気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜   作:二三一〇

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少し長めです。


04 第二回目の配信

「アイリス、さっきの鼻歌なんだが。アレを歌う事は出来るか?」

 

 風呂からあがって、とりあえず替えのスエットに身を包んだ俺は、鉢植えの花に向かってそう聞いた。

 シュールな絵面なのは委細承知。

 

 しかし、インパクトにおいてあの歌以外には有り得ないと俺は確信している。

 

『花のままでは無理ですね。会話程度なら出来ますけど』

「だろうな。どう聞いても、ボイチェンかけたおっさん声だもんな」

『むっかっ! 失礼な人ですねぇー』

 

 ぷんぷんと葉っぱを振り乱して怒るが、自覚はあるのか本気で怒っているわけではないようだ。

 

「さっき頭の中で歌っていた歌は、お前の世界のものだろう? 言葉が全然分からなかったが、綺麗な旋律で淀みもなかった。お前の地声は、あっちなんだな」

『……ふ、ふふん。気付いてしまいましたか! でも、私は声が出せないんです……合体していると制御するのは暦さんになってしまうので』

 

 それが問題なのだが、さっきのPCの件からも絶対に無理というわけでは無いと思う。

 俺が意識を外してぼうっとしている時なら、アイリスが身体を動かす事も不可能じゃない。

 

「一度、試してみよう」

『それは構いませんが、歌があっても配信の間を保たせるには不足ではないですか?』

 

 アイリスが尤もな事を言う。

 花のくせになかなか賢い。

 

「大丈夫、メインの題材には考えがある。歌はあくまで補助だ。練習も禄にしていないからな」

 

 アイリスは葉っぱを花弁の下に擦り付けるように動かす。顎を擦るような仕草だな。

 そして、こちらを向いて答えた。

 

『ふむぅ……分かりましたわ、暦。合体しましょう!

「……お姉さまとか、言わねぇからな」

 

 なぜにお前が知っているのかと、野暮な事は聞かなかった。

 

 

 

 

 バンクシーンが終わり、先ほどと同じようにスエット姿の女の子になる。少し小さめのをわざと着ていたので、さっきよりはマシな感じだ。

 

 これならちょっと大きめのを着てるだけに見えるだろう。

 

『こよみさん、服ってスウェットしか無いんですか?』

「部屋着として便利だろ?」

『男の人らしいですねぇ』

「ほっとけ。じゃあ、俺はなるべく考えないようにするから、あの歌を歌ってみてくれ」

『分かりました。……では』

 

 そっと、編集アプリのRECタブを押す。

 

 これ以降は、特に何も考えずにアイリスに委ねようと思ったのだけど……そんな必要はなかった。

 

 聴いたことのない向こうの世界の歌。

 言葉はフィンランドとかロシア辺りに近い気がする。

 

 淡々としたリズムで奏でられるそれは、たぶん土着の民謡なのだろう。

 

 ただ、この喉を通して奏でられると、それは牧歌的な雰囲気を打ち消してしまう。

 

 それは例えればヒュムノスを歌い上げるレー○ァテイルのようだ。……知っている人しか分からない喩えたが、こう言わざるを得ない。

 

 幼さを感じさせつつもどこか芯のあるその歌声は、楽しげに、軽やかに。

 

 俺は、その詩が終わるまで動くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

『ど、どうでしたか?』

「……ちゃんと録れてるよ。専門じゃないけど、このまま使っても問題はないと思う」

 

 不安げなアイリスのの声に、そう答える。

 

『そういうこと、聞いてるのではないのですが……』

「何か言ったか?」

『いえ、別にっ』

 

 俺は録音した曲を編集アプリを立ち上げる。

 たしか部屋録の場合、声以外の共鳴音なんかも入るらしい。でも素人なのでよく分からないし、先ほどの音源を聞く限りそこまで不快な要素は無いと思う。それに、用途は曲を聞かせる訳じゃないし。

 

 曲の終わりと入りの部分の波形が似た辺りでミックスしてみる。聞いてみて違和感は……まあ大丈夫かな? 同じように入りのところもミックスして、ループで再生してみた。

 うん、なんとかうまく出来た。

 

 後はwebカメラの微調整。うまく顔が入らないようにして固定。

 

『? デスクで配信するんじゃないんですか?』

「今回はそれがメインだからね」

 

 色々と用意をしていると、配信開始の時間になる。

 

 ……さて、うまくいくかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第二回目、内容は未定だよ』 

 

 

 ぱちぱちぱちぱち

 最近、二回行動は流行りなの?

