気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜   作:二三一〇

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 ころころと視点が変わります。
※で区切っている所から変わりますのでご注意下さい。


21 予選Dグループは……

 『京介氏の配信はご覧になったことありますか?

 『アクションゲーム中心ですね。この間から『ゲンコツ7th』をやってたかな?

 『その配信に殿下が乱入したんですよ

 

 まあ、あるかもしれないな。リスナーも突発イベは大好きだし。

 

 『それがですね。よりによってヤールギュレシスタイルで

 『! そ、それは……

 『京介氏も悪ノリして、ヤールギュレシに変更して、それから打撃禁止の投げ合戦が延々と続きましてね

 

 やべえ、凄く見たいっ。

 アレだろ? オイルレスリングのだろ?

 確かそういうモードがあったはず。男のキャラしか使えないけど、上半身裸でテカテカに脂ぎった状態になるんだ。

 

 『そ、それ! アーカイブ、ありますか?

 『あ、ああ……まだ消してはいないんだが

 『消すなど勿体ないぞ? あんな対戦滅多に出来んではないか

 『そうですよ! 俺も見ます! ぜってえ、後で見ますよ! いったあっ!?

 

 前回の裸云々の話は、こんな内容だったらしい。絶対見よう。うん。

 

 ちなみにアバターの古詠未も鼻息荒く顔を赤らめている。アレ?

 

 『ちょ、ま……ひゃあ、やめ、やめ 

アイリス、やめぇふひゃはは、ふわ、はは

 『こ、今度はどうした?

 『くすぐられておるのかな?

 『これもアイリス氏のお仕置きだそうで。古詠未さん、実はかなりやんちゃですねぇ

 

 『東三局始まれって? 待って。こんな美味しい絵撮らないでどうするの!

 『でぃれくたーのような発言じゃな。まあ、若い女子の嬌声は、妾も好きでのう♪ もっと、やれ

 

 ……古詠未が目をバッテンにしながら悶え苦しむさまが三分ほど放置された。おかげでこっちを見る男性陣の表情が少し微妙になってしまった。一頻りおしおきしてくれたアイリスが当然のように言ってくる。

 

えっちなのはいけないと、思います

 

 お前がそうさせてるんだと言っても、理解はしないだろうなぁ。

 

 『あの、まあ、すまない

 『京介が謝る理由はなかろう。勝手に見たがり、勝手に仕置されただけだ

 『殿下の言うとおりです、お気になさらず……

 

 そう言う京介氏のアバターも少し顔が赤らんでいるが、他の二人は変わらない。純情なのは京介氏だけだな。

 

 ちなみに。

 この一連の会話が切り抜かれて、さらにかわいい絵で紙芝居的に作られた通称『Petit≒あるてま』が投稿されていたそうだ。

 

 『こうやって擬人化すると分かり易いでしょ? 古詠未がどれだけおかしな事言ってたか

 「……面目次第もございません……これ、完全に痴女だは……」

 

 こんな会話が後ほど行われた。

 それはともかく、東三局が始まった。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

莉姫さま……お年頃?

ところで、お姉さま。なんでこの方たちは脱がないのですか?

 

 二人は暦の家のもう一つの部屋、客間にて観戦していた。隣の家に戻る事も出来るのだけど、出来る限り側にいたいという気持ちからここが二人の居場所になっていたりする。

 

 プリムラは妹が妙なことを言ったので怪訝そうに聞いてみる。

 

脱ぐ? どういう事ですか?

麻雀て負けたら脱ぐらしいですよ? ほら

 

 そう言って見せてくるのは、動画サイトに上がっていた脱衣麻雀の動画だった。なるほど、負ける度に女の子が脱いでいる絵が出てきていた。

 

いかがわしい遊戯、なのですか? この麻雀というのは

よく分からないけど、不具合かもしれないよ? ちょっと確認してみるね

 

 そう言うとラップトップパソコンを立ち上げ、手慣れた操作でゲームを立ち上げる。

 

『Ⅱ∑⇄《ⅩⅧ✓〜$々→@$%→』

 

 よく分からない単語を呟くと画面が光り、ダイアログやウィンドウが次々と開いていく。

 この世界に広く浸潤した魔力は、彼女たちフラウレイティア世界人にとって最適な環境を創り出す。

 電脳世界に浸潤した魔力は、物理的に解除の困難なサーバーのプロテクトなど簡単に突破してしまうのだ。

 

 ダマスケナがダイブしているのは『コーストスター』という会社が使用しているサーバーであり、それはまさに彼女たちの旦那様がプレイしているゲームに他ならない。

 

あー、やっぱり無いね

元々の仕様に無いのでしょう

割り込ませるのは無理かな?

