ぐらんぶる〜もう1人の少年を添えて〜   作:夢見969

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気がついたら新年度。
ようやく色々と解放されめした
たすてけ


荒野の果てに…待つのはなんだ?

戦況は混沌を極めていた。

生き残った3つのチームが入り乱れての戦場とかしている。

先程まで自らの横にいた仲間が物言わぬ死体となり、身を隠している場所には雨霰の如く弾丸が降り注ぐ。 目まぐるしく変わる戦況に誰が何処に居るかは分からず、ただ分かっていることは目の前の女がヤバいやつという事だ。

 

「いやいや、おねーさん楽しいよ。あのキリトとこうやって殺り合ってるんだから……ねッ!!」

 

猫のように肢体をしならせ飛び上がるピトフーイは散弾をばら撒くように撃ち放つ。 これ以上は不味いと物陰から這いずるように飛び出し回避。

ポンプアクションショットガン故にリロード次一瞬の隙がある。 現実では大した隙では無いだろうがここは仮想の世界、AGIにものを言わせて一気に距離を詰めると彼女は獰猛に笑いリロードをしかけていた《レミントンM870》を投げてきた。

 

「くっ……!」

 

咄嗟のことで判断してしまい光剣を振るって切り払うと彼女の銃はポリゴンとなり爆ぜた。

爆散エフェクトによって一瞬、視界が奪われると同時に悪寒に襲われ首を捻った。

光が過ぎ去る。

 

「ひゅー! 今の避けるなんてさっすが黒の剣士!」

 

「そいつは、どうも……ッ!!」

 

互いに体勢を立て直しながら光剣《ムラマサF9》を軽く振るうとブォン…!! と音を鳴らす。

それは相手の手に握られてるモノと同じ。

 

睨み合いながら飛び込むとピトフーイも獰猛な笑みを浮かべながら同じく飛び込んできた。

身体的リーチはピトフーイにあるものの懐まで入り込んでしまえばこちらが有利。しかし、別の場所でイオ(伊織)やアマゾネスのようなヤツとぶつかり合っているレンはキリト以上に小柄でAGI極振りだ。近づかれればキリトの光剣が届くよりも先に股から脳天にかけて撃ち抜かれてお終い。

何としてもあっちの戦線が崩壊するよりも早くピトフーイを撃破して向こうに合流しなければ勝つのは難しいだろう。

 

「悪いけどレンちゃんはそんな簡単にやられないよぉ? あんな見た目でもSJ覇者だからね」

 

「それなら余計に俺があんたを斬らないとな。イオはバカだから。ららこ(耕平)は……生きてるかも分からないが」

 

光剣同士がぶつかり光を散らしながら戦闘は激化していく。ソードスキルを駆使し剣戟の速度は速く、更に速くギアが上がっていく。

直撃すれば一瞬でHPが全損するのはお互いにだ。

 

「ピトさん!!」

 

「キリト!!」

 

一分経ったのか、それとも十分か。分からないほどの濃厚な攻防をピトフーイとキリトは切り結んでいるとレンとイオが互いに撃ち合いながらもこちらに距離を詰めてきた。

2対2になればバカが居るこっちが圧倒的に不利だ……!

 

「くそ、イオ! 自爆してでもレンを止めろ!!」

 

「俺に死ねと!?」

 

「大丈夫だ、無駄死にじゃない!」

 

「いや、死ぬのはお前だキリト」

 

パァン! と乾いた音が鳴り響くとキリトの脳天に風穴が空き、HPのバーが全損。 その場に死体がひとつ出来上がった。

 

「「「「「「「は?」」」」」」」

 

誰もが声を上げた。

誰もが動きを止めた。

 

「ららこ!? お前何をし」

 

イオが飛び出た瞬間、再びパァン!と音がなり2つ目の死体が出来上がった。

 

「ふっ、バカめ。 大会報酬のららこたんコラボ武器は準優勝だ。 優勝したら意味が無いだろう」

 

「え、いや、ちょっと?」

 

ピトフーイの制止も聞かずにららこは自らの頭部に銃を押し付け引き金を引いた。

 