 黒猫の初回もそうだったな

 さっそく切り抜かれてたアレな草

 切り抜きといや、こよみんも上がってたなw

 『監禁』とか『センシティブ』とかだもん

 まあ、需要はあったね

 

 開始前からチャットには何人もいるようだ。

 

 ……げ。

 もう三十人とかいる。

 ウィークデイの十八時なんて、家に帰る奴はまだ少ないだろうに……本当に暇人ばかりなんだろうか?

 

 チャンネル登録者数は、千二百一人。

 あんな動画を見て、登録してくれた人がそんなにいるとは思わなかった。

 

 そう思うと、やはり気が引き締まる。

 

 さあ、いくぞ。

 

「こんばんわー」

 

 お、来た。

 こんばんわー。

 声はすれど、画像は変わらず。

 アレ? ミスか?

 おーい、こよみん、絵が出てないよ?

 

「あ、ちょっと待って。こっちで……よし」

 

 PCの前からバタバタと戻ってくる。

 

 ん?

 なに、まな板?

 お、お料理配信かな?

 

 台所のテーブルに置いたスマホから、配信の状況を見る。ちゃんと映っているようだ。

 画面が分割されて、左上に古詠未のアバター、右下に先ほどのまな板の映像が現れた。

 チャット欄が一番右だ。

 

「今日、二度目の配信があるって聞いてなくてさ。だから、急遽作った間に合わせ企画なんだ」

 

 本人が聞いてないとか、どーいう?

 ああ、アレだ。運営の無茶振りw

 マジか……すぱしーば、マジにヤバいな

 文句は言ったほうがいいよ、ホントに

 

『あれぇ〜? 私が悪い事になってます、コレ?』

「文句は言ってるよ? 聞いてくれてないけど」

『ムカッ』

ひゃうっ! い、いきなりは、やめれって!」

 

 おっと、1おしおき♪

 今日の運営は沸点低いなw

 ありがてぇ、ありがてえ……

 しかし料理か。ネタとしては弱めだなぁ

 

 まあ、そうかもしれない。

 ほとんどのVtuberの料理配信は雑談プラス料理中の写真とかの内容になる。

 だけど、このこっちには普通のVtuberにはない特性がある。

 

『というわけで。始めていきますか』

 

 まな板の前に、俺は出た。

 手には食材と包丁、少し下向き過ぎなのでwebカメラを微調整する。 

 

 ちょっ!!!

 顔出しでは、ないけどw

 Vtuberとしてはズルいなぁ……

 てか、割烹着って何? ダサダサなんですがw

 

「おいっ、婆ちゃんの割烹着バカにすんなよ?」

『私もそう思いますよ? なんでエプロンじゃないんですか? しかも、暦さんのだからダボダボだし……』

 

 まあ、その辺は俺も気にはなったが。

 婆ちゃんに文句など言えるわけもない。

 

 いや、いいんじゃない?

 悪かった。これは需要ありそう

 最近見ないよな、割烹着

 小学校の給食当番とかくらいかな?

 うん、よく似合ってるよ(にっこり)

 ソウダネ、ヨクニアッテルヨ……

 

 チャットでは概ね好評? みたいだ。

 サイズが違いすぎたので、腕まくりしてバンドで留めてみた。身頃は長くて膝くらいまであるけど、この際は関係ない。

 

「えーと、今日は誰でもかんたん、カレーを作ります」

 

 ごろごろと食材を並べる。

 じゃがいも小玉二個、人参小さめのが二本、玉葱も小玉のが三つ。

 冷凍庫にしまってあった鶏肉は百五十グラム。

 そして、取り出しましたるはカレーのルーだ。

 

