風は有利に吹いている【完結】   作:ノノギギ騎士団

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予約済みのチャンピオンタイムを君に(下)

 意識が、遠のく。立ちくらみで揺れ続ける視界は、天地が逆転するかのような感覚の後で安定した。

 頭痛と吐き気で最悪の体調だ。できることならば、今日はこのまま眠ってしまって三日ほど寝台の上で過ごしたかった。――という逃避もそこそこに、彼は現実に目を移す。

 口元を押さえたアオイは、何度か深呼吸をした。

 

「うぐぅ……。あの子、肝が据わっているな……」

 

 腕時計を確認する。

 

「現実時間の経過は5秒。記憶の混濁は無い。痛覚の異常も無し。もっとも『無かった』と言って悪夢と現実の区別など付くワケではないが。まぁ、ミアカシさんがいるから、きっとこちらが現実なのだろう……寒いのか熱いのか……よく分からないな」

 

 寝不足で温度感知が疎くなりつつある身体が、震える。眠る、というよりは、気絶するように意識を無くしていたアオイは頭を振り、杖に体重を預けた。

 

 視界を明るく照らすのは、エースバーンの焔だった。

 煌々と燃える焔は、彼の熱量を示している。

 アオイのヒトモシ――通称、ミアカシと呼んでいる彼女のバトルは、『ほのおのからだ』の特性とゴーストタイプの特徴のおかげで有利に進むはずだが、攻め方が鈍い。

 

 ミアカシの炎は、震えていた。

 

 あの焔は、酸素の燃焼ではない。

『ヒトモシ』という種のポケモンは、生命力を燃やし続ける生態だ。

 

(しょぼくれた焔など見るに堪えないな……)

 

 杖に寄り掛かるのを止めたアオイは、もう一度、腕時計を見つめた。

 

(ユウリさんが眠りに入り、既に40分が経過した。もうすこしだけ、時間を稼ぐ必要がある。短くとも、あと20分は確実に必要だ。20分……長いな……)

 

 ポケモンの生態研究は、アオイの生涯事業だ。

 ユウリという輝く才能を持つ少女が実験台になったのは不幸な出来事だったが、この段階に至った以上は『生死を問わず』有効活用すると決めていた。

 だから、もうすこしだ。大切なことは、時間を稼ぐことで勝敗ではない。だから、焔の色など関係は無い。――と、思えなくなっている自分に、アオイは動揺している。

 

 ユウリとの一戦を経て、彼も考えたことがある。

 

(20分、あぁ、長い……だが、負けるのは、分かっていても悔しいものだ。どんなバトルであっても、理由であっても、負けたくない。ミアカシを負けさせたくは、ないな)

 

『港まで行くために体力を温存しなければならない』と頭では、考える。

 だが、猛る心は止められない。

 

 あの時、ユウリを打ち倒すことを決意したように。

 ホップ――彼を打ち倒してしまいたいと思うのだ。

 

 杖を握る手に、力がこもった。

 

 夢に貴賤はない。夢に軽重はない。夢に優劣はない。

 夢を叶える者と叶えられない者に差があるとすれば、純粋に懸けた熱量の差だ。

 

 だからこそ。

 

「研究は続行だッ! 夢の先へ、私も、私だって――っ、そのためならば、何度だって魂を懸けよう! さぁ、我が魂を薪へ!」

 

 ミアカシが無邪気に笑う。彼女の頭上の焔は怪しいきらめきを増す。

 エースバーンにぶつかる焔が弾けた。

 

「上等だッ!」

 

 ホップが拳を作る。

 

「――エースバーン、『かえんボール』!」

 

 エースバーンの火球は止まらない。

 

 攻撃が焔である限り、ミアカシは特性の『ほのおのからだ』で受け止められるだろう。だが、勢いは受け止めきれるだろうか。いいや、無理だ。『サイコキネシス』で減速したとしても難しいだろう。ミアカシのからだは物理攻撃に対する耐久性が脆い。

 

「ミアカシ、よけて!」

 

 声で樹木の裏に飛び込んだミアカシは、ぎりぎり攻撃を受けずに済んだ。『かえんボール』は大きくカーブを描きながら木々を縫ってどこかへ行った。

 戦術の演算を始めたアオイに、突然、計算外のことが起きた。

 

「あ、ちょっと、君、やめ、やめてって、やめなさいって、どこで覚えてきたの、それは」

 

『むじゃき』さというものは、時に、迂闊な行動を引き起こす。

 ミアカシは『ちょうはつ』を覚えていないが、手でちょいちょいとエースバーンに手招きしている。見ていて痛々しくなる調子の乗りようにアオイは諫める言葉が見つからない。それに、保護者としてかなり恥ずかしい。

 

『若干、ハイになってますね』とリグレーが電子音のモールス信号でアオイに伝える。冷静な彼に「見ればわかる」とぼやく傍ら、それは起きた。

 

「はっ!?」

 

 ほぼ丸となる弧を描き『かえんボール』が、戻って来たのだ。

 ちょうどミアカシの側面にぶつかり、彼女はビックリした顔のまま吹っ飛んだ。

 

「ミアカシっ!」

 

 ガッツポーズするホップを横目に、アオイは渋い顔をした。

 

「調子に乗るのなら、せめてもうすこし有利になってからだというのに……バトル経験が浅いのが災いしたか。いや、性格的なもの……しかし、うーん、これは私の詭弁をもって弁護不能だ。リグレー、援護を。本質は、時間稼ぎであるべきなのだからね」

 

 リグレーがアオイには理解できないピポピポという音を立てた。

 

「ようやくいなくなった……! ちゃんと、ポケモンに指示を出せよっ!」

 

「私はトレーナーである前に研究者だ。バトルは、見ての通り不得手でね。……しかし、気になるな。君は、チャンピオンになりたいのだろう?」

 

 少年の顔色が変わる。

 どうして知っているのか、と今にも訊ねそうな顔になる。

 

「知っているとも。彼女から聞いた。ユウリ、だったね。……類い希なるバトルセンスを持つ子だ。才能は輝く未来そのものだ。だから、私は期待している」

 

「期待だって?」

 

「彼女の才能を使い潰せば、私の研究に新しい活路が見いだせるのではないかとね。まぁ、君には関係の無いことだ。……いけない。彼女がいないと私は、つい口数が多くなる」

 

 手袋に包まれた指で戒めるように唇を叩く。

 ミアカシが飛ばされた茂みはそう遠くない。戻ってくるまでの時間稼ぎもしたい。

 

「関係あるだろ!」

 

 彼は憤慨した様子で、足を一歩踏み出した。

 アオイは、杖を持たない左手で制した。次の一歩は容赦をしない。リグレーに攻撃を命じることになると警告を含めた所作は彼に通じた。

 

「ジムチャレンジの人数が減るのは、良いことだろう? 競合相手が減るのだ。ポケモンの消耗を抑えられるし、対策も練りやすくなる」

 

 ホップは歯噛みしてこちらを見た。

 黄金の瞳が『何もわかっていない』と語っていた。

 

「何も良くないッ! オレは、チャンピオンに、ユウリに勝って、最強のトレーナーになるんだっ!」

 

 アオイの感情は冷めた。彼も同じ感想を抱いているだろう。

『彼は、話が通じない』

 持ち得た価値観の差が、言葉の意味以上の理解を阻む。

 日頃のアオイであれば、理解する努力をしただろう。しかし、今は寝不足で合理的な判断が失われている。あるいは、生命力を燃やすミアカシが遠のいたことが原因だったかもしれない。

 

 彼のなかには鮮明な怒りの感情が沸き立った。

 

「では、良いことを教えよう。君は彼女がいる限り、チャンピオンになれない。予想ではない。想像ではない。これは、事実だ」

 

「そ、そんなこと――」

 

 ホップは、怒りよりも先に怯えた顔をした。

 それを彼は見逃さなかった。

 

「言い方を変えてみよう。君は、彼女を見捨てればチャンピオンになれる」

 

「そんなこと、ないっ!」

 

「では、彼女の勝因が何か分かるかい? 君との違いが何か、理解しているのか?」

 

「え?」

 

「よく練られた戦術? 優れた個体のポケモン? 以心伝心の信頼関係? 答えは、ノーだ。彼女の目は『よく視えている』。驚くべき観察眼だ! 相手がどんなポケモンだろうとどんな時であっても、『視た』だけで勝利に辿り着く」

 

 

 バトルの最中に、相手トレーナーを見続ける対戦者が果たして何人いるものだろうか?

 アオイは、厳密にはトレーナーではなかった。そして、ユウリとのバトル中のほとんどをダークライの好きにさせていた。だからこそ、気付き、よく観察ができた。

 バトルの最中、ユウリは瞬きをしない。

 彼女が『わざわざ』動かさなければ、バトル中に瞼を動かすことさえしないのだ。

 

 絶え間なく流れ込んでくる情報を処理し、最適を弾き出している。

 何がそれを可能にしているのだろうか。

 

(直観? いいや、違うはずだ。意識で行われている判断は既に蓄積されている知識を参照する。計算? いいや、これも違う。計算で導き出すには『正解』が多すぎる。では――?)

