気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜 作:二三一〇
※から※までは時間軸が違います。
「十八時半を回りました。皆さん、こんよみー♪ 姫乃古詠未です。今日は告知通りにゲストの方とのコラボ企画です。それでは、早速お呼びしましょう。立花アスカさん、でーす!」
「わーい、お邪魔しますっ、古詠未ちゃーん♪ 立花アスカですっ 皆さん、こんばんはー」
今日の配信は、業界の先輩ではあるが企業としては後輩にあたるちょっと珍しいバーチャルミャーチューバー、立花アスカ。
先日、フェティダのスカウトに応じてスカウトされて、すぱしーば第二のVtuberとなったアスカを先輩として招いた形である。まあ、要するにお披露目というわけだ。
この発表に際しあるてま側、特に黒猫燦がノリノリで応援に駆けつけて盛り上げていた。
当然のように保護者の夏波結とかフラップイヤーのメンバーも駆けつけ、彼女のチャンネル登録数は大幅に増えたらしい。
しかも、あるてまのほとんどのVtuberがコメントを残してくれたようだ。
あるてま、あったけぇなぁ……
そんな華々しい移籍直後の配信であったりする。
俺も先輩であり後輩である彼女を迎えるに当たり、若干緊張していたりする。
「アスカさん、配信見ましたよー。みなさんに祝っていただいてとても嬉しそうでしたね」
「古詠未ちゃん、凸してくれるかと待ってたのに〜」
「あう。スミマセン、ちょっと手が離せなくて……実はリアルタイムに見れてなかったんですよ。ゴメンなさい」
「ううん、別に気にしてないよ? アレかな? 学校の課題とか? 配信見たよ〜♪ 制服姿、可愛かったよぅ〜」
「あ、ありがとうございます」
あれ? すごくテンション高くない? ちょっとついていけるか、心配になってきたぞ?
こんよみー
こんばんは~
アスカちゃん、カワイイー
少しデザイン変わった?
アイリスママが頑張ったのかな?
アスカのイメージが変わらないようにリファインされてる……これはすごい(゚д゚)
「そうなのー、アイリスさんじゃないけど、すぱしーばの絵師さんが手直ししてくれてね〜♪ 2D絵もすごいぬるぬる動くのぉ〜、ほらほら♪」
そう言って手を振ると、滑らかに関節を動かし手を開いたり閉じたりしている。正直いうとlive2Dの限界を軽く超えてる感じだ。
「アスカさんのママは、プリムラさんという人です。私関連の動画を見た方は、たぶんご存知かと思います」
「双子の娘だよね? どっちなのかな?」
「金髪の方ですね」
「ふぁっ? どど、どちら様?」
「せっかくなので呼びました」
「そそそ、そんな簡単に?」
「ご紹介預かりました、プリムラと申します。こよみ様の身の回りを世話をしつつママなどと呼ばれるようになりました」
「身の回りのお世話をしてて、ママって……それってもう、お母さんじゃない?」
アスカちゃん、落ち着いて(笑)
アイリスがママで、プリムラさんもママ……
ここがママの楽園か……
ママ多いなw
てことはもう一人もママなのかな?
「はいはい♪ 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン♪ ダマスケナだよー」
「ダマスケナ、呼んでない。引っ込んで」
「こよみん、辛辣ぅ〜」
「こよみさま、とお呼びなさい。ダマスケナ」
「あうあう……お、お二人とも古詠未ちゃんの所にいるんですね? いいなあ、オフコラボ! 私もそっちに行きたーい!」
「そ、それはまた、いずれ。ともかく紹介は終わったから、二人は下がって」
「かしこまりました。では皆様、ごきげんよう」
「ばいなりー」
金髪がプリムラ、ピンクがダマスケナ……
よし、憶えた。
二人ともまだ子供みたいだったな
メイドさん、なのかな?
こよみん、メイドさん二人を囲んでるのか……ゴクリ
「メイドじゃなくて家政婦さんが正しいかな? 通いだし。あと二人とも成人してるからね」
「ええ……羨ましい」
「? プリムラは料理も得意でね〜。ご飯が楽しみだったりします♪」
「うう〜、やっぱり、そっち行きたい〜」
あんな若くて美人の家政婦さん、いいなぁ
あれ? プリムラさんはいいとして、もう一人のダマスケナさんは……何をしてるの?
