お世話になっております。何でも屋秘書の手嶋でございます。 作:虹捜索隊
「おはようござい、、ます。」
入るとカウンターで社長がコーヒーを淹れていた。
「おはよう!早いね!」
言わなければ。辞めると。
「あの〜、実は私……仕事を……」
「仕事ね!オッケー!」
違うーーーーー。
「秘書っていうけど仕えて欲しい人は社長だけじゃないんだ。」
まぁもうこれは今日だけ乗り切るしかない!
「まぁその都度僕が言うからさ。今日は初日だから………」
お願い!
難易度低そうな姫君来い!姫君来い!姫君姫君姫君姫君姫君
「ドグラゾロンさんね。」
いきなり魔王キターーーーーーーーー
「ドグラゾロンさんそろそろ起きてくるから、待ってて。」
いや、待って。あのなんか禍々しい色の甲冑つけて背が高くてデカイ人でしょ?
人?ではないのか?魔王って人出身なのかな?
「ちなみに今日のドグラゾロンさんへの依頼は指導者講演会だよ。」
「指導者(魔王)!?」
魔王が直々に魔王志望者、もしくは魔王候補生に講演会をすることで魔王ドグラゾロンの後継者を作り世界を支配するつもりなんだ!!
案外適応が早い冴子だった。
「ちょっと待って下さい!何世界を混沌に陥れようとしてるんですか!?」
「混沌?手嶋さん何言ってるの?ほんとに面白いね〜」
そうこう言っているとガシャガシャと音が聞こえてくる。
「あ、ドグラゾロンさん、おはよう!」
「ウム。」
ウム!?
ガチのやつだ……
え?あれ寝起きだよね?甲冑つけて寝てんの?
それともつけてきたの?
え?冷蔵庫開け始めたんだけど。
なんの絵なのこれ。
甲冑つけた魔王が冷蔵庫開けてるよ。
それであの寝起きの一杯的なあのドロドロした緑の液体なに?
ドラゴンとかの体液なの?
「美味だ。」
美味なの!?
絶対まずいよね!
いや魔王はもはや味覚も違うのかもしれないし。
「ドグラゾロンさん、今日一緒に行ってもらう秘書の手嶋さん。」
「そうか、これで各々スケジュール管理をしなくてもよくなったわけだな。」
「手嶋さん、これドグラゾロンさん用の手帳ね。」
なんかドス黒い赤だ。
「手嶋とやら、これが吾輩の手帳だ。」
あれ?案外ふつうの黒で市販のやつじゃん。
「これを参考に転記してくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
あれあれ?案外字も綺麗で、しっかりと書いてある。
「では手嶋とやら、1時間後に行こうか。」
ドグラゾロンは社長の方に向き変わる。
「リュースは?」
「リュースはもう仕事ですよ。」
「ドグラゾロンさんにこれをって。」
「おぉ!心臓サンドではないか!」
心臓サンド!?
やばいよ。ここやばいよ。いやでも人のでなければセーフなのか?
「朝はやはり心臓サンドとこれに限る。」
心臓たべながらなにかの体液飲んでるよ。意味わかんないよ。
もう朝から消化しきれないよ。
「では、行くか。」
魔王さんスーツに着替えてる。
さすがに外で甲冑つけないんだ。
冴子は運転席側に向かうドグラゾロンの前に立つ。
「ム?」
「う、運転は私がしますよ。」
鋭い目がギョロリと冴子を貫く。
お願い、殺さないで、心臓サンドにしないで!
「ウム。頼んだ。」
気が抜けたのか冴子はふらっとよろけ車に手をつく。
と同時に、
あれ?そんなに怖い人じゃない?のかな。
と少し安心した。
思っていたよりもかなり大きい会場だ。
「いつもお世話になっております。ドグラゾロンさん。今日もよろしくおねがいします。」
「ウム。」
甲冑してなかったら案外外国人社長みたいに見えなくもな、、
ちょっと!歩いたところ少し凹んでんだけど!
「おい。」
巨体が冴子に向き直る。
「今日はお前は見ているだけでよい。手出しはするでない。」
「はひ!」
やっぱり魔王こえぇーーー。圧が違うよ、圧が。声裏返っちゃったよ。
手出しって何よ!一騎打ち実演でもあるの!?
「それでは本日の講師は、今巷で話題の上司部下関係の構築を説くカリスマ魔王、ドグラゾロンさんです。よろしくおねがいします。」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
「よく来た。吾輩の講演へ。」
「今日は部下の使い方についてである。」
「部下は我が手足と思え。欠ければ痛みを伴う自身の一部である。」
「だからといって頭が考えるように無理に扱ってはならない。実際体の痛みを受けているのはその手足である。」
「吾輩は昔勇者と争っていた時代があった。」
「ある日突然、約180000の部下は骸となり土に還った。」
「レベル上げなどと自分のためだけに我が部下を切り捨てていたのだ。」
勇者の気持ちわかるけどさ……
相手側のこと考えたことなかったな。
「部下の失命は吾輩の失策である。」
いい魔王だな!