 

 思考を打ち切る。結果に至る因果を追究したくなるのはアオイの性質だが、その成果は他者のためになっても彼女のためにはならないだろう。

 彼女が自分のことを強いと思うのは、自分の強さの理由を知らないからだ。知らなければ、その才能は彼女にとって悪夢的幸運の神がかりだ。

 あるいは、時を経て自分の持つ――便宜上、才能とする――ものに気付くかもしれない。特に、今アオイと対峙する少年の夢をすっかり打ち砕いてしまった後などに。

 

 ホップの握った拳が、緩やかにほどけていった。

 

「トレーナーの優劣は、才能の有無で決まることはない。だが、地方トップ層の競合において才能があるのは当然で、彼らは才能の『性能差』で優劣を決しているのだろう。それでも、君は彼女を救うのか?」

 

 アオイは、彼に何と答えてほしいのか分からない。だが、夢を叶えるための道程に倫理という概念は、脆く薄い氷のような存在だと知っていた。

 ただ、どちらを選んでも自分の利益として転がり込む。

 打算と興味と、少女の願いを知ってしまったばかりに発生した憤りを持って問いかけた。

 

 果たして。ホップの解けた指は再び握られた。

 

「あたりまえだ! そうじゃなきゃガラル地方イチのアニキに並べない! オレは、アニキに誇らしいオレになりたいんだっ! 『これまでのオレ』に恥じないオレになりたいんだっ! だから、ユウリは、オレが助けるっ!」

 

 怒りに燃える瞳を見て、今度はアオイは怯む。

 人の心を知らない子供と他人の心を知らない子供。

 どちらが不幸か比べる必要が無いくらいに、羨ましい。

 

「ぐぅ……揃いも揃って疎ましい子だな……」

 

 誰にも聞こえない程度にアオイは呻いた。

 彼らの思いやりは、今のところ決して交わることは無いが、互いが互いを大切にしている。いずれ彼らの努力は実るだろう。それだけの助言を、アオイはユウリにしてしまっている。

 

 他人の幸福を手放しに喜べるほど楽しい人生を送っていないアオイは、体調不良の影響も多分にあり、気軽な調子で嫉妬に焦がされてしまうのだ。

 

(私は、助言ができるのに……。どうして……どうして、私は、彼女に何も……)

 

 彼の視線はホップと、とある方角を何度も行き来した。

 言葉を伝えてしまえないのか。ぐるぐる考え続けた頭では、いつもの通り『勇気が無かったから』という結論に落ち着いた。

 未来が明るく希望に満ち溢れていると信じられる君たちが疎ましい。

 一時間まで、あと十分。時間稼ぎを兼ねた八つ当たりには、充分だ。

 

「モシモーシ」

 

 草むらが揺れて、ミアカシが戻ってきた。

 

「ああ! 実に良いところに! 私の可愛いお嬢さんっ! やはり君は最高だとも!」

 

 アオイは指を鳴らした。それを合図に『やれやれ、大変な目にあった』という顔をした彼女の背後にリグレーがテレポートした。

 

「モッ!?」

 

 どこへ飛んだのか。ホップが警戒したが、何のことはない。エースバーンに対峙する形で現れた。

 リグレーは、ススと動き、ミアカシの隣に立った。

 

「さて、我々はもうしばらく耐久する必要がある」

 

「オレは無いけどな!」

 

「いいや、違うね。子供を弄ぶのは大人の特権だ。そして、覚えておくといい。少年。善意を弄ぶのは必ずしも悪徳ではないことを。目的のために手段を選べない人間も多少なりとも存在することを! さぁ、バトルを続けよう!」

 

 アオイ・キリフリという研究者にとって『卑怯』という概念は、『正々堂々』という概念と共にイッシュ地方に置き去りになって久しい。そのためダブルVSシングルの変則バトルはあっさりと開幕した。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 ダイマックス。

 ガラル地方でのみ確認されている、ポケモンが巨大化する現象だ。ジムチャレンジで悲喜こもごものドラマを演出したこの仕組みのため、スタジアムの中では3分間だけ、巨大になったポケモンで戦うことができる。

 

 劣勢であっても威力の強い技で状況をひっくり返すことができる。相手がダイマックスしていなければ、単純な力勝負に持ち込むことも可能だ。しかし今は、いま同じポケモンが敵対していた。考えうるかぎり対等の勝負だった。

 

 ダイマックス状態では、通常の技を出すことができない。その代わりに『ダイマックス技』を使うことができる。それぞれのタイプに対応した技は、ひとつずつ。

 

「インテレオン、『ダイジェット』!」

 

「インテレオン、『ダイストリーム』!」

 

 ユウリが選択したのは『ひこうタイプ』の技、そしてチャンピオンが命じたのは『みずタイプ』の技だ。

 ダイマックスは、巨体となる性質上、相手の技を避けるのが難しい。よって風が総身を襲う『ダイジェット』も巨大な水の塊が噴出される『ダイストリーム』も互いに直撃した。

 そして。

 ユウリの頬に、水滴が落ちた。

 

「空が……雨……!」

 

 天候が変わった。ザア、と音を立てて雨が降る。煩わしい頬の水滴を払った。

 空に張り付けたように星の位相が変わらない悪夢の世界であっても、突然、雲は発生した。天候を変えたのはチャンピオンのインテレオンが放った『ダイストリーム』だ。『ひこうタイプ』の技である『ダイジェット』に相殺され、衝撃は柔らかだ。湿度は百パーセントを越え、呼吸する度に喉に空気が薄い膜のように張り付く感覚を覚える。やがて空気中に留め切れなくなった水分は雲を作り、しとやかな雨として降り注いだ。

 

(アオイさんが言っていた『当事者の認知によってもたらされた世界は、現実の一側面の枠を決して超過しない』ということは、こういうこと……?)

 

 ユウリは、ダイマックスで『みずタイプ』の技『ダイストリーム』を放った後、天候が変わり雨が降ることを知っている。だから、悪夢の世界であっても同じことが起きた。

 

「存分に戦おう。チャレンジャー」

 

「望むところっ!」

 

 これからインテレオン同士、技同士の殴り合いだ。

 

 チャンピオンもチャレンジャーも、インテレオンが覚えている技を全て知っている。威力もよく知っている。だから小手先の小細工は通用しない。戦術も直観も自分が相手なので意味を無くしている。

 

 このダイマックスバトルでは、最も純粋で単純な力量を競うことになる。

 

「インテレオン、『ダイジェット』」

 

「インテレオン、『ダイジェット』」

 

 雨粒は風雨に切り刻まれ、鋭く頬を撫でて吹き飛んでいく。

 鏡合わせのように、呼吸まで同じ瞬間に呑みこむ。技が、激突した。

 

「繰り返して! 『ダイジェット』!」

 

「押し切って! 『ダイジェット』!」

 

『ぼうふう』もかくやと言う風圧がすり鉢状のフィールドに吹き荒れる。

 チャンピオンが笑った。

 

「ハハハハっ、スゴイ、スゴイね! もっと、もっと、見せて、わたしが乗り越える方が早いんだからっ!」

 

 チャンピオンが、風圧で暴れるマントを外した。新月の星空に吸い込まれ深紅のマントはすぐに見えなくなった。

 

 ひらり、ひらり。

 動くものを追っていたユウリの目は、不意にチャンピオンのインテレオンと目が合った。

 泣き虫だった彼は、いつの間にかどのポケモンよりも頼もしく、大きく成長した。

 澄んだ瞳に心を透かされてしまいそうだ。

 長く見つめていると『どうしてここにいるのか』咎められるような気持になる。

 

「インテレオン……」

 

 小さく呟く。彼は大きな目を瞬きして応えた。

 

 ユウリが『チャンピオン』になるまで、彼は何を見てきたのだろう?

 見てきたものは、重要な役割を担うはずの『6体目』のポジションを外された理由になり得るものだったのだろうか。

 今のユウリには、分からない。

 だが、インテレオンの表情はガラル地方の誰よりも分かるのだ。

 

(楽しんでいないね……君)

 

 インテレオンは、不利を苦としない性格だ。小さくて弱くて、どうしようもなく臆病だった過去を取り戻そうとするかのように、苦難を自分の力で乗り越えようとするポケモンだった。その心の強さをユウリは信頼している。

 

(チャンピオンとわたしの違いはいろいろあるけれど、これだけは、すこしだけチャンピオンを許せない。どうして、インテレオンが6匹目ではないの?)

 

 チャンピオンが繰り出した5匹のポケモン。

 アーマーガア。ワタシラガ。ドラパルド。パッチラゴン。インテレオン。

 ユウリが最初に想像していた『ジムリーダーの最後のポケモンを倒したポケモン』という法則性もドラパルトが現れたことで瓦解していた。けれど、どのポケモンもユウリが持てるポケモンの中では、上から順に数えて強いポケモンであることは確かだ。

 

(――では、6匹目は? もっと強いポケモンが手に入った? だからインテレオンを外した?)

 

 なるほど、それは合理的だ。

 しかし。

 

(ねぇ、インテレオン。君は、それでよかったの?)