「ダマスケナは……主にゲーム、かな? スナッチをやり続けてプリムラに怒られるくらいだよ(クスクス)」
「あー、バラさないでよー」
「うーん、ダマちゃんがんばれー」
さらっとバラすこよみん(笑)
アスカちゃんのいきなりダマちゃん呼びw
プリムラママとの格差がありすぎて草
アスカと会ったあの日。
二人は普通に戻ってきた。
フェティダに釘を刺したのが功を奏したか、それとも大した問題に発展せずに済んだのか。
真相は分からないけど、俺としてはどうでもいい。せっかく二人との生活も慣れてきたのに。別の人間が来るとか、面倒な事にしかならない。
ただ、二人ともそれまでの生活と違ってやる事が増えた。
今の話の通り、プリムラはアスカのママとしての活動をするようになった。それはいいのだけど、ダマスケナはより面倒な立場になってしまったらしい。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「技術提携担当?」
「……そうです〜」
「あるてま側にもたらした技術……正確には魔力による仮想データの自動構築と自律編集。この辺りを現存の技術になるべく落とし込んだノウハウを供出するという役目ね」
アイリスが言った言葉の半分も理解できなかった。ごめん、詳しく。夕飯の食卓でするにはやや場違いな話題ながら、アイリスは説明してくれた。
「既存のデータから内部のデータを自動的に構築して、それを過不足なく既存データに繋がるように自律的に編集する機能の事。あるてまのサーバーに対してダマスケナがやった事を簡単に説明するとこんな感じになるの」
当然、そんな説明で分かるわけもなく、かいつまんで説明してもらった。
あるてま内部にある全Vtuberの2Dないし3Dのデータ。これを元に立体データから洋服、肌着などを自動的に構築して、破綻しないようにそのデータにしてしまう。
普通、3Dのデータというのは内部はスカスカだ。外面にテクスチャを貼って服を着た人のように見せたりするけど、その内側は何もない。それは人間の身体の中も同じだ。
ところが、ダマスケナはそれに実体を与えた。もちろん電脳空間なので実体とは言えない。だが、それにより服という概念を纏いやすくなったらしい。
「服を着せるために実体を作ったというのが正しいでしょうか? ともかく、脱衣をするために身体を実体化する事が先決だったのです!」
「……何がお前を、そこまで熱くさせたの?」
「それは当然、」
「ダマスケナ?」
「……そ、それはとりあえず、置いておくとして。私は膨大なデータを集める必要がありました。とあるアプリデータの素体となった人工知能を拝借して、そこから最適な形になる肉体データを再構成。そうすることで、現存の服や肌着などを合わせられるようにしました」
なんか普通にぬかしているけど、やってる事はとんでもない。しかも、するっと人工知能を拝借とか言いやがった。犯罪じゃねえか、やっぱり。
「魔力頼みで適当にやった事を、辻褄が合うように先方に提供するのが、彼女の贖罪よ?」
「……無理じゃね?」
そもそも魔力を使って成した事を、魔力を使わないで出来るわけがない。ところがアイリスには可能という話だ。
「この世界のインターネット環境には、すでに魔力が浸潤しているわ」
「えっ?」
そんな事は……聞いていない。
しかし思い当たるフシはあったりする。
「我王君のアレは……そういう事だったのか」
「そう。インターネット環境に浸潤した魔力が彼によって魔術を形成し、魔法を発動させかけた」
「……なんでそんな危険な事をした?」
俺はなるべく声を荒らげないように詰問する。アイリスは顔を背けるように花を動かし会話を続けた。
「本来、危険はなかった。あんな術者がこの世界にいるなんてあり得なかったから」
「そもそもこの世界に魔力なんて無いんだろ? だから使える人間なんて居ないと思い込んだ。違うか?」
「……違わないわ」
「博士なんて呼ばせるわりに、希望的観測が多いな」
「居ないと証明なんて出来ないもの。どんな事にもイレギュラーはあるわ」
不貞腐れたように言うアイリス。
たしかに彼女の言うとおりなのかもしれない。
