気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜 作:二三一〇
でもあれこれ考えるのも楽しかったりします。
実況解説席から来宮きりんがログアウトして、結さんがインした。
『きりんさんはBグループなので実況はわたし、夏波結に代わります。神夜姫さん、よろしくお願いします』
『咲夜姉様、と呼んでも良いと言っておるのに』
『わ、わたしは
『ん? そういえば、
『あ、あの。すみません、早合点して』
『妾は強引に奪うのも好きなのでな♡』
そう言うと、結のアバターに手を伸ばしてその頬を撫であげるように動かす。
『きゃ、なに?』
『ほほう。桜花の言うとおりじゃな?』
そう言って神夜姫咲夜は、こちらを見つめる。カメラを見ているだけの筈だが、妙に圧力を感じた。
『えっと、どういう……』
『なに。めいんが多すぎて困っただけじゃ』
『……?』
あの神夜姫とかいうおばさん。
かなり打つ感じだな。
願わくばシャネルカみたいな能力者っぽい事しない正統派でいて欲しい。
『やっぱり浸潤させ過ぎたかな?』
アイリスがブツブツ言ってるけど無視して画面に集中する。
予選Bグループは、一人目のゲストがいる。個人ミャーチューバーの立花アスカだ。他は来宮きりん、終理永歌。
そして俺の最推し、黒猫燦。
『ア、アスカちゃんと麻雀。なんで、戦わなきゃイケナイの……』
『私は大丈夫だよ! 胸を借りますねっ!』
『ど、どうぞっ!! 好きなように、イジって、いいんだよ?』
『もうっ、燦ちゃん! そんなこと言ったらダメだよー』
二人の世界を構築して、きりんと永歌は固まっている。コメント欄では『いい加減にしろ』とか『無い胸は弄れない』とかガンガン加速している。
あらためて黒猫のこの吸引力は凄い、と思う。周りの空気というか、興味というか。そういったものを集めてしまうのだ。
これで陰キャぼっちとか、悪い冗談だ。
コミュ障なのが災いして、周囲の目というのが見えていないのだと思う。
えてして、自分の事を一番知らないのは自分だったりするのだ。
『はぁ……』
「いや、なんでお前ため息つくの?」
『いいえ、別に』
よく分からん。なんか気ぃ悪くする事言ったかな? ま、いいか。とりあえずコッチに集中。
Bグループ
東家 来宮きりん
南家 立花アスカ
西家 黒猫燦
北家 終理永歌
東一局
『さて、神夜姫様? 注目はどの選手でしょうか』
『順当に考えればきりんかの。妾は何度か打っておるゆえ、基礎は高い。他の者とは打ったことが無いのでな』
『なるほど』
『どのように打つかはこの場で分かるのでな。寸評はそれからにしよう』
『分かりました。出親のきりん選手、配牌はそれほど悪くないように見えます』
きりんとアスカの手はたしかにいいが、どちらも門前の方が高くなる手だ。意識の切り分け
が出来ているかどうかが鍵かも。残り二人の陰キャ組は、なるほどバラバラで形が悪い。時間が掛かりそうな感じ。
『二筒、チーします』
『きりん選手、上家の永歌選手の捨て牌をチー。タンヤオ狙いですね』
『流れが速いと見たのじゃろう。喰いタンありの鳴き麻雀では鉄板じゃ』
『おっと間の三索を引いてテンパイしたアスカ選手! 引きがイイです』
『きた、
『あ、ダメだアスカちゃん!』
『え?』
『おーっと、立花アスカリーチ! あれ? これ立直かかるんですか?』
『
『……生殺しですね。』
『そういうルールだ。致し方あるまいのう』
『そ、そんなあ……』
『おい、運営! こんなのやり直しだろ?』
『黒猫選手、闘牌中の私語は謹んで下さい』
『な、……ゆいまで敵なのかよ……』
『アスカちゃんのミスでしょ? それより私語!』
『ぴいっ?』
『いいよ、燦ちゃん。わたし平気だから!』
『アスカちゃん……ええ子や』
なにこの三文芝居。
結さん、微妙な表情で固まってるじゃん。
同世代といちゃいちゃするより、結さん大事にしろよと最近は思うようになってきた。
『嫉妬……ですか?』
「え? 俺が? 誰に?」
『黒猫さんに、こよみさんがですよ。結さん
「そんなわけ無いだろ。親を大事にしろってだけだよ」
『あの二人は仮想親子なんだから、あるわけないでしょ、そんな感情』
