気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜   作:二三一〇

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 インターミッション、思った以上に長くなってしまって申し訳ありません。


03 インターミッション その2

 怒涛の第一回目の配信のすぐあと。

 

 第二回目の配信が、すでに告知されていた。

 

 勝手に。

 

 

 

 ……とりあえず、花弁をつまんで両側に引っ張る。

 

いひゃい、いひゃい〜! ひゃめれふらさいょ〜

 

 アイリスが泣き叫ぶので一先ず矛を収める。

 どう見ても植物なのだが、多彩に動くし物も食べれば飲んだりもする。

 あれ? 植物って光合成とかでエネルギー作るんじゃなかったけ?

 

もーう、珠の花弁が散ったらどうするんですか?

「一枚くらいなくても問題ないと思うよ?」

くあーっ! 辛辣ですねぇ、こよみさんたらっ

「お前のやり口の方がよほど辛辣だと思うけどな」

 

 なにせつぶやいたーでの告知された時間はこれから四時間後。十八時前後だ。

 

 しかもお題は決まっていない。

 

「おああ……どうしたらいいのやら……」

先ほどと同じようにマシュマロ読んで答えれば良いんじゃないですか? ほとんど読んでませんでしたから、まだまだストックはありますよ?

 

 なるほど。たしかにマシュマロの件数はかなりある。今でも少しずつ増えてるようで有り難いやらなんやらだ。

 

 しかし、同じ企画を二回続けるというのは悪手(あくしゅ)だと思う。

 

「アイリス、姫乃モードだ」

ほえっ? まだ配信には時間がありますよ?

「姫乃のスペックを知っておきたい」

あ、なるほど。分かりました。では

 

 そう言うと、アイリスがふよふよと浮かび上がり俺の頭の辺りまで近付いてくる。

 

では、イキます! 姫乃ちゃん、かもーん!

「いや、そのかけ声いらないだろっ!」

 

 その声と同時に鉢植えの花が光り輝き、俺の視界を眩しく照らす。

 

 それと同時に、俺の身体も変化しているような感じがする。眩しすぎて見えないけど、たぶん魔法少女のようになっているんじゃないかと推察できる。

 

 

 そして。

 

 

傾国の美女と呼ばれ、壊した国は数知れず!

 マジカルアイリス、只今参上ー!

勝手に変な口上、人の頭の中で垂れ流してんじゃねーっ!

 

 アイリスに向けた怒号は、先ほどまでの俺の声ではなく。

 

 とても細く、透き通った声だった。

 

 こんな声で汚い言葉を言うのは、たぶん冒瀆だとは思うのだけど……そこは気にしても仕方ない。このクソ花(アイリス)が悪い。

 

 

 光はとっくに収まっていて、俺はあらためて自分の手を見る。

 

 

 

 小さな、女の子の手。

 去年の年末に押しかけてきた妹の手も、こんなくらい華奢だった。

 

 手を握り、開く。

 間違いなく、俺の感覚だ。

 

 姿見の鏡を見ると、そこにはダボッとしたスエットに身を包んだ少女がいる。

 

 俺の身長は百七十三だった。

 部屋との対比から、おそらく身長は百四十そこそこ。

 

 少し青が混じった夜空のような髪は背中の中ほどまで伸びていて、前髪はいわゆるぱっつん。

 その左のこめかみの辺りに、白と青のグラデーションが綺麗なあやめの花が揺れている。

 

 瞳は透き通るような青で、やや垂れ目気味。

 丸顔なせいか余計に童顔に見えてしまう。

 

 この服ではよく分からないが、胸も……少しはあるようだ。

 じっくり触るなんて、怖くて出来ない。

 またアイリスに茶化されるし……なんだか妹に悪さしてる気がして、単純に喜べない。

 

 

ふう……相変わらず、可愛いですね、こよみちゃん♪

うっさい、黙れ

あ、反抗的な子にはおしおきしちゃうぞ?

わっ、バカ、やめ……あうっ!

 

 その瞬間に、身体の奥を電流が駆け抜けたような痛みが走る。

 

 痛み自体は大したものではない。

 だが、避ける事も出来ずに受けるしかないし、体力は消耗させられる。

 そして何より、慣れてくると少し気持ちいい所があるのが……困る。

 

やめろっての、この……

お、直接攻撃は困ります。無理に外すとお互い困った事になりますよーぅ!

 

 くっついている花を掴んで取ろうとすると、アイリスが慌ててそう言った。

 

な、なんかヤバいのか?

元の身体に戻れなくなるだけですケドね!

ちょおヤベェェェ話じゃないかー!!

 

 え?

 凄いヤバいじゃないかよ!

 

合意の上に解除するなら問題ありません。強引な事すると、取り返しつきませんよ?

 

 アイリスが諭すように言うので、しぶしぶ手を離す。

 

 おのれっ、ディケイドォッ!!