「今日は時間もないしルーで作ります。手軽だし大ハズレもしにくいし」

 

 俺はB&Sの中辛が好き

 ワイ、シャワの辛口w

 ↑かなりの強者でワロタ

 バーモンドの辛口一択だろ

 甘いのか辛いのか、はっきりしろっ草

 

「僕はバウスの『ごくまろ』の中辛にパチさんのカレーフレークを混ぜるのが好きなんだ」

 

 パチのフレーク……こないだ業務スーパーで見たわ。

 おれもちょい足しに使ってる。店での評判もいいよ

 知らないな、ググって見た……意外と高評価w

 今度、ポチる

 オイオイ、料理メン意外と多くて草

 

「ちょっと、離れるね」

 

 PCに向かい、操作をする。

 戻ってくるとチャットが少し賑わっていた。

 

 髪、凄い長かった!

 黒髪だよな、今どき染めてないの珍しいな

 あれは絶対、美少女。間違いない

 美少女判定ニキ乙

 けど料理するときは纏めて欲しかったな。衛生的に。

 せやね。まあ、俺ら食べられんからw

 美少女のうなじハアハア(;´Д`)

 落ち着いて、お父さん

 誰が父さんじゃ?

 唐突な寸劇に草

 

「あ……ごめん。そうだな、気付かなかった」

 

 野郎のままだとあまり気にならんけど、この長さだと確かに危ないよな。

 次からは気をつけよう。

 

 ん……BGMかけたの?

 

「うん、うまく出来たからね」

 

 これ、アカペラ? 普通に上手いんだけど

 音ちっさいからよく分からんが。

 鼻歌っぽいのに、普通に歌に聞こえるな

 なお、何を言ってるのかは謎w

 

「アイリスの国の歌だって。もっと上手くなったら普通に配信すると思うけど」

 

 覚えられるかというと、何とかなるとは思う。ただ、伴奏もないし。いつになるやら。

 

 ……癒やされる……

 もう、寝てもいいよね

 zzz……

 寝てるやんw

 

「さて。まずはやさい……」

 

 料理を再開しよう。

 人参のヘタと先を落として、皮を剥く。

 何度もやってるので特に問題もない。

 

 アレ? 手慣れてる

 見た目中学生っぽいのに、手つきが危なげないな

 ウチの嫁より上手いw

 それはリコール案件ですか?

 

「奥さんもその内さくさく出来るって。見守ってあげてよ?」

 

 続いてじゃが芋も皮を剥いていく。

 

 あ、うん(//∇//)

 余裕の上から目線だがやむなし

 チャット見ながら喋って包丁とか危ないぞ?

 あんま拾わなくても平気やでw

 

「ああ、気をつけるよ。次は玉葱だから」

 

 玉葱の厄介なところはやはりあの匂いだ。

 うん、普段より顔が近いから余計にクルな。

 

『あれぇ、勝手に目から汗が……』

「アイリスもキツイ?」

『いえ? 感覚の共有が出来るとは思わなかったので、少し驚いただけです♪』

「もうちょいで終わるから、我慢な」

 

 やはりアイリス氏は横にいる模様

 アイリスって名前だと女性だよな?

 そうじゃない? 彼女も気にしてるみたいだし

 やはり、てぇてぇなのかな?

 予告なくおしおきしてくる奴とか……あれ?

 実は古詠未ちゃん、ドMかもキャー

 

「んなわけあるか。シバクぞ?あうっ!……うん、そんな訳はないよ?」

 

 アイリス氏、意外に細かい

 うん、もっとやって草

 アリガテェ……アリガテェ

 やっぱ、電流っぽいね

 ビクビクしてるこよみん、エエなw

 

「……こ、こういう時にスルーすればいいのか。うん、覚えた」

『こよみさん、時々口が悪くなりますもんね。私だってやりたくてやってる訳じゃ無いんですよ?』

 

 甚だ怪しいが、確かにチャットの動きも加速しているし、同時接続も増えている。

 甘んじて受けるしかないが、暴言を控えるように心掛けていこう。

 

「さて、下拵えは終わり。鶏肉は先に切っておいたから鍋に入れていこうかな?」

 

 webカメラを2号機にチェンジ。

 ここからはコンロの上から実況だ。

 

 厚手の鍋にオイルをちょい多めに。

 ここでガーリックスライスを適量入れる。

 最初に炒めるのは玉葱。

 本格的にやる時は刻んだ大量の玉ねぎをよーく炒める。けど、今回はそこまではしない。

 

 お、にんにく多いな。平気?

