口にいざ向かうと廊下の左右に紙が貼られておりそれぞれ【女子用】【バカ用】と明記されていた。和人は首を捻る。
おかしいな、俺が行くルートがないぞ。
「早く3人で行きなよ」
納得がいかない。
耕平がライトを持ち渋々3人で廊下を進んでいく。中は御札や血糊が壁や床の至る所に付いているのだが血糊はどうにも紙の上に書いて貼り付けているようだ。
「ぎゃぁああああああああ!! やめろぉおおおお!!!!!!」
突如耕平があげた悲鳴に少し驚くも原因はアニメキャラのフィギュアが紐に括られて宙吊りにされていたかららしい。よく分からない絶叫だな…と和人と伊織は耕平からライトを奪い取り先へ進む。ブツブツ言っている耕平の方が不気味だと思いながらひとつ階段を上がると日本人形がポツンっと座っていた。
「この手の奴は…なぁ和人」
「あぁ北原。どうせくるぞ」
三人の後頭部にぺちゃり…と生温いこんにゃくがぶつかった。
全く、この程度じゃ俺たちは驚かないぞ。
「恐怖を感じる要素がないな!」
「甘く見られたものだ」
「ん、こんにゃくになんか紙が……」
【使用済み】
「「「イヤァァアアアアアアッ!!!!!」」」
あまりの酷さに男三人はこんにゃくの元から全力で走ってさらに上の階を目指した。
こんなえげつない空間早く抜けて酒を飲んで全部忘れてやる!!そう決意を固めて走り抜けると廊下の奥にぼんやりと女の人の姿が見えた。
「あれは女の幽霊か!?」
「近くで確認してみるか」
「やめろ北原ぁ!」
あまりにも浅はかな考えの伊織を耕平が引き止める。
あれが本物の幽霊ならば…問題は無く、真の問題はあの格好をしているのが梓さんでない場合、あれの中身は筋骨隆々な野郎だったら気絶まっしぐらのトラウマものだ。
「「はっ!?」」
振り向けば数メートルの所にトラウマが立っていた。
「ち、近寄るな!!」
「あ、梓さんですよねぇ!!?」
「この際、女なら幽霊でも…!!」
ムキッとした筋肉質の脚が見えた。
「「「嫌だァァァァァァ!!!!」」」
さっきから叫んでばかりな気がするがこれは仕方ないと考える伊織と耕平。何処まで追ってくるかも分からないと必死に走り汗を流して近場の教室に飛び込んでやり過ごす。やり過ごせた…のだが。
「…お、おい耕平…和人は?」
「……さっきまで一緒に走ってたはずだ…」
「まさか!? 捕まったのかアレに!!」
「……いや、別に問題ないんじゃないか? 和人だし」
「そうだな、死んでもヨシ」
一方、別ルートでは
「ち、千紗…今なんか白い人影が…!」
「誰かが白い服を着てるだけじゃない?」
「で、でもぉ…こういうのって本物が混じるって定番だし…!! あ、アハハハ」
「そ、そんなまさか…」
パッと、千紗がライトで目の前を照らすといつの間にか白い服に顔が見えないぐらい垂れ下がった前髪を持つ女性がゆらりと揺れながら現れた事に二人の女子は身を固くする。
「あ、梓さんですよね…」
「………」
返答はなく、ジリジリとその距離を詰め始める。
「しょ、正体は分かってるんですからね!! そ、そんな格好を変えただけじゃこ、怖くもなんとも……」
ピタリと動きが止まると警戒心をMAXに引き上げるのだが、突如のスプリントに愛菜は悲鳴を上げて逃げていってしまった。
「きゃぁぁあああああああ!!!!」
「あ、愛菜…!?」
幽霊もそのまま愛菜を全力疾走で追い掛けて行ってしまったので千紗は置いてきぼりを食らってしまった。
「はぁ…大丈夫かな愛菜」
ひとまず走り去った彼女を迎えに行かなきゃと後を追うように廊下を暫く歩くと背後に不思議な気配を感じた。
「…?」
振り向くも何もそこには居らず、気のせいかと思い直して前を向くと水飲み場の影に泣きじゃくった愛菜が座り込んでいる。
「愛菜、大丈夫?」
「千紗ぁぁぁぁ!! うわぁぁぁ…やだよォ、帰りたいよぉ…!」
「よしよし…もう少しで屋上だから頑張ろ?」
コクコクと首を縦に振りながら自分の腕に抱きつく愛菜の姿に苦笑しながら振り向くとまた白い服の女性が居た。
「…うっ」
「大丈夫、梓さんだよ」
不安を紛らわすように伝えると愛菜もゆっくりと歩き出すのだがそこで変化が起きた。
ヒタ……ヒタ…、ヒタ……ヒタ…、
梓さんであろう幽霊とは逆、先程千紗と愛菜が居た方の廊下を歩いてくるもう一人の幽霊が居た。
「「…ひっ」」
目の前に居るのが梓さんなら後ろのは誰だ?