改竄する気ですか? 後で問題になります。この配信サーバーの方に干渉すれば魔力でオーバーレイする事が可能ですよ?

なるほど。お姉さま頭いい♪

こよみ様……いえ、莉姫様が男性の裸体をお望みならば、叶えて差し上げるのが側妻(そばめ)の務め。この大会に限ってなら後に残らないでしょう

じゃあ、やっちゃうよっ!

 

 

 裏でこんな事態が進行しているとは露知らず。対局は続いていた。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

東三局二本場

 

 『親の相葉京介選手、ダブ東でテンパイ!

 『先制した童は三面待ちなのに引けないのう

 

 『ぬう……張ったよね。参ったな、崩す?

 『弱気だな、小娘

 『三巡目辺りからツモ切りしてるんだから、それは弱気になりますよね

 

 殿下の煽りより乙葉の発言が気になる。こっちの切り方まで見てるとか。それとたぶん、彼も張ってるよな。

 

 見た目安牌はほとんどない。老頭牌もダブ東相手には確約はない。けど……

 

 『えい

 『ここは通すだろう

 

 『ど真ん中無スジをバシバシ叩きます、こよみんと殿下♪

 『仕方なかろう。下手に端に寄ると

 

 『ツモ。ダブ東、ドラ一。2200オール

 

 『役牌が絡むと最悪どこも危険地帯になり得る。九萬とか要らんだろ、ふつう

 

 

相葉京介   ドラ{一}

{一二三七八33④⑤⑥} {東東横東} ツモ{九}

 

 

 はあ。ツモられた。さっきは流局だけど、今回は痛いな。でも、まだ射程圏内。なんとか京介の親を流さないと。

 

 

戸羽乙葉        21300

ヴェンデッド=ハルキオン 19400

相葉 京介       33100

姫乃古詠未       26200

 

 

 『あれ……? なんでしょう

 『見慣れないダイアログだな

 『? 何か出たのか?

 

 確かに出てる。

 

 “上1”、“上2”、“下1”、“下2”

 “選んで下さい”

 

 と書かれている。……? なんだこれ。

 

 『どうかしましたか? 次の局に移りませんけど。どうしよ、運営に聞いてみる?

 

 『古詠未さんの所も出てますか?

 『はあ。僕はこのゲーム初見なんでよく分からないですが

 『俺の所には、無いな

 『どういうこと、でしょう?

 『なんだか分からんが、選べと言うなら俺は王子だからな。当然“上1”を選ぶ!

 

 『ちょっと運営に聞くから待てって言ったのにバカ王子!

 

 『では“上2”ですか

 『え? バラける必要あるのかな? じゃあ“下2”で

 

 『お前ら勝手に進めんな!

 『きゃら崩壊じゃぞ、きりん。それより何か起こっておるな?

 

 メインの会場は麻雀ゲームなのだけど、ゲーム画面ではないあるてまサーバー側には参加しているVtuberが表示されている。皆も3Dで立ち絵があって、なかなかに華々しい。

 ゲストの立花アスカと俺、姫乃古詠未は未だ3Dの立ち絵は無いので2D絵だ。

 

 現在対局しているメンバーの所が光り始めると、さすがに騒然となる。こんな話は聞いてないのだが、それは彼らも同じようだ。

 

 『ヴェンデッド=ハルキオン選手の光が収まりましたが……なんじゃこりゃあ?

 『だからきゃらが……ほうこれは

 

 『え?

 『はあ……

 『……?

 

 俺たちが頭をひねる最中、殿下は高らかに笑いはじめた。

 

 『はーっはっはっ! 見たか、余の鍛えあげられし肉体を! これぞ、ハルキオンに再興をなす輝きよ! 余を崇め、そしてひれ伏すが良い!