 うちは生のを使うよ。いちおう喫茶店なので(笑)

 マスター乙。場所教えてくれたら食いに行く

 

「生にんにくはいっぱい作るときしか買わないなぁ。小分けにしても臭いが残るんで(笑)」

 

 わかりみ

 冷蔵庫の臭い、気になるよね〜

 脱臭剤、仕事しろw

 一段に2個ずつ入れてるわ、ウチ

 

「みんな苦労してるんだ。良かったー、うちだけじゃないんだ。あ、と。塩を入れるの忘れてた」

 

 これをしないと玉ねぎ、固いままになる事が多くてね。一つまみほどでも入れると違うのだ。

 

「次に人参、じゃが芋、と。鍋からいい匂いがしてきたら、水を投入……鶏肉はここで入れる」

 

 あ、炒めてある

 少しだけ炒めてる所も好感度高め

 もも肉? 結構大きめだね

 

「部位はあんまり拘ってないよ? 胸でもももでも、安ければ使うよ?」

 

 ただ、なるべく大きな部位で買う事にはしてる。作りおきには便利なんだ。

 

「さて、後はしばらく煮込むから……サラダでも作るかな?」

 

 手早く使った包丁やまな板を洗っていく。

 いちおう、食中毒とか怖いし。

 

「そういえば、ここって病気とかになったらどうなるん? アイリス」

『私が治しちゃいますよ♪』

「はは……頼もしいことでw」

 

 ん……? 今の行間を読め、解説ニキ

 『私が気合で治します』とか(笑)

 それ、なんも解決出来ない奴や

 マジな話、医師にかかれない場所に監禁てヤヴァいなぁ

 いや、監禁だけでヤバいですがな草

 

 本当に、そうだよなぁ。

 早く目標達成したいなぁ。

 野菜室からレタスの残りを出す。

 萎れた所はお昼に使ったから芯に近い辺りはまあまあ。千切って、洗って、細かく千切る。

 他にも野菜はあるけど、まあこれでいいや。

 

 安心して見られるのはありがたいが……

 少し面白みは無いかもね

 エエんじゃない?

 安らぎの音楽と安心の料理動画でワイ満足w

 

 アクを少しだけ取って、弱火でコトコト。

 野菜に火が入ったら火を止めてからルーを投入。ごくまろの半分とパチのカレーフレークを大さじ2杯ほどを入れてから、もう一度加熱。

 

「はい。古詠未のカレーの出来上がり」

 

 大きめの皿にごはんをよそって、たらーりとルーを注ぐ。俺はわりと水気多目にするけど、今日は定量で作ったから多少もったりとしてる。

 

 テーブルのwebカメラに戻して、カレーの皿を置いて、サラダに麦茶を注いだグラスを添える。

 

 うまそう(*´﹃`*)

 炎ふつうの料理なのに、何故こんなにも胸を打つのか炎

 ↑炎上するな

 うん、今日はカレーにしよう!!!

 ちな俺近所のCoCo弐

 ちなホンディ待機中

 マジか、何番目? 俺も俺も

 最後尾。古書店に入る手前w

 あ、お前か!

 よう、同志wヽ(`▽´)/ヽ(´ー`)ノ

 ……お前ら、別のところでヤれよ草

 

「盛り上がってる所もあるみたいだね♪ よかったよかった。じゃあ、頂きます」

『あ、あの! 私のも残しておいてくださいよ?』

「ん? アイリスも食べたい? どーしよっかなー♪」

 

 あ、ばか……

 意外と学習しないね(笑)

 

いっ! いったあっ!

 

 




 音楽編集とかニワカなんで聞き流して下さい。
ウチも今日はカレーにしよう(笑)
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