そしてそんな拙い作者からのお願いなのですが…
面白い悪役令嬢ものってなにかありますかねぇ!?
まさか、まさか乙矢くんみたいな海が好きでいい子が…あの伊織に興味があるだなんて…! あんなに顔を赤くして恥じらいながら伊織に恋人がいるか…なんて聞いてくると思わなかった…。
というより恥ずかしかった…もしかして自分が告白なんてされてしまうのかもしれないと考えた自分が。
桐ヶ谷くんにどこまで話していいか分からなかったから質問する感じになってしまったけど…確かに伊織は良くも悪くも正直者だし、普段のだらしなさを知らないから高校生である乙矢くんが大学生に憧れている…それだけだと思いたい…。
「胃が痛くなってきた…」
「おかえり千紗。少し顔色悪くないか?」
よー、なんて気の抜けた迎えをしてくれたのは桐ヶ谷くんと伊織、それに梓さんと帆坂さん?だった。
「…ただいま、桐ヶ谷くん…えっと…少しね」
「乙矢くんは?」
「…え、えっとジュース買いに行くって…」
「ああそうなのか。 ところで千紗…乙矢くんと何か話してたのか?」
どうしてこういう時に限って伊織は察しがいいのだろうか。
「ど、どうしてそんな事気にするの…?」
声が上ずってしまった。
「いや、戻ってくるの遅かっただろ? で、何を話していたんだ?」
「言えない……コト…………」
「そんなバカな!!!!!」
伊織が頭を抱えて何かブツブツと呟いている。
こんな不気味な奴のどこが素敵なんだろう…
「あ!千紗さん、色々聞きたいことあるんですっ!」
「お、おかえり…えーとうん。いいよ?」
あぁ、また胃が締め付けられる…なんで私が伊織(に関連する)の事でこんな目に…
「乙矢くん、まさかの肉食系男子だったのか」
「よっぽどビビッときたんじゃない?」
千紗は伊織の事が好きだけど、乙矢くんに告白されたのか…複雑な人間関係だな…
でも一応の恋人関係ではあるから千紗に勝機はあるのか? などとかなり見当違いな考えをしている和人を他所に梓さんは真面目そうな顔をして伊織を見つめている。
「んー、北原くんにとってあのちーちゃんってどんな感じなんダ?」
「あぁ、えっと…俺と千紗は従妹なんですよ。 それでまぁ…色々とありまして体面的には付き合っているんですけど…」
「ショックじゃないのか?」
「ショックっちゃショックだけどあれだ…感覚的には妹が告白されたみたいな?」
千紗のことは妹として見てるのか…なかなか厳しい認識だな…。
「キー坊? 多分、キー坊すごい勘違いしてると思うヨ」
勘違いってなんだよアルゴ。と言いたかったのだがそれよりも先に声を発した奴がいた。
「妹…告白……Really?」
「ヒッ!?」
「「耕平、生きていたのか」」
妹という言葉に反応してか記憶を失うほど殴り倒した耕平が血みどろになりながら現世に舞い戻ってきた。しぶとい奴だ。アンデッドエネミーみたくなってる所為でアルゴもドン引きしてるじゃないか。
「
「彼女…? あぁ、(一応千紗は彼女だし)どうやらそうらしい」
多分、耕平は栞ちゃんの事だと思って伊織は千紗の事だと思って話が進んでるな。
「なぜお前は呑気にしている!?」
「なぜって俺には関係ないことだろ?」
「無関係なものか! お前は立派な身内だろう!」
奇跡的に会話が噛み合っているのはこいつらが馬鹿だからか。
「家族として見極めろと!」
「あぁ、相応しくなければ追い払え!」
「そして相応しかった時は男として…」
「男として…始末しろ」
「なんでだ!?」
どうして相応しかった時に始末するんだよ!?
「なんでも何も当たり前だろ桐ヶ谷。 自分より相応しいやつが出てきた時はそいつを消せば自分が一番相応しいだろうに。なぁ北原」
「いや、俺をお前側に勘定しないでくれないか?」
「キー坊が彼女作った時は功績積み重ねて彼女と共に既成事実作りかけてたからナー」
「待てアルゴ。俺はアスナとは健全なお付き合いを…伊織、耕平、そのノコギリとスコップは何使うんだ!? 四肢を切り落として埋めるのか!?」
「彼女がいるのは今更だが…」
「惚気をしていいとは約束してないぞ」
梓さんもアルゴもニヤニヤしながらこっち見てるし…なんなら梓さんがなんか余計なことをアルゴに吹き込んでいる気さえする!
