ぐらんぶる〜もう1人の少年を添えて〜   作:夢見969

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皆様、こんな拙い作品にありがとうございます…っ
あと終盤に出てくる女の子は次回も出る予定なのでそこそこ出番はあるかと…?


オトーリ

「キリト。ちょっとキリト起きてってば」

 

誰かが俺を呼んでいる。 重い瞼を開けば金髪でトレジャーハンター風の装備を身につけた女性プレイヤーがこちらの肩を揺すっており、これで起きなければ叩くしかないという雰囲気が彼女から感じられたので飛び起きた。

 

「ご、ごめんごめん。日差しが気持ちよくてさ」

 

「全くキリトはいつも変わらないね」

 

苦笑する彼女を他所にキリトは辺りを見渡すとそこは公園のような場所でアインクラッドのはじまりの街郊外に似ている。

はじまりの街自体、当時はあまり長居した場所では無かったので詳しくはないがこんな様な場所もあった気がする。

 

「あ、キリトくん! 私もばっちり二刀流のスキルが出たよ」

 

「え? そりゃ凄いなっおめでとう○○○!」

 

赤毛を腰まで伸ばした女性が笑顔で駆け寄ってくる。

あれ、SAO時代にこんな知り合いが居たか…?

考えようとするも、いつの間にかキリトの横には黒髪の少女がちょこんと座っていた。

 

「どうかしましたかキリト?」

 

「いや、腹が減ったなってさ」

 

「キミってば寝てるか戦っているか食べているかだよね〜」

 

ボクもだけど!と勢いよく身を乗り出したユウキを見るとついつい笑ってしまう。

 

「キリトくん、一緒にご飯食べよっ」

 

「あぁ、アスナ。今行くよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、お前ら急に遠い目をしてどうしたんだ」

 

「そりゃ現実逃避もしますよ!」

 

PaB(オレたち)なりのオトーリってなんですか!? つーか、和人お前も正気に戻れ!!」

 

「はっ!? 俺は何を!?」

 

伊織に引っぱたかれた頬を抑えながら身に覚えの無い景色を見ていた事に愕然とする。ついに酒で幻覚すら見るようになったのか…!

 

「まぁそう焦るな。今回はみんなで同じ(かめ)の酒を飲もうと思う」

 

「折角の合宿だからな」

 

なるほど同じ釜の飯を食う…みたいなものか。

ここにはアルコールが嫌いなメンツは居ないし実にPaBらしくていいとは思う。問題は中身だ。

 

「ところが酒の好みが全員一致することは大変難しい」

 

「そりゃ確かに…」

 

「ですね」

 

酒にはジャンルや銘柄、炭酸の有無に度数の違いと千差万別。

かく言う俺は少し強めのお酒が好きだし甘いのも好ましく思う。 伊織達もどちらかと言えば強い酒ばかり飲んでいる。

因みにビールは全員一致で好きな物になる。

 

「ここで皆の感想が異なるのは寂しいだろう?」

 

「そうですね、折角の合宿の思い出の酒ですし」

 

「だから俺たちは考えたんだ」

 

 

「「ならば公平になるよう全員がキツイ酒にしたらいい と」」

 

 

「「「公平の取り方おかしくないですか!?」」」

 

先輩がどデカい(かめ)をドン!! と前に置き、皆でこの瓶に各々酒を注いでいくらしい。

俺たちなりのオトーリ…生きて帰って来れるのか?

 

 

「まずは俺たちが少し真面目な口上を述べさせてもらおう…」

 

「出身地がバラバラ俺たちが同じ時、同じ場所に集い」

 

「同じ船に乗り同じ瓶の酒を飲める事を嬉しく思う」

 

「この場にいる皆が同好の士であり仲間だ」

 

「いずれその道が別れようとも共に過ごした時間はなくならない」

 

時田先輩…寿先輩…っ

目元がついつい潤んでしまう。 ずるい先輩達だな…

 

「どうか皆の人生に置ける青春の思い出として!」

 

「今日という日を忘れないで欲しい!」

 

トクトクトク…と二人は酒瓶を開けて(かめ)に注いでいく。 あの二人はPaBの皆を、皆で過ごす日々をそう感じとっていたのか…

不意に二人が持っている酒瓶が視界に入る。

 

スピリタス(96%)

 

「アホかアンタら!?」

 

「青春の思い出どころか記憶が混濁するわ!?」

 

絶叫する和人達を無視して横手先輩も口上を述べ、スピリタスを注ぎ込んでいく。

止めれるはずもなく少しずつ増えていく瓶に戦々恐々としていると東先輩が前に出てきた。

 

「化学ばかりやってきた俺は気の利いた事を出来ないが…せめて俺ができることをやろうと思う」

 

東先輩が手に持った瓶は酒瓶なんかでは無く。

 

エチルアルコール(消毒用)

 

「「「入れるなぁぁぁぁああ!!!」」」

 

なんてもん入れようとしてんだあの人!? 気の利いた事が出来ないってレベルじゃないぞ!?

