期間が空いて申し訳ございません。
自分で一話から読み直したのですがキリトくん、なんかめっちゃはっちゃけてませんか?
それとアスナを出したことによりキリトたちが抑制出来るかな、と思ったのですが僕の方が抑制されて上手く書けませんでした。許してクレメンス
パラオにやって来て十日目の昼ちょっと前。
アスナと俺が店前から掃除をしていた時のことである。
「と、いうわけでケバ子と北原の行動を手伝ってやろうと思う」
「どういう訳か分からないが何となく察せたから了承しよう。アイツの幸せは反吐が出るが愛菜に罪は無い」
「え、えっ! あの二人ってそうなの? あとキリトくん、今自然と伊織くんの幸せについて凄いこと言わなかった?」
何を言うアスナ。伊織の幸せに関してはみんな共通の思いだろうに。
「だけど分かりやすく二人っきりにしたら、それはそれで勘繰られてしまうんじゃないか?」
「あぁ、それでさっき俺はケバ子にどつかれた。 折角人が二時間ほど戻らない!と念を押したというのに」
「それはどつかれるに決まってるだろ。バカか」
耕平はそういう所の気遣いが出来ないんだよなぁ…いやそもそも気遣いとかそういうものが決定的に欠けてる人間だから今更か?
「では自然にアイツの好みをケバ子に誘導してみるか」
「好みを誘導…? 既に嫌な予感しかしないんだが…大丈夫なのか?」
「あぁ、昼の時点でお前と北原の好みは理解したからな。 少しずつ怪しまれないようにケバ子のポイントを会話に盛り込む」
…そんな器用なことがこいつに出来るのだろうか。
「耕平くん、キリトくんの好みはなんて言ってたのかな」
「柔らかさと言ってました」
「キリトくん?」
「ま、待てアスナ! 違うぞ、違うからな!?」
太ってないもん…と呟くアスナに必死に何かを言おうとしている和人の姿は非常に滑稽で耕平のスマホにその風景が収められた。
後に野島その他に晒され合コンを組む羽目になるのだがここで耕平を処分しておくべきだった。
「因みに伊織くんの好みはどんな子だったのかな?」
アスナの純粋な疑問に耕平と和人はビクッと震え、一瞬、互いの瞳が交差した。
そしてその一瞬を見逃す閃光様では無い。 笑顔が怖いです。
「えっと…四六時中一緒に居て、好きなものを持っていて、新しい世界を見せてくれるような人…らしくてな?」
「あぁ、不本意な事にそれに該当する人間が二人ほど居るんだ」
「え、そうなの!?」
「「3つの条件が合わさるのはコイツなんだ!」」
またしても互いに指さし合う和人と耕平にアスナは呆けた顔をした。
「桐ヶ谷は女装が似合うだろう! お前だ!」
「耕平だってめちゃくちゃ美形だし可愛い声出せるだろ!」
「ごめんね二人共! 多分前提条件が間違ってると思うよ!?」
「「本当か!?」」
「異性で、って話だよきっと!」
「そう言えば
「あぁ、てっきり宇宙人の異星かと」
そこに気が付くとは流石アスナだな…と感心していると伊織と愛菜が休憩室から顔を覗かせていた。
「お前ら何やってるんだ…?」
「明日奈さん、お昼ご飯食べましょっ」
「あ、うん! キリトくん、耕平くん行こ?」
話は聞かれていなかったみたいだな…とりあえず助かったと胸を撫で下ろし休憩室に用意された弁当を開ける。昼飯も仮で泊まれる寮もあってバイトとしてはかなり良いところだよな…よく分からない機械に寝かせられて帰りに記憶を消されてたりするより遥かに。
「そうだ北原。恋占いは好きか?」
「「「ぶふぅ!?」」」
「なんだ気味が悪い。それに三人が何故か吹き出したぞ大丈夫か」
「そうか興味あるか。純情シャイボーイめ、恥ずかしがることは無い」
「話を聞けよ。そっちの3人も無視かよ」
飲んでいたお茶が器官に入ってそれどころじゃない…!