 

 そこには。

 なぜか黒のTシャツ一枚で逞しい身体を惜しげもなく見せつける殿下の御姿があった。

 上はそうなのに、下はいつもの白いスラックスだ。まるで上のジャケットとシャツを脱いだようである。

 

 『おーっと、これは何ということでしょう! なんと殿下がキャストオフ! コメントはハルキオン民の高揚と歓喜に溢れかえっております!

 『ふむふむ、眼福眼福♪

 

 次に乙葉の所が収まった。

 

 ちなみに戸羽乙葉の立ち絵は、いわゆる普通に格好の良い男子だ。黒のジャケット、タイの巻かないシャツにこれも黒のスキニーパンツ。

 きりんが優男と言うのは、どう見てもチャラい感じがするからなのだ。

 

 その彼が、なぜかシャツを着ていない。黒のジャケットの中は、上半身裸だった。

 

 『あれあれ? 僕のキャラと違うんですが、いいんですか、これ?

 

 『……これは、これで、アリですよね

 『ふむ、せくしーじゃのう♪

 

 『やるな、乙葉

 『いえ、張りあおうとかいうつもりはないんで……

 

 ……不覚にも、少しときめく自分が嫌になった。しかし、こういうセクシャルなアピールは新鮮だなぁ。

 

 そして、俺の所も光が収まる。

 特に変化は、なかった。

 ただ、顔がなんだか赤くなってるし。

 

 『あいって、いたっ な、なんだアイリス? いきなり……

 

 『な、な、なんて事してくれたんですかーっ!!!

 

 え、なに言ってるの?

 

 『いきなりアイリスチェックを受けた古詠未選手。どういう事でしょう?

 『……あー、そういう……ふむ

 『な、なにか分かったんですか? 神夜姫様?

 『まあ、その。あの立ち絵の側に落ちているもの、あれが原因じゃよ

 『側に……ああ、なんか白い三角形の物が有りますね。なんか左右にリボンが付いててかわいい……てこれ、ぱんつじゃん!

 

もう、ばか、しんじらんない! 乙女のぱんつ、剥ぎ取るなんて、しんじゃえっ!

 

 この絶叫を聞いている間も、ずっとお仕置きをされていた。

 

 どんな拷問だ、これは……

 さすがに、意識が……とおの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 くすん、くすん

 

 ──誰かが泣いている。

 

 

 男の子のようだ。

 

 黒いのに光の加減で蒼を含んだ輝きを放つ、夜空のような髪の少年。はにかんだ笑顔が素敵な、わたしが厄介になっているところの息子さんだ。

 

 

 ──どうしたの?

 

 

 私は聞いてみた。

 

 彼は、戦うのが怖いと言った。

 

 ──どうして、怖いの?

 

 わたしが聞くと、彼は驚いたようにこちらを見た。彼が問いかけてきた。キミは怖くないの?と。

 

 ──あんまり怖くはない。

 

 謙遜でもなんでもなく、わたしはそういうたちだった。幼い頃から戦う事を強いられたせいか、感覚が麻痺している。そう、父に言われてことがあった。

 

 ぼくはこわい。

 ひともまものも、こわい。

 

 そんなことをふるえながら、つぶやく。

 わたしには分からない感覚だと、理解できた。

 だから、わたしは彼にこう言った。

 

 ──なら、代わってあげるよ。

 

 えっ……?

 

 

 驚く彼に、わたしは来訪の証を見せる。

 

 

 ──わたしの望みを叶えてくれるんでしょ?

 

 だ、だめだよ。

 それはキミが自分の為に使うものだ。

 

 彼はそう言って止めてくる。

 でも、わたしのこころは決まっていた。

 

 

 

 ──わたしは君を助けたいんだ。

 ──この世界に来て、最初にあった君を。

 

 

 ──助けたいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めると、葉っぱが額を擦っていた。

 

「……意外とザラザラする……」

……失礼ですねぇ。玉の葉っぱになんてこと言うんですか

 

 玉の葉っぱって、なんだ?

