気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜 作:二三一〇
水色クッション兄貴の許可が頂けたので名前が出せるようになりました! 感謝でございます\(^o^)/
WARNING!!
がっこうぐらしのゲームの中のため
瑠莉(こよみ)
古詠未(アイリス)
と中身が変わっています。
本格的なパンデミックが発生した時期はやや夕暮れ時。巡ヶ丘学院が夏服だった所や、教室にかかる冷房から夏場と推測できる。
つまり夕暮れ時まではまだ時間がある。現時刻は午後三時四十分。ここから巡ヶ丘学院までの距離は……どれくらいだ? 勝手に情報が入るわけでないのか、そのあたりの知識は全くない。クソゲーかよ?
「るー。難しい顔して、どした?」
こてんと首を傾げる橙色の髪の少女がそう聞いてきた。モブなら情報を与える役目があるはず。聞いてみよう。
「巡ヶ丘学院までの近道とか分かる?」
「おー、しってるぞ? こっからだと三十分くらいじゃね? なんだ、りーねぇの所に行くのか? なら、アタシも行くぞー♪」
おう?
なんだこの子、りーさんの知り合いか?
名札を見ると『千寿万里花』と書いてあった。
ひょっとして、プレイ可能キャラなのか?
てか、それなら俺が操作(この言い方しか思いつかない)するのはこの子の方だと思うんだが……まあ、考えても仕方ない。
先導してくれるなら話は早い。
「おう、まかせとけー」
すでに帰り支度をしている状況なようだが、目の前のランドセルから筆箱を取り出しシャープペンシルや鉛筆を取り出し、ポケットに入れる。
携帯は折りたたみ型だけど、これもスカートのポケットへ。
お金は……八二十円か。これもスカート……もう入らないな。ランドセルにしまうとラグが怖いから巾着に入れてランドセルに括りつける。
防犯ブザーも確認。
「よし、行こう!」
緊迫した表情の俺(るーちゃんなので違和感ありまくり)に、万里花は疑問も抱かずにおーっと拳を上げる。
対して古詠未(アイリスな)の方は、なんだかジト目である。
「あのさ、説明とかないの?」
「説明すると長いの」
ため息混じりに彼女もランドセルを背負うと、後ろの棚から少し大きいかばんを持つ。
「私のものらしいのよ。装備品てヤツみたい」
「こよみのばいおりん、すごかったな」
「ありがと。転校初日の挨拶に持ってきて良かったわ」
「また、聞かせてな♪」
「うん、いいわよ」
ははあ、そういう設定ね。だから向こうの制服なのね。
ともかく、早く移動しよう。
玄関で靴を履き替える。念のために上履きも持っていきたいが、袋もないし大量の荷物は速度が落ちる。代わりに傘立てに残っている誰かの傘を拝借。二本を持っていく。
「うん? 『誰でもかさ』をもってくの? あめ、ふってないけど?」
たまに忘れてくる子供に向けて貸し出してる傘か。なら、ちょうどいい。
どうせこのあと誰も利用しなくなるし。
俺の考えを理解したか、古詠未は要らないと首を振ったので万里花に渡す。楽しそうに振ってるけど、それが最後の武器かもしれんから大事にしてくれ。
校舎を出ると、まだパンデミックは発生して無いようで校庭には遊ぶ子供とかクラブ活動をしてる子供とかの姿が見られる。
だが、歩きながら携帯でニュースサイトなどを見てみると各地で様々な異常行動が見られる事が分かる。
アニメでめぐねぇが見てたニュースとかもあるし、そのうちこの辺りにも来るだろう。
「るー、あるきすまほはダメだって先生言ってたぞ?」
「ごめん、まりー。でも確認したいことがあって」
「ま、わたしもよくやるけどなっ こっちだぞ」
万里花が路地に入っていく。
普通の通りは人が多いので、かれらとの遭遇率が高くなるかもしれない。これはポイント高い。
「それはいいけど、こんな所を通るのはさすがに良くないんじゃないの?」
「こよみはおじょーさまだなぁっ そんなんじゃうちらと付き合っていけねーぜぇ?」
「んじゃあ、私もパスで」
「がーんっ! るーがひどいよ、こよみー」
泣きつく万里花を適当にあやす古詠未(アイリス)だが、言われても仕方ないだろ。なんで人様の庭とか通るんだよ。誰も居ないからいいってもんじゃないと思うんだが。
俺にも覚えはあるけど、もっと小さい頃だったと思うよ? この子、年齢のわりに幼いのか……天真爛漫と言おうか。
するすると人んちの庭を通り、塀を登り、ドブ川に掛かった狭い橋を一人ずつ通る。
すると。
どこからか、ドカンッという爆発音がした。
「あ」
「ちょっ、もうしっかりしてよ」
「ゴメン、驚いちゃった」
危うく橋から落ちるところを古詠未が手を伸ばして助けてくれた。小さいながらに力が強くて驚くけど、ひょっとして古詠未という身体は他の子より強いのかもしれない。
