気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜 作:二三一〇
「では、問題はありませんか?」
『はい。こちらこそ、お騒がせしまして申し訳ありません』
すぱしーばのフェティダさんに電話を入れてもらい、それ後こっちからも電話を入れるとそんな対応になった。話せば分かるというものだ。
『それにしても姫乃さんは本当にしっかりしてますね。ウチのライバー達にも見習わせたいくらいですよ……』
「心中お察しします」
桜花のマネージャーの人は俺をやたらと誉めるが、そんなにヒドイのかな? ヒドイか(事実確認)
まあ、あれだけ個性的な面子を集めたのだから仕方ないと思う。自業自得というか、身から出た錆というか。
「でも、宜しかったのですか? こちらとは接触しない方針だと伺いましたが……」
『お、耳が早いですね。社長に確認をしましたが、オーケー出ましたので』
フェティダさん、何かしたかな?
お得意の魔法とかやったんだろうなぁ……
ま、大事にならなきゃいいや(笑)
「では、取り急ぎ打ち合わせしますので、これで」
『はい、失礼致します』
通話を閉じて、PCに戻る。
桜花からはテキストで何度も連絡が入っていた。
「お待たせしました。許可が取れましたので再開しましょう」
「……ボクを待たせるなんて、罪な人だ。それもキミの美しさのなせる業なのかもしれないね」
「はい、そういうのいらんのでチャッチャとしましょう。もう時間があまり無いですよ?」
時刻は十九時。予定時間の二時間前だ。
ホントのところ言うと、さすがに行き当たりバッタリ過ぎだと思う。でも、十六夜桜花には中止する気はなさそうだ。初のコラボでこちらから折れるなんてしたら、非難されるに違いない。
「僕は先ほどのゲームとか歌とかはやめて雑談オンリーに絞った方がいいと思います。如何です?」
「ボクとの愛を語らってくれるのかい? それなら吝かでないね♪」
さすがにちょっとイライラしてきたので注意する事にした。
「あの、真面目にやって頂けませんか?」
「……ボクは真面目にやっているんだけど。興奮し過ぎて浮かれているのは自覚しているよ」
「まだ一度も会った事もない人に愛してるだなんて言う人、真面目とは思えませんが」
「じゃあ、オフコラボにしようか?」
「……そういう事ではないって」
どうも、苦手だ。
そもそも、俺は若い女と話したのは仕事くらいだ。
感性に差があり過ぎる。
俺は誰かに愛を囁いた事はない。
こういうリップサービスのような言い方で口説くような事も当然ない。
「黒猫燦にもそうやって言い寄ってますが、宜しいのですか?」
少しイジワルな質問をしてみる。
男なら二股とか言われてしまう所だが、果たして彼女は予想外な返答をしてきた。
「やましい事はしてないからね。少なくとも今は」
「ほう……して、その理由は?」
「可愛い子に声をかけるのは礼儀だろう?」
「お前は、イタリア人か!」
「お、いいツッコミ♪」
「は……いってっ」
「あはは、アイリスちゃん。打ち合わせでも聞いてるの? 声、聞かせて貰えないかな?」
「ぐぐ……そ、それは出来ないので」
「ちぇ、ざんねん」
まさか打ち合わせでおしおきされるとは思わなかった。
「けど、かわいい子が好きなのは本当でね。元々中高一貫の女子校出身だっていうのもあるんだけど、男の子との恋愛よりも女の子との語らいの方が多かったのさ」
「はあ……」
「大人になるとどうしても女子だけの空間って作りづらいんだよね」
……言わんとする事は分かる。
女子大とかなら別だけど、女子しかいない会社とかバイト先とかは意外と少ない。
無いわけではないけど、職種とか他の条件と合わせるとかなり少なくなるんじゃないかな?