 

 だって、ユウリはインテレオンの表情がガラル地方の誰よりも分かるのだ。

 

 チャンピオンは気付いていないのか、見ないフリをしているのか、あるいは、忘れたつもりでいるのか、真実は定かではない。だが、チャンピオンのインテレオンは苛立って、荒れている。ユウリのインテレオンより素早いポケモンであれば付け入るわずかな隙があることを――もうユウリは気付いている。そして、ユウリのインテレオンは、もうすこしでその隙に届く。

 

 だから。

 

『インテレオン、わたしは、私達は、君も、越えていくよ』

 

 呟いた言葉は、音を持たない。

 目が合っていたのは、時間にしてほんの数秒の出来事だった。

 だが、事態は急変する。

 

 素早さを上げる『ダイジェット』を繰り出した回数差が、勝敗を分けた。

 

 チャンピオンのインテレオンは、ゆっくりと瞬きをした。ただ一度の瞬き。一瞬に満たない意識の逃避。ユウリのインテレオンが付け入るには充分だった。

 

「インテレオン、『ダイジェット』――ッ!」

 

 インテレオンの腕の被膜から大きな風のうねりが起きる。

 音を追い越した攻撃はチャンピオンのインテレオンにぶつかる。その余波は、彼女の前髪を吹き上げた。

 チャンピオンは、驚いた顔のまま、後方でインテレオンが倒れる音を聞いた。

 

「インテレオン……?」

 

 数拍遅れて後方を振り返る。

 その先に、赤い光が霧散した後で倒れ伏すインテレオンがいた。

 

「……イ、インテレ……オン?」

 

「あと1匹。ラストだよ。チャンピオン」

 

 ユウリは、チャンピオンに言い放った。

 ダイマックスの活動限界が到来し、ユウリのインテレオンも赤い光に包まれた。元通りの姿に戻ったインテレオンが肩で息をしつつ、目を細めて顎を上げた。

 

「あと1匹を打ち倒して、わたしは勝つ。わたしは……やっぱり君とは違う人間だ。インテレオンが6匹目ではないなんて、君は……っ……!」

 

 どうかしている。

 そう言ってしまいたい。だが、その言葉を何とか呑み込んだユウリは、震える手で拳を作る。けれど、チャンピオンを睨まずにはいられなかった。

 

「わたしは、チャンピオンだ。わたしは、誰よりも強くて、誰にも負けない。だから、6匹目は特別なんだ」

 

「特別? 特別って? インテレオンよりも?」

 

「とても大切なポケモンなんだ」

 

 チャンピオンの顔は、ユウリの知らない顔になっていた。

 怒りも喜びも好奇も興奮もない。ただ、平坦な感情を現す顔だ。あれは「何も考えずに道路を歩いていればあんな顔になるかな」という程度の顔だ。

 

(妙な……気がする。何が……? いったい……?)

 

 言葉にするには確信が足りない。疑問に思うには事実が足りない。けれど、ユウリの心は彼女の挙動に違和感を覚えた。でも、いったい何に対する違和感なのか正体がつかめない。見極めようと目をこらす瞬間に大切なものを『見間違える』ような感覚に陥る。

 

「チャレンジャー、君はこう思っている。『もう5匹のポケモンを倒した。チャンピオンのポケモンは、あと1匹しかいない』なんてね。でもね、こうは考えられないかな? 『チャンピオンのポケモンは、1匹で十分だ』って」

 

「……なに?」

 

 チャンピオンの言葉を、「インレテオンではない6匹目のポケモンに絶対の自信がある」という意味に受け取ったユウリの顔は険しいものだった。

 それを見て、彼女は笑った。

 バトル中にはそぐわない、朗らかな顔だった。

 

「6匹目のポケモンを引きずり出したのは、わたしの方だ。チャレンジャー、君のインテレオンは本来6番目だった。インテレオンさえ倒してしまえば、あとはなし崩しだ」

 

「だといいね」

 

 ユウリが吐き出した精一杯の言葉は虚勢と成り果てている。

 ポケモンの相性次第では、チャンピオンの言うとおりになる確率は高くなる。ユウリが出すべきだった本来5番目のポケモンは、イエッサンだった。彼女がインテレオンを倒し伏せられたかと問われたら、ユウリは「難しい」と言わざるを得ない。そして、インテレオンよりも強いチャンピオンの6匹目が出てきた場合、イエッサンが対応できるかどうかは相性次第だ。

 

 緊張してチャンピオンを見つめ続けたユウリは、彼女がひとつのモンスターボールを取り出したのを見た。

 

「――――ぁ」

 

 真新しいモンスターボールだ。

 強すぎる照明にキラリと光った。

 傷もくすみも無い、新しいボールだ。

 

 何の変哲も無い、ありふれたそれを見た時。

 ユウリの右足は、我知らず半歩退いた。数秒も間を置くこと無くそれに気付いた時、ユウリは解いた手で額に触れた。

 

 おかしい。

 

 信じられない光景が目の前にある。気がする。

 嫌な汗をかいた手がグローブのなかで蒸し暑い。

 

 ユウリは、確度の高い未来の自分であるチャンピオンの6匹目の心当たりが無い。しかし。

 

(どうして、どうしてわたしは……あのモンスターボールに『見覚えがある』なんて思っているんだろう。いつ? どこで? 何のために? わたしが……?)

 

 思い出せそうだ。言葉は、もう喉の淵までせり上がっている。

 そうだ。つい最近、見たことが――

 ユウリの答えを待たず。チャンピオンはボールを放る。

 

「まって」

 

 言葉は、何拍も遅かった。

 

「君に決めたっ!」

 

 チャンピオンが繰り出した最後のポケモン。

 それは、ウールーだった。

 

 身長0.6m 重さ6.0kg。

 極めて標準的なウールだ。

 

 ウールーだ。

 どこからどこをみてもウールーだった。

 

「は?」

 

 ユウリは、身構え、用途の分からない笑った顔のまま小さく息を吐いた。驚愕が思いがけない形になったことに、誰であろう、彼女自身が震えていた。

 でも、ウールーだ。

 目を疑うような、もふもふ具合のウールーだ。

 ユウリの視界でインテレオンが肩の力を抜いたのが見えた。

 

(ダメだ、油断してはいけない)

 

 ユウリは自分の頬をぴしゃりと叩いて目を大きく見開いた。

 

(これは、たぶん、きっと、チャンピオンの作戦なのだ)

 

 胸を押さえ、頷く。

 そう思わなければ、目の前の現象を理解できなかったのだ。

 

 進化前のポケモンを使っている理由は何か。

『しんかのきせき』を持っているのかもしれない。あるいは、ウールーだからこそ使える戦略があるのかもしれない。

 

 だが、ユウリの予想は全て裏切られた。

 

 チャンピオンの指示が飛ぶ。

 

「ウールー、『たいあたり』!」

 

 ユウリには、その言葉が聞き取れなかった。

 負けているワケではないのに、勝てるのに、目の前が真っ暗になりそうな心地に囚われていた。

 

 チャンピオンは指示を繰り返した。

 

 この世界は現実では無い。悪夢だ。紛い物だ。しかし、つい数分前、いいや、数十秒前までは現実と見紛うほどの現実感があった。

 

 それなのに、今はどうだ。

 今のありさまはいったい何なのか。

 

「どうしてウールーなの……?」

 

 チャンピオンの采配は、意表を突くには十分過ぎた。

 

 けれど、戦略として幼稚すぎる。

 しかも、冗談にしては笑えない。

 

 どこからどう見てもチャンピオンのウールーは、ごく普通だった。

 彼は4番道路をうろうろしていそうな、普通のウールーなのだ。

 

 丸くなって攻撃に備えたウールーがやってくる。

 

 ユウリは咄嗟の判断を迷った。

 攻撃?

 防御?

 それとも? それとも、それとも。

『こんなものは違う』と言って、バトルごと放棄してしまう、とか。

 一瞬、浮かんだ思考をを否定するようにユウリは叫んだ。

 

「よ、よけて、よけて、よけて、インテレオン! 攻撃しちゃダメ!」

 

 インテレオンは、戸惑いながら容易く『たいあたり』を避けた。

 そう、簡単だった。

 避けることは、簡単だ。倒すことは、もっと簡単なことだろう。簡単すぎるので明日やっても間に合うくらいだ。

 

 しかし、問題は勝敗以外のところに存在した。

 

「どうして……どうして! どうして!? ウールーがいるのっ!?」

 

 声が震えた。手が震えた。

 なぜ震えているのか、ユウリは答えをチャンピオンに求めた。

 

 ユウリの旅の目的は、ジムチャレンジとポケモン図鑑の完成にある。

 ウールーも収集の対象だ。

 けれど、ユウリは、ウールーを持っていない。

 これまでチャンピオンが繰り出したポケモンは、ユウリが知っていて、しかも持っているポケモン達だった。だから、相手の『手』を予想できた。

 

 グローブ越しにも掌が痛むほど握りしめて、ユウリは叫んだ。

 

「わたしは……わたしには、つかまえられなかったのに! よけて、インテレオン、よけて! よけて! 全部よけてよ!」

 

 ポケモン図鑑の完成のために何度もつかまえようと思った。何度もつかまえようとした。見かける度にボールを探して右手は動く。けれど、指はボールの表面を撫でるばかりでつかめない。

 

 だって、ウールーだ。

 ウールーだもの。

 

 ウールーはホップのポケモンだ。世間でも『ホップ選手と言ったらウールー!』という感想を何度か聞いたことがある。

 何度も対峙したユウリには、彼のポケモンという印象が強いウールーに、ボールを投げる気持ちになれない。

 

 そして、怖いのだ。

 

 彼の個性を奪うことになるのではないか。二人の友情の仲に、決定的で得体の知れない、しかも致命的な決裂を生んでしまうかもしれない。彼の大切な特別で唯一無二のウールーをユウリも大切にしたい。大切にしたかった。

 

 だが、チャンピオンは違うかもしれない。

『どうしてウールーを持っているのか』

 純粋な質問を黙殺して彼女は言い放った。

 

「さぁ、次はどうする? チャレンジャー」

 

 腕を組み、チャレンジャーの次の一手を待つチャンピオンは超然としていた。

 

「どうするって、どうして」

 

 チャンピオンは誰にも負けないと豪語し胸を張っているが、彼女は明らかに不利だ。どう考えても戦力差は覆せないハズなのに顔色ひとつ変えない彼女が恨めしい。

 

 ギリと強く歯噛みした。

 攻撃はできない。したくない。

 

(何かおかしい……これは、おかしいんだ)

 

 ウールーが「ベェーッ!」と勇ましく鳴いた。誇らしげなウールーとチャンピオンがふたり揃って並んでいる光景に、ユウリは頭がおかしくなりそうだ。

 

(こんなこと……! こんなことが……)

 

 本当ならば、そこにいるのはもっと別の人間のはずだ。

 ウールーと一緒にいるのは、いるはずなのは、いてもよいのは――。

 

 

 そこまで考えたところで、ユウリの思考は裏返った。

 

 

 

 ユウリは、自分がウールーをつかまえるなんてことは、絶対に起きないと思っている。だから、目の前のこの光景には何かカラクリがあると思いたい。

 

(カラクリ? カラクリって何?)