SJは幕を閉じる…………

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 

「ってな感じになりそうだからSJには出ない」

 

「随分と具体的な想像だ事で……」

 

というか、アイツらと出たら出たで嬉々としてシノンあたりが遠距離狙撃の雨霰が降りそうだし。

 

「ま、無理強いはしないよ。今は今で楽しいようだし」

 

「なんだ、あっさり引き下がるんだな」

 

「此処で会えたのは偶然だしね。 やるとしたらもっと手回しし━━━━」

 

ガサッ!! 木々が揺れ、不気味な声が聴こえてきた。 悲鳴と怒声がミックスされたような音が林の中に響き渡る。

 

「………エルザさん、後ろに」

 

「……なんだろうね」

 

一応、女装はしているとはいえ俺は男だし有名人に怪我をさせる訳にはいかないだろう。と、彼女を背に隠し、音のした方向を睨み付けていると…

 

「和人助けてくれぇ!!」

 

「伊織!?」

 

「ソノ命…置イテ…イケ……」

 

暴走の限界点を超えた千紗がフロアボスに見まごう程の威圧感を撒き散らしながら全力で走ってきた。

 

「伊織、潔く散れ」

 

「クソがァァァ!!」

 

林の中へ走り逃げていく伊織を眺めているといつまで経っても千紗の威圧感が背後から消えない。

 

「え、えーと…千紗さん? 伊織のバカはあっちに逃げたぞ」

 

「………桐ヶ谷クン、セッカクダカラ」

 

「何がせっかくなの!?」

 

このまま居ては殺されると和人も駆け出し林の中へと逃げていくのをエルザは苦笑しながら見送った。

 

「ま、明日のレクリエーションで少しは遊べるしいっか」

 

昔ほどの邪気は恐らくないだろう。

笑いながらテントの方へと戻っていくエルザ。一方逃げた伊織と和人は…崖の下に居たのだった。

 

「お前はバカなのか!?」

 

「お前が最初に下に落ちてたから心配で来てやったんだろう!?」

 

「そりゃどーも! それで携帯は?」

 

「千紗に持ってくる前に追い掛けられたからテントに置きっぱだ」

 

「…まぁ、俺もだが」

 

千紗に追い掛けられた和人は夜目が効かず早々に崖下へと落下。 すぐ近くでそれを見ていた伊織も大慌てで和人を助けようと手を伸ばすも足を滑らせ落下したのだ。

まぁ、伊織の心遣いというか心配してくれたのは嬉しいが。

 

「そもそもなんで追いかけられたんだお前」

 

「スピリタスを取りにテントに戻ったら千紗がこう…脱いでて?」

 

「…まぁ、あいつも酔っ払ってたしな。正常な判断が出来ないんだろう」

 

千紗が裸を見られて乱心か…何時も俺達の裸を見てるのにな…と考えている和人は最早常人の領域に戻れないことに気が付いていない。

 

「北原さん! 桐ヶ谷さん!!」

 

ズザザザザザ…!! と音を鳴らして滑り降りてきたのは乙矢くん。 助けに来てくれたのか…!

 

「ご無事ですか!?」

 

「あぁ、乙矢くんこそ…飛び降りてくるなんて無茶だ。怪我ないか?」

 

「大丈夫です!」

 

「しかし、良かった…俺たち二人とも連絡手段が無くてな。乙矢くんが来てくれたなら安心だ」

 

良かった良かった、と伊織と頷きあっていると乙矢くんは少し申し訳なさそうな顔して目を逸らした。

 

「そ、その………スマホ…忘れてきました」

 

「よし、とりあえず火を起こそう」

 

「ライターはあるしな」

 

「すみません!すみません!! 僕が不甲斐ないばかりに!」

 

元はと言えば俺たちが2人揃って崖下に落ちたのが悪いのでわざわざ助けに来てくれた乙矢くんをどうこういう資格は無いので宥めながら火を起こす。

 

「それにしても乙矢くんはどうして俺たちを?」

 

「あ、摩耶さんが心配そうにしていたので」

 

「いまKAYA様のお名前が聞こえたが!?」

 

