TS変身ヒロイン動画配信!ヒーローだってチヤホヤされたい!   作:とやる

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三話 下着の魅惑

 そいつは突然現れた。

 

「魔法少女のおぱんちゅぅぅうううう!!!」

 

 0から1へ。

 完全な静止病態からゼロコンマ一秒。トップスピードへ至ったそいつは、その影すらも掴ませない速度で爆進する。

 あまりの速さに空気が悲鳴を上げて哭き、無造作に、だが埒外の力で押し出された大気がソニックムーブを発生させていた。

 

「おぱんちゅおぱんちゅおぱんちゅ!!! ふぅぅぅ!!! くんかくんかすーはすーはああああああああああ!!! イズナたんイズナたん!! おぱんちゅ見せて!!!!」

 

 最低でも俺が今まで戦った中で十本の指に入るほどに、そいつは強力な個体だった。

 考えるまでもなく、そいつを倒さねば街は甚大な被害を被る。

 ただ走る。

 それだけで大虐殺を行えるほど、そいつは強者として世界に君臨していた。

 

 倒さねばならない。

 世のため、人のためを志すのなら、絶対にここで魔法少女が倒しておかなければならない相手。

 

 だけど、俺は。

 

「きゃぁあああああっ!?」

 

 絹を裂くような悲鳴を上げ逃げ惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少々遡る。

 

「夏早く終わってくれ……」

 

 お昼の教室。

 俺は教室の机に突っ伏し、ダウンしていた。

 

「まだ七月だぞ? むしろこれからが本番だろう」

 

「それはそうだけどね……」

 

 紙パックの牛乳を飲みながら訝しげな声を上げるハヤタに弱々しく返す。

 訝しげとは言ったけど表情は一切変わってない。相変わらず無表情だなぁ。

 

 俺がこんなにグロッキーになってる理由は、もちろん灰春怪人だ。

 夏に入り、満たされなかった青春の不満がこれでもかとばかりに膨れ上がり、予想していた通り灰春怪人がぽこじゃかと生えてきたのだ。

 当然俺は灰春怪人を倒すために四方八方を駆けずり回り、最近は寝る時間すらろくにない。

 成長期の夜更かしは美貌の大敵だぞ。この玉のお肌にしみが付いたらどうしてくれるんだ。

 特に昨日なんて深夜に出たからな。布団から跳ね起きて眠い目擦りながら行ったよもう。

 

「なんだよナイトクラブブルースって……。知らないよそんな場所……なんか無意味に踊らされて疲れた……」

 

 やけにくねくねした全身を使うダンスだ。

 何が楽しいのか全く分からなかったけど配信は大盛り上がりだったな。だいぶ稼げてる。

 

「とにかく私は疲れてるんだよ、ハヤタ。もうゆっくり眠れるのは授業中だけさ」

 

「授業中寝てたのか……」

 

「ハヤタはおっきいからね。後ろの席の私はいい感じに死角になってちょうどいいんだよ。ありがとねハヤタ」

 

「居眠りの礼を言われるのはそこそこ心外なのだが」

 

「ハヤタも可愛い幼馴染の方が嬉しいでしょー……ああもう限界、昼休みになったらおこしてぇ〜」

 

「イズナ? ……本当に疲れているみたいだな……。しょうがない。机で寝ると体を痛める。保健室に行くぞ、イズナ」

 

 保健室? 

 ああ、それはいい。

 あそこのベッド、ふかふかで気持ちいいから。

 でも、自分で動くのは嫌だなあ……。眠いし……。

 あ、そうだ。

 

「ん〜……ハヤタぁ、連れてってぇ……」

 

「──っ」

 

「ハヤタぁ?」

 

「……はぁ、しょうがない。肩を貸そう」

 

 ばっか。

 ハヤタと肩なんか組んだら身長差で足が地面に付かないでしょ。しんどすぎる。

 てか、自分で歩くのすら億劫なの。

 

「やだ。おんぶしてって」

 

「……せめて自分で歩いてくれ」

 

「や〜だ〜」

 

「イズナ……」

 

「おんぶ〜」

 

 あれ、なんか渋ってるな。

 ハヤタなら俺をおんぶして運ぶぐらいなんてことないのに。

 ここで、遠慮して自分でいくって選択肢がないのが幼馴染ってやつだ。

 だって、なんやかんや最後はハヤタが折れてくれるって知ってるからね。

 いつもごめんよハヤタ、この借りは後で返すから取り敢えず今は俺を保健室にまで運んでおくれ。

 

「イズナは男イズナは男イズナは男」

 

「ハヤタ?」

 