 

 自問自答する。

 チャンピオンとのフルバトルにウールーが存在することの意味は何か。ユウリはウールーを見つめた。

 

 カラクリ。ありえないこと。ウールー。

 それらが示すものは、何なのか。

 視線の先でキラリと光り、チャンピオンの手の中に戻ったモンスターボールが、記憶と重なる。

 

 ユウリは、大きく目を見開いた。

 目の前が突然明るく開かれたように感じた。

 

「あ」

 

 その瞬間、何も聞こえなくなって歓声が途絶えた。

 そして、思い出す。スタジアムに辿りつく直前に聞いたアオイの言葉を。

 ユウリは、口の中がからからになった。

 

 

 ――「悪夢のなかでは未来が見られない」と言っただろう。それでも未来を作り出そうとするとどうなるか?

 ――それっぽい未来ができる?

 ――そうだ。君の想像する未来ができる。または、象徴的な存在が代替する。代替だ。辻褄を合わせるためだけに、既知の何かが現れるのだ。

 

 

 既知の存在がいるとして、アオイさんの推理が確かだとすれば、あのウールーが象徴するものは何なのか。

 視線の先では、ウールーがもふもふと豊かな毛を逆立たせている。ユウリは、チャンピオンを見つめた。

 

 この光景の真相は、ユウリが見ていている実態と違うかもしれない。

 

 ユウリにとってウールーは『ホップのポケモン』という印象が強い。だが、一側面だ。では、それ以外にウールーが意味するものは何か。

 

 結論に辿りついたユウリに、もう長い沈思は必要なかった。

 

「ウールーは、わたしが、最初に戦ったポケモンだ」

 

 故郷のハロンタウンでホップと初めて戦った時のことを思い出す。

 てっきりホップは、ついさっき受け取ったヒバニーをバトルさせるのかと思った。けれど、バトルに顔を出したのは『たいあたり』と『なきごえ』しか覚えていない、彼の家の家業を手伝っていたウールーだった。

 

「勝負は、わたし達の勝ちだった」

 

 ユウリは、フィールドの中心へ歩き出した。

 

「そして、ホップのウールーは、これまでわたし達が戦ったポケモンのなかで、わたし達に勝つ確率が最も高いポケモンだったのかもしれない。だから、ここに現れた」

 

 チャンピオンは、腕組みを解き、同じように歩き出していた。

 引き留めようとするインテレオンを片手で制した。 

 

「わたしの未来がチャンピオンという世界は、存在するかもしれない。でも、わたしがウールーをつかまえる世界は存在しないよ。だからね、チャンピオン。ホップのウールーを使うチャンピオンのわたしなんて絶対に存在しない」

 

 いくら悪夢でも、たぶん、限度があると思う。

 そう伝えたところ、チャンピオンは「ふふっ」と失笑を溢した。

 

「なぁんだ。気付いていたんだ」

 

 チャンピオンが繰り出したウールーは、ただのウールーではなかった。

 

「ホップのウールーは、見分けがつくよ。……見間違えできない。アオイさんが言っていたんだ。悪夢は平行世界を見ているワケじゃ無いとか何とか。だから、悪夢はわたしの頭の中で話で、心の話だ……」

 

 ユウリは、話し続けながら目を閉じて顔を伏せた。

 

「バトルは、ここでおしまいだ……! やっぱりダメだったんだ。未来は、見えなかった。過去も見えなかった。わたしは君を越えることはできないし、君もわたしを越えることはできない。だって、君の本当の6匹目を『まだ』わたしは知らない! だから……だから! そもそも、このバトルは最初から意味が無かったのかもしれない……」

 

「うん」

 

「気付いてたの?」

 

 チャンピオンは「ふぅー」と長く息を吐いた。

 気持ちを落ち着かせるような呼吸の仕方だった。

 

「チャンピオンでもね『越えたいな』、『越えられたらいいな』って気持ちは大事なんだ。……バトルは、もう終わってしまったけど。君はどう? あの調子でわたしを、チャンピオンを越えられそう?」

 

 チャンピオンはパチリとウィンクした。

 弱弱しく微笑んで、ユウリは首を横に振った。

 

「正直なところ何度か『いけるかな?』って思ったけど、難しいね。本当に……難しい。レベルとか相性とか、そういう問題以外のところでね……何度も負けそうだった。あと、わたし、バトル中の顔恐いね」

 

「え」

 

 ふたりとも互いの顔を見つめて、それから、お腹を抱えて笑った。

 バトルのログを見返ししなきゃ、とか。

 売店で売られていた写真を買い占めなきゃ、とか。

 ふたりともジムチャレンジャーのような会話をした。

 

 そんなことを話していたユウリの視界の端で、インテレオンの姿は溶けるように消えた。

 

「……もう、1時間過ぎているのかも。帰らなきゃ」

 

「うん。早く帰らなきゃ。みんな、待っているよ」

 

 チャンピオンは、右手を差し出した。

 それが握手だとユウリは分かっている。

 さり気ない、ただの握手だ。

 けれど、これがふたりの関係の最期だと理解していた。

 

「チャレンジャー?」

 

 躊躇った数秒を取り戻そうとするように、ユウリは彼女の手を両手で握った。

 

「わたしは……きっと、後悔すると思う……!」

 

 祈るように両手を合わせたユウリは、震えた声で伝える。

 わずかに驚いて目を瞠るチャンピオンの瞳に、涙でぐしゃぐしゃになった自分が映った。

 

「君とわたしが同じ人だって、本当に、分かるんだ! 顔が同じとかポケモンが同じとか、そういう理由じゃなくて、わたしの未来の直線上に君がいるって、どうしてか、わたしには分かるんだ! だから、だから……! 君が……今、すごく悔しいことが、わたし……分かってしまうんだ……! でも、分からない。どうして、わたしを笑って送ってくれるの?」

 

『たとえば』の話だ。

 世界が主観に依存するというアオイの観測がユウリの世界にも適用されるのならば。

 ユウリがこの悪夢を現実だと思い込めば。

 悪夢のユウリが現実を現実と思い込めば。

 悪夢の中にいるユウリは、現実に割り込むことができるのではないかと思う。

 

(わたしが、その可能性に気付いているんだ。きっと、チャンピオンだって気付いている)

 

 大粒の涙が、ボロボロとこぼれた。

 ユウリが目覚めれば、悪夢は消える。もう朝日を待つことは無い。

 

 悪夢では、情報が質量として存在するという。

 記憶を失うならば、ユウリは彼女のことを忘れるかもしれない。

 

 忘れてしまうことは形を無くしてしまう事と同じだ。それは、きっと死んでしまうより悲しい。

 彼女のことを覚えていられるのはユウリだけならば、なおさらのことだ。

 

(……アオイさんに聞けばよかった。彼女を、この世界を、そのままにする方法は無いのかな。本当に?)

 

 彼は『選ばなかった』と言った。きっと、彼がジュペッタと歩む世界は消えてしまっただろう。

 でも、本当は選べる未来もあったのではないのか?

 悪夢の作ったこの子と一緒に歩んでいける未来があるのではないか?

 泣きぬれたユウリは必死で考えた。

 

(あの人は7日間をほとんど費やしたから、その方法を見つけられなかっただけで本当は、わたしなら――)

 

 ユウリの手を、チャンピオンは握り返した。

 力強さにハッとして、ユウリは涙に濡れた視界で彼女を見た。 

 笑っていた彼女は、いつの間にか、泣いていた。

 

 大きく見開いた目から涙が零れてフィールドに落ちていった。

 時おり、歪む唇で彼女は言った。

 

「それでも、わたしは選んだ。……ホップを待つって決めている。だから……いいのっ! さっさと行かないとわたしが起きちゃうぞ!」

 

「でも……」

 

 踏ん切りの付かないユウリの肩をチャンピオンがピシャリと叩いた。

 

「さぁ、走って! 未来に向かって走れ、ユウリ! 知らないことが待ち受ける未来へ。振り返らないで……!」

 

 ユウリは、精一杯笑った。強張って苦しい顔だったかもしれない。

 それでも、笑った。

 悲しくて、苦しくて、悔しくて、痛くて、辛い。彼女も同じ顔をして笑っていた。

 

 アオイさんは、選ばなかった。

 彼女も、選ばなかった。 

 だからユウリもチャンピオンの手を放した。

 

「ありがとう……ありがとう! わたし、未来のわたし、素敵なチャンピオンのわたし。さようなら……!」

 

「さようなら、チャレンジャー=ユウリ」

 

 乱暴に涙を拭った後、ユウリは、一歩、二歩と後退し、やがて踵を返した。

 選手出入場口へ走り、その右足は迷うことなく白と黒の境界を越える。

 