「話がそれたわね。ダマスケナがやったのは、私達でもめったに出来ないこと。そっち方面に才能があったのね。本来なら何人もの唱者と算術師とでやらなきゃいけない事をたった一人で、あの短時間に仕上げたんだから」
「フェティダ様に褒められました。天才だーって」
喜ぶダマスケナは、この間の時とはうって変わっていた。プリムラもそんな妹を誇らしげに見つめている。
「そんなわけで、彼女はこれから『えすいー?』として活動するらしいの。魔力を極力使用しないで構築したシステムを完成させるためにね」
アイリスがそう締め括る。
俺はダマスケナに向いて、頭に手を乗せる。
「だんな様……」
「やり方は良くなかったかもしれないけど、お前のやるべき事が出来たのは良い事だ。頑張れよ」
「……はいっ。ちゃんと責任を取りますっ」
ダマスケナがにっこり微笑む。
大輪のバラのような笑顔に俺は嬉しくなり、優しく頭を撫でてやった。
「だ、だから。だんな様も責任とってください……」
「ん? なんだって?」
「いえっ、なんでもないですぅ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「さて、それじゃあ。アスカさんのご要望なんですけど」
「はい。わたし、あの歌が聴きたいんです。カレーを作ってた時に流してたBGMのアレ」
「あ、あー……あれかぁ」
あれ? たしか、打ち合わせでは別の曲にしてくれるって言ってなかった?
そう思ってたら、アスカのアバターがペロッと舌を出していた。
ちくしょー、だまされたぁ!
「実は、マネージャーさんから楽譜と歌詞を頂いたんです。古詠未ちゃんに歌って欲しいと思って、わたし一生懸命練習したんですよ」
あ、あー。
そんなことしてたの? この短い間に。
でもさぁ、おれまだあの歌、覚えてないんだよね。
お、あの歌の正式版聞けるのか?
歌声、きれいだったよな
まー、アスカちゃんだし。お歌になるよね
いっちゃえー
●REC ポチッ
はよはよw
リスナーは無責任に煽ってくる。
アスカも配信の向こうで音を調節しているし。
も、もう。知らないからな?
『歌詞は私が言うから、続けていけば大丈夫。あんまり感情はのせないでね?』
アイリスがそう言ってくれる。
大丈夫、感情込めて歌うなんて、懐かしアニメの歌くらいしかやらないから。
「じゃあ、始めるよ」
軽やかにアスカの弾くピアノの音が響き渡り、あの旋律を奏で始める。
すぅー……はぁー
深呼吸をして、アイリスの言葉を待つ。
『とぅーは、るぅ~とらぁぇ、しぇすてぃ……』
「♪ とぅーは、るぅ~とらぁぇ、しぇすてぃ、ふぁれくぇ、らふぁ……」
相変わらず、どこの言葉だか分からない。
彼らの世界、フラウレーティアの言語なんだろうな。
アイリスも、あの時より分かりやすく滑舌よく歌ってくれているので、なんとか追える。
歌い始めると、不思議と唄えているようだ。
アイリスの補助も無しに歌詞が出る事もたまにある。アレ? 意外と俺って才能あったりするのかな? なんて勘違いもしてしまうが。
一番が終わり区切りに入ると、アスカのピアノのソロだ。特段難しいそうに弾いていないけど、アスカってやっぱり凄いなぁ。
と、そこに弦楽器の音が混じってくる。
なんだ、と思ったらダマスケナとプリムラだった。
「アスカさん、ウチの二人のサポートらしいです」
「ええっ、嬉しい♪ ここ少し長めだから助かるぅー」
ダマスケナが抱えているのはハープのような楽器だ。もっとも扱い方はハープというよりはギターのようで、忙しなく弦を弾いたり、留めたりしている。
プリムラの方は、ヴァイオリンのようだ。これは見た目からも差異が分かりづらいけど、やはり若干の違いはあるようだ。弦を弾くのに弓を使うのも同じ。だけど、音は少し違うかな。
集音マイクもいつの間にか設置してるし、二人の技術はたぶん問題ない。むしろ問題は俺だったりする。
『ちゃんと歌えてるから大丈夫。感情だけは抑えて。独唱と違って楽器が増えてて、発動しやすくなってるから』
なんか、不穏なワードが出てきた。
おまえ、まさかこれ、魔法が発動したりしないよな?