 

「冗談だよ。こんなもん入れたら度数が下がっちまうだろ?」

 

「消毒用アルコールよりも度数がキツイだと!?」

 

「飲み物じゃねぇ!」

 

「伊織、耕平…かくなる上は水で薄めるしかない」

 

3人は固い握手をし自らの生存を掛けた戦いに挑む。 奇しくも普段互いを潰し合う3人が同じ目的のために手を取りあった最初で最後の共同戦線となる。

 

「ほら、一年共もやれよっ」

 

「あ、はーい」

 

先ずは伊織が出た。 あれを飲んだら俺達は人としての尊厳を失う!(既に失っている)

伊織が無防備に瓶へ近づくと揮発したアルコールが目に染み痛みにのたうち回った。

ダメだ伊織が殺られた。こうなったら俺たちでやるしかない…! と耕平にアイコンタクトを送ると静かに頷きまるで酒を入れるかのように水のペットボトルを開け瓶に近づいた。

 

「おいコラ和人ぉ…耕平ぇ…」

 

「ふざけた真似してんじゃねぇぞ」

 

「そこまでブチギレる事ですか!?」

 

せめてこれで許してくださいと3人で泡盛(60度)を掲げると渋々認めてもらうことが出来た。 これでギリギリなのか…

 

「それじゃあ和人から口上を述べてもらうか」

 

「お、俺から?」

 

参ったな特に何も考えてなかったぞ…それにこう言うのって仲間内の打ち上げでしかやったことがないし…

 

「思いの丈を言えばいい気にするな口上に上手いも下手もない」

 

そう時田先輩に促され、泡盛を持ちながら前へ出る。思いの丈…か

 

「俺はずっとVRMMOの世界ばかり見てきました。 仮想である、あの世界が俺にとっては現実のようなもので…それと言うのも今はまだ話せませんが事件に巻き込まれ長く過ごした事があるからで…察しのいい方はたぶん、これだけで何の事件かは分かるでしょうけど」

 

SAO事件。 2年もの間、1万人のプレイヤーが鋼鉄の浮遊城に捕らえられ多くの犠牲者を出したVRMMOの始まりにして最悪の事件。

 

「でも伊豆に来て、PaBの皆さんと出会って知らない世界を見ることが出来ました。 きっと俺はこれから仮想の世界もこの綺麗な海が広がる世界もどんどんと好きになってくと思います。 正式な伊豆大の生徒じゃない俺を誘ってくれてありがとうございましたっ」

 

素直な気持ちを述べ、泡盛を瓶へと流し込んでいく。

PaBの面々も拍手をして微笑みながらこちらを見てくれた。やっぱり優しい人達だな。

 

「和人って伊豆大生じゃなかったのか!?」

 

「いやそこかよ」

 

もっと突っ込まれるかと思ったけどコイツらはこんなヤツらだった。

今の俺にとっては有難いことだけどな。

 

「それじゃあ伊織、耕平も続いて口上を」

 

促されると二人揃って前に出て清々しい程の笑顔を浮かべながら口上を述べ始める。

 

「俺はPaBのお陰でずっと嫌いだった「今村耕平!」の魅力に気が付きました。 最初は流されて始めた「ゲームとアニメ!」も今では無くてはなりません。 これからは今よりももっと努力して「耕平お兄ちゃん結婚して!」と言えるように頑張りたいと━━━━━━」

 

伊織が耕平の頭部を泡盛の瓶で強打した。

清々しいほど気持ち悪い口上になっていたな。

 

「二人の距離が縮んでいく素晴らしいスピーチだったな」

 

素晴らしい要素があったか?

 

口上も全員が終わりコップには禍々しい色合いと臭気をした酒が表面張力限界で注がれている。少しでも量を減らさなければ命に関わると判断した。

伊織と耕平は酔っ払ったふりをして零そうと試みるも失敗をし、そのあと何故か2杯目も手に持っていた。何してるんだあいつら。

零したり薄めたりすることが出来ないのならばどうするか…

俺はPaBで何を学んだ?