「……はぁ、しょうがない。……ほら、背に乗れ」

 

 トドメとばかりに「んっ」と両手を伸ばすと、何かぶつぶつ唱えたあと、ため息を吐いたハヤタが背中を見せて屈んでくれる。

 さっすがハヤタだ。遠慮なく背中に乗っけてもらおう。

 

「ハヤタはさぁ〜」

 

「……なんだ。耳元であまり喋らないでくれ。くすぐったい」

 

「背中がおっきいから、こうやっておんぶされるとなんか安心するんだぁ。だから私、ハヤタの背中好きだなぁ」

 

 俺がすっぽり収まるほど大きなその背中は、おんぶをしたときの安定感が段違いだ。

 揺れにも気を使ってくれてるのか、たん、たんとハヤタの歩みに合わせた静かなリズムは酷く心地が良い。

 安心感を覚えるハヤタの体温と匂いも相まって、急速に体から力が抜けていく。

 

「……俺は──」

 

 眠りに落ちる瞬間、そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イズナ、起きろ。もう放課後だぞ」

 

「うにゅ」

 

 ゆさゆさと、優しく揺り起こされる。

 水の中からゆっくりと引き上げられるように意識が覚醒していき、しかし重い瞼はなかなか上がってくれない。

 まだ眠いな……。

 

「もう少しだけ……あと五分……」

 

「そういってイズナが五分で起きた試しがないだろう」

 

「今日は……起きるから……」

 

 お前は俺のお母さんか。

 話をする気はないという意思表示も込めて、ごろんと寝返りを打つ。

 

「それも何度も聞いた。……こら、イズナ。……下着が見えてるぞ」

 

 下着? 

 ……ああ、ショーツのことか。

 そういえば、あまりにも眠すぎて制服のまま保健室で寝たんだっけ。

 スカートがさっきの寝返りで捲れたのかな。

 

「ん〜……ハヤタなら見てもいいよぉ……」

 

 なんの面白みもない白無地のショーツでよければね。

 ふぁ……だめだぁ、二度寝の誘惑が強すぎる〜。

 

「……馬鹿な事を言うな。自分の体は大切にしろ」

 

 へへ、毛布かけてくれるんだ。

 いつもはイズナは男だって言うくせに、こういうところで女の子扱いしちゃうのがハヤタの可愛いところ。

 でも、毛布をかけてくれたってことは……。

 

「寝ていいってことだよねぇ。おやすみ〜」

 

「あっ、待てっ、違う。起きろイズナっ」

 

 もう無理でーす。俺は寝まーす。

 なんか目が覚めたらトイレ行きたくなったけど……漏れるほどじゃないし、まあいいや。

 ぎゅっと毛布を握り込んで何があっても寝る体制に入った俺は、もう一度深い睡眠に入ろうと意識の奥底へ沈んでいき──

 

 

 

 

 

「同級生の女の子のパンツが、見たかった──」

 

 

 

 

 

 ──沈んでいこうとしたところで、天寿を全うした爺さんが死ぬ間際に零したような筆舌に尽くし難い感情が込められた声を聞いて目を開けた。

 

「……ハヤタ?」

 

「いや待て。違う。俺じゃない。違うぞイズナっ」

 

「いやでも……ここには他にハヤタしかいないし……」

 

「待て。待ってくれ。違う! 俺じゃない!」

 

「その……ハヤタも男の子だから……そういうことを考えちゃうのはしょうがないと思う。でも、ほら、私は幼馴染なわけだし……流石に恥ずかしいっていうか、その、なんていうか、えっと……あはは」

 

「やめてくれイズナ! 本気で困ったように笑わないでくれ頼む! 本当に俺じゃないんだ!」

 

 分かりやすく狼狽えるハヤタは珍しいけど、流石に俺に性を意識されるとなんか、気まずい。

 俺とハヤタは幼馴染であって、男女のあれそれとか、ハヤタとは考えたこともないわけで……。

 俺が可愛いのがいけなかったのかな……これからはハヤタとの接し方を変えた方がいいんだろうか。

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

 そいつは、保健室の窓を突き破って現れた。

 

「美少女のおぱんちゅ────ー!!!!!!!」

 

 ──時が止まった、ように感じられた。

 現れたやつは浅黒い肌にだらしない体をした、幼い頃に銭湯でみたおっさんのような姿をしていた。

 違うのは、肌の質感が明らかに人間のそれではないと分かるほど滑っているのと、おそらく、頭部にあたる部分が何順にも重なったショーツが球体になったような形をしていること、そして、そこに取ってつけたような黄色い目が付いていること。

 