 

 ちなみに、合体している状態ではアイリスの声は表には出てこない。

 聞こえるのは俺だけだと思う。

 先ほどの配信でも、アイリスがあーだこーだ言ってるのを拾うリスナーが居なかったのがその証拠だ。

 

ご理解が早くて助かります。お互い協力して、さっさと目標を達成しましょう!

とは言っても、チャンネル登録数百万て……かなり無謀だと思うがなぁ……

 

 現状、Vtuberとカテゴライズされる者で百万の登録者数を誇るのは僅か一人である。

 俺の好むVtuberはその中でも新進気鋭であり、その中でさえ二十万ほどだ。

 

 彼らを追い抜くほどの登録数を稼がないといけないのだ。

 

 とてもではないが、無理だ。

 

たしかに難しいとは思いますけど、登録者数は他の人とも共有出来ます。リスナーの取り合いという構図にはなりません

そりゃ楽観的すぎる。他のVtuberに叱られるぞ?

まあ、そうですね。でも、やらなきゃ出られないんですよ?

そこなんだよなぁ……

 

 前途が多難すぎて、あまりに遠すぎる。

 俺は、もう一つの懸案事項を聞いてみる。

 

それで、期限はいつまでだ?

コチラの空間の維持は三年ほどが限界なようです。ですから、それまでとなりますね

 

 

 期限は三年……。これを長いと見るか短いと見るかは非常に難しい。

 なにせVtuber界隈が活性化してきたのはここ一年。発祥してからだいたい三年くらいの新しいコンテンツである。

 

 そして、急激に成長したものというのは得てして簡単に廃れてしまうものだ。

 

 そこに自分の命がかかっているとなれば、否応なく考えさせられる。

 

ちなみに期限になっても死ぬわけじゃありませんよ?

えっ? そうなの?

 

 期限とかいうから、死ぬのかと思っていた。

 

じゃあ、どうなるんだ?

元の身体でなくなるだけです♪ 古詠未ちゃんとして生きていく事になりますねー♪

 

 

 

 

 ────え?

 

 

 

美少女としてやり直せるなんて、失敗しても別に困らないんじゃないですか?

いやいや、いや、バカ! このおバカっ! 流石に植物だなっ

 

 それはつまり、殿田暦がこの世から居なくなってしまうとの同義だ。

 俺の中身が残っても、俺の身体が無くなったら……俺は死んだようなものなのだ。

 

そうなったらどうなるんだ?

さあ? その時にならないと分からないと思いますが……魔法によって強制的に動かした事象に対しての反発があると思うので、おそらくいいことはないと思います

アバウトかつ凶悪な発言、ありがとうございまーす!

 

 えー、あー。

 

 困ったぞ。

 対処法が何も思いつかない。

 1つだけあるのは、達成不可能とも思える登録者数百万だ。

 

と、ともかくだ。登録者数を増やす算段を考えていこう

ようやくヤル気になってくれましたね!

その発音はやめろ、良くない響きを感じる!

おお? 厨二方向へシフトですか? 悪くはありませんが、さっきの配信からキャラ変わってしまいますし

いや、そうじゃなくてね?

 

 

 

 厨二キャラと言えば、あるてま二期生の我王神太刀くんだ。

 

 独自の世界観を作り出して、それを揺るがずに周りを巻き込む事でキャラを確立させている。

 

 だが、反面それは強いアクであり、取っ付き悪さにもなる。我王の凄いところは、その取っ付き悪さをカバーする細かい気遣いだ。

 

 同期や先輩の放送は全て閲覧し、DisroadやRINE、つぶやいたーなども常にチェックしているという。

 

 そうする事で拾うべき話題、スルーすべき案件を見切り、自分の放送に有効に活用している。

 

 惜しむらくは、未だにコラボの数が圧倒的に少ない事だ。

 場を仕切る能力はそこそこありそうなので、大きな企画の時に力を発揮するかもしれない。

 

 だが、厨ニキャラというのは存外多い。

 まあ、我王くんの考察はとりあえず後にしよう。

 

 この古詠未というキャラクターに合うかというと無理な気がするからだ。

 

 俺はアイリスに声をかける。

 

おい、アイリス

〜〜♪

 

 アイリスは少しご機嫌な様子で鼻歌なんか奏でていた。

 花なので花歌、かな? いやそもそも鼻がないな。

 それはともかく。

 アイリスのそれはなかなかに上手い。

 花の世界では、歌が上手なのかもしれない。

 ……言っていて、よく分からないな。

 

おい、アイリスってば

ふえっ? な、なんですか? 暦さん

 

 ようやく気づいたので本題に移る。

 

そもそもこの公式設定ってなんだ? お前が考えたのか?

どうせキャラ崩壊するならと思い、適当に作っておきました!