人を蹴落としてでも生き残る意地汚さだ。

 

「愛菜、喉乾いてないか?」

 

「いや飲まないから」

 

万事休すか…

 

「和人、ほんと1ヶ月でだいぶバカになったよね…」

 

失敬な。確かにアルコールを入れることに忌避感は一切無くなって自分からも開けるようになったが何も変わっていないぞ。

 

「それじゃあ急いで飲むぞ」

 

「中身が減っちまうからなー」

 

あの人たちは何を言っているんだ?

誰が好き好んでこれを飲む………蒸発してるだと…!?

コップ並々に入ってたアルコールXは今は数センチ下に液面が下がっている。 恐るべき…オトーリ!

 

※ オトーリでこんな事は起きません。

 

「正しいオトーリを教えれば…!」

 

「この飲み方から解放されるやもしれん!」

 

伊織と耕平がスマホを持って先輩達に突撃していくがちょっと待って欲しい。

オトーリの正しい飲み方をおさらいしよう。

 

 

・親になった人が「口上」を述べて一気飲み!

 

・その後、全員が順に一気飲み!

 

・最後に親が一気飲み!

 

・親が「後口上」を述べて次の親に交代

 

・これを人数分繰り返す!

 

つまり最低でも13回乾杯することになる。

伊織が耕平の顔を殴り、和人は耕平の尻を蹴り飛ばしていた。

 

「まぁいい、強い酒は飲みなれている」

 

「確かにな! 俺たちに今最も大切なのは…!」

 

「酒を飲んでも飲まれないという強い精神力!!!」

 

 

 

 

 

「「「ウェエエエイ!!!」」」

 

「さすがは俺たちの後輩だァ!」

 

「あっという間に見慣れた光景に…」

 

おさけおいしいな。

 

3人纏めて酒に飲まれていると時田がダンボールを開けて驚愕する。

 

「酒が切れた!」

 

そんな言葉を聴けば和人達の混濁していた意識は一気にクリアになり、酔いなど忘れて皆して詰め寄った。

 

「発注ミスでは!?」

 

「まさか、あれだけあったお酒がなぜ…事件か?」

 

という訳で買い足すためにアルコールを入れていなかった愛菜の運転で伊織がコンビニまで出掛けていくと飲み会も少し勢いを潜め、思い思いに話しながらの形となっていく。

和人も先輩方から隠れるように女性陣に紛れて雑談に興じていたのだが…

 

「あ、そうだ和人」

 

「どうしました梓さん?」

 

「恋人の明日奈ちゃんの写真見せて〜?」

 

「ブフゥ!?」

 

突然の爆弾に飲んでいたウーロン茶(PaB式)を噴き出してしまう。梓さんはケラケラと笑い、知らなかった千紗は驚いた顔でこちらを見つめ、奈々華さんは楽しそうに微笑んでいる。

耕平は!?

 

「ららこたんの再放送が映らん」

 

大丈夫だ。

 

「桐ヶ谷くん、彼女居たんだ。 意外かも」

 

「千紗さんには俺が一体どう言う風に映ってるんだ…いや確かに居るようには見えないかもしれないけど」

 

「ん…伊織2号?」

 

「不名誉すぎるな!?」

 

ほっぽり出していたカバンからスマホを取りだしカメラロールをスライドさせていく。

千紗が撮った海の中の写真を大量に送って貰ったのでだいぶ下にアスナの写真がいってしまっている。何故か身に覚えのない裸の写真や伊織と耕平の写真まで多くあったが華麗にスルー。

伊豆に来る前に一緒に撮った写真を見つけると表示して3人に見せた。

 

「へぇ、凄く可愛い子だね〜」

 

「あ、ほんと美人さんだ…」

 

「和人くんもいい笑顔で映ってるね」

 

自分と彼女のツーショットをマジマジと見られるのはだいぶ恥ずかしい。が、アスナを褒められるのは悪い気がしないため何枚かスライドして見せていくとスグも写った写真が出てくる。

 

「こっちの子は…?」

 

「俺の妹の直葉だよ。歳は一つ下だから今年大学受験なんだ」

 

「和人に似て可愛い顔してるじゃん」

 

「梓さん? それは俺の方が嬉しくない褒めですよ」

 

あははは〜と、笑っていたら肩を強烈な力で捕まれ立てなくなるほど押さえ付けられた。

逃げられない。

 

「桐ヶ谷、言葉を選べ」

 

「バカな耕平!? お前はさっきまで向こうにいたはず…!」

 

抗えない力が肩を襲う。返答を間違えれば殺られると本能が警鐘をならすのは何時ぶりだろうか。

 

「妹が、居るのか」

 

「……居ません」

 

「この子だってさ」

 

バカ千紗! 写真を見せるな!