 なぜ、おそらくなのか。

 それは、その変質者は今、俺のスカートに顔を突っ込んでいて頭が見えないからである。

 

「きゃああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああッ!!!!?!?!!???!?!?!?」

 

「ふはー!! くんかくんかくんかすぅぅぅぅはぁぁぁぁぁ!!! 滑らかな質感にほんのりと暖かい体温にこれは汗の匂いが芳醇に絡まり合い女に成長する前の少女特有のミルクのような甘い香りがなんのも言えぬハーモニーを生み出しているさらによく運動をしているのか健康的でむっちりしている太ももがおぱんちゅの魅力をさらに引き出し一見地味で面白みのない白無地のおぱんちゅになんとも言えぬエロさそうこれは背徳感だ背徳感を醸し出している柔らかな風がふわりとスカートを巻き上げそこから覗く純白のおぱんちゅは世の男子が皆妄想の世界で幾度となく刻み込んだ光景に他ならないだがしかしおぱんちゅが見えただけではこの濃厚で芳しい香りは届かずもちろん妄想でも判らないおぱんちゅはその形状やセンシティブな美しさまた着用状態のエロさで語られがちだが特筆すべきはその独特の匂いであり使用済みと未使用のおぱんちゅの価値が二分するのはまさに匂いにこそ価値があると示す何よりの証拠なのだふぅぅぅぅぅはぁぁぁぁぁぁこれこれこの匂いこそがおぱんちゅがおぱんちゅである真の意味であり世界の光がおぱんちゅであることを表す摩訶婆羅多で──おや、さてはお嬢さん、おトイレを我慢しているのかい? 少しアンモニアの臭いが──」

 

「いやぁぁぁあああああああああああ!?!? 何この変態!? い、いや! いやぁあああああああ!! 気持ち悪い! 無理! は、はやたぁ!!!」

 

「──はっ!? あまりの光景に呆然としていた! イズナから離れろ、この変質者!!」

 

「あ、小生男の下着には一ミリも興味ないので」

 

「ぐふぅぁあああっ!?」

 

「は、はやたぁぁああああ!!!」

 

 変質者を突き飛ばそうとしたハヤタが虫でも払い除けるようにぶっ飛ばされ、コイツがぶち破った窓から外に飛んでいく。

 ここが一階じゃなかったら今ので死んでたかもしれない。

 

「よくもハヤタを!!」

 

「おや。先程の一瞬で小生の拘束から逃れたのですか。さらに私に挑む気概を見せている。その小柄な体でかような身のこなし、そして胆力。……なるほど、レディ、貴方が魔法少女ですね」

 

 この一瞬で俺が魔法少女だと見抜くだと!? 

 第六感がガンガンと騒いでいる。

 この変質者から漂う"強者"のオーラが、過去の強敵と比較しても見劣りしない。

 分かる。

 こいつは──強い! 

 

「……どうして私が魔法少女だと?」

 

「ふむ。余計な問答はやめた方がよろしいでしょう。純白のおぱんちゅは純潔の象徴。穢れなき白のおぱんちゅを纏う少女が嘘をついているかどうか、小生には分かってしまう」

 

「お前……何者だ」

 

 乾いた唇を舐める。

 ピリピリと空気が張り詰め、今にも千切れそうなほどの緊張感が心臓の鼓動を早めた。

 

「いいでしょう。こうして魔法少女とまみえたのです。灰春怪人の作法として名乗りを上げましょう」

 

 ふっ、と。

 自信からくる余裕を含ませた笑みを浮かべた気がした変質者は、大きく手を広げ大仰に。

 

「同級生の女の子のおぱんちゅが見たい。それは学生の間でしか叶えられない泡沫の夢! 歳をとった女のおぱんちゅを見てなお尽きぬ欲望! 過去の桃源郷!! 花のない学生時代を過ごした全ての男たちのおぱんちゅへの渇望が小生を生み出した! ただ、同級生の──学生のおぱんちゅへと突き動かす大いなる後悔の化身! 我が名はショーツ・S・ブルース! モテなかった男たちのおぱんちゅへの切なる願い、その体現者だ!」

 

「な、ぁ──!?」

 

「手始めに、この学校の全てのおぱんちゅを堪能しましょう。その後はそれをカメラで納め、全国に配信する。公開おぱんちゅ脱衣を行い、脱いだおぱんちゅはオークションにでもかけようじゃないですか。全ての男の手に、少女のおぱんちゅを。小生は小生の生まれた目的を全うします。青い若葉が絶望に散りきる、その時まで。──止められるなら、止めてみるといい」

 