バカも増えた。

 

「なんでお前も飛び降りてくるんだよ」

 

「む、何の話だ?」

 

「ダメだ和人。コイツ飛び降りてきたことすら気が付いてない」

 

「何時ものことだろ。 ほら、火がついたぞ」

 

乾燥した木々に火をつければそれを囲うように男メンツは腰を下ろし、伊織と耕平が野生の椎茸や野生のウィスキーを採取してきたのでとりあえず飲むことにした。

椎茸は削った木の棒に刺し焚き火で炙る。

 

「うーん、美味そうだ…」

 

「醤油が欲しくなるな」

 

「そういや乙矢くんの飲み物がないな…」

 

「あ、気にしないでください。僕は大丈夫なのでっ」

 

「水ならありますよ」

 

「あぁ、これはどうも…」

 

ペットボトルを受け取り乙矢くんに渡すとはたと気がついた。

昼間、神崎エルザと一緒に居た男がいつの間にか焚き火の前に座っていた。

 

「いつの間に!?」

 

「いえ、ちょっとした準備をしていたら火の明かりが見えたもので。改めて、阿僧祇豪志です」

 

「桐々谷和人です。 そっちがバカ(耕平)で、こっちはクズ(伊織)です」

 

「準備ってなにを?」

 

「明日のレクリエーション用の準備ですよ。 日中の間に本島に戻って道具を用意して今準備していました」

 

………なんかシレッと凄いことをやってる気がするな。

 

「レクリエーションはなにを?」

 

「それは明日になってのお楽しみです。 まぁ、それほど悪いものじゃありませんよ。 あぁ、それとテントへはそちらの林を抜けて左に曲がると海岸に出るのでそこから戻れます」

 

ガサガサと林を掻き分けて消えていく男の背をなんとも言えない感覚で見送るとバカ2人は酒盛りを再開していた。コイツらは…

 

「おい、俺の分残しておけよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜が開けた! ▼

 

 

 

「ということでレクリエーション! ウォーターファイトっぽいもの!」

 

「ウォーターファイト? ってなんだ」

 

朝飯を千紗と用意していたらやたらテンションが高い女性。篠原美優さんが水鉄砲を構えてやってきた。

 

「この的が書かれているジャケットを着て水鉄砲で撃ち合う簡単な競技っ」

 

「チーム分けは?」

 

「クジで決めるよ〜。あ、こっちのグループの人はこっちの人とだけどね!」

 

なんて準備のいいことか。 ワラワラとテントから出てきたこちらのグループの面々に説明よりも先にクジを差し出して引かせていた。

 

チーム分けの結果。

伊織と千紗。

耕平とカヤさん。

先輩チームに梓さん奈々華さんチーム。

 

向こうは小比類巻さんと篠原さん。

エルザさんと豪志さんがチームらしい。

 

クジに不正でもあるのでは…?

 

因みに毒島と乙矢くんは見学で、俺はと言うと。

 

「1人だけソロっておかしくないか!?」

 

「え〜? キミって元ソロプレイヤーでしょ?」

 

とか、若干適当な理由を言われて森の中へと放り出された。

女性陣はジャケットに水をかければいいのだが男性陣に用意されたのは紙でできたパンツで水で溶けるらしい。 つまりパンツが溶けたら負けというわけだ。

裸からが勝負だろう()()

 

とりあえず水が近くにある場所に陣取るか…

そそくさと移動を始めると早速交戦しているアホたちがいた。

 

「千紗!? 俺は敵じゃないが!?」

 

「敵でしょ」

 

「ふははは!KAYA様! 貴女に勝利を捧げます!!」

 

「ほ、ほどほどにね?」

 

木に縛り付けられた伊織が顔に延々と水をかけられていた。交戦というより拷問だった。

 

「…何してるんだ?」

 

「む、桐ヶ谷! 丁度いい、貴様もここで死んでいけ!」

 

ダメだ会話にならない!