 

■ ■ ■

 

 

 ただ、独り。

 フィールドに立ち尽くすのは、いつだって、チャンピオンだった。

 

「さようなら『最も可能性があった時分のわたし』。もう二度と会えないけど、きっと君はわたしに辿り着くよ。だって、わたしもかつて君だったから」

 

 チャンピオン=ユウリ。

 彼女は、チャレンジャーの背を見送り、まだ彼女の感触が残る手を下ろした。

 悪夢は、まだ醒めない。

 

 不意に、誰かの気配がしてユウリはフィールドを見つめた。

 影が物理法則を破り、不思議な動きを見せている。

 煙のように身を揺らし現れたのは、ダークライだった。

 

「なんだ。いたの。……いたのなら、さっさと悪夢を解いてしまえばよかったのに」

 

「…………」

 

 ダークライは、答えない。答えないのなら、どうしようもなかった。

 悪夢の中で作られた自分とはいえ、ダークライの心情は察することができなかった。

 ただ、チャレンジャーが去った方向を見つめていた。

 

 幾分、感情のうかがえる瞳は揺れていた。

 

「……悪夢がわたしの役に立ったかどうか知りたいのなら、あなたも外に行かなくちゃ」

 

 ダークライは、それでも動かなかった。

 ユウリが焦れて、チャレンジャーにしてやったように肩を叩いてやろうと決心した頃に、ようやく彼は動いた。

 

 そして。

 

「これは?」

 

 ダークライが渡してきたのは、使い込まれたグローブだった。

 ユニフォームとおそろいのグローブは、チャンピオン仕様であるユウリのものではない。

 

「チャレンジャーの。ああ、悪夢では質量が情報を持つから置いていったのね」

 

 ユウリもチャレンジャーの出入口をチラリと見た。

 見たところ、ただのグローブだ。けれど、現実世界で失う記憶は何だろう。少なくとも、この悪夢から抜け出すに足るもののハズだが――つらつらと考え続けたところで、答えを知る術のない問いになることに気付き思考をやめた。

 

「ダークライ、ありがとう」

 

 グローブの返却に関してのことなのか。

 それとも、存在のことに関してなのか。

 ユウリ自身、把握しきれない感情で呟く言葉は、たしかに、ダークライに届いたようで。

 

「……! ……」

 

 彼はゆっくりと瞬きすると空気に溶けるように消えた。

 ダークライという管理者を無くした悪夢は、もうすぐ消え失せるだろう。

 

 そんな時だというのに。

 

 眩い照明が一瞬だけ遮られたような気がして、ユウリは空を仰ぐ。

 ひらりと揺れながら風に運ばれてきたのは、チャンピオンのマントだった。

 宙で掴んだ後、どうしてここにあるのだろうと考える。

 

「…………」

 

 ユウリは、戦闘中に邪魔になったので外したことを思い出した。

 わずかに目を閉じた。

 

「……ああ、そうだね。わたしは、チャンピオンだ。わたしの考える最強のチャンピオンだ。だから、最後までチャンピオンでいなきゃいけないよね」

 

 マントを羽織り、結ぶ。そして、顔を叩く。

 最初から最後まで、ちぐはぐな観客は、チャンピオンに呼応するように大きな歓声を上げた。

 

「ベェーっ」

 

 柔らかな声を上げ、フィールドの草を食んでいたウールーが駆けていく。

 

「おいで、きみ」

 

 ユウリは、手を差し出す。

 しかし、ウールーは一瞥もせず彼女の隣を通り過ぎた。

 

「……やっぱりだめか。君は、ホップのポケモンだからね」

 

 ウールーの姿を見つめていられるほどユウリは大人ではなかった。

 だからこそ。

 世界の全てに見捨てられてしまったような気持ちになって、ユウリは泣いた。

 

 歓声が、すこしずつ、すこしずつ、遠ざかるように消えていく。

 悪夢の終わりは近い。

 

 終わりだ。

 終わりなのだ。

 何もかも、終わるのだ。

 

 ユウリは、体が震えた。涙は拭っても拭っても溢れてくる。

 まばらになる拍手に耐え切れない。耳を塞いでしまいたい。

 

(ああ、どうして、どうして、わたしは……!)

 

 今さら、チャレンジャーを突き飛ばしてしまえばよかった、と思う。

 今でさえ、間に合うのではないか、なんて手遅れなことを考える。

 

 ユウリは、現実を選ばなかった。

 

 待ちたい。

 意識ある最期までホップを信じたい。

 勝ちたい。

 全力で挑み来る彼に、今度は、今度こそ、憂いなく勝ちたい。

 

 握り続けたチャレンジャーのグローブが消失した。

 

「ベェーっ、ベェーっ」

 

 何かを呼びかける声に、ユウリはチャレンジャー出入口へ目を向けた。

 その先で。

 

「あ……」

 

 明るく笑う少年を見た。

 だから。

 ユウリは恐怖で引き攣った顔でさえ笑えたのかもしれない。

 

「…………遅いよ」

 

 肩の力が抜ける。脚は今にもフィールドに着きそうなほど、ぐらついた。

 初めてのバトルを迎えた時以上に、体は震えている。

 

「そうか?」

 

 聞き慣れた声に、ユウリは答えた。

 見つめ合うだけで――チャレンジャーのユウリがそうであったように――声は震え、喉の奥で言葉は絡まってうまく話せない。

 

 彼がもう一度、挑んできたらどんな言葉をかけるべきか。

 考え続けていた成果は、色褪せているように感じた。

 

 わたし達は、ライバルだ。

 ならば、必要なことは決まっていた。

 

「チャレンジャー、チャンピオンは君の名を知っている。だから……だから、君は、わたしの名を呼ぶといい……!」

 

「ああ、チャンピオン――いいや、ユウリ! オレはお前に勝負を挑むぜっ!」

 

 琥珀色の瞳をキラキラと輝かせて、ライバル――ハロンタウンのホップは、自信満々に笑った。

 

「その勝負、ガラルの頂点が――いいえ、ライバルのわたしが! 受けて立つ!」

 

 腰のベルトホルダーを探れば、そこにはボールがあった。

 見なくとも触れて分かる。

 このボールは、必ず先鋒を任せているアーマーガアのものだ。

 

 ユウリはマントを捨てた。

 

「ありがとう」

 

 手の中で滑り落ちていくマントへ呟いた。

 重責は誇りだった。このマントが象徴するものは栄光。ダンデを目指した誰もが憧れる夢だった。

 だが、もう要らない。持っていられない。もうチャンピオンを名乗らなかった自分が持っているべきものではなかった。

 

 やがて。

 ユウリは、涙でくしゃくしゃになった顔で宣言する。

 両手を広げて、まっすぐにライバルを見つめた。

 

「背番号を越えて、わたしは輝き続けたっ! 今は、ただのユウリ! さぁ、ポケモンバトルしよう、ホップ!」

 

 涙に揺れて沈む世界でホップがボールを投げたのが見えた。

 ユウリは、バトルの最中に瞬きをしない。

 だから涙が止まらなかった。

 

「ずっと、ずっと、待っていた……!」

 

 ここは悪夢で。

 

「ずっと、ずっと、バトルしよう!」

 

 ただの幻で。

 

「もう、ずっとずっと! たとえ世界が終わっても!」

 

 どこにも繋がらない世界だけど。

 

「あぁ、なんで、でも、どうして、こんなに幸せなんだろう……!?」

 

 ここには、わたしがいる。

 ここには、ホップがいる。

 

 生きている。

 

 たくさん泣いた。たくさん笑った。

 夢に、破れて、あるいは、叶えた。

 

 たったひとりの挫折が、わたしを変えるというのなら。

 たったひとりの成功が、わたしを変えてしまえるのだ。

 

『チャレンジャーのわたし』は、未来へ行くだろう。

 ひょっとしたら『チャンピオンのわたし』が辿り着けなかった遠いどこかまで行くのかもしれない。

 きっと、そうだ。あの子は、可能性の塊だ。どこにだって行ける。

 ならば、わたしは? 

 

 まだ、終わっていないわたしは、どこへ行こうか。

 

 涙を拭った。

 もう、ユウリは泣いていない。

 彼の名前を呼んだ。

 そして、ずっと温めていたことを今伝えよう。

 短く息を吸った。 

 

 ホップ、ねえ、このバトルが終わったら、わたし達、旅に出よう。

 次の夢を見つけようよ。

 ふたりなら、きっと、素敵な夢が見つかると思うんだ。

 

 

■ ■ ■

 

 

 

「悪夢は観測を終了した」

 

 アオイがそれを呟いた時。彼は立ち歩き、ポケモン達へ指示まで出していたが、意識は眠りの淵をふらふらしていた。

 我に返り「私は何を言ったのか」と口を押えて記憶の端を探る頃、背後の木々から揺れる音が聞こえた。

 

 これが第三者だったら、そろそろアオイも忍耐の限界だ。

 体力さえあれば杖で殴り掛かってしまうだろう。その体力さえ無いのが目下の問題であるが。自分の挙動を冷静に分析しながら振り返る。

 

「起床! しました!」

 

 元気の良い少女の声だ。

 即座に反応したのは、やはりと言うべきか、少年ホップだった。

 

「ユウリ!」

 

 アオイを押しのけるように茂みに飛び込んだホップはユウリと見つめ合う。

 

「ホップ!? ホップ!? あ、あれ、あれれ……なんでここに?」

 

「なんでって、ユウリが呼んだから来たんだぞ!? 大丈夫か? な、なんで泣いているんだ……」

 