しかし向こうを止める前に目の前の狂人を止めるため、和人はゆっくりと口を開く。
「耕平、夏休み中に俺の実家にくるか? スグも居るし」
「犬とお呼びください桐ヶ谷様」
「和人テメェ!? 直葉ちゃんを使うのは卑怯だろ!?」
「だったらお前も栞ちゃんに会わせてあげたらいいじゃないか」
手に持っていたノコギリを俺の首から伊織の首に当てて清々しい程の手の平返しをした耕平は満面の笑みを見せている。
スグが家に居る…とは言ったが会わせるとは言ってないので嘘は吐いてない。
「こんな危険人物を会わせる訳ないだろ!?」
「北原、桐ヶ谷」
「ひ、知らない人…!」
唐突に声をかけてきた毒島様だが耕平の様子を見るにあの日の事を思い出すことは無いだろう。ぶん殴ってよかった。
「ちょっと、あれどうなってるのよ」
あれとは…と首を捻るがすぐ分かった。
千紗と乙矢くんだ。今も楽しそうに笑い合いながら何かを話し合っているのを見ると余程、同じ趣味の人間に会えたことが嬉しいのだろう。
「今すぐ邪魔してきなさい」
「「お前って奴は…」」
「私は私で譲れないのよ。手立てを選んでいる立場じゃないわ」
いつもの意地の悪そうな笑みでもクズな顔でもない毒島桜子の言葉は少し重みを感じた。
「本気で顔が好みなの」
「左様ですか」
「いっそ清々しいな」
「キー坊の友達としては新しい部類だナ」
「理由がはっきりしてていいね〜」
もうここまでさっぱりしてると好感を持てる。
千紗と乙矢くんには申し訳ないが恋する毒島様の為だ…全力で邪魔させてもらおう。
「耕平、伊織の部屋の棚からギターを持ってきてくれ。隠してあるがお前なら見つけられるだろう」
「分かった」
「なんで和人が俺の部屋の隠し物を知っているのかは甚だ疑問だが今はいい。 先輩達!ありったけの酒を掻き集めて!」
「おぉ、伊織!和人! やっとこっちで飲む気になったか!」
「全く待ちかねたぞ!」
最後の防壁であるパンツを脱ぎ捨て椅子の上に立ち上がる和人と伊織。その手にはウーロン茶でさえ薄く感じるアルコール…いつも通りスピリタスが握られている。
「よっしゃァァァァァ!!!騒げぇ!騒げぇ!!」
スピリタスもウーロン茶も、ジョッキに注がれたモノを騒ぎながら全力で飲み干していくPaB男性陣。 これではまだ千紗と乙矢くんのいい雰囲気は崩せないだろう…!
「耕平! それを伊織に!」
「任せろっ!! 俺の歌を聴けぇぇぇぇ!!」
ギターをかき鳴らしながら騒いでる様は本当に見苦しく、千紗と乙矢くんには申し訳ないが甘い雰囲気なんてぶち壊せるだろう。
「伊織、ちょっと!」
「え? いや俺は…」
千紗に引き摺り出されていった伊織をなんだなんだと男性陣が見送る中、乙矢くんがおずおずと和人の元へ近付いてきた。ひとまず雰囲気は壊せたようでよかった。
「桐ヶ谷さん。北原さんは?」
「千紗が用事あるみたいで連れてったよ」
「そうなんですか。 皆さんは普段からこういう飲み会を…?」
「あぁ、うん…」
回数をこなせばこなすほど記憶がぶっ飛ぶことが無くなった気がするのだが最近に至っては日が昇るまで飲んでることがある。
人は成長する。人の可能性は無限大だな。
「そう言えば千紗と何か話し込んでたのか? だいぶ戻ってくるのが遅かったけど」
「あ、いえ…大したことではないんですけど。 桐ヶ谷さんは北原さんといつも一緒に居ますよね」
「そうだな気がついたら一緒に居るな」
「皆さん楽しそうで羨ましいです。 やっぱり素敵ですよね…北原さん」
…………………………は?