 

 アイリスが分離している以上、ここはお空の部屋だろう。プリムラやダマスケナの気配もないし。

 

ゴメンなさい、こよみさん。まさか気絶するほどだったとは思わなくて

 

 花を萎れさせて、アイリスがつぶやく。

 そんな仕草を、どこかで見たような気がした。

 

 まあ、それはどうでもいい。

 

「大会は……棄権、かな?」

プリムラに連絡させたわ。急遽、三人で打つとか言ってたけど

「そうか……惜しいとは思ったけど、まあ別にいいか」

 

 これは本心だったりする。

 結さんと決勝で戦いたいなぁとか、思いはしたけどそこまで拘っていなかったみたいだ。

 

ごめんなさい。わたし、嫌な女だよね……

 

 萎れた花から、雫が垂れる。

 ……鼻水ならぬ花水かな? くだらない考えを頭を振って追い出すと、俺は身体を起こす。

 

「一つ、聞いていいか?」

 

 俺の言葉に、逡巡しながらも頷くアイリス。

 

「アバターの姫乃古詠未は、もしかしてお前か?」

 

 

……どうして、そう思ったの?

「そりゃあ、その……ぱんつ取られて取り乱したから、さ。ただのアバターだったら、あそこまで慌てないだろ?」

 

 俺の質問に、こくりと花が頷く。

 やっぱり、シュールな絵面だ。

 

なんで、電脳空間に干渉できたのかは分からないけど……よりによって、ぱ、ぱんつだけ取られるとか(//∇//)

「まあ、そりゃ恥ずかしいわな」

 

 長いとはいえスカート姿でいきなりぱんつが無くなるとか……自分の身に置き換えたら、途轍もない恐怖しかない。

 

「済まなかった。俺のせいとは言い切れないけど、選んだのがマズかった」

いや、その……まあ、ある意味一番、安全ではあったのだけど、ね

「え? ……ああ、そうか」

 

 よく考えれば分かることだが、あの選択で上でも下でも1を選ぶとどうなるか。

 上ならブラのみとか、下ならぱんつのみとかあり得たわけだ。見た目で言えば、こっちの方がアウトだよな。

 

 

「まあ、この話はとりあえず置いておこう。アイリス。聞きたい事がもう一つ出来たんだが、答えてくれるか?」

 

 努めて感情を出さずに、坦々と聞いてみた。

 そうしないと、彼女は答えてくれないと思ったから。

 

うん……なあに?

「ちゃんと戻れるのか?」

……うん。戻れる

「本当だな? 嘘じゃないだろうな」

本当だよ。何のために電脳空間に残したと思ってるの? 生命維持が必要ない空間だからなんだよ? ある意味、世界で一番安全な場所なんだから

 

 アイリスはよどみなく答える。

 俺はモノのついでのように聞いてみた。

 

「そこまでする事なのか?」

……え?

「自分の身体を切り離して、お花になってまで。なんで、俺を助けようとする?」

 

 前にも思った疑問である。

 アイリスがこれほどの代償を払い、異世界の人間である俺を助ける理由。

 

「お前は前に言ったな。エナジーの消失により消えるモノを助けたいと。だが、それはお前自身の身体を切り離してまで行わなきゃいけない事なのか?」

 

 変な夢を見たせいか、俺らしくない言動だ。

 内容なんてまったく憶えていないのに。

 俺はアイリスを持ち上げ、抱きしめた。

 

こよみさん……

「女の子が……四十間近のおっさんの為に危険なことをする必要は、ない」

 

 鉢植ごと抱きしめていると、花びらがふるふると震えて、頬に寄り添ってくる。

 葉っぱが優しげに俺の首に回される。

 

……んもう。どうしちゃったんですか? おしおきのし過ぎでおかしくなっちゃいました?

 

 たしかに、おかしいのかもしれない。

 見た目は鉢植えだ。花に向かって愛を語らうような真似は、狂気の沙汰としか言えない。

 

 

 

 

 

 ──でも。

 

 

 

 

──催眠深度三。前後三時間の記憶を改竄

「!」

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

……あれ? 俺、寝ちゃってたのか?

眠くなったせいで棄権しちゃったの、忘れたんですか?

いや、まったく覚えがない

皆さんにはおしおきされ過ぎて気絶したという事になってますので

うわ〜、子供の身体のせいで眠気に勝てないとは……くっそ、恥ずかしい!

 

 

 

 

 こよみさんには、まだ気取られてはいけない。

 

 どれほど甘く、果てしなく浸りたくなる蜜の泉であろうとも。

 

 わたしには享受する資格などありはしないのだから。

 

 




 鉢植えを抱く姿を想像する(笑)
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