ぐらんぶる〜もう1人の少年を添えて〜   作:夢見969

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なんで2ヶ月も経ってるんですかね前回更新から…
大変申し訳ありません…短めです。


実家に行こう!

「なんで私まで…」

 

「そう言うな。伊織の実家の後は俺の実家に直行の予定だしそっちで合流ってのも味気ないだろ?」

 

鈍行列車に揺られ、ガタンゴトン…と音を聞きながら流れ行く景色を眺め買っておいた駅弁をひと口食べる…うん、なんか旅行って感じがしていいな。

 

「栞のやつ、なんでパスポートを送らないとか言い出したんだ」

 

「1度も実家に帰ってないからでしょ」

 

伊織のあまりなアレに千紗は何を馬鹿なことを、と言い捨てる。

 

「肩でもお揉みしましょう」

 

「まぁまぁ、俺も伊織の実家…旅館だっけか? 行ってみたかったし丁度いい機会だろ」

 

「お飲み物お持ちしました」

 

「桐ヶ谷くんの実家は道場があるんだっけ」

 

「雰囲気のいい店があるからそこに連れて行ってやるよ」

 

「北原様、桐ヶ谷様…お土産はお饅頭で宜しいでしょうか」

 

「「千紗、窓を開けろ。心苦しいが窓からゴミを捨てる」」

 

「棄てられても追いついてやる!!!」

 

カバンに入れていたロープで耕平を簀巻きにし2人して担ぎ上げる。 家庭に不安を持ち込むわけにいかないのでここで処理をしなければ…!

そんな俺達を呆れた様子でこちらを眺める千紗を見て伊織はなにかに気がついたようだ。

 

「…なぁ、千紗。 お前も分類上は妹だよな」

 

「私が今村くんにお兄ちゃんっていうの!?」

 

グリンっと、耕平の首が90°回った。怖いなコイツ。

 

 

IMAMURA EYE

・Igaito Yoi Chichi

・Excellent HIP!!!

・Sister

 

 

耕平が耳打ちをしてきた。なになに…

 

「千紗……残念ながら選考落ちだそうだ」

 

「それはそれで妙に腹ただしいんだけど…」

 

本当に耕平は何様なんだろうか。

 

「耕平は後で捨てるとして俺たちは飲もうぜ和人、千紗」

 

伊織に促されて缶ビールを開け一口煽る。美味い…!

沖縄に行くまであんなに忌避していたのに…どこで俺は道を間違えたんだろうか。

いや、もしかしてこれが大学生の普通ってやつなのだろうか…? 酒を忌避する方が異常…?

チラリ、と横を見ると耕平が伊織のビールにスピリタスを注いでおり殴られていた。 何してるんだアイツ。

 

「桐ヶ谷くんも変わったよね」

 

「待て千紗。それはもちろんいい意味合いで…だよな?」

 

「伊織に似てきた」

 

「屈辱だ! 撤回してくれ千紗! 俺はこんなクズでもなければバカでもないからな!?」

 

「酷い言われようだな俺」

 

「私水買ってくるね。3人とも何かいる?」

 

「「「酒を頼む」」」

 

千紗がゴミを見るような目で伊織と耕平を見ながら席を立って行った。あいつも大変だな。

千紗が去ったのを待ってたのか耕平が珍しく神妙な面持ちで口を開く。

 

「以前聞いたことなんだが…北原と古手川は血が繋がってないんだよな?」

 

「あぁ、それか。 俺の親父が養子でな」

 

「なるほど。それで…その…古手川の母親は亡くなってたりするのだろうか…」

 

そういえばあの家で母親の話を聞いたことは無かったな…

 

「いや、和人と耕平が考えてるようなことは無いぞ。伯母さんは元気だし離婚とかもない。海外で仕事をしてるだけど」

 

「俺はてっきり複雑な事情があるのかと…」

 

「自然と避けていた話題だったもんな」

 

「最も…家庭が円満かって言われると「Verdammt(この野郎)!!」 ん?」

 

車両には俺達以外乗ってなかったのだが突然響く野太い声が聞こえてきた。随分と熱くなっているようなのだが何を言い争っているのか内容は分からない。聞いた限りドイツ語…だろうか。

 

Sie ein magisches Mädchen passt zu ihr(彼女には魔法少女が似合う)!」

 

Sei nicht dumm(バカを言うな)Sie muss einen HAKAMA tragen(絶対羽織袴だ)!」

 

かなり大きな声だ。 仕方ない少し注意してくるか英語でだけれど伝わるだろう。

 

「言ってくるよ」

 

「あぁ言ってこい賢いバカ」

 

「こういう時にしか役に立たんからな桐ヶ谷は」

 

「覚えておけよお前ら」

 

席を立ち上がり声の主の方へ視線をやるとエギルのような体格の男が二人言い争いをしていた。

 

二人ともゴリゴリの肉体にはち切れんばかりの魔法少女のようなフリフリの衣装を身に纏って。1人は魔法のステッキも持っていた。

 

 

「………」

 

「どうしたバカ(和人)

 

「何でもない。俺たちは何にも聞いていない。言及するな戻って来れなくなるぞ」

 

静かにしていれば嵐も過ぎ去る筈だ…

チラリと覗いてしまった伊織も無言に賛同して俺たちは静けさを取り戻すまで祈った。直ぐに先程までの言い争いは聞こえなくなったので伊織と二人でもう一度、先程の外国人達の居た場所を見たのだが…

