気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜 作:二三一〇
ご都合展開待ったなし(笑)
戻ってからすぐに“アカシアの木”へとアクセスする術式を起動させた。
少し逡巡してたけど、アイリスは従ってくれた。
「この魔力量だと一回が限度か……」
アイリスの呟く声は、未だ未練を引き摺っているように聞こえた。なので。
「ひゃう?」
「俺は女の子なんかにはなりたくない」
後ろから抱き竦めると、彼女は小さく声を上げて驚く。その様があまりにも可愛くて、ついいじめたくなってしまう。
「それとも……ゆりゆりな方がお望み?」
「う……わ、私も……男のほうがいい……」
「声が、ちいさい」
「もう……バカ(///)」
いちゃいちゃしてても始まらない。
アイリスの唄が響き始めると、すぱしーばの会議室だったはずの場所は霧が立ちこめ……いつの間にか、大きな木の前に俺たちは立っていた。
「本当に、木なんだな……」
「世界と世界を繋ぐ木だと言い伝えがあるわ。私も当然、見るのは初めてだけど」
よくある世界樹とかいうバカでっかい木とかでもなく。やや大ぶりだなと言う感じの木だ。
その木の根本に、両手を広げていっぱいくらいの幅の石版が立て掛けてある。アイリスが近寄るとその表面が輝いた。
『汎用情報統合端末、アカシャver9.7596……
ID:A73545B5968F125
管理機能の一覧
・世界概念、基礎構造の確認、変更
・内包する世界の生命体の確認、変更
・世界構造の破棄』
まるでPCの管理画面のようにメニューがでてる。二番目を選んで次の項目から『魂魄内包生命体の確認、変更』を選ぶと『便宜上、世界内での国、組織に分類されて保管されてあります。個人を特定するには個人名、真名、管理IDを入力して下さい(注意)個人名は同一のものが多数存在する場合があります』と書かれてあり、検索ボックスの他に地球儀のような絵が出てきた。
「ヴェンデッド=ハルキオンて入れればいいのかな?」
「仮の名前でも出てくるはず……あった」
完全一致は三件……他にもいるのか(笑)
その中から経歴や年齢等から類推出来る奴を特定した。
『個人名:ヴェンデッド=ハルキオン,ウォルター=スミス,ヴェルター=シュミット,ヴェンデッド=クラン=リリウム』
最後の名前は、おそらく亡国の王子だった頃の名前。どう修正しようかと悩むアイリスに俺は提案した。
「最後の名前、消したらいいんじゃね? あと、出自とか経歴も無かったことにして」
「え? ……ちょっと乱暴じゃない?」
俺もそうは思うけど、今回の件はそもそも彼が魔法の使える存在だった事に起因している。
「魔法の使えない奴なら、自分の世界を作ろうなんて考えなかっただろ? それにトラウマの過去なら、無いほうがいい」
「それも、そうね。事件そのものが起きなかったようにすれば、世界の修正が働いて行方不明も無かったことになる」
手早く修正を施して、画面を閉じる。木が僅かに発光して、細かな粒子がその葉から湧き立ってゆく。
「……時間切れね」
「本当に短いなぁ。俺らの事も見られれば良かったのに」
「本当に未練は無かったのよね?」
アイリスが心配するように声をかけてくる。
頭にぽんと手をおいて、ぐりぐりと撫で回してやる。
「俺はもうおっさんそのものだからいーんだよ。お前のことが気掛かりだっただけだ」
「……わたし?」
小首を傾げるアイリス。
「お前、人間じゃないって言ってたろ? これならかなり無茶な事も出来るんじゃないか? 人間に戻すとか、さ」
この言葉に、はっと息を呑むアイリス。
……少しは自分のことも考えろよ、このおひとよし。
「私は、別にいいの。どうせ、側には居られないんだし」
「……向こうに戻るつもりなのか?」
フラウレーティアに戻る。アイリスがそう考えるのも頷ける。元々の世界はそっちなのだし、やることが無くなれば帰るのも不思議はない。
だけどな。
「……」
俺の両手が、アイリスを包み込む。
「お前が帰りたいなら、俺も付き合う」
「だ、ダメだよ……わたしは、人じゃない。あなたとは、釣り合わないよ」
弱気なことを言ってくれる。
俺のために世界を変えようとまでした女とはおもえない。
だから、力を込めて抱きしめる。
もう決して、手放さないために。
「お前以外は、要らない。アニメや漫画が無くても、まあ、平気だ。今の職場は出向のせいで居ないようなもんだし、
「こ、ども……できないかも、しれないよ?」