 

「ほう、そうか」

 

ミシミシと音を肩が立て身体が悲鳴を上げる。

 

「高校三年生らしいよ」

 

「へぇ? そうなのか」

 

「ま、待て耕平。お前は2次元にしか興味が無いのでは!?」

 

「知らなかったか桐ヶ谷。 俺は大学に入ったら【俺を中心にした女子高生美少女ハーレムサークル】に入りたかったんだ」

 

「そんな所がある訳ないだろう!!?」

 

あまりにもバカ願望につい声を上げるが奴の力は弱まることなく依然として和人を床に縫い付けている。

 

「しかし運が良かったな桐ヶ谷。 もし妹が中学生だったり()()の妹だったり…お兄様やお兄ちゃんと呼ばれているとしたらお前を12回殺さなければならなかった」

 

ふ、と肩にかかっていた力が抜けた許されたのか…?

 

「一度の死で許してやろう」

 

「それは許しじゃなくて処刑で…ゴハァ!?」

 

酒が入っているせいで避けることもままならず耕平の処刑フルコースをモロにくらって崩れ落ちた和人。

そして、和人が目を覚ました時には素っ裸にひん剥かれた伊織と耕平を踏み付けるように修羅が酒場に降臨していた。

 

「おぉ、和人…次はアンタばい!!」

 

「あ、愛菜…? ま、待て待て何をする…つも、あ、あーーーーーーー!?」

 

 

 

 

裸でビロンビロンに伸びたパンツを付けた野郎が三人。愛菜から逃げ延びて海沿いに座っていた。

 

「全く酷い目にあった…」

 

「むしろなんで和人は気を失っていたんだ」

 

「それがよく覚えてないんだ…耕平は?」

 

「さぁな。 俺もさっぱりだ」

 

痛む身体に違和感を覚えながら月と星が輝く夜空の下で海を眺める。

ユージオと旅をしていた時もあの世界の夜空をよく見上げたっけ…

 

「夢のようだな…」

 

「この光景がか?」

 

「いや、この生活がさ」

 

和人は苦笑しながら2人を見ると彼らも揃って笑い頷いた。

 

「あぁ、なるほど」

 

「それもそうだな…」

 

「「「夢と言っても悪夢だがな」」」

 

背後から迫る脅威に三人は声を揃えて絶叫する。

沖縄の夜は暑く長かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま、お父さん」

 

「おー千紗、奈々華お帰り。 和人と伊織も疲れただろ」

 

「ただいまです叔父さん」

 

「疲れたというか…えぇ、まぁ疲れました…」

 

沖縄合宿を終え「Grand Blue」に帰宅すると登志さんが笑顔で出迎えてくれた。

オトーリやらなんやらで頭とか色んなところがイカれた気もするが楽しかったことは変わらない。

荷物を置き部屋へ一度入ろうとしたところ呼び止められた。

 

「そうだ和人。何日か前にお前宛ての荷物が届いてたから部屋に置いておいたぞ」

 

「え? 本当ですか…ありがとうございます」

 

「気にするなって。伊織もそうだが和人も今や家族のようなもんだしな」

 

気さくに笑う登志夫さんにもう一度お礼を言いながら部屋に戻ると確かに大きめのダンボールが置いてあった。

 

「随分とでかい荷物だな?」

 

「何を買ったんだ」

 

「なんでお前たちも普通に俺の部屋に居るんだ…」

 

「そりゃ飲むためだろ」

 

カシュッとビールの缶を開け始める二人にゲンナリしながら和人も渡されたビールを開け飲みながらダンボールを開け始める。

そして心臓が止まるかと思った。

 

「これは…和人、そんなに欲求不満だったのか? 山本ですら買わないぞラブドールだなん…カハッ」

 

伊織の鳩尾に渾身の一撃を喰らわせて撃破する。

人をあの女性に見境のないクズと一緒にするな。童貞の鏡のような山本と。

ダンボールから出てきたのは人間の…正確にはロボットなのだが。

 