「…え、いや? ん??」
言っている言葉の内容が理解出来なく、和人が思考の海に溺れていると背後から思いっきり突き飛ばされて店内の床をゴロゴロと転がる。
下手人は桜子だ。
「尚海くん、お刺身あるよ? あっちで食べよ〜」
「あ、はいっ! ありがとうございます桜子さん」
くっ、まぁ毒島様の雰囲気破壊オーダーはこなしたし暫くは平和に飲めるだろ。
「キー坊、いつもこんななのカ?」
「もっと酷いぞ」
もっとカー…と言いながらもう顔を赤らめることもなく、恥ずかしがることもなく素っ裸の和人を見つめる目は(あぁ、可哀想に。これから出荷されるのね)という目をしていた。
「楽しそうにしてるのはオイラも嬉しいけどナ。 …と、なんか北原くんが突撃してくるゾ?」
外を指さす彼女に釣られて視線を向けると千紗の静止を振り切りながら伊織は全力でアルゴと俺の所へ駆け寄ってきて…
「和人、おっぱいは好きか」
「
「キー坊最低」
「はっ!?」
ハメられた!? くっ、伊織のヤツめ…なんて巧みな話術なんだ。
「ゴホン…!! それで、唐突になんなんだ伊織」
「千紗にさっき引き摺られていっただろ? 急にアイツがおっぱいが好きなの?って聞いてきたんだよ」
千紗は酔っ払っているようだな。
「どう答えるのが正解だ!?」
「
「そんなこと言ったら最低っ!って言われて蔑まれるだろ、今のお前のように」
確かに今、俺はアルゴに蔑んだ視線を受けているが…伊織が千紗にそういう目で見られるのは常時だろう。
「肯定しつつ否定する最適な回答を探せ」
「………!! 千紗!」
意を決したように顔を上げて立ち上がり、後を追ってきた千紗を迎え撃つ伊織。
そんな彼が口にした言葉は確かに肯定しつつ否定するような回答だった。
「右側の…おっぱいだけ………好きだ!」
どういう事なんだろう。
「訳のわからない事ばかり!」
「それはこっちのセリフだ!?」
「もういい、栞ちゃんに聴くから!」
「待て待て待て待て待て!!!!!」
千紗も相当テンパっている様子でなりふり構ってられないといった姿を見ると血は繋がってなくとも伊織の親戚なんだなぁ…と思った。 突飛な行動がそっくり。
「桐ヶ谷、再集合!」
また毒島様の召集がかかった…はぁ…向かう前にアルゴに1つ、お願いをしておこう。
§
翌々日ぐらいの夜。
毒島様、乙矢くん悩殺(笑)会議を開く為に伊織がその道のプロに声をかけ、とあるバーに集結していた。
その1!
その2!
その3!
その4!
「どうだ!」
「解散してもらっていいで「うぉい!? まだ話すらしてないだろ!?」
呼び出された和人を含む4名はなんで呼ばれたのかは聞いておらず、解散してと言われてキョトンとしている。
帰っていいなら帰りたいのが和人の本音だ。
「今日はどうしたんだ?」
「伊織に呼び出されてな」
「だいたい読めた…」
「大事な話があると聞いて来たのだが」
毒島様が居るってことは乙矢くん絡みで伊織が大見得きったのだろう。
グラスに入った氷を眺めながら傾け味わうように少しずつ飲んでいく…なんかこうやってゆっくり飲むのは珍しいな…いつもすぐに味なんて分からなくなるし。
「役立ったら
「はン! 上等じゃない。使えなかったらアンタがイッキね」
「今に見てろ…ということで寿先輩、時田先輩! 異性に求めることってなんですか?」
「異性に求めることか…」
「うーーん……」
「「異性関係はさっぱり分からん」」
「ストレート? それともロック?」
「まだ結論は早い!!」
案の定、というかその手の話には疎い先輩たちは役立たず、毒島様はグラスにテキーラを注ごうとするも伊織は慌てて制止する。
「こ、耕平!」
「いいだろう…俺の好みは、年は中学生から高校生!」
コトッ… (なみなみ注がれたテキーラストレート)
「俺の事を【お兄ちゃん】と慕い!」
コトッ…
「副業が魔法少女であること!」
コトッ…
「お前もう帰ってくれないか!? か、和人…何かあるか!?」
「異性に求めること…やっぱり安心感とかじゃないか? 付き合うとなったら一緒に過ごす時間は増えるし」
「安心感ね。私って包容力あるし問題なさそうね」
え、どこが?と言ったらしばかれそうなので口を紡ぐ和人。
「それだけじゃ役立たないわ。 アンタなんかに彼女が居るのが不思議で仕方ないけどどんなお付き合いをしたの」
「一緒に暮らしたな」
コトッ…
コトッ…(和人の前にも置かれた音)
「いや、待てなんで俺まで!?」
