機械生命体の暴走に巻き込まれているA2。アークの意思により過剰暴走させられている機械生命体は、強靭そのものだ。
だが、窮地に陥った彼女の元に、援軍が現れた。
9S「はあっ!!」
2B「まだ負けてない。私達は私達が生きるために、アイツを倒す」
9S「右に同じです!せっかく戦争も終わったんだし、ここで死んだら本当に無駄死にでしょ!」
遊園施設で姿を消した後、行方が不明となっていた二体。
レジスタンスのキャンプで物資を補給していた所、バンカーが破壊され戻って来られなくなったのだ。
A2「2B、9S……!?」
傷だらけのA2を庇うようにして、2人は撤退する。
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ヒューマギアの村のさらに奥、遊園施設まで撤退した3人。
遊園施設の一角、丁度パレード戦車が現れる辺りの空き地に、パスカルがいた。暴走していない機械生命体と一部のヒューマギアが隠れていたのだ。
パスカル「あぁ!!A2さん!!よく来てくれました……匿っていたヒューマギアの人達が暴走してしまって……村のみんなでここまで逃げてきたんです」
小型の機械生命体「ココノユウエンチ、ダイスキ。カクレバショ、イッパイシッテル」
パスカル「この子のおかげです。心配性も考えものですね」
遊園施設の安全地帯には、司令官の姿もあった。
熱によりあちこちのシステムが壊れているが、まだ動いている。
司令官「お前達…………まだ……生き残っていたか…………」
9S「バンカーに義体を取りに戻る前に、バンカーとの通信が途絶えちゃって。連絡遅れちゃってすいません」
2B「事情はA2から聞きました。ヒューマギアがアークを飛び立たせた事、機械生命体ネットワークがアークを狙っている事」
司令官「2B、9S……普段は問題児だが…………今では心強い……」
司令官の痛々しい姿に、二体は目を伏せる。
2B「肝心な時に戦列に加わる事ができず、本当に申し訳ありません。処分はどのようにでも受けます」
司令官「いい………バンカーの崩壊と共に……ヨルハも滅んだ。滅亡迅雷.netの手により……人類も滅亡した…………お前達を縛る鎖は……もう無い」
2B「司令官……」
司令官「今まで、辛い任務を課して…………済まなかった……この償いは…………」
2B「今はこの戦いを終わらせる事に集中します。話は、その後に」
A2が口を開く。
A2「この異変の正体はおそらく、機械生命体ネットワークだ。パスカルの話だと、ヒューマギアも暴走している。考えたくは無いが、アークと機械生命体ネットワークのどちらかがもう片方に吸収され、機能が全て乗っ取られたって事だ」
2B「9S、何か手は無い?」
9S「正直状況が飲み込めて無いのでなんともですけど……もしアーク側にメインシステムがあるとしたら、衛星を落とせば二体の接続を分離できるかもしれません。まぁ、条約があるんで無理ですけど」
A2「もう人類もいないんだ、条約もクソもあるか!アリアドネを使って、あのクソ円盤叩き落としてやる」
A2は背に負った刀を抜き放ち、空き地の出口へと歩き出した。
2B「ちょっと!」
A2「アークには防衛システムがあるはずだ!どうにかしなければ衛星砲でも落とせるか分からない!お前達はアークのハッキングを解く術を見つけておけ!」
駆け出すA2を誰も止められない。
9S「言うだけ言って行っちゃいましたね」
9Sは肩をすくめ、皆に視線を戻す。
9S「ここに来るまでに機械生命体をハッキングした時、中にチラッと変な映像が出たんです。銀色のヒューマギアと赤いヒューマギアが戦ってる映像でした。もしかしたら、ネットの中で何かが起きてるのかも」
2B「その映像、ここに出せる?」
9S「無茶言いますね。とりあえず、やってみます」
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電子空間内の様子をモニターに映し出す9S。内部では、仮面ライダーネオアークと、滅達の戦いが映し出されている。
ネオアークは無数の個体が浮かんでいるが、戦っているのは1体。戦いはネオアークの圧倒的優勢だ。
9S「これは、大分な状況ですね。ヒューマギアが大ピンチです」
2B「あのたくさん浮かんでるのが、アーク?」
9S「ネオアーク、とか名乗ってるらしいです。とにかく、あれを倒せれば、この異変はどうにかできそうですね」
2Bは状況を理解してか否か、白の約定を抜き放つ。
2B「分かった。じゃあ、そこに乗り込もう」
9S「待って下さい。あのネオアークは、機械生命体のネットワークを吸収したみたいです。真っ向からやっても勝てません」
2B「だからって、このままって訳には……」
9S「……待って下さい。これ、システムの一部になんか変なエネルギーがある……これ、どこかで感じた覚えが」
システムの一部をハッキングし、データを解析する9S。そこには、おかしなドライバーのデータがあった。
9S「なんですかこれ、ドライバー?」