「む、それは確かアリス…? なぜ桐ヶ谷の所に」

 

「知ってるのか耕平。…まぁ、えっと知り合いというか色々あってな」

 

「イテテ…冗談だってのに何もあそこまで本気で殴らなくても…」

 

バカの体は頑丈だな。

 

「それで…これは本物なのか?」

 

「ちょっと待っててくれ…確か互換性のあるコードが…あった」

 

実家から持ってきたケーブルをアリスのロボットボディに刺せば数秒後に軽い起動音がなり、瞳が開かれた。

 

「「おぉ…」」

 

伊織と耕平もここまでリアルなロボットが動くことに感動を覚えたのか感嘆の声を漏らす。

 

「ん、キリト…?」

 

「おはよう…というよりはこんばんはになるか。 久しぶりだなアリス」

 

「えぇ、そうですね。あまりにも連絡が取れないものだから休暇を利用してここに送られてきました」

 

以前のアレで味をしめたのか、時折荷物として郵送されてくる女の子は如何なものか。

 

「それでそちらの二人は?」

 

「あー、…」

 

「えっと、北原伊織だ」

 

「今村耕平だ」

 

コイツらの関係性はなんだと考えていたら一応先に名乗ってくれた。

 

「イオリとコーヘイですか。 私はアリスです。お二人はキリトとどの様な関係で?」

 

「………俺たちはなんだ?」

 

「四六時中一緒に居るが…」

 

「なんだろうな、一応友達という括りにしておくか」

 

アリスはぱちくりと瞬きしながら和人を見つめ、そして伊織と耕平にも視線を送る。なんとも言えぬ空気感が部屋に漂う。

 

「ふっ…そうですか。 しかし元気そうで安心しました。 お二人から見てキリトはどうでしょうか」

 

「「バカだな」」

 

「お前らには言われたくないんだが?」

 

このバカたちにバカ扱いは未だに腹が立つ。

 

「そうですねキリトは特別馬鹿です。よく貴方の事を分かっている友ではありませんか」

 

「アリスまで…っ」

 

「それしてもキリト…その、何故…三人とも下着姿なのですか?」

 

「「「普段通りだが?」」」

 

「そ、そうなのですか…」

 

何を当たり前のことを言っているんだアリスは…ひと月の間に何かあったのだろうか…

 

「とりあえず下に降りよう。アリスにみんなを紹介しなきゃだし」

 

「どうせ今夜も飲み会だろうしな」

 

「まさか人工知能…いやこの言い方は失礼か? こうして言葉を交わす事が出来る日が来ようとは…」

 

何が何だかという様子のアリスを引き連れ下へと降りるとアリスに驚いた千紗がフリーズしていた。

 

「桐ヶ谷くん、えっ、その…え?」

 

「落ち着け千紗。 彼女はアリス…あー、UW(アンダーワールド)っていう仮想世界で育ったボトムアップ型の人工知能だ」

 

「チサ、というのですか? 私はアリスです。いつもキリトが世話になっています」

 

「あ、えっと、お世話してます…?」

 

実際に世話になっているからなんにも言えないがその返しは変じゃないか千紗さん?

 

「ここは…何かのお店でしょうか?」

 

「え、えっとはい。 ダイビングショップですけど…」

 

「ダイビング…とは?」

 

あたふたしながら一生懸命に説明する千紗とそれを真摯に聞き質問をするアリスを見ていると中々面白いので暫く眺めておくことにする。

 

「しかし凄いな。まんま人間じゃないか」

 

「人間だよ。住んでいる世界が違うだけで俺たちとアリスのような人達は何にも変わらないさ」

 

「ま、和人が言うんならそうなんだろうな」

 

バカの癖に、こういう事に関しては受け入れるのが早いというかなんというか…

 

「よし、お前ら! 今夜はアリスちゃんの歓迎会だ!」

 

「飲むぞぉ!!」

 

荷物を置いていつの間に店にやってきたPaBのメンバーが雄叫びを上げるとまるで戦闘の合図のような雰囲気にアリスが驚き和人を見つめる。

肩を竦めて笑えば千紗がアリスを引き連れ奈々華さんと共にその光景が一番見える奥の席へと案内をしていた。

そこで見ているんだ。

ひと月で変わってしまった俺の姿を…

 

かつて両手に剣を握って戦った少年は、その手に酒瓶を構えて男達の中へと飛び込んでいく。

 

 

その姿を千紗とアリスはしょうもないものを見る目で眺めていた。

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