ふと思ったのですがまさか、まさかとは思いますがコレを読んで「ぐらんぶる」を知った人は居ない…ですよねぇ?
「お、あったあった」
部屋の棚を漁っていると目的のパスポートを見つけた。 留学前に使うことになるとは思ってなかったけどアイツらと行くなら…と見つけたモノをカバンの中へとしまった。
そう、北原旅館を出た俺たちが次に向かったのは俺の実家。 つまるところ桐ヶ谷家である。
「殺風景な部屋だな」
「ムッツリなコイツのことだ。何処かにエロ本隠してるぞ」
「殺風景も何も必要なものは軒並みGrand Blueの方に持ってって生活してるしな。あっちの方が生活感あるだろ」
「…桐ヶ谷くんって部屋で寝たことあったっけ?」
思い返せば伊豆に行ってから与えられた部屋で寝た回数は片手程しかない気がする。
それでも健康的で文化的な最低限の生活はしているはずなので問題は無いだろう。きっと。たぶん。
「お義兄様、
「受験生なのにお前らが居たら集中出来ないと思って図書館に行ってもらった」
「ガッデム…!!!!」
「直葉ちゃんに申し訳ない」
「しかしまぁ…すんなり目的のもの見つけたしどうするんだ? 街でも行くか?」
そもそもパスポートを実家に取りに行くだけの事をスムーズに出来なかったのは伊織の所為であって普通は出来ることなのだが…
「和人オススメの店あるんだろ? 折角だし昼から飲もうぜ」
オススメの店、エギルの店である。
チラリとバカ達に視線を移すと相変わらずの間抜け面をしていた。
「…千紗さん。昼間っから飲みに行っていいでしょうか」
「………まぁ、いいんじゃない? 折角だし」
「「千紗様…!」」
夏休みを経て千紗は随分と可笑しく……、愉快な性格に変質しているように感じたのは和人だけでは無いだろう。
とりあえず床に転がって血の涙を流している耕平を叩き起して久方ぶりに帰ってきた桐ヶ谷家をさっさと後にする。
たかだか三ヶ月離れただけというのに街並みが懐かしく感じるとは…来年から留学をすれば今のように手軽に帰って来れる距離でもなくなってしまう。 アスナが居ればホームシックになることは無いと思うが…。
「明日奈さんには連絡しないの?」
「ん? あー、明日奈は少し用事が…というか京子さん…母親が今連れ回していると思う」
「仲がいい親子なんだな」
「若干俺のせいってのもあるんだけどな…今回のは」
まさか承諾してくれるとは思わなかったし、と付け加える和人にまたバカなことを考えているのか?という視線を隠さなくなってきた三人。
電車を乗り継ぎながら目的の店である「ダイシー・カフェ」に辿り着く。
「おい、
「ん、出直す?」
伊織と千紗の言葉を無視して札が掛かった扉を開けて勝手に中へと入り込んでいく。
「ついに文字も読めなくなったか…」
「桐ヶ谷くんもお酒に脳をやられたんだね」
「妹と娘がいる天罰だ」
好き勝手言い過ぎじゃないか?