困りかねた者に手を差し伸べる結に、それに縋った燦。たとえ血が繋がらなくても、そこに思慕の情はあったはずだ。
だがアイリスは納得しないようだ。
『もし、そうだとして。親子と恋人は違うわ。恋する相手がいたら、父や母は二の次になるものよ?』
「それはそうかも、だけど」
ふと。そんな姿が頭に浮かんだ。
結が寂しそうに見つめる先にアスカと燦が仲良く話している、そんな風景。
だけど、次第にそれは違う姿に変わる。
燦が見知らぬ少年に。アスカがアバターの姫乃古詠未のように。そして、結の姿も変わる。
それは……
『あー、出ちゃった〜!』
『ブッブー。立花、チョンボ』
『満貫まで伸びないし、有り難いけど複雑な気分』
気がつけば、来宮きりんがアスカに放銃していた。キャンセルって出るのに律儀にチョンボにしちゃうアスカ。せめて親でも流したいと考えたのかもしれないけど。
『あの手からタンヤオ、ドラ一、
『さくさく引っ張ってきましたね』
『自分で上がると連荘も付く。アスカにしてやられたな』
『和了放棄をしなかった理由がソレですか』
『強気に考えればじゃが……天然かもしれんな。いずれにせよ、可愛いだけが売りではなさそうだの』
ちなみに闘牌中は自身のリスナーとすら接触できなくなっている。いつもの配信とは一線を画した難易度と言える。
アスカは大きく減らしたが、次は親番。挽回に期待したい。
来宮きりん 33000
立花アスカ 17000
黒猫燦 25000
終理永歌 25000
東二局
『ふむ。アスカは本当に配牌が良いな。門前でやりたいだろうの』
『順当にタンピンの一向聴ですからね』
『鳴くとピンフは成立しないし、ドラも赤五も無いのでは一翻じゃ。それでも親なら行くべきじゃがな』
『それ、ポン』
『下家の黒猫選手、八筒をポン。こちらもタンヤオ狙いですかね』
『ふむ、終理め。いつの間にか西の対子があるな。混一色狙いが崩れてもリカバリー出来そうだの』
元来染め手は悟られやすいが、狙えるならやるべきだ。自家風を鳴ければ一翻上がるし。
『萬子の染め手ですね。上家の黒猫選手が萬子、ダブつくと出そうなので、注意が必要ですよ』
『対してきりんは、あまり振るわないの。けち、ついたからか?』
『幺九牌を集めてるというと、チャンタですね?』
『他がタンヤオで染めてくるなら出てくる牌は端の方じゃからな。貪欲に混老頭まで伸びればよしじゃ。周りを良く見ておるの』
『あ、黒猫選手、アスカ選手のアタリ牌を捨てました』
『うーん』
『まあ、和了りませんよね』
『チョンボじゃからな。しかし今の逡巡は良くないの』
『それは……あ、なるほど』
『親がすでに良型で聴牌している事がバレた可能性がある。特にきりんは見逃す筈が無い』
『と言う事は?』
『そこまでは解説したくないのうw』
親は連荘出来るけど、子は連荘出来ない。子は基本的に親を流す事を考えるものだ。ましてきりんさんは現在トップで親は無い。低い点数でさっさと終わらせたいだろう。
『きりん先輩、ポンです』
『一萬チー』
『おっと黒猫選手、八索ポン。その捨て牌の一萬を永歌選手が鳴く』
『他に上がらせてキックする気じゃな』
案の定、切り替えてる間に黒猫がタンヤオドラ一で上がり、二翻1000、500。
きりんの笑顔が清々しくて怖い。
『ご、ゴメンね。アスカちゃんの親流しちゃって……』
『大丈夫だよ? 勝負なんだし。燦ちゃんガンバッテ!』
アスカの笑顔には黒い物が見えないのでこちらは素のようだ。天使って意外といるな。
来宮きりん 32500
立花アスカ 16000
黒猫燦 27000
終理永歌 24500
東三局
『配牌は相変わらず調子の良いアスカ選手。早々に清一色まで狙えそうなくらい真っ赤ですね』
『積極的に鳴いて行くべきじゃの』
『きりん選手には東の対子があり、永歌選手は中と白が二枚ずつ、発も一枚ある。これは大三元狙いか?』
苦笑する神夜姫さんの気持ちはよく分かる。
この局面は良くて小三元、下手すれば中か白の絡んだ混一色だろう。
それにしても、アスカもそうだがこの終理永歌というのも引きがいい。配牌時はなんてことないのにいつの間にか手が揃っている。
『にゃああ……』