少し気になったので、万里花と引っ張りっこをしてみよう。爆発音も気になるけど、遠いのでまあ関係はないだろう。
「おー、いいぞ? るーなんかに負けないからな?」
「なんなの? いきなり……」
万里花の手を握って、ぎゅーっと引っ張る。向こうも負けじと引っ張るが、わずかに耐えただけで万里花に力負けして抱きついてしまった。
「ふははー、はぐはぐ♪」
「ひゃあっ もー、まりーったら」
こんなに小さくても女の子は女の子なのか。
ほのかに香る甘い香りがする。
あわてて離れると、古詠未がこちらをジト目で眺めていた。
「おあついことで」
「ち、違うの。これはちからがどのくらいかはかるためで……」
「るーが勝てるわけないだろー? クラス一のひんじゃくぼでーなんだから」
万里花の言う事は、たぶん筋力的な意味だ。
体型とかの意味ではない……はず。
しかし、万里花にあっさり負けたところを見るにこの瑠莉という身体は、はっきり言ってこのゲームには向いてない。気がつくと息も少し上がってるし、あれだけで手はぷるぷる震えている。
かれらとの物理的な『おはなしあい』には、かなり不利な感じである。うまく対処していかないと。
「そろそろ行かない? あの爆発音も気になるし」
「そうだった。急いでりーねぇのとこ行かないと」
あの音は、たぶん車か何かがぶつかって爆発した音だ。あの事件の最初の方でもこうした事故が多発していた。つまり、この辺りにも。
「ひゃっ、なんだ!?」
「アー……」
「う……わ、よせ、やめっ……ギャーッ」
「な、なんだ、おい?」
「か……噛みついて? 血が、あんなに……」
「きゃ、キャーッ ひと殺しぃーっ!」
路地の向こうからそんな声が聞こえてくる。
こそこそと通り抜けるが、さすがの万里花も緊張の色を隠せてない。
「ね、ねぇ。なにがおこってるの?」
「ぼうどうが起こってるって、ニュースで言ってたの。だから、りーねぇのところに行かないと」
「えー? それじゃあ、うちに帰った方がよくない?」
「りーねぇが心配だから」
メタ知識というわけではないけど、こうしたパニック時に個人の家というのは役に立たない事の方が多い。生活のインフラがほぼ外界に頼っているし、籠城にも向いてないケースが多い。
自給自足できる環境が得られないのだ。
相手は兵糧攻めの効かないゾンビどもである。勝てるわけはない。
でも、万里花の言う事も正しい。
子供は親の事が気になるものだし、彼女にとって悠里はあくまで友達の姉だ。
天秤に掛ければどちらに傾くかは歴然である。
「まりー、ここまでありがとう。もう、帰ってだいじょぶだよ?」
「えっ? りーねぇのところまで付き合うよ」
「ごりょうしんは、心配でしょ?」
うん、言葉が拙くてすまぬ。
舌ったらずやねん、
しかし、万里花は意に介した様子もなく
「とーちゃんかーちゃんは、つえーからでーじょーぶだよっ るーとりーねぇの方が心配だから、ついてくっ」
「まりー……」
「押し問答してても仕方ないわ。行きましょ?」
古詠未がそう促す。
彼女の言う通りである。
一刻を争う状況であり、悩むべきではない。
それにここは仮想の世界だ。
まりーの両親は本当はいない。
そう思い込み、先を急ぐ事にする。
高台にあるマンションの横を歩いている時に、家の中からガラスを突き破って人が転がり出てきた。
手摺にぶつかり、乗り越えようとしたが、それは叶わなかった。後ろから掴みかかる影があったからだ。
「ひゃっ! やめてっお母さんっ! いやぁア"ぁっ」
あまりに突然に起こった出来事に、万里花の動きが止まる。
カタカタとそちらを見上げると。
そこには、苦悶の表情を浮かべるおばさんと、その首に齧り付き血を滴らせる老婆という光景があった。
「……ふぎっ」
「だめっ」
瞳に涙を浮かべる万里花の口を、
噛み付かれたおばさんがこちらを見ると、何か理解したように少しだけ笑い。
噛み付く老婆の頭を掴んで一緒に後ろに倒れ込んだ。
「は、やく……にげっ」
そう言葉を発するおばさんは、老婆にのしかかられていた。血飛沫が辺りに飛び散り、コンクリートのベランダを濡らしていく。
「いこう……」
できる限り小さい声で指示を出す。
こくんと頷くと、涙を溢しながらも先導する万里花。
先程までの朗らかな表情は影も形もない。
それも仕方がない。
銃弾の飛び交う最中より酷い。
戦場を逃げ惑う時よりもキツイと感じたのは、初めてだった。
「古詠未、へいき?」
「……うん、まあ、なんとか。こんな状況だと理解してなきゃ、気が狂いそうだけど」
「だよねぇ……」
アイリスは別の世界の人なので、同じメンタリティーではないのか多少はマシな様子だ。
でも、それでも血の気が引いてるように見える。