他の先輩たちはガタイがいい為にとても女性の格好を出来るとは思えない。
それに目の前にいるのは先輩たちに比べて小さく細い。
今にも気絶しそうな愛菜に珍しく顔を引き攣らせる千紗は慌てて近くの階段を駆け登り屋上へと向かって行ってしまった。
「いやぁ、あんなに怖がってもらえると用意したかいがあったねぇ」
「突然とっ捕まって女装させられた俺の身にもなってくださいよ梓さん」
二人が居なくなったと分かれば幽霊役の梓は髪をかきあげて微笑み、もう一人の幽霊に突然させられた和人も同じくウィッグによってロングになった髪をかきあげてゲンナリしている。
「さてと、みんな迎えに行こっか!」
「俺、このままの格好なんですか……?」
「「「「「「「かんぱーーい!!」」」」」」」
各々がビールを持って大きく叫ぶ。
「どう、怖かった!?」とは梓さんのセリフだ。
「怖かったです…」
「トラウマレベルでした…」
「あれはもう法律で禁止するレベルですって…」
「黒歴史が増えました…」
愛菜、耕平、伊織に和人と次々に気持ちを吐露し千紗も小さく震えるように頷いており、思い出と言うよりは深い傷がそれぞれに残ったようだった。
「楽しんでくれたようで何よりだ」
「もしかしてこれの為に学年別の車に?」
「おうとも」
「サークル恒例の肝試しだ。耕平がいい所見つけてくれて助かった」
「耕平……」
「俺は悪くないぞ!?」
BBQも始めて酒を飲みながら肉を頬張る和人に皆が視線を注いでいる。
「なんだよ」
「いや、そういや何で和人はキリコちゃんになってるんだ」
「あの時、俺は先輩に捕まってな。抵抗する暇もなく服をひん剥かれて渡されたのがウィッグとこのワンピースだったんだよ」
「…桐ヶ谷くん似合ってるね?」
「学祭の時も思ったけど可愛いよね和人」
「流石、青女ミスコン準優勝者だな」
「いや一位のやつ審査員と前から知り合いだったみたいだし実質的優勝だろ」
「やめろ、アレを思い出させるな…!」
酷い出来事だったので正直思い出したくない。
「おーい伊織、耕平、和人!」
「キャンプファイヤーに火をつけるの手伝ってくれー!」
「「「うーすっ」」」
組まれた木々に火を放ち少し大きくなるまで待つと月明かりと星空、燃え上がる炭とは比にならない明るさが辺りを包みこむ。
キャンプファイヤーだなんて何時ぶりだろうかと和人が眺めていると愛菜が何か言っていた。
「青春ドラマのワンシーンみたい……男の子が背を差しのべてくれてフォークダンス…なんてやったらロマンチックだよねぇ」
相変わらず憧れてるんだなそういうのに。
と、思っていると伊織が愛菜に「踊ろうぜ」と声をかけた。あいつも中々やるな…と思っていたんだが実際は……
ドンドコドンドコドンドコドンドコ
ワッショイ!ワッショイ!