千紗を相手に外国人二人が膝を着いていた。

 

「和人、男三人旅楽しみだな」

 

「俺が生きている間はパーティーメンバーを見過ごすことは出来ない……出来ないが……っ!」

 

「お前たちどうしたんだ」

 

そうこうしていると千紗が伊織の肩をミシミシと音を立てながら鷲掴み筋肉魔法少女二人に向かって「私の彼氏」宣言をすると見事に攻撃の矛先が全て伊織へと向かった。

これで平和になるな。

 

「話はこの今村耕平が聞く!」

 

「無茶言うな!? 初対面かつ相手は言葉の通じない外国人だぞ!!」

 

ふと、気がついたことがあったので耕平の肩を叩き筋肉の胸元に付いたバッジを指さしてやる和人。

 

ららこたんバッジ

 

無言で肩を組んで小躍りするオタク達に白い目を向けながら読書に戻る千紗。酷い絵面だ。一応ここ電車の中だからな。

意気投合した3人はどうやら伊織を始末する方向で意見が一致したらしい。

 

「待て待て待て!? 和人、和人さん! コイツらに俺に敵意は無いことを伝えてくれないか!?」

 

「あー…うーん…」

 

とりあえずコイツらしい解決方法の為に思い浮かんだことを英語ながらに伝えると意外にも2人は笑顔で答えてくれた。

 

「「Trinken(飲め)」」

 

笑顔で伊織に酒を差し出している外国人2人。

これで解決。

 

「お前なんて伝えたんだよ!?」

 

「こいつはお酒が大好きですって」

 

「やっぱりお前は馬鹿だよクソっ!」

 

コトッ、と和人、耕平の前にもグラスが置かれる。

そして奴らはテーブルに置かれたビールの缶を指差し笑っていた。

何言ってるかは分からないんだが…

 

「「「OK、喧嘩を売られてることはわかった」」」

 

3人揃って一息にショットグラスを傾け、空になったグラスをテーブルに叩きつけた。

 

「何だこの酒…ッ」

 

「ぐっ…!!」

 

「美味いな……」

 

一人だけなんだか違う事を言ってるのは和人である。 大体、普段の伊織と耕平はアルコールの味の違いなんてあまり分からないのだが今回のはかなり癖がある様だ。

それから数分、5人は数杯飲み続けたのだが伊織と耕平は苦戦しており和人は次々に飲み干していっており何なら少し薄いとすら思い始めていた。

 

「ナニしてるノ!!」

 

スパァン!! と音が響くほどの一撃が外国人二人の脳天に叩き落とされた。

 

「スみませン! スみませン! コの二人、ホントにアタマが悪くてっ」

 

二人をノシたのは彼らの連れであろう綺麗な外国人の女性だった。ひたすら謝りながら二人の首根っこを掴んであっという間に隣の車両へと移っていってしまう。

 

「何だったんだいったい…」

 

「分からない。突然声をかけられたから…」

 

「暴走した観光客か」

 

「千紗は美人だしな。ナンパだったのかもしれん」

 

改めて四人で座席に戻ると伊織が苦笑しながら呟いた。

 

「とりあえず俺はさっきの女の人に親近感が湧いたよ」

 

「どうして?」

 

「いやぁ、バカに振り回されてるところとかさ」

 

「あぁ、なるほどな」

 

「それは俺も思った」

 

「私も」

 

あははは、と和やかに4人が笑うが和人はどうしても今のセリフが引っ掛かった。いや和人だけではなく全員が、である。

 

「お前ら、自分が常識人ポジションだと思ってるのか!? 烏滸がましいぞ!?」

 

「それはこっちのセリフなんだけど!?」

 

「俺のセリフだろ!」

 

「バカ三人をまとめてる俺の身にもなれよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい」

 

「ようこそ北原旅館へ」

 

髭を蓄えた男性と和服の似合う女性、それに栞ちゃんが目の前に座っている。思ってたよりも凄い大きさの旅館だった。

 

「お久しぶりです。叔父さん、叔母さん」

 

「久しぶり千紗ちゃん。大きくなったわね」

 

「そちらの二人は伊織の友達かい?」

 

「はい、桐々谷和人です。伊織にはいつも世話かけさせられています」

 

信じられないものを見た目で俺を見つめている千紗。

 

「俺は今村耕平といいまして、栞ちゃんの本当のお兄様です」

 

「オイコラァァォォァァ!!!?? なぜ我が家に不和をもたらす! そして世話をかけさせられているのは俺だ和人ォ!」

 

「そんなつもりは一切ない」

 

「余計タチ悪いわ! そうだ母さん俺のパスポート!」

 

そう言えば里帰りじゃなくてパスポートを取りに来たんだった。すっかり忘れていたな……沖縄行った時もそうなんだがアスナを置いてコイツらと旅行なんてして俺は大丈夫なんだろうか。

 

いや大丈夫じゃないな。確実に。

 

「栞、パスポートは!?」

 

「千紗姉様、今村さん、桐ヶ谷さん温泉にご案内しますね」

 

「「「助かる」」」

 

「あれ、俺の言葉聞こえてる? というか俺の事ちゃんと見えてる?」

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