踵を返し逃げようとした瞬間、何かが降ってきて破裂した。

 

パンッ!! と音を立てると共に水がぶちまけられ、この場にいる野郎三人の水着は少し溶け、千紗と摩耶さんのジャケットは赤く染る。

 

「む、仕留められなかった!」

 

「現実でもグレネードなんだ…」

 

篠原さんと小比類巻さん…!

篠原さんがパンパンに水を詰めた風船を次々に放り投げてくる。さながらボマーだ。

憐れ木に縛り付けられた伊織は集中砲水を食らっている。

仕留められないどころか致命傷だった。局部を晒したまま身動きが取れていない。

 

「KAYA様の目を汚すな俗物!」

 

「好きで晒してるんじゃねーよ!?」

 

とりあえず逃げよう…

 

 

 

 

伊織は拷問の末に壮絶な最後を迎え、耕平は摩耶さんを守る為に盾となり散った。ざまあみろ。

 

「やっぱり来たねキリトくん」

 

「エルザさん…いやピトフーイさんって呼ぶべきか?」

 

「ここじゃゲームの中ほど動けないけどねー。その辺はこっちにダーリンも居るし五分って事で…ッ!!」

 

不意打ちの1発は身体を逸らされ躱されてしまった。だが、ほんの少しだけジャケットの的を赤く染めることが出来た。

 

「…あっぶな…やるねぇ不意打ちなんて!」

 

エルザは即座に水鉄砲を構えて放水する。ポンプ式の水鉄砲故に勢いと飛距離は和人の持つものと比べて二倍以上を誇る。

木々を隠れ蓑にしながら距離を詰めようとするが豪志の射撃が上手く寄せ付けない。

 

…と、言うか。

 

「水鉄砲に差があり過ぎじゃないか!? こっちなんて小さい拳銃型だぞ!?」

 

「水鉄砲の性能が全てじゃないでしょ?」

 

「ステータスとかがない現実ですが!?」

 

こんなことになるなら伊織(バカ)からかっぱらってくるべきだった。

まぁそんなこんなで暫くの間、攻めあぐね居ると救世主(先輩達)がやってきた。

 

「お、居た居た」

 

「よーし和人ォ…覚悟はいいか」

 

素っ裸で。

 

「あの、ルール的には失格なのですが」

 

「裸からがスタートだろ?」

 

豪志さんの物言いにも屈しない先輩は流石だ。

じゃなくて…

 

「先輩、因みに先輩の水鉄砲はどこですか?」

 

「持ってるだろう?」

 

「俺には樽にしか見えないんですが」

 

「樽に水を入れてぶち撒ければ水鉄砲だろう」

 

「いやそれは鉄砲じゃぶぼぁぁぁぁぁ!!!?」

 

「寿、次はアッチだ!」

 

「よぉぉし!!!」

 

凄まじい水圧により倒れ伏した和人、そして巻き添えを食らった豪志とエルザの両名はまたしても純粋な勝負する機会を失うのだった。

 

 

因みにレクリエーションの優勝はもちろん先輩チームだった。 裸だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事があったんだけどな?」

『お兄ちゃん、何言ってるの?』

 

夏休みの思い出を語っただけなのに随分な言われようだ。

 

『まぁいいや、お兄ちゃんお盆にはこっち帰って来るんだよね?』

 

「あー、実はだな…」

 

チラりと横を向くと耕平が酒を持って頭を垂れているのだがその酒はスピリタスだ。潰す気だなコイツ…

 

「いや帰るには帰るんだが伊織と千紗も一緒に行くんだ」

 

「お兄様、私は…私は…!!」

 

兄と呼ぶな。

 

『え、そうなの!? それじゃあ部屋の掃除しておかないと。伊織さんとお兄ちゃんは同じ部屋でいいよね。私は千紗さんとか〜』

 

「それと夏休みの後半はパラオで過ごす事になったからパスポートも持ってくよ。それじゃあな」

 

『…ん? え、パラ──ブチッ』

 

そう、パラオ。

伊織達とパラオのダイビングショップで2週間ほどバイトすることとなったのだ。 ある程度話せるサポートが欲しいということで仕方なく…あとアスナにプレゼントを買ってやりたいので割のいいバイトをする為に。

夏はまだまだ、長い。

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