 ショーツ・S・ブルースは、まるで紳士がそうするように片手を折りたたみ、恭しく頭を下げ、

 

「──我ら、春を灰塵せし。行きますよ、魔法少女」

 

 ──激戦の予感に、俺の背筋を冷たい汗が伝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【VSショーツ・S・ブルース】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強敵と戦う場合、一番やらせたらいけないことがある。

 それは、相手の土俵で戦わせること。

 経験上、強力な灰春怪人は必ず何かしらの特殊能力を持っていて、その特殊能力を思い通りに使われると手も足も出ないまま一方的にぶちのめされてしまう。

 例えば、ソツギョウブルース。

 ソツギョウブルースは、『卒業式典』という特殊な空間を生み出すことが出来た。

 卒業式とは、後輩が旅立っていく先輩へ激励を送る場。

 その空間の中では、攻撃を含めたありとあらゆる事象がソツギョウブルースのバフとして効果を発揮してしまった。

 

 使われると"不味い"ではない。

 使われると"終わり"なのだ。

 

 故に、強敵と相対した場合は、必ず。

 

「メタフィールドォ!!!」

 

 叫ぶと同時に世界が俺を起点に塗りつぶされていき、瞬時に俺の体が光に包まれた。

 その光を突き破るように改造巫女服へと姿を変えた俺がショーツ・S・ブルースへと驀進し、胸のど真ん中を抉るように竹箒を突き出す。

 

 先手必勝。

 早期決着以外に、強敵を確実に倒す手段は存在しない。

 

 配信という選択肢すら投げ捨てた俺の全身全霊最速の一撃は、しかし相手を捉えることは叶わなかった。

 

「な、ん──ー!?」

 

 ショーツ・S・ブルースの姿がブレる。

 いや、残像か! 

 虚空を竹箒が穿ち、直後、凄まじい衝撃波が俺の体を激烈に叩いた。

 

「くぅ──!!」

 

 木の葉のように舞う体。

 必死で空中で体制を整え、魔法で空を飛ぶ竹箒の推力によって安定を得る。

 竹箒の上に腰を低くして立ち、素早く地面の花畑へと目を向けるが、その姿が──ない!? 

 

「おお。魔法少女のおぱんちゅはどんなものかと楽しみにしていましたが──まさか、Tバックとは思いませんでした。いやはや、それにしてもこれはなかなかエグい切れ込みで──」

 

「きゃああああああああああああ!?」

 

 後ろで私のスカート捲ってるぅ!? 

 

「このっ──!!」

 

「遅い」

 

 振り向きざまに顎を狙って放つ拳が空を叩き、一瞬でショーツ・S・ブルースの姿を見失う。

 どこいっ──いぃ!? 

 

「小生は飛べなくてね。戯れるのは下でよろしいかな?」

 

 高々と頭の上にまで上げられた足が、振り下ろされる。

 ヒュンッと、空気を切り裂く音がした。

 直後、衝撃。

 咄嗟に頭を庇った両手に、身体中の骨が粉々になったかと錯覚するほどの威力が。

 

「ガハッ──ァ」

 

 冗談みたいな速度で地面に叩きつけらた体が、スーパーボールが跳ねるようにまた浮き上がる。

 ぐちゃぐちゃに折れ曲がった両腕が力なく揺れ、守るものがなくなった無防備なお腹にショーツ・S・ブルースの両手が当てられた。

 

「程よく柔らかく、そしてしなやかやお腹です。うむ、鍛えた後も窺えます。流石は魔法少女といったところでしょうか。ところで、こんな性的嗜好をご存知でしょうか。──お腹に青あざを作った少女がおぱんちゅを穿いているところがいい。俗に言う腹パン属性の一種ですね」

 

「──ぁ」

 

 その、言葉の意味を理解する前に。

 

 ぶちゅ、と、内臓が潰れる手応えが、お腹の奥、から。

 

「──が、ぐぉえ、ァ、お、ァぐ」

 

 灼熱が目の奥を焦がす。

 訳のわからぬ激痛が頭の奥を真っ白に染めた。

 仰向けだというのに噴水のように噴き上がった赤い何かは、自分の口から出たものだろうか。

 なら、それは血だろうか。

 口から大量に飛び出た粘着質な赤い何かは、ぼとっと液体では到底出ないような音を立てて周囲に散らばった。

 

「──ァ、ガ、かひゅ、ォ、アァ」

 