なんて、なんて強引なんだこの
「さぁ、北原。トランプを一枚引くといい…ついでだ桐ヶ谷も引け」
「なんだ和人もやるのか? まぁいいけどよ」
「ゲホッゲホッ…俺もかよ…まったく…」
引いたカードはハートのA。ららこたんがカードの真ん中でハートを作ってる。何だこのトランプ。
「引いたカードは?」
「ハートのA」
「ダイヤの3」
「全てが見えた」
「とんでもないな」
「一枚でわかるのかよ。伊豆の父とかになれるぞ」
美形がキメ顔を作ってるので余計いい顔になっているのが腹ただしいが耕平だから仕方ない。
「先ずは桐ヶ谷だ。 ハートのAを引いた貴様は家庭的で人当たりがよくなんでも出来る女性がお似合いだと出ている」
「アスナか?」
「もう…キリトくんったら…」
「けっ…バカップルが…んで俺はなんなんだよ」
「そう慌てるな北原。 お前は化粧をするとドケバい田舎出身の恋愛脳女と出ている」
名前が出てないのに誰かわかる文書だな。
というか怪しさ満点だ。
「そんな色物が…!?」
「ガーン!!?」
色物扱いされた愛菜は天を仰ぎ涙を流している。 伊織は未だになんのことだと首を捻りアホ面で弁当を頬張っており何とも言えぬ空気が場を支配している。
アスナが慌てたように話題を振った。
「そ、そういえば千紗ちゃんは!? どこ行ったんだろうね!?」
「「「「あー………」」」」
千紗はというと、実は絶賛不機嫌だったりする。
理由はオーナー…つまり千紗母との折り合いの悪さ。 イントラになりたい千紗とそんな娘の不器用さを知っていて無理だと言う母が平和的に話す事が出来るはずもなく意を決して話しかけたものの無視されたようで…。
「桐ヶ谷くん、こっち手伝ってくれる?」ニコーッ
不機嫌になった千紗は今までに無いぐらい美しい笑顔を浮かべている。
「「「うぷっ」」」
「あんたら吐くな!!」
「だ、って…あんな満面の笑みの千紗を見た事あるか!?」
「伊織を処分しようとした時…?」
「完璧に殺戮者じゃねぇか!!」
あの笑顔からはアインクラッド61層、セルムブルクにあったアスナの当時の私邸で見た彼女の笑みに似通った何かを感じて冷や汗が止まらない。
「キリトくん、お願いできる?」
「いやちょっとあの千紗の相手は……」
アスナにも自分の命の惜しさを知って欲しい。
「キリトくん」
「はい」
気がついたら返事をしていた。してしまった手前、腰を上げて千紗に着いて行く。伊織と耕平はスマホで墓の値段を調べていた。縁起でもない…っ!