「黒猫さんも好きだけど、しつこくしたら嫌われちゃったから」
「だから僕に宗旨替えですか? 節操ないですよ」
「ボクにとって可愛い子は日光のようなものさ。いなければ枯れてしまう。だから、黒猫さんでも古詠未ちゃんでも構わないんだよ」
最低な事を平然と言い切った。
けど、何かを求めるひたむきな姿勢に少し胸を打つものがあった。
俺が消えないためにVtuberをやり始めたのと同じ様に、彼女は自分のためにこの世界に入った。ちょっと不純な動機だけど、動機は動機だ。本人以外が口出ししていい訳がない。
俺は、彼女と向き合う事に決めた。
これからは本気の打ち合わせだ。
「ボクの方で古詠未ちゃんに対しての質問なんかも募集していてね。それに答えていく感じで進めたいんだ。話題のVtuber、姫乃古詠未にインタビューって感じで」
「それはいいですけど、答えられない質問には答えませんよ?」
「いちおうこっちも考えてマシュマロ選ぶつもりだけどね。まあ無理強いは出来ないかな」
しばらく通話をしてから、回線を切る。
すでに残り時間は一時間を切っていた。
台所のテーブルには旨そうな料理が並んでいる。
プリムラ、料理上手いんだな。
しかし、今から食べるわけにはいかない。
「悪いけど、これから配信なんだ。後で頂くから先に食べてなさい」
「それなら、お待ちします」
「えっ?」
ダマスケナが信じられないという感じで
「……お待ちします」
「……はい、お姉さま……」
……プリムラ強え。
でも、待ってるとかなり遅くなるかもしれない。
配信の終了時刻というのはかなり曖昧で、人によっても内容によっても違う。
仕方ないので突き放す。
「先に食べないなら自分達の部屋に行ってくれ」
「旦那様、いじわる……」
プリムラがジト目でこちらを見るが、こっちも譲れない。待たれてると思うと気が気ではないのだ。
もう一つ理由をくっつけよう。
指をくわえて見ているダマスケナを指差しながら言う。
「ダマスケナが騒がないように出来るのか?」
プリムラは当たり前のようにぽつりと呟いた。
「眠らせる……物理的に」
「ひぃっ! お姉さま、ひどいっ」
やっぱり、プリムラ強え。
埒が明かないので、強引に食べさせる事にする。
「「あ〜ん♪」」
「なんでこんな事してんだよ……」
『こよみさん、パパみたいですね〜』
一口食べさせてくれたら、食べますと言われたので仕方なくやってやった。それとアイリス、今は合体してるからパパではないぞ。
ようやく食べ始めてくれたのでいそいそと台所から出る事にする。プリムラの頑固さは意外に難敵だな。
台所との襖を閉じて、PCの前に座る。
「さて、いくぞ」
『ガッテン承知の助!』
「おまえ、いらない知識貯め込んでるなぁ……」
「今夜も月が綺麗だね……今日は月よりも綺麗な女の子をゲストとしてお迎えしているので、月は二番目かな?」
「いや、月のほうがきれいでしょ? お世辞も過ぎると嫌味になると覚えておいて下さいね、桜花ねー様?」
「ねー様! ああ、学校にも何人か
「
「あっと、これは失念していたよ。告知していたから
「それでも紹介、これ大事」
「ああ、そうだね。では、今日のゲストは今をときめくVtuber、姫乃古詠未ちゃんでーす♪」
「どうも、初めまして。姫乃古詠未です」
あなたの方が月よりも綺麗ですよ
月が綺麗(曇天)
明日雨だっけ
おつー、
ずっと待ってた
これは期待
パチパチパチパチ
8888
古詠未ちゃん、ねー様とかっ
ワイも呼ばれたいw
ねー様(←おっさん)
がんがれー
「古詠未ちゃんへの質問を募集していたので、それを使ってインタビューしていきたいと思ってる。キミのヒミツ、丸裸にしてあ・げ・る」
「お、おう……おかまいなく」
やべぇ、鳥肌立ったw
アバターの古詠未も目を
そんな古詠未に桜花のアバターが手を伸ばして、頬を撫でる様に触ってくる。本当に触っているわけではないのに、頬を撫でられた感じがしてびっくりした。
「わひょっ!」
「おっと、失礼。可愛い声を出してくれるね♪」
「勝手に触らないで下さい」
「くすくす♪」
うむ、てぇてぇ
意外といい感じ
こよみん、もっと拒否ると思ってた
あれっ? もしかして桜花様、姉扱いされるの初めてかぁ
ねー様呼びは、桜花からの要望だ。
目下あるてまは三期生の募集がされているけど、現行の人達は大体年上ないし同世代なので十六夜桜花の事を姉として呼んでくれる人がいないと言っていた。
ならば、今回のコラボに限り俺がねー様と呼ぼうと言ったら、物凄く喜んでくれた。
喜び過ぎて逆に引くわ。
中身おっさんのねー様呼びなんだが、コメ欄は『ねー様』で埋まっていく。正直に言うと恥ずかしいのだけど。
「それじゃあさっそく、質問にいってみようか、古詠未ちゃん」
「ねー様、尺が足りないので次の回になりますよ」
「メタい事、言うねぇ?」
何かをする理由はそれぞれ違う。
そう言いたかったのに、なんでかただの女のコ好きになってしまう桜花さんでした。