そうしていると、本当に異世界のお姫様のように見えた。
歩きどおしだったので少しだけ休むことにした。
さっきのマンションの隣にあった小さな公園のベンチに三人で座る。
いつもなら子供が遊んでいる時刻だろうが、投げ捨てられたおもちゃや自転車が、彼らの不在を示している。
外れにあった自動販売機で水を三本買い、一人ずつ配る。
本来ならコンビニとかで食料も買いたいけど、今のこの状況で人の多い辺りに出るのは危険すぎる。
憔悴している万里花は、さっきまでの勢いもなくなっていた。
「まりー、心配なら帰っていいんだよ? 私はほら、古詠未もいるし」
「お家の人も心配してるかも、ね?」
私たちの声に、万里花はぽつりと涙を零す。
「きょう……としんの方に、行くからかえるのおそいって……だから、まだ。いえにはだれもいないの」
声を抑えて、つぶやくような告白に胸が締め付けられる。
都心ということは、つまり人が大勢いる中だ。距離も離れているし、無事に帰ってくるとは思えない。
幼い彼女にそこまで理解出来ているかは分からないが、不安に押し潰されそうなのは理解出来る。
瑠莉についてきたのも、家に帰っても誰もいない時間が長くなるからというだけの事だったのだ。
「それじゃあ、今日はうちに来てご飯食べていきなよ。りーねぇもそうしろって言うから。ね?」
そう言って、万里花の肩を抱き寄せる。
そんなことできるわけないと知ってはいるけど。
少しでも彼女を元気付けてあげたいと思った。
堪えきれなくなった彼女が、こちらに抱きついて声を殺して泣いた。俺は、黙って見守る事しかできない。
「とーちゃん……かーちゃん……」
「……」
日はかなり傾いてきている。
喧騒は遠くで聞こえるが、ここだけは何故か静かだ。
「……来たわ」
古詠未が静かにそう言った。
ヨタヨタと歩く、小さな人影が公園に入ってくるのが見えた。
手に持った傘が、細かくふるえていたような気がした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
あれ?
こよみん、配信切り忘れ?
いや、さっきいきなり始まったw
マジか。二発目とか物足りなかったん?
でも、誰も居ないんだよなー
しかし、PCの前には人はいない。
忽然と主が消えた事を報告するためにプリムラは慌てて自らの姉に電話をかけていた。
だから、そのPCに映り込んだものは視認してはいなかった。配信中ならダマスケナがモデレータとして監視していただろうが、彼女も仕事と主の配信に付き合っていたため自室で寝てしまっていたのも運が悪かったと言える。
なんか切り替わったな……がぐオル?
がぐオル配信すんのか
いや、告知ないし、アバター居ないし
乗っ取り、とか?
あのセキュリティガチガチのすぱしーばだぞ? ムリムリのムリゲーw
経験者は語る草
俺はやっとらんわ。○chの書き込みで書いてあったんだよ
すぱしーばの管理サーバーは、凄腕のハッカーでも抜けられないと噂されている。事実、未だかつてその内部に侵入したという話は虚言しかない。
お、起動したか……ストーリーで、えっ?
るーちゃんっ!
マジ、おお、るーちゃんだっ
え、あったの? るーちゃんルート?
キャラ選択に、こよみん居るやん(笑)
あえー? こ、これどういうことだってばよ?
それからゲームが開始する。
配信中ならVtuberが色々とトークをしながら進めるのが普通だが、そういうものは一切無い。まるで配信をしているのを気付かないでゲームを始めたような感じに、コメント欄は加速する。
こよみん、繋がったままゲーム始めちゃったよw
マイクがミュートなのが幸いだな
つか、報告したれや
あー、〇〇さんがつぶやいたーに書き込んだらしい。
火に油を注ぐ草
これは祭りかな?
スパチャ出来たらスパチャタイム突入なのにw
なになに、祭り会場はここか?
いえー、見てるーぅ?
報告見て来てみれば、なんだこれ? 相葉 京介
あれー? 古詠未ちゃん、切り忘れなの? 立花 アスカ✓
おおう、アスカちゃん降臨!
なんなのこのバカ騒ぎ……? 夏波 結
わっしょいっ 箱庭 にわ
ゆいまま来てたw
にわちゃんもいたっ
よしっ、ガチャ回すわ。今なら出そう!
流れきてるぜっ
人の居ない所に来る自由人w
ねぼすけのフォローおつでしたw
……ダブリ一枚に総スカン
どんまい(いい笑顔)
明日はいいはずさっ
コメント欄は統制の取れない掲示板と化していく。管理する人間の不在なのだから仕方ないだろう。
その喧騒が収まったのは、ゲームが始まってからであった。
いちおう、高校で合流できた段階でこの話は終わりになる予定です。あくまで「Vtuber」なので。
ちなみにこういう時、がっこうぐらしタグを使うのはダメですよね?