「万理花や瑠莉がいる。あの子達が来るかは微妙だけど、その時はプリムラやダマスケナに頼むとするか」
「でも……」
「俺といるのが、そんなにイヤか?」
真面目なトーンでそう言うと、いやいやと首を振る。
「そんなわけないっ! うれしい……すごくうれしいよ……ホントに、私で……いいの?」
「……お前だからだよ」
アイリスの綺麗な蒼の瞳が潤む。
いい雰囲気なので、そのままキスしようとすると。
「人というのはところ構わず発情するというのは本当だなぁ」
「「!」」
元の会議室に戻った俺たちを、やや呆れた顔の観測者が待ち構えていた。いつもの薄ら笑いを湛えて。
「ふわわ……」
「……ごくり」
いつの間にか、フェティダとダマスケナまでいた。
フェティダは顔を赤らめて、ダマスケナは生唾飲み込んでこちらを凝視している。ナニコノシュウチプレイ
「いや、きちんと改変してくれた事のお礼にね」
上位存在だと気付いたフェティダとダマスケナはそのまま退出したのだけど、観測者は椅子に腰掛けるとペットボトルのお茶を飲み始めて歓談を始めた。
「ヴェンデッドはただの外国人になり、過去も設定だけの存在となった。よって、あの事件自体も無くなり、一時的に行方不明になっていた人間も居なくなった。ここでの現実は、何もないただの一日になったわけだ」
「俺たちは覚えているけどな」
「それも自然に忘れるよ。泡沫の夢のようにね」
「それならいいけどな」
見れば、彼女の顔もうっすらと険のない笑みに変わっている。これが正しかったのかは分からないけど、すべて丸く収めるのは無理なのだ。
「彼の過去を改変した事を気に病んでいるのかい?」
「……図星つくじゃねえか」
「自分も記憶を弄られてたのに?」
「!」
「それは……まあ、でも、アイリスは良かれと思ってやっていたんだろうし」
「ならば、それと同じだよ。そんな過去を持たなければあんな真似はしようとしなかった。相手を慮る心があるのなら、その罪は幾分マシになると思うけどな」
「まあ……言っても詮無い事だとは思うけどな」
「そうそう。なるようにしかならないんだ。全てをうまく取り持つなんて、創造主にだって無理なんだ。人の身であるなら当然なのさ」
そうしていつもの薄ら笑いを浮かべる。
まあ、個人的にはみんなが無事で本当に良かった。
事件が無かったことになってるなら、千影女史にぶん殴られる事もないわけで、ほっと一息だ。
「子供といえば……万理花と瑠莉だっけ? ここに来る前にあの子供たちの世界に行ってみたけど。ゾンビに対抗する薬が作られてたよ?」
「えっ? マジで?」
「原作知識を持った連中が多かったのかもしれないけど、発生から三ヶ月で収束したわけだ。あと数年もすれば、あの子達を戻しても問題ないと思う。両親の安否までは確認してないけど、瑠莉の姉の悠里はちゃんと生存してるし」
「ヨッッシ!」
思わず、出たコロンビアのポーズ。
りーさんさえ生きてれば、瑠莉だけでも戻してやれる。二人の親も両親も生きてりゃいいなとは思うけど……これは少々難しいかも。
「よかった……勝手に作った世界だから、どうなるかと思ってたけど……」
「空想を現実に作り変えるのは並大抵の事ではない。人の可能性は創造主の枠すら超えることもあると証明されたわけだ。後で座標を教えるから、行ってみるといい」
アイリスの方を見ると、やれやれといった表情でこちらを見てくる。
「今は魔力が少なすぎて無理よ? あと数年は待ってもらわないと」
「あー、そっかー」
「……通信を繋ぐくらいは出来るかもしれないわ。ダマスケナに後で相談してみる」
それでも、あの子達には嬉しい報せに違いない。
「ときに。君らは結婚するのかい?」
「「ブッ!?」」
いきなり、ぶっこんできたな、おい。
二人してむせこんでいると飄々と言葉を続ける。
「それなら、莉姫を続ける事は難しいだろうね」
「あ……」
言われて気づいたけど、それは大した問題じゃない。
「海外に戻った、とでもしておけばいい。母親は不明のままなんだし」
「でも……瑠莉や万理花にそう説明するの?」
「む……」
「それに。入れ替わりに私と貴方が入ってくるのは、いかにも不自然だわ。まるで莉姫を追い出したみたいだもの」
「それは……たしかに」
「しくしくしく……親父とママに追い出されるんスか……」
「ひどい話だね。白雪姫コンプレックスってやつなのかも。アイリス嬢も心に傷を負っていたのかもしれないな」
「そこっ、うるさいぞ! 茶化してんじゃ……あ”あ”っ?」