「夢から覚まさせてやるためよ」
「ほんと役に立たねぇなお前!?」
畜生!! と伊織と二人して一気にグラスを空にして口を抑える。 如何に普段から強いのを飲んでようとイッキはまた違うんだよなぁ…
「うぷっ……今に見てろよ桜子さんよぉ……」
「しかし和人…見ての通り俺たちじゃ役に立たねぇぞ…!」
「なに、心配するな…手は打ってある…!」
カランコロンとベルが鳴る。つまるところ自分たち以外の新たな客が来たということなのだがそれは和人が呼んでおいた彼女の登場である。
「待たせたなキー坊。 報酬はいちばん高いお酒でいいヨ」
「悪いな帆坂。 という訳で秘密兵器情報屋の投入だ」
一際悪い顔をした和人は空のピッチャーをいくつか用意して伊織とテキーラを構える。
「乙矢くんの好みのタイプは豪快に飲食する人、海から上がって何気なくギターを弾ける人…なーんて結構具体的な好みが上がってたヨ。 要するに自分とは逆のタイプが気になるみたいだナ」
「え゛っ!?」
「初めて潜った海はパラオ。そこからダイビングに魅せられて今は高校の部活の部長。 人望も厚く、同じ学校内でも女子生徒に人気で告白やラブレターも後を絶たないとカ」
次々と現場に流れる乙矢くん情報に桜子はダラダラと汗を流している。
「参考になったカ?」
「え、いやえーと……」
だばだばだばー…とピッチャーにテキーラを注いでいく伊織と和人に抱きつきながら必死に制止するがやられたらやり返す倍返しだ!とばかりに止まらない。
「そこまで!そこまでね!? 私が弱い女の子だから死んじゃうって…!」
「安心しろ俺たちが立派な漢にしてやるから」
「あぁ、飲めば飲むほど乙矢くん好みの豪快な飲み食いにきっと近づくさ」
「日本語通じてる!?」
ピッチャーを抱えるように持ち涙目になっている桜子を他所に耕平はふと、何かを思い出したかのように呟いた。
「北原、さっき気になったんだが…時田先輩にナニがいると…?」
「あ、俺も気になった」
「彼女だ」
「観音城?」
「ガールフレンド」
「ガンブレイド?」
「恋人」
わっはっはっ! と3人で笑いながら耕平と和人は拳を突き出し伊織の顔をぶん殴る。
殴られた伊織はより勢いをつけた本気の拳を2人の顔に叩き込んだ。
「ね、寝ぼけているのかと…」
「そんな…馬鹿な…」
「ち、因みに何科だ?」
「は? あんたなんで一番に学科を気にして…」
「ヒト科だ」
「Fuckin' shit!!」
「待て耕平! ゴリラも霊長目ヒト科だぞ!!」
「生物分類の話!?」
あの時田先輩だぞ!? 尊敬はしてるし良い人だけどゴリゴリのマッチョで酒が血液で裸族…なのは俺達もだけど…あの時田先輩に人間の彼女!?
「というか耕平君ってそういうの興味無いんじゃないの?」
「確かに俺自身は興味はないが……他人の幸せって反吐が出ないか?」
「わかる」
「一理あるわね」
「ムカつくよな」
耕平の問いかけに伊織、桜子、そして俺と続けて首肯する。 いや、俺は他人の幸せだっていいじゃないか…って昔は思ってたんだけどコイツらと居ると時折思うんだよな。 ムカつくなぁ…って。
4人は頷きあって酒が入ったグラスをぶつけて飲み始める。
アルゴはカウンターで先輩2人と飲みあっている……いや、先日の飲み会でも思ったがアルコールに強すぎないか?
「そういえば毒島様は耕平を耕平君って呼ぶんだな」
「初めて挨拶した時の流れよ。流れ。 なに、もしかして北原と桐ヶ谷も名前で呼ばれたいとか?」
「片腹痛いわ」
「寝言は寝て言え」
「アンタらねぇ!?」
「ふむ、俺は普通に毒島と呼べばいいのか?」
「桜子って呼びなさい。名字が好きじゃないのよ」
「「「毒島」」」
「バーテン……寿さんでしたっけ? コイツらに一番キツいやつを」
「よっしゃー!飲め飲めお前ら!」
「今日は先輩の奢りだ!」
「マジっすかー!!?」
「アルゴもこっち来いよ!」
「はン。オネーサンを酔わせようだなんて10年早いヨ、キー坊!」
そして今日も夜は更けていく…
ぐらんぶるの原作を読んでいる方々はこの先の展開を知っているでしょう。
そう毒島様の告白の結果です。
ですが、二次創作の権限を利用して毒島様はここで告白させません。
その為、今後暫く離脱する彼女の代わりにちょくちょく毒島様が絡んできます。
趣味がゲームでもダイビングでもなく共通項目がない、この作品の和人にとってのある意味初めての友人にしてみたかったので。