「え? え……? あれ……なんだろ、別に、悲しい夢じゃなかったのに……」

 

 枕にしていたアオイの鞄から体を起こす。

 ホップに指摘されて自分の頬がひどく濡れていることに気付いた。

 

「だいじょうぶっ、なんだけどな……っ……」

 

 息が切れている。

 肩で忙しく呼吸をした彼女は、辺りを見回して、とりあえずいつも被っている帽子を手に取った。

 

「――体調に問題はあるかい? 頭痛、吐き気、眩暈……症状は?」

 

 アオイは、まずはホッとしてユウリに声をかける。

 そして、ミアカシとリグレーに指でバトルの中止を伝えた。

 

「え、と……大丈夫ですっ!」

 

「よろしい。1時間3分だ。3分ね、3分……。まぁ、誤差、ということにしておこうねぇ」

 

 強い口調で言うとユウリは「はい、ひゃい」と小さくなった。

 

「ユウリ、本当に大丈夫か? コイツがずっと邪魔をしていたんだ」

 

「ホップ、だ、大丈夫だから。それにこの人はシンオウ地方から来た研究者の人で……えと」

 

 ユウリの言葉が途切れる。

 その顔が、驚きで彩られる頃。彼女はパクパクと口を動かした。

 

「あ、あれ!? どうして、さっきまで覚えていたのに! この人は、イッシュ地方の出身で……今はシンオウ地方の……えーと、えーと……」

 

 思い出せないと頭を抱えるユウリを見て、アオイは一足先に理解にたどり着いた。

 

「……ああ、なるほど。君が捨てたのはそれか。……彼にしては珍しい、機転を利かせたようだ。ミアカシ、リグレー。帰るよ」

 

 ミアカシが鞄をサイコキネシスで操り、アオイの前に浮かせた。

 それを掴む。彼はふたりに背を向けた。

 

「待って! 名前をもう一度、教えて――」

 

「機会があればもう一度、君の前に現れるさ。どうも私を放っておいてくれない彼がいるものでね。名乗りは遠慮しよう」

 

「じゃあ、わたしもいま伝えます。たくさんアドバイスをもらってしまったので」

 

「伝える? 何を?」

 

 ミアカシがアオイの肩によじ登ろうとしている。

 それを杖を持つ手で支えながら、アオイは彼女の言葉を待つ。

 

「『通り越してしまったら、巡って、また始めればいい』って」

 

「…………」

 

「そして、次の夢を探そう。わたしは、そうすることにしたみたい」

 

 予想できなかった言葉は、アオイと親愛なる友人との関係についての話だった。

 それに、『ありがとう』も『余計なお世話だ』とも言い返せない時点で、アオイは敗北していた。

 

 思えば、きっと最初からなのだ。彼女にあれこれと先人面をして話せるような人物でないことをアオイは自分自身誰よりも知っている。助言をもらってしまったのはこちらのほうだ。口の端を緩める。わずかに滲む自嘲は、きっと年若い彼らには悟られまい。アオイはリグレーの手を取った。

 

(彼女は『振り切ってしまった』か。焦げ付くより、よほど良い。……青春、いいや、成長だな、これは)

 

 テレポート直前、振り返った先で二人が互いの無事を確かめるように抱き合っている様子が見えた。

 

(まぁ、私が多少は役に立ったのなら……これは、これでよかったじゃないか)

 

 ひそやかに笑う。

 きっと、アオイの大切な友人もそう思ってくれるだろう。

 ……たぶん。……きっと。……アオイの思う、半分くらいは。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 コール音は、いつも短い。

 

『――もしもし』

 

「私だ」

 

 今日もワンコール鳴り終えない間に彼女はアオイのかけた電話に応答してくれたようだった。

 リグレーのテレポート先は、まだルミナスメイズの森の中だった。

 しかし、霧の動く方向が見える。モバイルを耳に当てながら、明るい方角へ彼は歩いた。

 電話先の彼女には戸惑う様子がうかがえた。

 

『あぁ、君か。いつも夜に電話がかかってくるから、すこし驚いた。研究旅行は順調かな?』

 

「それはぁ……そうだな……」

 

 穏やかな声音に、これより不穏な話題をしなければならないことを考えるのは、憂鬱なことだ。

 アオイは彼女の声を聞きながら『そうだ、私は研究旅行に来たのだ』という目的を思い出していた。しかし、今回の旅では目的を達せられないだろう。既に認めざるを得ない状況でもある、なんてことをまるで他人事のように分析していた。

 火の無いところに噂は立たず。また、無いモノを証明することはできない。

 

「どうやら私のレポートは白紙のまま、君に提出しなければならないらしい」

 

『――君、さては「とても良いもの」を見たのだね? しかし、それは同時に怒りを感じるものでもあったらしい』

 

 世間話の軽さで呟いた言葉を彼女は、よく理解してくれた。

 だが、心の機微を見透かされたような気分は、どうにも居心地が悪い。

 偏屈で神経質な青年の機微は繊細だった。

 

「エスパーか? 君は」

 

 数トーン低くなった声に、彼女は怯むこと無く応えた。

 

『そして、いま君は左上を見ている』

 

「君、どこかで見ているのではあるまいね……!?」

 

 アオイは焦点を左上からあちこちに動かして辺りの様子を探った。

 もちろん、辺りには誰もいないのでミアカシの焔はアオイの動揺以外で揺れていなかった。

 

『えぇぇ、当たったの? まさか。君、ちょっと狼狽えすぎじゃない?』

 

 電話の向こうでクスクスと笑う声が聞こえる。

 すっかり手の平で転がされている気がする。アオイは口の端を歪めた。

 

「荒事に関して君ほど肝が据わっていないものでねぇ。やはり君も……。すまない。こんな話をしている場合ではなかった。緊急用件で連絡をしたのだ。予定を変更してこれから帰る。これ以上の長居は、不都合が生じる」

 

 電話の向こうで彼女がキーボードを叩く音が聞こえた。

 ふぅん、と軽く鼻を鳴らす。

 

『いいだろう。了解した。飛行機の席をおさえておこう。確定したら件をメールする。現在のところ、最速予定到着時刻は28時間後だ』

 

「よろしい。あ、いいや、間違った。このような時は、こう言うべきだろう。『頼むよ』」

 

 ――あと28時間、私は眠れないのだ。

 考えると頭痛を覚え始めたこめかみがシクシクと疼いた。そのことを察したように彼女は言った。

 その声音は、ささくれ立つ心を手の甲で撫でるようなものだった。

 

『しかし、辛そうだね。3時間以内に移動できれば、19時間後の便に間に合うかもしれないが……どうかな? 動けそう?』

 

「試してみよう。タクシーがつかまればあるいは、という状態だが」

 

 アオイは、辺りを見回してラフテルタウンまでの看板を見つけた。

 

『それじゃあ頑張ってね。思ったより君に早く会えそうで、わたしも嬉しいよ』

 

 弾んだ声に「ああ」とか「うん」とか、曖昧な返事をした後のことだった。

『今回の旅は君も来るべきだった』と。言ってしまいたい気持ちが募り、アオイは言葉にする機会をうかがった。

 

『通り越してしまったら、巡って……そこから始めればいいんだから』

 

 ユウリの言葉が、残響のように耳の奥にある。

 彼女にその言葉を伝えなければ、この余韻は消えてくれないのだろう。そんな予感があった。

 この言葉を受けたとき、その隣に彼女がいてほしかった、とアオイは思う。――独りで真に受けるには、眩しい。あれは、すこしばかり強過ぎる言葉だったのだ。

 思案のためのわずかな沈黙の間に、彼女は言った。

 

『君は、よほど良いものを見、触れたらしい』

 

 彼女は、アオイの旅の総括をそのように裁定した。

 ユウリとホップ。彼らの旅路は、きっと多くの人に祝福されることだろう。

 

「あぁ、そのようだ」

 

『あぁ、口惜しいこと。君の見ているものをわたしも見たかった』

 

「それは、なぜ?」

 

『君が知っていて、わたしの知らないものがあることに慣れたくは無い。ええ、ええ、そう。わたしは』

 

 憤りを感じられない彼女の声音は、それでも不穏を感じさせるものだった。

 

「いっそ不愉快だと言ってくれないか?」

 

『いいや、別に不愉快でもないさ。個の存在を確立させているのは秘密の有無であり、有無を許容することが信頼の形でもあるのだから。ただ、それはそれとして。不安で仕方が無いのだ。あぁ、気が狂いそうになるだけでね』

 

「君には苦労をかけてしまうね。我々は常に対等であり、誠実であるべきなのに」

 

『ええ。でも、成長することは好ましいことだ。――もっとも、わたしの目の届かないところで起きなければ、という前提があるのだけど』

 

「君の心配は杞憂だ。新月の日に満月を臨むほどの杞憂だ。何も変わりはしない。せいぜい不眠でハイになっているくらいでね」

 

『ふふふ、そうみたいね。でも、気になるな。誰に何を言われたの? 何も手出しはしないけれど、しない、しないけれど、気になるね』

 

「……いい感じに会話が終わりそうだったじゃないか」

 

『終わらないよ。わたしはね、本当は一瞬だって君から目を離したくないんだ。君のことが大切だから。ええ、とても大切なんだ』

 

 彼女は今、長い電話コードを指でくるくる巻き取りながら話を聞いていることだろう。

 準備していたかのように滑らかな言葉の群れだった。

 

「ありがとう。私も君が私を想ってくれるように、君のことを大切に思っている。ただ、君は私のことを心配し過ぎる……」

 