『並の唱者ならこれでも魔術は起動しないわ。でも、あなたは少し規格外だから。感情だけは抑えて』
「な、なかなかにハードだなぁ」
アイリスのヤツ、否定しなかった。
つまり感情がこもると発動すると認めたわけだ。一体どうなるのか気が気でないので、二番の入りに少し失敗した。
おおう……
なんだか、すごくきれいな旋律……
軽く浄化されそうだな……
あ、その気持ち分かる
ケルトっぽいけど、少し違う気もするし
そもそも言語はなんだ?
発音からすると、ロシアっぽい
いや、ロシアじゃない。こんな言葉ないよ
……ヒュムノス語みたいなものか?
正解に辿り着いてるコメントもある。
たぶん、この言葉は魔術を起動させる鍵になっている。感情がのるとダメとか、ゲッ○ーじゃあるまいし。
なるべく平静に、心穏やかに言われるままに言葉を紡ぐ。盛り上がりそうな楽曲に合わせているのに、感情込めるなとか難儀なこと言うよなぁ……
「♪ とぅ、れーてぃあ、つぇ、ふーらぁーぅ、あー……」
最後の発音が掠れてしまったけど、なんとか終わった。アスカ、プリムラ、ダマスケナの演奏も終盤にかかり、最後はピアノのソロで終わる。
……終わった
もう終わっちゃった……
てか、これ八分もあったのかw
あんまり長く感じなかったけど
なんとなくスッキリした感じだ
こころが洗われたみたいだお
じゃあ、オマエ消えてんじゃんw
ひとをアンデッドみたいにいうな草
8888ー♪
ぱちぱちぱちぱち〜
「ありがとうございました! いやーびっくりしたぁ、まさか他の楽器が入ってくるなんて」
「プリムラとダマスケナが、ね」
「ありがとう、プリムラママ。ダマスケナさんもありがとうございました」
「お安いご用です」
「それじゃあ、アスカちん、待ったねー♪」
元気に二人が退出する。
「アスカさん、ありがとうございました」
「ううん、古詠未ちゃんこそ、ありがとうね。すっごく元気をもらった気分! もう一曲行っちゃおうっかー!」
「ええ……」
それはマジに勘弁くだせえ。
『やっぱり、少し効果が出ちゃったみたいねw』
ええ? どういうこと?
『この曲は“豊穣の恵みを喜ぶ歌”。人に元気を与える効果のある、ごく初歩の唱術よ』
……俺は、疲れてるんだけど?
『唱者は使う人間だから、疲れるの。奏者はそれほど消耗はしないんだ。』
なんか、身体が軽くなった気がする……
そういや、肩こりが無くなったな
おいおい、ワイ腰の痛みひいたんだが
疲れ目がマシになったのは気のせいか?
んなわけあるかよw
まあ、気のせいだろう
ま、まあ。そうだよな。
そんな効果が出るわけない。
そう思っておこう。
「じゃあ、次っ! 何にしよっか、古詠未ちゃん!」
……アスカのテンションだけはあがりまくってるなぁ……
なに? つまり、アスカの体力回復させちゃったわけ?
「新生アスカの溢れる想いっ! みんなに届けー!」
いや、その溢れてるの、俺の体力なんだけど……
「イクよー、古詠未ちゃんっ」
「ふぁ、はいっ!」
業界の先輩であるアスカに逆らうわけにもいかない。というかこのテンションを下げるのは一リスナーとしてあってはならない。
俺は疲れた体を鞭打って、マイクを握りしめた。
結局、このあと三曲くらい歌わされた。
……お歌、疲れたよ……がくり。
移籍直後のアスカでした。
本来自分でイラスト等を用意しているアスカですが、プリムラはそれをブラッシュアップして配信に使える形にするのがお仕事です。どちらかというと、ママはやはりアスカ本人ということになってます。