「…ごめん」
「へ?」
ウエットスーツ洗いを手伝っていると突然謝られた。その表情は満面の笑みではなく沈痛な面持ちに変わっている。
「わかってる。私が不器用だなんて…」
「あぁ…なるほど…確かに千紗は不器用だもんな。 問題事の解決手段が伊織と俺の始末か処分だし」
ぅ゛っ…!! と呻く千紗を見て笑ってしまった。
やはりというか千紗は真面目が過ぎるのだ。少しぐらい伊織の適当さとかを見習った方がいいし、考えるのを放棄しても誰も咎めないだろう。
「そう考えると千紗に足りないのはPaB精神だよな」
「…なにそれ」
「おい、人が珍しく真面目に話してるのにその反応はなんだよ」
「いやPaB精神って…」
「つか、娘の千紗に言うのは違うとは思うんだが…あのオーナー、人の話を無視するとは思えないんだよな」
「それは桐ヶ谷くん達はお手伝いだから…」
「バイトと娘の扱いを別々に出来るほど器用でもないと思うんだけどな。娘の千紗と同じであの人も不器用なんじゃないか」
まぁ、その辺は後で伊織が何とかしてくれる気がするんだけれどな。
今は少しでも千紗の怒りをおさめさせあの、人を殺せる笑顔を消さなくてはいけないので問題は伊織に丸投げをしてご機嫌を取っていく。
「ほら、明日は一応俺たちみんな休み貰ってるだろ? みんなでダイビング行こうぜ」
「…最近思うんだけれど桐ヶ谷くんも私の事、海で何とかなる軽い女って思ってない?」
「ソンナコトナイ」
「…そう」
「と、言うことなので伊織。任せた」
「なぜ俺が!?」
「貴様は親族だろう? これ程適任はいない」
「千紗の為でしょっ!」
「みんな伊織くんに対して強気過ぎじゃないかな…?」
「明日奈さんだけが俺の味方だ…ッ」
おいおいと泣いている伊織にとりあえずビールを渡して飲ませる。 酔わせて許諾を取ってしまえば後はどうでもいい。
千紗はチーフとマキさんとご飯に行っているので今日を逃したらこの話は最終日まで出来ないだろうし、さっさと解決するに限る。
「…まぁ、折角パラオに来たのに千紗があの状態なのはいただけないしな…」
「明日はみんな休み貰ってるしダイビング行こうぜ。 そして伊織はこっそりとオーナーと話してみる」
「俺も行きたいんですけど!?」
そして翌日。
今日も今日とて海の中は最高に綺麗だった。
マキさんがイントラとして色んなスポットを周り、チンアナゴやニシキアナゴが見れたり、こちら特有の魚達も見ることが出来た。
全員で集合写真を撮ろうとした時にはなんと、マンタの番いが頭上を泳いでいった。 こんな経験、本当にダイビングをやっていなければ味わうことが出来なかったことだ。
伊織達には…感謝しかない。 絶対に口には出さないが。
千紗も、水中では目を輝かせていた。
少しは気分転換になった…か?
「すっっっっげぇぇ!!!」
「ほんと!マンタの番いまで見れるとは思ってなかった!」
「しかし同時に悔しいな。これならばアドバイスをやはり取っておくべきだったな…」
「リベンジしようぜ。 そん時は和人、お前もアメリカから飛んで来い」
「俺もかよ! もちろん行くけどさ」
「ダイビングって…最高だなぁ!」
興奮気味な面々はその後日々の疲れからか船の上で熟睡。 寝相だろうが伊織と耕平、和人は互いに互いを殴りあっている。
そんな彼らを見て千紗は苦笑し一枚、また一枚と写真に収めた。 バイトしている最中も幾つか撮っていたのでいつの間にかカメラの中は彼らとの思い出でいっぱいになっている。
(──お母さんは…なんで私には無理だって何度も言うのだろう)
大学に入る前もそうだったが今回の母は頑なだった。 間違ったことは…言ってないのだと思う。 最初の接客の時も、海に潜った時も、男のお客さんの…アレをベルトで挟んでしまった時も、母は向いていないと言いながら一応口下手なりにアドバイスはくれていた。
それでも尚、あの人は…
「お母さんのこと、気になるの?」
「明日奈さん…」
「私もね。前はお母さんと上手くいってない時があったんだ。今だって…少しぎこちないけど」
「明日奈さんのような人でも…ですか」
「私はそんなに大した人じゃないよ? …まぁ、私のお母さんは私が大好きな世界を全く知らなくて…それで互いに反発しあっちゃった…って感じだけどね。 千紗ちゃんのお母さんはさ、千紗ちゃんよりも長く同じ世界を見てるんじゃないかな」
「同じ世界を長く…」
あの雄大な海をもっと、もっと…知っているんだ。
だから、私は…