「おお……素晴らしい。仰向けに寝そべる少女のミニスカから覗くこの光景のおぱんちゅはまた格別な味わいがありますねなによりこのおぱんちゅのクロッチを真下から見れる光景という非現実さが非常に男心をくすぐるものがあります力なく開かれている足もポイントが高いおぱんちゅはそれ単体で尊い価値があるものですがやはり少女が着用している状態のおぱんちゅというものはそれのみが一種の神々しさを醸しているさらにTバックというのもあいまり歳にそぐわぬこの卑猥さ後少しずれただけで少女の秘密のは花園が暴かれてしまうではないですかズラしというおぱんちゅのバリエーションがあることは当然小生も認知していますがいはやここで求めているのはまたそれとは違うものでありそもそもずらしというのはTバックではなくもっと布面積の多いおぱんちゅでやるからこそ意味があるものでありますなのでここはやはりズレそうなおぱんちゅを直してあげるのが小生に課せられた役目でありましょう」

 

 痙攣と浅い呼吸を繰り返す俺の股の間を寝そべって観察していたショーツ・S・ブルースが立ち上がる。

 そして、陸に打ち上げられた魚のような醜態を晒している俺を見て、感嘆の声を上げた。

 

「拳の大きさに凹んだアザの浮かんだ無垢なお腹。その下に生える純白のおぱんちゅ。素晴らしいコントラストです。まるで一枚の絵画のようだ」

 

 ほぅ、と。

 本当に感動しているかのように、ショーツ・S・ブルースはため息を漏らした。

 その後、思い直したように首を振り、俺のスカートの間に手を入れようと腰を屈める。

 その手がショーツに触れた瞬間、ショーツ・S・ブルースの動きが僅かに止まる。

 

 魂を破壊するような激痛の濁流に犯される頭が、その隙を見逃さなかった。

 

「──む、なに!?」

 

 右脚が光を纏う。

 あちこち破裂した筋肉ではなく、魔法のみの推進力を持って跳ね上がった右脚がショーツ・S・ブルースの顎を撃ち抜いた。

 確かな打撃の手応えが体の中を波のように伝い、その衝撃でぷちぷちと体の中を破壊されながら、振り絞るように声を張り上げる。

 

「竹箒──!」

 

 何処からともなく。

 ロケットのようにかっ飛んできた竹箒に食いつき、魔法の補助により顎の力だけで自分の体を支えて飛翔。

 高速で飛翔する竹箒に切り裂かれるように、メタフィールドが解けていく。

 

 それは、紛れもなく、敗走だった。

 

「……やられましたな。まさか小生の特殊能力が見破られたか……? いや、たまたまでしょう。しかし……たった一撃とはいえ、この威力。復活には一日はかかる、か。……ふ、今宵の戦果はこのおぱんちゅで良しとしましょうか。再戦の時を待っていますよ、魔法少女」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。

 一心不乱に竹箒で飛んで逃げていた俺は、力尽きてそのまま河に墜落した。

 

「ごはっ、ぐぼっおぇ、ゲボォ」

 

 水切りのように跳ねた俺の体はそのまま対岸へと辿り着き、河原の上に投げ出される。

 真っ白に染まる世界の中で、辛うじて残っていた生存本能が魔法を行使させた。

 

「ひ、ひーる……」

 

 癒すための魔法が体の隅々にまで行き渡り、破壊された体を修復していく。

 血管は繋がれ、骨は紡がれ、内臓が元の形を取り戻す。

 ぐぎょぼきごりゅぐちゅどちゅごりごりと人体から鳴ってはいけない音と激痛に耐えたあと、元通り動くようになった両手を見てそのまま目を隠すように顔の上に置いた。

 

「いたい……」

 

 つぅ、と涙が流れ落ち、我慢しようとしても止まらずに次から次へと溢れてくる。

 

 死ぬかと思った。

 それぐらい痛かったし、実際死んでもおかしくなかった。

 ぎしぎしと軋む心の音を聞きながら、もう何度も自問自答してきた"どうして自分が戦わないといけないのか"という問いが鎌首をもたげて、それを考えないように必死に頭の中から追い出す。

 

 自分が戦うしかないのだ。結論は既に出している。

 

 青白い月が見下ろす中、ヤケクソのように呟いた。

 

「チクショウ……ショーツ盗られた……」

 

 ショーツ・S・ブルースをどうやって倒すかという大きな難題の前に。

 こんな遅い時間にノーパンで帰らないといけないミッションが出雲イズナには待ち受けている。

 

 色々と、前途は多難だった。




次回、能力解明パート。

ネクストハヤタズヒント!
「なるほど。やつは女子学生のパンツを見たいという欲望の化身なのだな。そして、理想のパンツを見るという行動に対して凄まじい強さを発揮している。厄介な相手だ」
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