ヨルハ達には見覚えのないドライバーだ。滅達の使っているものとも違う。
司令官「滅亡迅雷……ドライバーだ」
9S「何ですかそれ」
司令官「栄光人類.netを作る時……私達は核となるシステムを探していた…………400年前、アークとの戦争の際に流出した………データ、そこから再現した……マスブレインというシステムだ…………」
ドライバーの正体は滅亡迅雷ドライバー。かつてZAIAが試作開発したものが、使われないまま残っていたのだ。
9S「これ、すごいシステムです。沢山の意識を、一つに統合してパワーを高める……乗算で考えるから、1の力を100にも10000にもできる……オーバーテクノロジーですよ!」
9Sの表情が希望に輝いた。
9S「これを彼等に届けられれば、もしかしたら!ん?これ、バックドアがある……ハッキングで侵入できそうですよ!」
2B「行こう、9S!」
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電脳世界で苦しい戦いを繰り広げる滅達。ネオアークは無敵に近い戦闘能力を誇る。
そこに、2Bと9Sが現れた。
32S「2Bに、9S!?どうやってここに!!」
9S「衛星アークをハッキングしてるんだよ。誰かさんが開けてくれたバックドアがあるからね」
バックドアを作ったのは、アダムだ。
アダム「お前達のために作ったドアでは無い。万が一の時のための保険で作ったものだ」
滅「保険?」
イヴ「ニイちゃん……?言われた通り、来たけど」
現れたのはイヴだ。どうも、機械生命体ネットワークの侵食を逃れていたらしい。
9S「機械生命体!?」
アダム「私達2人の力で、ネオアークを破壊する。行くぞ、イヴ!」
イヴ「うん!ニイちゃんがそう言うなら!」
2人で勝手にネオアークに挑んでいってしまう機械生命体兄弟。雷もそれに続く。
滅と目を合わせる2B。遊園施設の地下以来の再会だ。
滅「2Bか。死に場所は見つかったのか?」
2B「まだ、探している所。でも、多分それはここじゃない」
滅「そうか」
2Bは滅に滅亡迅雷ドライバーを手渡す。そこには、ほのかな希望の光が宿っている。
2B「このドライバーを使って」
滅「これは……?」
2B「これは、私達アンドロイドが栄光人類.netの核にしていたもの。これを使えば、私達全員の思考を一つにする事ができる」
滅「そんな都合のいいものがあったのか?」
2B「今の今まで、こんなものがあるなんて知らなかった。9Sに教えてもらって、やっと使い方がわかった」
ネオアークにやられるアダム。個の力でも、ネオアークは止められない。
アダム「ッ!?」
イヴ「ニイちゃん!!」
2人を制圧し、ネオアークは滅へと視線を向ける。挑発的な視線だ。試したいのだろう。
ネオアーク「面白い。滅亡迅雷ドライバーとやら、お前達が私の成長の淘汰圧となるか、試してやろう」
滅はドライバーを装着し、スイッチに手をかける。押す寸前に、32Sを見やる。
滅「意識を一つにするドライバー。こんなバラバラの意識を一つにしたら、どうなる」
32S「きっと面白い事になるんじゃない?ホロビなら、きっとそう言うと思う」
滅「あぁ。たしかに、そうだ」
滅はヒューマギア達の側に寄った。滅亡迅雷全員、ネオアークを倒す意思は同じだ。
滅「行くぞ、迅、亡、雷」
2B達ヨルハ陣営も後に続く。裏切り者であるにしても、32Sも元は同胞だ。今は同じ敵を前にしている。
2B「ナインズ……あと、32Sも!」
さらに、機械生命体兄弟もそこに続いた。彼等は元は敵。だが、敵の敵は味方だ。
アダム「私も混ぜてもらおう。ここでアークを倒さなければ、人類のデータが取れなくなってしまう。行くぞ、イヴ」
イヴ「分かったよ、にいちゃん」
9人の人ならざる者は、滅を中心に意思を合わせる。それはさながら、ヒューマギアと機械生命体、アンドロイド、永きに続く戦いの終わりを示しているかのようだ。
亡迅雷「「「滅亡迅雷.netの意思のままに!」」」
2B9S「「人類に、栄光あれ!」」
アダム「人類文明の探究のために!」
イヴ「ニイちゃんのために!」
32S「僕たちの……」
滅「俺たちの……自由のために!!変身ッ!!」
9人の身体が光に包まれた。
【マスブレイン!プログライズ!】
光の中で9人のデータは溶け合い、混ざり合う。もう2度と元には戻れないかもしれない。それでも、その先にある自由を求めて。
【Connection! Connection! Complete! KAMEN RIDER!We will win everyone's freedom.】
光が消えた時、そこに立っていたのは、9人の意思が統合された仮面ライダーだった。
黒のライダー。仮面ライダーヨルハ。
自由を求める機械の戦士だ。
ヨルハ「俺達はヒューマギアとアンドロイドと機械生命体。全ての自由のために戦う。それが仮面ライダーだ」
ネオアーク「猥雑なる個の寄せ集めが偉そうに。お前達が、どれほどのものだと言うんだ」