「悪いな、今はまだ準備中………キリトか?! 」
「よっ、エギル。相変わらずだな」
「おいおい、来るなら先に連絡よこせよ! クラインの奴も会いたがってたぞ?」
「連絡したらお前が驚かないだろ。…あ、紹介するよ。 俺が今下宿している店の娘の千紗、それとバカ二人だ」
「あ、えっと…古手川千紗です」
「どうも、北原伊織です。こいつはバカです」
「どうも、今村耕平です。さっきのはバカです」
紹介をしたら後ろで二人が殴り合いを始めたのでスルーしておくのだが、エギルがそれはもう見た事がないほどの間抜け顔で伊織達を見つめている。
「キリトの友達…?」
「毎回思うがお前はどんだけ友達が居ないんだ?」
「孤高のソロプレイヤー(笑)」
「桐ヶ谷くん……」
「千紗、哀れみの目で見ないでくれ…伊織…とりあえず表に出ようか? 今日こそお前をぶちのめす」
ギリィ!と歯を食いしばりながら拳を構える和人にエギルは豪快に笑い、とりあえず何か注文しろ奢りだ!と手招きしてくれた。
和人と伊織は胸ぐらを掴み合いながらも、カウンター席に腰をかけ続くように千紗と耕平も腰を据えた。
「しかしまぁ、キリトに友達とはなぁ…」
「エギル、お前いつまでそれ言うんだよ…俺だってまだ年頃の男なんだぞ? 友達の一人、二人ぐらい…」
「今まで居なかったろ」
「……うぅん…」
学友、に当たる存在は居たとは思うのだが伊織や耕平ほどに付き合いがあったか…と言われればそれはない。 たかだか三ヶ月の付き合いの方が数年の付き合いよりも濃密過ぎる。
「改めて…アンドリュー・ギルバート・ミルズです。この店のマスターをやってる。キリトとは古い付き合いでな。伊織と耕平…って言ったか? キリト…あー、和人は普段どんな感じなんだそっちで」
「「
「……?」
「安心しろエギル。 そいつらは今自己紹介し直しただけだ」
「貴様、言うにことかいて俺たちがクズだと!?」
「そうだ訂正しろ! クズなのは北原だけだと!」
「まあまあ…俺の聞き方が悪かったみたいだな。 お前さんたち注文はどうする?」
相も変わらず和人を挟んで取っ組み合いを始めそうになった二人を仲裁する姿は流石大人、と言ったところか。改めてエギルの事を見直した和人である。
さて、注文は? と聞かれ答えるのは容易い。 しかしそれは普通の居酒屋やPaB関係者がいる場合であり、目の前のエギルは和人の本当の年齢を知っている。
だからこそ、この注文は慎重にすべきだ。
「「「「ビールで」」」」
和人、千紗、伊織に耕平は一部のズレもなくビールを注文した。やっぱり飲み始めはこれだろう。慎重とはなんだったのか。
「あー、キリト? お前って確か「大学生だ。一応」 いや、な? キリ「ビールで」 はぁ……まぁいいか」
意外と物わかり…というかノリがいいエギルなので苦笑しながらジョッキにビールを注ぎ持ってきた。なんならエギル自身もジョッキを持っている。
「店はどうするんだよ」
「臨時休業…ってことで。そんじゃ、再会とキリトの友達に乾杯っ!」
「「「「乾杯っ」」」」
5人がジョッキをぶつけ合い、耳に心地の良い音を立てる。 そのまま口元へ運び喉を鳴らしながら半分ほどまで中身を流し込んでいく。
美味い……っ!
「いい飲みっぷりじゃねぇか。だいぶ飲んでたのか?」
「まぁな…」
「これは飲むうちに入るんだろうか」
「さてな…」
遠い目をしながらぐびぐびと残り半分を一気に飲み干し乾杯から一分待たずに二杯目を要求した。
「そういやキリトやお前さんたちは何かのサークルに入ってるんだってな。リズ達がこの前愚痴に来ていたぞ」
「アイツら……俺たちはダイビングサークルなんだよ。 沖縄の海にも行ったんだぞ?」
「毎回レンタルも厳しいから俺と和人はバイトして道具一式買おうと思ってるんですよ」
「俺もそろそろ考えないとな…」
「4人で都内のダイビングショップ見に行こうか?」
レギュレータやらダイコンやら…値段はピンキリなもののやはり長く使いたいし、そこそこいいモノが欲しいと思ってしまうのはハマったものの性であろう。
ある程度買い揃えておけば渡米した後でも使えるだろうし。
「ダイビングか。昔一度だけしたな」
「そうなんですか?」
「あぁ、パラオでな」
「「「「パラオ…!!!!」」」」
千紗の問に対しての答えに俺たちはつい声を上げてジョッキを掲げていた。
「な、なんだお前ら?」
「いや明後日から俺たちパラオにバイトしに行くんだよ」
「明後日だっけ?」
「たしか?」
「お前さんたち、なんというか…随分と詰め込んだ生活してるんだな…」
確かに余裕はあるけれど余裕が無い生活をしている気はしていた4人は目を逸らしながら二杯目のビールをカラにした。
ペースとしては早い気もするがビールなんてアルコールが無いに等しいものだろう、と考え和人が動く。
「なぁエギル、ウォッカとウィスキーないか?」
「あるっちゃあるが…そんなものどうするつもりだ?」
「見せてやるよ…PaB式の飲み方ってやつを…」
日も暮れ始めた頃合、仕事を終え端末に入っていたメッセージを見た男 クラインこと壺井遼太郎は大急ぎで馴染みの店であるダイシー・カフェへと向かっていた。
キリトが店に来ている。そんなメッセージが入ったのは今よりも5時間ほど前である為、今更行ったところで会えないかもしれないのだがそれでも彼は走り、ようやく店の入口が見えた。
見えたのだが入口の看板は【CLOSE】のままだ。 もう閉めた…と考えるには早くゆっくりと近づくと普段からは考えられない賑やかさが中から聞こえて来る。
貸切でもしてるのだろうか?