「レベル上げに適した地形、シフトの充実した支部。勇者側から見れば明らかにレベル上げ地であった。」
「吾輩はすぐにレベル上げをする勇者の元へ飛んで行った。」
「だがどうだ?やつの仲間は吾輩がくるやいなや、
急襲クエストだ!
などといい、無駄に命を奪ったことを詫びるでもなく、逆に憤慨していた。」
私も多分そういうタイプです、すみません。
「吾輩は部下をすぐに下げさせ、大技を繰り出さんと力を蓄えていた。」
「しかし勇者は愛の力などと訳の分からんお涙頂戴のイベントに入ってしまった。」
「そうなれば、吾輩たちが手を出せないことを知っていたのだ。」
あれ暗黙のルールだったんだ。
「これも冷静さを欠き、基本的なルールを見落としていた吾輩の失策。」
「そしてその場にいた吾輩の部下は全員帰らぬ者となった。」
「さらにはやつらは吾輩に対し必殺技を繰り出したのだ。」
「その時何体もの瀕死の部下が立ち上がり吾輩を守ってくれた。」
部下に慕われてたんだなぁ。
「今のこの世界の指導者と部下の関係は脆い!」
「そして指導者の中には部下が自分の思い通りに動いて然るべき、と思っている者もいる。」
「言語道断である。」
「部下も吾輩たちと同じで生きている。」
「部下が使えない、部下は気が利かない。」
「それは部下の積極性だけではなく、指導者が教え導くものでもある、ということを忘れてはならない!」
「吾輩が駆け出しの魔物だったときは、この魔王様のためなら自分はレベルアップしたいと思い自発的に………」
2時間にも渡る講演会はあっという間に終わってしまった。
「魔王ドグラゾロンさんでした。ありがとうございました。」
感動した。魔王すごい!ちょっと甲冑ださいとか思ってすみません!
この魔王が私の上司だったなら私も魔王様のために命をかけて盾になっていただろう。
上司の側に立つわけでもなく、部下の側に立つわけでもなく、信頼しあえる上司部下関係の構築を教えてくれたような気がする。
冴子はドグラゾロンに駆け寄る。
「ドグラゾロンさん、お疲れ様でした。私感動しました!」
「ウム。では戻ろうか。」
冴子はドグラゾロンを乗せ車を走らせる。
いまなら聞ける!ドグラゾロンさんはそんなにやばい人じゃない!
「ドグラゾロンさんてそういう設定なんですか?」
聞いちゃったーー!
「設定とは?」
「いや、あのゲームみたいな、あの、その〜。」
やばっ、怒らせちゃったかな。
「何を言っている?吾輩はほんとうにたたき上げの魔物であるぞ。」
「社長が吾輩を連れ出したのだ。」
んー、魔王様ちょっと何言ってるかわからないです☆
やはり話すのは危険だと思うに至り、その後は特に会話はなかった。
「ただいま戻りました〜。」
「手嶋さん初秘書どうだった?」
「私は特になにも……」
「こやつは初めてにも関わらずよくやってくれた。」
魔王様!!!いつのまに甲冑を!!?
そしてその手にあるのは……
「飲むか?」
出た!なにかの体液!無理だよ飲めないよ。
「美味しいよ!ドグラゾロンさん自家製だからね。」
自家製なの?何殺して作ってるの?まずそれ合法なの?
社長ゴクゴク飲んでる。なんなのここ。魔界のバーなの?
「うぅ、、」
あの魔王様の眼差し、いくしかない……
いざ、なにかの体液デビュー……お母さん今までありがとう……
「ん?」
「いや〜ドグラゾロンさんのスムージーは本当に美味しいなぁ。」
社長はお代わりしていた。
「今日はリンゴとケールを入れてみたのだ。手拭きはそこから取るがいい。」
「言うの遅れたけどドグラゾロンさんには人間関係、美容、メンタルケアとかを担当してもらってるんだ。」
ギャップが凄すぎてめまいする……
でもじつは常識人の魔王様もいるし、、
も、もう少し頑張ってみようかな。
「じゃあ明日は織田さんと護衛任務についてもらうから。」
「ご、護衛って……?」
「大物ヤクザの組長だよ。」
「織田さんについてれば周りの人は死ぬかもしれないけど、手嶋さんは大丈夫だから」
「いやだーーーーーーーー!」
〜続く〜