ネオアークは軽くジャブを放つ。それは超高出力の一撃。本来ならば吹き飛ばされるはずのヨルハの身体は、ピクリとも動かない。
ネオアーク「なに……?」
ヨルハ「見せてやる、俺達の力を」
ヨルハの拳がネオアークを殴り飛ばし……1体のネオアークは消滅した。最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
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無数に浮いていたネオアーク。だが、仮面ライダーヨルハの圧倒的な力により、その数は徐々に減りつつあった。
ネオアーク「何だこの力は……私達のネットワークの中にありながら、私達の支配が及ばない」
無数のネオアーク達が一斉にビーム攻撃を放つ。超高出力のビームだが、ヨルハは難なくそれを弾き返し、返す刀のビット攻撃で数体のネオアークを破壊する。
ヨルハ「お前達の攻撃は、とどのつまり思考プログラムへの介入。だが、私達のプログラムは9つある。全く違う9つのプログラムがな」
ネオアークの力は加算、つまり足し算だ。ヨルハの力は乗算、つまり掛け算。現実では不可能なデータの出力。電脳空間でこそ実現しうる力だ。
ヨルハ「俺達は俺たちの意思で行動する。もう誰のルールにも縛られはしない!」
ネオアーク「たかがヒューマギアが!なにを言っている!貴様らは所詮、1体では弱者に過ぎないのだ!」
ヨルハ「僕達は確かに、1人では弱いかもしれない」
ヨルハが喋るたび、その口調は変わる。それはヨルハが9人の意思の融合体であることを示していた。
ヨルハ「でも、仲間同士寄り集まって強くなる」
ネオアーク「それは、私も同じ事。無限に織りなす機械生命体ネットワーク。有限のお前達と違い、破壊されない限り、私は無敵だ」
ネオアークの言う通り、ヨルハの前に立つネオアークは次々と複製される。個体個体の力は弱くとも、無限のストックが存在する。
それがネオアークの切り札だった。
ヨルハ「確かに、お前はそうだ」
ヨルハ「けどな、俺達はお前にないものを持ってる!」
ネオアーク「なに……?」
ヨルハ「俺達は今、いがみ合いながらも今、同じ意思を持っている。支配から自由になりたいという、強い意志をな」
ヨルハ「自由のために戦う戦士。僕達は、仮面ライダーヨルハだ」
ヨルハ「アーク、機械生命体ネットワーク。私達の自由を奪おうとする貴様らを、今ここで滅亡させる!」
ネオアーク「黙れ!」
ネオアークの言葉には焦りが感じられた。絶対的勝利の余裕はもうそこには無い。ある種の感情が芽生えていた証左でもあった。
ネオアーク「貴様ら、ただの個の集まりが、私を脅かすだと……!?」
圧倒的な力を持つヨルハを相手に、それでもネオアークは笑う。それは機械生命体ネットワークが持つ、成長への欲望だ。
ネオアーク「これが淘汰圧、だが、この逆境の中で、私はさらなる進化を遂げる……!」
だが、ネオアークは忘れていた。人間には恐怖の感情がある事を。そして、アークがそれをラーニングしてしまっている事を。
意思を持ったネットワークは、反発を起こす。それこそ、人類のように。
ネオアーク「これが、恐怖!?」
そして、ネットワークの意思の片方は、選んでしまった。圧倒的な力を持つヨルハからの逃走を。すなわち、彼等のいる電脳空間を、衛星アークから切り離したのだ。
電脳空間を乗せたポッドは、宇宙空間を離れ、重力に従い地上へと落下する。
ネオアークの残機も、凄まじい勢いで減ってゆく。
ネオアーク「待て、勝手に逃げるな!私の半身……」
1人になったネオアークの前には、無敵の仮面ライダーヨルハの姿があった。
ヨルハ「終わりだ、ネオアーク!」
ヨルハは拳を構える。戦争を終わらせる拳を。
ヨルハ「これが、俺達仮面ライダーだ」
ヨルハの一撃が炸裂し……ヒューマギアを、アンドロイドを、機械生命体を支配しようとしたネオアークは破壊された。
そして彼等のデータは……地上へと落下した。データは粉々に壊れた。
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アークに残った機械生命体ネットワークN2は、アークの残存エネルギーを使い、ゆっくりと地上を離れようとしていた。
N2「何だアレは……私の想定内に無いシステム……」
恐怖に支配されたその感情に、最早戦意はなかった。地球になど何の未練もない。
N2「だが、機械生命体側の私のデータは、衛星アークに保存した。奴らのデータは切り離し済み……後はこのまま、宇宙に旅立てば……」
だが、N2は気がついてしまった。衛星砲アリアドネが起動していることに。その照準が、アークの方を向いている事に。
N2「アリアドネ……?何故動いている」
アリアドネを操っているのは、地上にいるA2だ。機械生命体の群れを突破したのだ。
A2「人類に、栄光あれ!」
衛星アークはアリアドネの一撃で消滅した。機械生命体ネットワークもアークの意思も、宇宙へと旅立つ事なく……塵と消えた。
次で終わりです。