『黒猫選手、微妙な手牌ですね』
『幺九牌ばかりならチャンタを目指せようが索子の真ん中辺りも固まっておる。タンヤオとチャンタは真逆だから、見誤ると痛い目を見るの』
どちらも取れないなら、索子の面子を大事にしたいだろう。チャンタは発展性が些か狭い。
『東ポンだよっ』
『場風牌を鳴いたきりん選手。一向聴です』
『は、速い……通常の三倍だと?』
『赤い彗星のきりん……プ』
『私語は謹んで下さいっ』
結局、きりんが東のみで上がり1000点で500、300のゴミ手。徹底してるな。
来宮きりん 33500
立花アスカ 15700
黒猫燦 26500
終理永歌 24200
東四局
『早くもオーラス。現在トップはきりん選手だが、ドベのアスカ選手との差は18000点近くあります』
『満貫直撃でも逆転はムリ。そして、この大会ルールだと跳満なんてなかなか出るもんじゃないしの』
『Aグループ、あっさり倍満出てましたけどね』
『あれはバグ兎のせいじゃ。マンガみたいじゃったものな』
『そうなると残る黒猫選手と終理選手は如何ですか?』
『どちらも満貫ツモで逆転は可能じゃ。しかし終理が有利かの?』
親ゆえに、軽い手を繋げる手もある。対して黒猫は満貫手をツモるか、きりんから三十符三翻以上を直撃するか。難易度は格段に違う。
鳴くというのは手牌の幅は狭めていくが、面子を揃えるという意味では有効だ。麻雀は四面子対子一つを揃えるゲームだから、一つ揃えば後三つで済む。二つなら残り面子二つで構わなくなる。
『チーにゃ。ふひひ、アスカちゃんの萬子……』
『燦ちゃん、言い方ぁっ(〃∇〃)』
『私語は、謹んで、ね』
『切り抜き班、ちゃんと仕事せぇよ?』
セクハラはともかく、萬子の九を鳴いた黒猫。狙いは純チャン三色同順辺りか。ドラ周辺の順子があるから引いてくれば満貫手まで伸びる。攻めていくな、この猫。
『きりんさん、西ポンです』
『混一色かの。まあ手元の白が重なれば拘らなくても良くなる。いい鳴きじゃな』
『五萬、チー』
『きりん選手、四六を倒して八筒切り』
中盤に差し掛かり、アスカが喜色を取り戻す。
『! 九筒、カンですっ』
『アスカ選手、ツモった九筒でアンカン!』
『キテます。立直!』
『ほほう、やりおるな。このルールで立直。しかもメン混ドラ一の満貫手。裏が乗れば跳満までいくのぅ』
『そんなぁ……』
『九筒の目が消えて純チャン三色同順は無理よの。これは間に合わんな』
黒猫の目を潰しつつ一気呵成の大博打。
アスカが輝いている瞬間だ。
だが、それでもこの点差は埋められない。
裏が三つ以上乗ればツモ和了でようやく逆転可能だけど……有り得そうだから怖いな。
また裏が一つも乗らないと、きりんさんに直撃しても逆転はない。
『ツモ。混一色、白、ドラ一……』
『親の終理選手、四十符三翻で7700、2600オールで上がりました!』
『あーっ!』
来宮きりんの声が響く。
来宮きりん 30900
立花アスカ 13100
黒猫燦 23900
終理永歌 31900
『予選Bグループは終理永歌選手に決まりましたーっ』
『大コケもせず、きちんと和了る。模範的な打ち方じゃったの』
『やっぱり親番で連荘出来なかったのがイタイ……』
『ご、ゴメンなさいっ』
『勝負は時の運。仕方ないニャ』
『黒猫ちゃん、よく言えるね〜。九筒潰された時のこと、忘れた?』
『あうう……』
『そ、それでも。アスカちゃんが大好きにゃ!』
『燦ちゃん……(*´ェ`*)ポッ』
『アマーいっ!』
『以上、Bグループ予選をお届けしましたっ!』
『ぶい……』
ヤケクソ気味の結さんの声の側でVサインを出す終理永歌が、少し楽しげに微笑んでいた。
『わりと厄介なタイプだな』
『そうですか? 地味というか目立たない感じですけど』
『だからだよ。アイツが聴牌するまで、他の奴はほとんど警戒してなかったんだ』
『そんな、事が?』
『要所要所で気付いてるけど、意識が外れる時があるんだ』
要注意だな、終理永歌。
だが、数瞬で彼女の事を忘れて愕然とする事になったのは、あとの話である。
何度も計算したりしてます。ミスがあったら指摘してクレメンス(笑)
黒猫さんはラックが低いイメージ(ひどい)