少しだけ、扉を開いて中を覗くと………
「「「「「アウトォ! セーフゥ! よよいのぉよいぃ!!!」」」」」
リズベットがキリトとよく知らない男を二人裸にひん剥いて高らかに笑っていた。
「アッハッハッハッハッ!!!!」
「まだだ!まだ俺たちは負けてねぇ!」
「いや北原さん裸じゃないですかっ!?」
「ここからが真の戦いだ!」
「今村さんも素っ裸じゃない…」
「いくぞ伊織、耕平!」
「桐ヶ谷くん、彼女さんがこれ見たら破局ものだよ?」
シリカにシノン、知らない女の子が呆れ顔で野郎三人を眺めていた。いったい何が起きているんだ…? とクラインが視線をさ迷わせればエギルが笑顔で手招きをしている。
「お、おいエギル。ありゃキリトか?」
「あぁ、アレはキリト…ってか桐々谷和人だ。あの三人は友人の北原伊織、今村耕平、それと古手川千紗」
チラりと和人達の方に視線をやれば…
「ふっ、珪子ちゃん。俺が裸だって?」
「北原さんそんな堂々と立たないでくださいよ!? どうみたって裸じゃないですか!!」
「これを見るんだな…!!」
「そ、それは…ヘアピン!? ………それは服に入らないですからね!?」
「北原、かかって来なさい!!」
「里香さんまでぇ…!!」
あれがキリトの友人………?
「おぉ、クライン。久しぶりだな」
「キリト、お前帰ってくるな「悪かったって。驚いたろ?」 そりゃ驚いたけどよ…」
今の現状に。というかなんでお前さんも裸なんだよ。
「ほら、走ってきて疲れたろ。ウーロン茶でも飲めよクライン」
「お、すまねぇなキリト!」
話しかけて来た感じは伊豆に行く前と…てかALOで会った時と何ら変わりはないんだけどなぁ…と首を傾げながら渡されたウーロン茶を呷る………
「ゲホッ!? ゴホッゴホッ!? な、なんだこれ…っキツい…っ」
「それキリト達が教えてくれた新メニューだ。PaB式ウーロン茶ってやつだな」
「ウーロン茶じゃねぇだろこれ!」
「ウォッカ9にウィスキー1を入れた飲み物だな。色はウーロン茶だろ?」
「お前さんは色で飲み物を判断してるのか…?」
よく見ればキリトも同じ飲み物を手にしており本当のお茶のようにガブガブと飲み干しているのでクライン的に彼の将来が心配になった。
「アンタたち何時まで裸で居るのよ…」
「服に心を縛られる…実に虚しい事じゃないか?」
「今すぐ人類に謝りなさい」
金髪の青年はシノン(女子高生)の横に腰を据えて酒を飲んでいた。 警察に見られたら即現行犯で取っ捕まる光景だった。
「あの金髪がALOで一緒にクエストをしたららこだ」
「マジかよ…」
キリトに友達が出来たことを喜べばいいのか、それともこんな状況に困惑すればいいのか…
「クライン」
「…んだよ」
「乾杯」
「はぁ…ったく、乾杯!!」
とりあえず、今を楽しめばいいのか。
その後、アルゴが店に水樹カヤを連れ込んできたり菊岡誠二郎がやって来たりと騒がしい事になったのだが筆舌に尽くし難い内容のため割愛しよう。
某所にて一人の女性は自ら打ち込んだスケジュールを眺め、嬉しそうに微笑んだ。
「キリトくんとデートかぁ…ふふっ」
次回
閃光参戦。