観測者と話す誰かに文句を言ったのだが、そこにはありえない人間がいた。
艷やかな黒髪は時折蒼く輝き。
ちいさい身体に丸みを帯びた顔は愛らしく。
瞳も青く、僅かに潤んで見えるのは、泣いているからか。
アイボリーの制服に身を包み、髪は緩く三つ編みにして変装用の黒縁メガネをかけている。
ごく自然に、媚びる仕草をしている少女が。
観測者と話していた。
「……え?」
「……ええ」
「……あれ? ちょっとヤバくないッスか? 親父とママ、固まっちまったデスよ?」
「君みたいな可愛い子を放りだそうとしてたのに、心配してやるのかい? 君たちは親子揃ってお人好しだね」
「なっはっは♪ 可愛いなんて、とーぜんッスよ! なんたって、親父と、ママの子供なんスからねっ!」
「うはー、ウゼェーw」
なんか、終理永歌と莉姫が目の前で雑談コラボしてるような光景だな……
「って、おいっ! お前なんで居るのっ?」
「あ、親父ー、どもども、はろはろー、ひゃっはろー♪」
「君とは別キャラみたいだね……いや、こんな感じなのかな?」
「ど、ど、ど、どういうこったー?」
「な、なんで莉姫が動いてるの?」
こちらを見てウインクしてくるのは、間違いなく莉姫だ。何せ毎日鏡で見ていたのだから、間違いようもない。
こういう事態を引き起こしそうな奴はコイツだけだ。
観測者を眺めると、彼女は肩をすくめた。
「私はなんにもしていない。これは君らが引き起こした奇跡だよ」
「世界がピンチなのにぐーすか寝てるわけにもいかないよねっ! そう思ったら、なんか実体化しちゃったの」
てへぺろっ(*ノω・*)
そんな感じで宣う莉姫に、言いようもなく脱力する俺。アイリスもなんだか微妙な表情……。
なあ、これは直さなきゃいけない案件じゃねえの……?
「こんよみー♪、十八時半になりました。姫乃古詠未でっす! 今日はみんなどう過ごしていましたか? 僕は意外と波乱の日だったんスよ。詳しい事は後でお話しする事にしますけど。それでは、しばしの間お付き合い下さい!」
俺のPCの前で喋る莉姫を眺めて、本当に実体化しちゃったんだな、とぼんやり考える。
俺が合体する事はもう無いし、この放送をすることももう無くなる。
そんなふうに考えると、ほんの少しばかり寂しく思ったりもする。
こんよみーw
今日はテンション高めだね
こよみんこんよみ
ウッキウキだね、なんか良いことあった?
リスナーのコメントがつらつらと増えていく。チャンネル登録者数もいつの間にか五万人を突破している。
大半はすぱしーばの技術提携関連で増えたのだけど、それでもこれだけ応援してくれる人がいてくれる事に心から感謝したい。
「良いこと? フフーン、実は現在進行形なんだっ! 今日はウチの親父が授業参観してくれてるんだよー♪」
親フラじゃなくて親待機w
こんな親しみ込めた親父って聞かないなぁ
ウチなんか完全にウザい人扱いなんだが……裏山
「ほらほら、親父。いつもみたくご挨拶!」
「ええ……どうも。父親のこよみと申します」
莉姫のマイクに寄って声を出す。
いつもみたくと言われても、おっさん状態で配信なんかしたことないから勝手が分かんねえよw
おう、おっさん声w
意外と渋い感じでいいな
お父さんと同じ名前にしたんだ……愛を感じるねい
おおう……地声で話すのってすごい怖え。
恐怖が分かるようになったせいかも知れないけど、よくこんな事してたな、俺。
「愛してるに決まってんじゃんっ 僕の親父だよ? 抱かれてもいいってばよ!」
「バカ、おまえ、それは」
「ったあぁいっ!?」
危ない発言すんなと注意しようと思ったら、絶叫をあげてもんどり打って倒れる莉姫。
とっさに抱きかかえたから、頭とかはぶつけてないと思うけど、頭の痛みのせいか涙目だ。
それと、脚広げんな。ぱんつ見えてるから。
「
「ママっ!? なんでおしおき?」
アイリスが腕組みしながら、こちらを睨んでいた。
てか、ホントになんでおしおき出来んの?
「その髪飾りに仕掛けといたのよ」
「うそー? 帰国のプレゼントに何仕込んでんのママ! 鬼畜、このアイリスっ!」
「ママを呼び捨てとか行儀が悪いわよ?」
「きゃいんっ! 」
いいぞもっとやれw
久々のおしおきハアハア
つか、アイリスってママだったのか、リアルな。
絵師でもあり、母でもあるか。
アイリスさんも声若いなー
「あら、嬉しいコメント、ありがと♪」
「ちなみに。古詠未の姿とママってほぼ同じだよ」
は?(困惑)
マジでっ!?
え……つまりロリ?