『心配くらい好きにさせてほしい。君の意向に、わたしは口を挟まないのだから』

 

 気持ちを整えため、小さく息を吐く。

 そして、伝えた。

 

「単純で簡単なことを言われた。『通り越してしまったら、巡って……そこから始めればいい』とね。私は答える言葉が見つからなかった。でも、君なら何と答えただろうかと。気になってしまってね」

 

 彼女には、迷いの多いアオイの言葉でこれを指し示すのが彼と彼女自身の関係と分かっただろう。

 数秒の沈黙があった。

 永遠にも感じる、ひどく遠い感覚だった。

 

『ははは。なんだ。そんなこと。そんなことだ。こんなことは。わたしは、わたし達は、もう、決まっている』

 

 穏やかだった彼女の声音に荒々しい感情が混ざり合った。

 ――何が決まっていると言うのか。

 アオイは彼女の言葉を待った。

 

『完全なる解答を伝えよう。「不要だ!」と。わたしと君は、通り越してなどいない。まだ終わっていないし、諦めてもいない。君の夢も、わたしの信念も、我々の感情も認識も、まだ何も終わっていない! あぁ、終わらせることはできるだろう! 君が望めば、わたしはそうしてくれよう……!』

 

「君は……」

 

 明白な怒りの声に、アオイは驚いた。

 あの言葉を伝えた後は、もっと、諦めきって冷めきった――そんな感情が現れると思っていたのだ。

 彼女を侮っていたワケではない。軽んじていたワケでもない。

 けれど、長年一緒に過ごしていても、彼女の反応は意外だった。

 

『いま君の隣にわたしがいないことは幸いだ! そんなことを聞かされたら、わたしも君も共に再びシンオウの地を踏むことはなかった!』

 

「怒ってる?」

 

『分かりきったことをわたしに聞くのは、賢明な判断とは言い難い。わたしの忍耐を試したいのなら面と向かって言うがいい。これまで培った友情を賭けて、君との関係を清算して見せよう』

 

 明るい声で言っているが、これは重傷な感想だった。ふたりは親友で言うなれば『一蓮托生、死なば諸共、骨はその辺に魂よろしく』の仲だった。かなり頭にキているらしい。

 

 彼女は、普通、穏やかな性格だ。アオイの夢を支えてくれる大切な隣人だ。

 だが、アオイは知っている。心病むほどの善性をもって凶行を辞さない彼女の強さを。

 

「すまない。私は、君が怒るとは思わなかった。……すまない。私は、この件について、自信が……無かったんだ」

 

『……君の言いたいことは分かるよ。理解もしている。ただ、これはわたしから切り出すべき話題ではないと、ずいぶん前に判断していた。判断は今も変わらない。わたしは、君のことを大切に思っている。夢と理想は喰い合わせが悪いものだ。どちらも限られた願いの内実の問題なのだから』

 

「そうか」

 

 しかし、とアオイは逆説を考える。

 彼女は、問題の有無を明らかに断定し、事態の継続を意味した。

 そのことに彼はひどく安堵した。

 

(『通り越した』と思っていたのは私だけで、彼女は何も『通り越した』と思っていないのだ)

 

 アオイは、もう長らく触れていない傷は膿んで醜い瘡蓋になってしまったと思っている。

 しかし、彼女は違う。

 彼女にとって、アオイとの関係は、最も古く最も新しい、傷なのだ。

 

「私は、君に『好き』とも『愛している』とも言えない。だから、なんというか、この件に関しては……すっかり厭きられているのかと思い込んでいた」

 

『君の言葉が足りないことは、今さらのことだ。もっとも、手には余しているかもしれないけれど――』

 

「いいや、そうでもないらしい。待て……聞き逃せない言葉があった」

 

『え?』

 

 すこしだけ、彼女の波立つ感情が凪いだ。

 アオイは言い聞かせるように言った。

 

「完全証明だ。パンジャ、君が私の手に余らないと証明しよう。一切の矛盾無く、弁論の淀み無く、君の抱く解釈の余地を排してみせよう。だから……もうすこし待っていてくれないか」

 

『君のためならば永遠に待てるよ』

 

「脚は悪いが腰まで抜けた心算は無い。そ、そこまで待たせないが……」

 

『そう? それなら、愉しみにしよう。熱烈な台詞をいただいてしまったことだ。いろいろと準備が必要だ』

 

「準備だって?」

 

『わたしは、この期に及んだ君を逃がさないし、君は逃げられないということだ』

 

「ああ、そういうことか。心配しなくとも君が心優しい人だということを私は知っている。それに私は……君となら、あの、その……あぃ、ぇ……」

 

 アオイはうっかり「愛とか恋とか学べるのではないかと思っている」と言いかけて、言葉の信用ならない薄っぺらさに驚き、口を噤んだ。電話の向こうで「何だ、言えよ」とか「そういうところだよ」という、親しみがありながら有無を言わせない圧を感じた。

 

「と、ともかく、穏やかな会話となることを祈っているよ。ああ、できるだけ早く帰る努力をしよう。19時間より先に君に会いたい。パンジャ、私の親しい人、恋しい人」

 

『了解した。君から聞き出すことが多そうでわたしは嬉しいよ」

 

「どういう意味だ」

 

『君とお話しできることが、わたしは何より楽しいんだよ。他意など何も何も……さぁ、気をつけて帰ってきてね。アオイ、わたしの親しい人、愛しい人』

 

「ありがとう。すぐに帰る」

 

 通話が途切れた。

 ふぅー、と長い息を吐き、アオイは両手を頬を挟んだ。

 

 長年、積もった宿題を一夜で片付けたような……そんな気分だ。

 いや、彼女に対してそういう感情を持つのは罪悪感がある。重荷と思っているワケでは無いのだ。ただ、アオイ自身の感情の整理整頓がうまくいかずに不可解で杜撰な処理を起こしてしまっただけだ。

 

 人は、それを恋と呼ぶのだが、今の彼の知らないことだった。

 

「はぁぁ、熱い……」

 

「モシ、モーシ」

 

 ミアカシがふわりと浮かんでアオイのそばに来た。

 珍しい感情の振れ幅に、彼女はただ事ならぬ気配を察したようだった。

 指先で温かく柔い身体をくすぐり、お礼を言った。願わくば、名前の知らない感情が彼女にとっても美味しいものであれば良いと思う。

 

「あぁ……ミアカシ、私の大事な可愛いお嬢さん。ありがとう。バトルで、遊びすぎるのが君の玉に瑕だが……いいや、まぁ、遊びは重要だ。よく遊ぶと良い。ちょっと景気よく私を燃やしがちだ。そういえば、魂に節約の概念があるのだろうか? ともあれ、通りすがりのボクレーに『はじけるほのお』を挨拶代わりにぶつけるのは、贔屓目にどう見ても、目に余るのでやめなさい」

 

 いつの間にか森の端まで来ていた。ラフテルタウンのスタジアムが見える。

 アオイが一息吐いて足を止める頃、ミアカシは、お腹が減ったらしい。しきりに鞄に手を伸ばしたがった。

 

「あぁ、リグレーが持ってきてくれたきのみがあったね。……リグレーは? いい? 気が向いたら食べると良い。私もひとついただこう。眠気覚ましにちょうどいいだろうさ。――ん?」

 

 きのみをふたつに分けて、ミアカシの小さな手に乗せる。

 がぶりと噛み付いたアオイは、舌を刺す酸味が少ないことに気付いた。

 

「アタリだね。甘いじゃないか……」

 

 嬉しそうにきのみにかぶりつくミアカシに目を細めて、アオイも一口にきのみを食べた。

 探していた彼を見つけたからだ。

 

「出てきたまえ、ダークライ。ところで、何か釈明があるのだろうね? 私はあるよ。一冊、分厚い本が書けそうだ」

 

 風も無いのに揺れる木々の影を杖で小突いたアオイは、予想通りに現れたダークライと見つめ合った。

 感情の読みにくい彼の目は、今日はことさら読みにくい。

 ミアカシが「ひさしぶりー」とでも言うかのようにアオイの腕の中で手を振った。それに律儀に対応した彼に毒気を抜かれてアオイは肩を落とした。

 

「ユウリさんの命を思えば、二度とこのようなことが起きないよう君へ説教すべきなのだろうな、私は。……けれど、私は、正しい人間ではない。命よりも夢を選んでしまっているから、君への説教など形ばかりのものだ。そもそも、私は君のトレーナーではないから、指示だって強制力を持たない」

 

 アオイは、ダークライの突発的な行動に憤りを覚えていたが、それを叱ることはしなかった。

 意味が無いからではない。互いの利にならないからだ。

 

「君だって楽しみは必要だ。……あの子が、欲しくなったのか?」

 

「…………」

 

 ダークライは答えず、アオイの影の中にもぐってしまった。

 バイバイと手を振るミアカシの身体を撫でる。

 アオイは、後ろ髪を引く風を感じて森を振り返った。

 

「あの子は、悪夢の中で大きく成長したようだ。悪夢を見て、嫌悪以外の感情が生まれたのなら……そうだね……私たちの研究には、価値があるのだ。必要としてくれる人がいる限り、歩みを止めることはない。君が生きている理由も、受け入れてくれる人も、この先で見つかるだろう」

 

 少女達がねがいぼしに懸けたように、彼は未来の人へ願いを懸けた。

 森は呼吸するように風を吸い込み、木々を揺らす。

 結った髪を背に払い、アオイは霧を掻いた。

 

「ルミナスメイズの森に風が吹く」

 

