強者の軌跡-before come Sanraku   作:リン(4030)

2 / 3
ペンシルゴン編-プロローグ2

「「「姉御、クエストの受注ご苦労様です!」」」

 

「は?急に姉御呼ばわりって何なのあんた達。帰ってきてそうそう私を混乱させてキルしようっていう罠なわけ?」

 

サードレマ付近、阿修羅会のアジトに戻ったペンシルゴンを待ち受けていたのは変なことを言ってる変な奴らの集まりだった。彼らは阿修羅会のメンバーの中でも若手のメンバーたちである。彼らにとってペンシルゴンは先輩であると同時に格上の存在として認められていた。なのでたまに悪ふざけで姉御呼ばわりする奴がいないこともなかったが…。

 

「ハハハハハ!姉御の戸惑った顔はなかなか見れない分見れた時は笑えるぜ」

 

「ああ、ペンシルゴンのあほ面なんてそうそう見れるものじゃないからね。レアものだよ」

 

ペンシルゴンがそちらを向くと、阿修羅会のクランリーダーであるオルスロットとこのクランの三位のPK、京極(キョウ・アルティメット)がペンシルゴンに指を指して笑っていた。

 

「ほうほう、あんたらの仕業っていうわけね。つまらない真似してくれて…キルしちゃうぞ♪」

 

ペンシルゴンは現実なら額をひくつかせるような怒気を放ちながら答えた。京極はそれを大したことでもないように流したが、若手のメンバーたちとオルスロットは腰を引かせた。

過去にぶちぎれたペンシルゴンによってクランメンバーの大半がキルされるという事件があったからである。彼らをキルした相手がだれだろうがプレイヤーキラーがPKKされたことに変わりはなく、彼らの所持金やアイテムは根こそぎ罰金として持っていかれたのだ。阿修羅会の面々のお財布事情もキルされたという悲しい事件である…。

 

「ま、まぁまぁ落ち着けよ姉貴。とりあえずこっちも確かにユニークシナリオEXを受けたぜ。1月に1回とはいえ毎回同じような話を聞くのは面倒だからな。助かったぜ」

 

シャンフロのシステムでは、パーティリーダーがが発生させた依頼が同じパーティメンバーにも発生し、リーダーさえ条件を満たせばクエストの受注するが可能なのだ。そこでユニークモンスター「墓守のウェザエモン」に挑むのに必要なユニークシナリオを、パーティリーダーであるペンシルゴンが受けることで他のパーティメンバーもアジトにいながらウェザエモンに挑む権利を得たのである。

 

「墓守のウェザエモン」は阿修羅会が秘密裏にしてきたユニークモンスターであり新参者においそれとユニークシナリオの受ける条件を話せない、というのが阿修羅会の決定であり同時に若手の育成のために使えるという判断の両立のために面倒なクエストの受け方でやっているのである。

彼らが今アジトに集まっているのはこれから攻略方法のミーティングを行うからである。

 

「私が説明とかするけど、セツナから特に新しい情報はなかったよ。

私達が「墓守のウェザエモン」について分かってることを話すと、まず開戦初っ端から私たちのレベルを50まで下げてくる。スキルも魔法もステータスも50レベルまでのものになっちゃうのよ。ここにいる全員がレベルはマックスの99だから、これの対策方法とか教えて欲しかったんだけどねぇ。…ひとまず情報の共有を進めるね。ウェザエモンはいわゆるスーパーアーマーで攻撃しても怯みはなし、あっちの攻撃が当たったらこっちは基本一撃死。それぞれの技については後で説明するとして、先日登場したあのダンプカー馬。あれの対策を今日は考えたいのよ。」

 

ペンシルゴンはそう言ってインベントリから1つの宝石を取り出した。それは「録映の眼珠」というものでありシャンフロにおける録画アイテムである。それは「墓守のウェザエモン」との戦いを録画しており、まるで色を反転させたような()()()()()()()()が輝いている様子を映していた。またその場には満開の桜の木が1本ありその根元に誰か墓標が、そしてそれ(墓標)を守るかのように機械仕掛けの鎧を身に纏い刀を携えた「墓守のウェザエモン」がそこにいた。

 

その戦場ではペンシルゴンがセツナに話した内容の通りにプレイヤー達がやられている。10分ほどウェザエモンによる無双が続いたがプレイヤー達も何度か死につつ耐えていた。が、初めて見る機械の馬、名前は「戦術機馬【騏麟】」、がウェザエモンによって呼び出されプレイヤー達は地獄を見た。

その馬は人間が見上げるほどの巨体を持ち、プレイヤーの攻撃をものともせずフィールドを走り回っている。それが走り回るのに巻き込まれた映像の中のプレイヤーはボウリングのピンの気持ちを味わっているのだろう。

 

麒麟から放たれるミサイルやビームに翻弄されながら体勢の立て直しを図るプレイヤー達だが、麒麟が(あるじ)であるウェザエモンの前で立ち止まったかと思うとウェザエモンが麒麟に飛び乗りそのまま雲が、雷が、ミサイルが、麒麟の突進と共にフィールドを走り回るという手の付けられない状況になりプレイヤー達はあえなく全滅する寸前というところで動画は切れた。

 

「さて、今ここにいるメンバーで新月の夜に「墓守のウェザエモン」に挑むわけだけど、この止めようにも止まりそうにない馬を止める方法を考えようか」

 

ペンシルゴンがそう言うと【阿修羅会「墓守のウェザエモン」討伐隊】による作戦会議(大喜利)が始まったのである。

 

「はいはーい、私がその馬を刀で斬る」

 

「どうしてそれで対策できると思ったの京極ちゃん?次」

 

「デバフ系の魔法で足止めするというのはどうっすか」

 

「そうだね、レベル50の魔法でどこまで足止めできるかな次」

 

「あれを無視してウェザエモンだけ殴ればいいじゃん姉御」

 

「動画の何を見ていたのかなこの愚弟は。それが出来れば苦労しないっての次」

 

「あの馬に飛び乗ったウェザエモンをこっちも飛び乗って叩き落すのはどうですか姉御!」

 

「言ってることは無茶ぶりだけど議論の余地がありそうね。あと姉御呼びはそこのアホだけで十分」

 

「私が麒麟を刀で「同じことを2回言っても無駄だよ」」

 

「刀で「3回目も何回目も無駄!」」

 

会議はそのような感じで時間だけが過ぎ、いい対策は出てこなかった。しかし彼らは「墓守のウェザエモン」を倒すために真剣に(一人は真剣()で)考え議論を重ねていった。なにしろまだ誰も倒していないユニークモンスター。これを最初に討伐した日にはこのゲームを遊んでいるほとんどのプレイヤーの先を行っていることになるのだ。彼らはいたって真剣(欲望に忠実)だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。