ドンドコドンドコドンドコドンドコ
リンボーダンスに誘っただけだった。情緒の欠けらも無い。
「おいおい、伊織少しは考えろよ」
「あん? なにをだ」
「リンボーに負けたらどうせとんでもない罰ゲームをさせられるんだ」
「おう、それで?」
「一度その流れをぶっ壊してやればいい」
「ほう……いったいあそこまで盛り上がっているリンボーをどうやって止めるんだ?」
まぁ、見てろ…と伊織に告げスピリタスを口に含み酔いを回す…俺は正常じゃない、だから許してくれアスナ。
マジックショーで死にたくは無い。
項垂れる愛菜の目の前に立つと和人は手を差し伸べ微笑みながら告げる。
「踊ろうぜ?」
「どうせリンボーでしょ…」
「フォークダンスのお誘いなんだが?」
「ふぇ…!? え、えっと…よろしく…?」
手を掴み立ち上がらせると梓さんがその様子に気がついたのかどんちゃん煩い音楽からフォークダンスにピッタリな曲に切り替わり炎の前で和人と愛菜が踊り始める。
「こんな感じだったか?」
「私もちゃんとした踊りはわ、分からないけど…っ」
アスナともいつかやってみたいなと思いながら踊っていると周りの先輩達もお酒を飲みながら踊り始めたのが見える。 いい流れになったと伊織も親指を立ててサムズアップしている。
「ありがとね和人? 彼女がいるのに…相手してくれて…女の子の格好してなかったらもっと良かったけど」
「それは我慢しろ。…まあ罰ゲームのマジックショーが嫌だったしな… 伊織!俺も飲みたいから交代しようぜ」
「おうっいいぞ」
「へ、か、和人!?」
「頑張れよ、愛菜」
握った手を離すと伊織が入れ違うように愛菜の手を取りフォークダンスを始める。
まったく…世話のやける。
「ふぅ…」
「皆よくやるね」
「まあな。でも俺は好きだよ…こういうの」
「…そっか。桐ヶ谷くんが楽しめてるならいいんじゃないかな」
「千紗は楽しんでないのか?」
「ん、すごく楽しいよ」
「ならお互い様だな」
「千紗ー!」
愛菜が笑顔で手を振り千紗を呼んでいる。
「行ってきたらどうだ? 悪くないんだろ」
「…うん」
PaBに来てから…本当に色々な初めてを経験している。
伊織達と過ごせるのは長くても一年程なのだが…きっとまだまだ楽しいことは待っているだ。 だったらこの一瞬を忘れないようにしたい。
パシャリ…返してもらったスマホで楽しそうに笑う友人たちの姿を収めておく。 アスナやユイに見せてあげよう。彼らの姿を。
もちろん裸なのは除いて。
「伊織くん、和人くんいってらっしゃい!」
「「はい、いってきます!」」
合宿も終わって早数日、伊織と和人は2人揃って奈々華さんに見送られて近場のファミレスへと足を向けた。
伊織は合宿の夜、酔っ払った千紗に何か言われたらしくお金を貯めようと一念発起したらしく、和人は和人でこの先ちょっとした計画にお金が必要とのことで二人揃ってバイトをすることにしたのだった。
制服に着替え、店長に促されるまま休憩室にいる先輩スタッフに挨拶することとなった二人。
「新人の桐ヶ谷和人です」
「北原伊織です! これからバリバリ働くのでよろしくお願いし━━」
頭を下げた瞬間頭にジュースのような何かをぶっかけられた。
「いきなり何しやがる!」
「なんて事を…!」
「あーら…かけられるのはジュースよりビールの方が良かったかしら? 着替えあるわよ?」
嗜虐的な笑みを見せる女性。
いやこの顔どこかで………
『お前の魅力、俺たち以下でやんの!』
『やめとけよ伊織。可哀想だろ?』
…………oh......確か青女のミスコンで…
「「今までお世話になりました!」」
「まあ待ちなさいよ」
逃げようとする二人の肩をミシミシと悲鳴を上げさせるほどの力で掴みながら静かに呟く。
「これから仲良くやっていきましょうね。後輩…?」
さぁ、ようやく出ました毒島様! なんだかんだ好きなキャラです。
そして次回は待っている人は待っていた時は少し遡って青女祭のお話! 祭りだ! 浴衣だ! ミスコンだ!
ちょっとしたゲストキャラも出てくる予定ですのでお待ちください。