 だが。

 

「風見の赤いトリは廻らない」

 

 振り返らずに歩むことができなかった。

 誰よりも、ほんのすこしだけ心が弱かった。

 全てを捨てるよりも、次の一歩が恐かった。

 そんな私達は、夢と現の間に選ばなかった未来を見る。

 

「さぁ、帰ろう。愛しい恋しい我が家へ。……良い旅だった。ああ、良い旅だったとも」

 

 ここではないどこか。

 今ではない、いつか。

 

 悪夢は幸せで残酷な世界を見せてくれる。

 それでも人は、ポケモンは、それさえいつか思い出に変えて生きていくのだ。

 

「……待ってくれている人がいるのは、存外、嬉しいものだな」

 

 ユウリ。あの少女は未来の朝日を迎える勇気が、すこしだけ足りなかっただけなのだ。充足すれば、もう振り返ることは無い。目を開いた先に、遠くとも確かな可能性があると信じて歩くだろう。

 

「Best Wish!」

 

 ありふれた祝福をガラルの地に捧げる。

 杖をつく青年の姿は、ラフテルタウンの砂塵に紛れて消えていった。

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

「今日はね、ホップとお話がしたくて連絡したんだ。うーん、最近って会ってもバトルの話ばっかりで、何だか、普通のお話をしてなかったなぁって思ったんだ」

 

「……そうか」

 

 カレーの味見を済ませた。

 炊きあがったライスを皿に盛りつけようとして、ホップと目が合った。

 二人でカレーを食べる時はいつもホップがライスを担当していた。

 

「来てくれて、ありがと」

 

「近くまで来ていたからな。……でも、人助けだとしても危ないことしたらダメだぞ」

 

 そう言うホップの言葉は、勢いがない。

 今のユウリと同じように、旅立ちの前に『まどろみの森』へ立ち入って怒られたことを思いだしたのかもしれない。

 

「うん。気を付ける。ホップもね」

 

 ウィンクして見せたユウリは、カレーをよそった。

 匂いにつられた互いのポケモンが完成を喜んでいる。

 

「さっそくごめんね。わたし、バトル以外のことを話そうと思ったんだけど……バトル以外のことで話すことって意外と無いかも」

 

「おいおい……」

 

 人を呼んだのに?

 ホップがあきれ顔で肩を落とした。

 

「ごめん。わたしってバトル以外はつまらない子かもしれない……!」

 

「いいや、見てるだけで面白いぞ」

 

 冗談めかして言い合い、ふたりで笑った。

 もうずいぶんと長い間、こうして笑うことができなくなっていたように思う。

 

「あぁ、なんだか、久しぶりに大笑いした……! あのね。わたし、ホップに聞きたいことがあるんだ」

 

「あらたまってどうしたんだ?」

 

 ホップは、きょとんとしている。

 ユウリは、バトルのフィールドに立った時のように身体が緊張している。ぎこちない動きでカレーライスをホップに差し出した。

 

「わたしは、ポケモンバトルで負けたことが無いんだ」

 

「負けたことが、無い……?」

 

 ホップは、目を開き薄く口を開いたまま、ユウリの言葉を繰り返した。

 昨日の夢で訊ねたことを、ユウリは現実でもう一度、彼に聞こうと思う。

 

「バトルならわたしは勝つよ。わたしは強い。誰にも負けない。……ホップはさ、それでも、わたしに勝つまで挑んでくれる?」

 

 質問は、ユウリにとって、とても『気がかり』なものだった。

 夢の終わりを彼は、どのように見ているのか。

 

 チャンピオン=ユウリは、チャンピオンになる以前、ホップに勝負を譲ろうとして失敗した。次は、わたしの番だ。

 

 ホップは、ユウリが握るカレーの皿を手に取った。

 

「ユウリ。オレ達は、ライバルだ。ふたりで鍛え合って、そしてチャンピオンになるんだ! どっちがなったって、おあいこだ。お互い、今だってそうだ。頑張っているんだから。……だから、あたりまえなこと、聞くなよ」

 

 ほんのすこし、最後の言葉には苦い感情があった。

 ユウリは、それに気付かないフリをする。その感情は、ユウリの手に負えないものだとうっすら分かる。きたぶん、ホップとチャンピオンの兄弟と言う特殊な関係性、個人的な関係に関わることなのだ。

 

「……そっか」

 

 悪夢の中で聞いた答えとは、ちょっぴり異なる。

 その差異が、ユウリは、嬉しい。

 

「うん! そうだよね! そうだよね! よーし、元気出てきたっ!」

 

 ユウリは、我ながら単純でどうかしていると思う。

 それでも。

 

「カレー、食べ終わったらバトルしよう」

 

 カレーを一口食べた後で、ホップはまっすぐにユウリを見つめて言った。

 思いがけない提案にユウリは咽た。

 

「えっ。いいの?」

 

「……オレは『負けたくない』じゃなくて『勝ちたい』って思うんだ。手加減したら、絶対ダメだからな! アニキもどんな小さい子にだって、バトルになったら容赦しないんだ」

 

 大人げないったらっもう!

 彼は唇を尖らせてぽつぽつと話す。

 これは、ユウリの知らないチャンピオンの話だった。

 

「チャンピオンもそうなんだ……」

 

 食べ進めたカレーは、もうすこしで半分無くなってしまう。

 食べ終わったら、約束通り、ユウリはホップとバトルするだろう。

 

 だから。

 

 もう一杯、食べてしまおうか。

 もうすこし、もうすこし、もうしだけ。このままでいたい。

 ホップと談笑しながら火を囲む、穏やかな午後を過ごそう。

 

「ホップ、おかわりする?」

 

「する!」

 

 この光景が、いつか大切な思い出に変わっていくことを信じて、わたしは生きて行こう。

 そして、いつかチャンピオン=ユウリが届かなかった未来へ行きたい。

 

(あっ)

 

 不思議な霧に包まれ、薄暗い木々が揺れる。ユウリの前髪も、風に揺られていた。

 

 ここは、ルミナスメイズの森。

 

 風はユウリに吹いていた。

 




■■■あとがき■■■

 ここまで、お読みいただいて、とても嬉しいです。ありがとうございます。ついでに感想をくれると、ぼかぁ、すごく嬉しい。筆者の長文乱文怪答が怖い人はマシュマロを開設しているので、そっちで投げつけてください。のたうち回ります。

 さて。本作は、ムゲン団に着想を得ています。筆者が「主人公の成長にピントを合わせるとこのような話になるだろうな」というモノを形にすることができたので(出来はともかくですが)ひとまず完結できてホッとしているところであります。

 元々、3話構成の短編として作っていたところ、膝に『薄明の翼』を受けてしまい、すこし長くなってしまいました。初期構想では、悪夢について丸々カットでユウリとアオイがカレーを食べて終わる作品の予定でした。

 ゲームの主人公は、現実世界の我々のアバターであるワケですから、その強さの表現にとても苦労しました。ユウリの「自分に風が吹いているから勝つ」という"勝因"は、現実世界でもままあることなので、理解できなくもないというラインに乗せられたのかな、と個人的に満足しています。

 悪夢の中のユウリは、ムゲン団のユウリが辿り着く一つの結末のつもりで書いています。わりとハッピーエンドなんじゃないでしょうか。なお比較対象案件。(ムゲン団って何かって? グラビティでしめりけのある何かだ)

 もし、筆者がムゲン団をガッツリ書くとしたら、やはりゲーム本編終了後、5~10年後くらいでジョン君(薄明の翼の登場人物)をメインにして書くのが、話をまとめやすいのかな、とか思っています。雪原が来る前に誰か書いてくれ。

 本作のオリジナル登場人物、アオイと最高に仲の良い親友のパンジャの話は『もしもし、ヒトモシと私の世界』でやったので、興味がある方はぜひご覧いただければと思います。読了には9時間くらいかかります。わぁ。

 今回、ポケモンバトルの描写をするにあたり、剣盾で新規登場したポケモンのみで構成しようと思い、設定を作りました。設定の中から、バトルが面白くなりそうなポケモンを選んだワケですが、まぁ、せっかく作ったのでね……。文面を整えて8月21日夜、後書き下部に更新予定です。

 作中では「くどいかな」と思い、マルヤクデとアーマーガアの紹介のみに留めましたが、感想での指摘を受けて今後に活かしたいと思います。



■■■ユウリのポケモン一覧■■■
 フォクスライ:ユウリは悩んでいた。ホップにはふわふわのウールーがいる。自分にもふわふわのポケモンがいてもいいのではないかと。そこへ現れたクスネ。ユウリは迷わなかった! ……ふわふわではないけれど、つべつべして、手触りがすごく良い。
 ウオノラゴンとパッチラゴン:正直、姿を見た時はウカッツが手順を間違えたのかと思っていた。しかし、カレーを食べて楽しそうにしている姿を見ているとこの子達を幸せにしたいと思うのだ。
 ブリムオン:エスパーというタイプのせいか、あるいはポケモンの特性がそうさせるのか。できれば二人きりになりたい子のようで、すこしだけ他のポケモンとの接し方に気を遣わないといけない。夕暮れに川岸を散歩するのが好きらしい。とても好戦的。放っておくと固定砲台のようになってしまう。体重5kgを確かめようとユウリは接近を図ったが……。
 イエッサン:バトルの前にお辞儀する。ユウリもつられてお辞儀をすることがある。あまりバトルは好きではないようだが、一度波に乗ると止まらない。

■■■さいごに■■■
 ここまでお読みいただきありがとうございます。
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