やっぱり適当か……まあ、確かにキャラ崩壊したから結果オーライだけどな

 

 実のところ、Vtuberにとって公式設定はあまり意味が無い。

 

 清楚なお姫様志望が口汚く罵ったり、JKの委員長が大人のお店の話とかしたりするのだから。

 

 公式設定とはあくまで最初にこうであって欲しいと企業側の出した枠組みであり、方向性がどうであれリスナーの興味に突き刺さるのなら、そんなものはどうでもいいのだ。

 

 むしろギャップが大きくなれば、その分面白くなる。

 

 清楚で綺麗なお姉さんがショタ趣味全開でガッつくとか、小悪魔設定の子が悪いことしてビビる様とか。

 

 公式設定との落差を利用した注目の集め方も意外と大事なのだ。

 

 そういう意味で言えば、この『異世界に行った事のある少しエキセントリックな少女』という設定もそこまで悪いとは思わない。

 

しかし、落差を用いて興味を引くのは悪目立ちでもある。やり過ぎるとヘイトにしかならないから注意は必要だ

な、なんだか思った以上に真剣に考えてますね? 暦さん

 

 アイリスの戸惑う声が響く。

 乗りかかった船とはいえ、やるからには半端はしたくない。おまけに自分がかかっているのなら真剣に方策を練ろうと思うだろう。

 

つまり、今回は正攻法。まともなやり方で行こうと思う

異議なしっ! です

 

 アイリスも乗り気だ。

 これならいい感じにいけるかもしれない。

 

Vtuberの基本的な活動はだいたい雑談、ゲーム実況、歌ってみたとかがメインだ。その他、細々としたものはあるけど思いつくのはこれくらいで、もう雑談はやったから……残りはゲーム実況か、歌って……みた、となる……

んん? なんか暦さん、テンション下がってません?

 

 アイリスのツッコミは、正しい。

 俺はこの二つのコンテンツに問題があることが分かったからだ。

 

……ゲーム実況は、無理だ。PS4(プレイスタンド4)、妹に貸してたんだ……

えっ? あ、でも、ゲームならPCでもできますよね?

PCでゲームやるのはちょっと……

何件かDMLgamesから購入しているのは知ってますよ? ほら、ここに

あ、こらっ

 

 気を抜くと勝手に動かすことも出来るみたいだな。あっという間にPCを操作する。さくさくと保存した所からゲームがロードする。

 

……あひゃ?

 

 頭の中のアイリスが、なんだか変な声をあげた。

 まあ、面食らうのも無理はない。

 アニメ顔の美女とのくんずほぐれつなシーンが目の前に現れたのだから。

 そういや、ここでセーブしてたのか(^_^;)

 

言っただろ? こんなゲームを実況なんてしたらあっという間に配信停止だよ

 

 いわゆるコンシューマよりのゲームをPCでやることは無く、もっぱらそういった方面のゲームしかしてない。しかも、最近は立ち上げもしなかったので途中で放置したままなのも忘れてた。

 

 だから、ゲーム実況は無理なのだ。

 そう言おうと思っていたら、アイリスが突然奇声を上げた。

 

 

な、なな、なーっ! うわーっ!

え、おい、どうしたって、

 ギャーッ!!!

 

 

 頭に響く絶叫と、身体を貫く痛みに、俺は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ううう……面目次第もございません

 

「反省してるなら、あんなのはもうやめてくれ……」

 

 

 脱衣所からアイリスの声が聞こえる。

 

 俺はシャワーで汚れた身体が清め、ゆっくりと湯船に浸かっていた。

 当然のように女の子ではなく、暦、つまり男に戻っている。

 

 さっきのアイリスの絶叫のせいで起こった被害は甚大だった。

 気絶自体は大して長くはなかった。

 頭の中でアイリスが喚いていたので、十分もせずに覚醒できた。

 

 だが、あまりの激痛とほのかな快感に、気を失いながら失禁してしまっていたようなのだ。

 

 女の子の身体が快感に敏感だという話しは聞いていたが、あれは……かなりヤバい。うっかりと癖になりそうなので、極力思い出さない様に湯船に浸かり込む。

 

 美少女ならば粗相など許容出来ると声を大にする輩もいるだろうが、俺はそれに賛同できない。

 

 しかも、姿は変わっても自分のものだ。

 服を着替えて床を掃除して、身体も洗わなければ気持ちが悪くて仕方がない。

 

 そうして風呂からあがると、すでに配信一時間前。

 

 

 

 

 もう何もできる時間は無かった。

 

これはもう、ムリですかねぇ……

 

 アイリスの呟きが聞こえてくる。

 

 そもそも、配信第一回目の夕方に二回目とか、ダブルヘッダーなんて最近の野球でもやらない。

 

 しかし、リスナーとは浮草のようなもので興味を覚えたものに次々と移り行く。

 連続で更新する事でアピールしようとしたのは、あながち間違ってはいないと俺も思う。

 

 だから。

 

「お前が協力するなら、何とかなるかもな」

……え?

 

 気落ちしているアイリスに、なぜか励ますように声をかけた。

 

 まだ、一時間ある。

 何とか……なるかなぁ?

 

 




 ……おもらしを書く事になるとは思いませんでした。
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