いやいや、こんなママとかいないやろ(汗)
しょーこが無いしなぁ(チラ)
「む? 信じてないな? これでどない!?」
「わっ、こらっ!」
そう言ってwebカメラをアイリスに向ける莉姫。
慌てて顔を隠すアイリスだけど、その顔は確実に撮られてしまっていた。
うそっ、かわええっ
銀髪のロリ少女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
うせやろ……中学生やん!
なんか、莉姫ちゃんとあんま変わらないなw
こんな子に手を出すとかこよパパロリコン?
「いや、ロリコンではない。嫁も娘も可愛いけどなっ!」
隙自語乙w
パパさらっと発言せんでよ、娘の放送ダゾ?
おしおき、ママだからやってたんだw
ガチ躾でワロタwww
この家族羨ましすぎる……
パパ代わって(切望)
ちょおっとっ! なんて放送してんのっ 夏波 結
家族生配信と聞いて 相葉 京介
お久しぶりですわね 暦さん リース=エル=リスリット
お父さん、お母さん、義妹さんを下さい 十六夜 桜花
ここぞとばかりにあるてま勢来たっ!
お前ら待機し過ぎ(笑)
こういうノリ、あるてまだなぁ……
コメントが加速し過ぎてよく分からなくなってるw
羽目外しすぎだろ、大丈夫かこの娘は……。
そんなふうに思っていたら、Disroadに通話チャットが入る。
「お、これは……はいはい莉姫ッスよー、あ、いや、古詠未ですよー」
『あー、と。テンション上げすぎだろ、名前間違うなよ、あと身バレしすぎだし、気ぃつけなよ、マジで』
「黒猫さんに常識人ぶられると、なんかもにょりますw」
『なんだと、ゴラァッ! 年上ナメんなよ?』
「ふへへ、サーセンw というわけで凸はあるてまのリーサルウェポン、黒猫燦ちゃんでございまー」
『あ、お、おう。おじゃま、します……』
黒猫が凸!?
マジで成長したな、黒猫草
紹介されて素に戻る黒猫カワイイ
先輩ヅラしてて草
マトモな事も言えるんやねw
黒猫……今宵がまさか自分から凸掛けてくるとは思わなかった。
『……パパさんに言いたい事があるんだけど、いいかな?』
「放送中で、いいんですか?」
『ん……構わない。他の人には分かんないだろうし』
「そですか。ほい」
そう言って、ヘッドセットを渡してくる莉姫。
口元がによによしてて、ウザ可愛い……俺も相当ダメだなぁ。
ヘッドセットを付けて、咳払いから発声を慣らして。
「はい。代わりました。初めまして、黒猫燦さん」
「黒猫でいい。一つだけ言いたかったの。仮面ラ○ダーは平成がさいつよだから」
「……至高は昭和だよ」
「5○5が一番。昭和は古臭くてみすぼらしい」
「昔の特撮はあんなもんなんだよ。ファ○ズは勧善懲悪のヒーローものとは呼べない」
「古臭いのはアンタの考え方。そんな視点でしか作品を見れないのはかえって哀れ。広い視野で先入観なく楽しむべき」
「くっ……え、偉そうに」
やべえ、正論過ぎる。ぐう正論てやつか。
また黒猫が空想作品語ってるw
こよパパ、なんでこの話についていけるのか……
てか、どこかでやってたのか? 仮○ライダーって
外国とか?
昭和とか平成とか言わんだろ、外国じゃw
通じてる所が只者でない……パパ何者?
黒猫と同じやべー奴って事じゃね?
なるほど(納得)
なるほど(禿同)
「まあ……そうだな。そう思う事にするよ」
『ん……いずれ、会って話したい。もっと色々と話したい』
「あー……娘同伴でいいか?」
いま、アイリスがとんでもない顔で怒ってるんです……少しこわい。
『それじゃ、また。莉姫ちゃん、配信頑張ってね♡』
「黒猫さん、ありがとうございましたーっ!」
『うるさっ!』
「くっ……」
耳元で叫ぶなっ
鼓膜の替えなんてねーんだからっ
……鼓膜の予備があって良かった
俺は切らしてたから、痛え
今日はこよみん、テンションたけぇなあー
いつものクールさはどこいったw
初登場の頃と比べると落差が酷くて草
あー……あの頃は、本当にやりたくなかったからなぁ。
そんな俺の感慨を他所に、ヘッドセットを被り直して語りかける莉姫。その顔は嬉しさと楽しさでいっぱいで……キラキラと輝いて見えた。
「生まれてこれた事が嬉しくって、この先の人生もすっごく、楽しみ! だから、昔の事なんてもう忘れちゃったよ! これから僕は、先の事だけ考えて、前を進んで行くんだから」
その姿に、自分の若かりし頃の姿を重ねてしまう。女としての華々しい時代というのは経験できはしなかったけど……自分の娘がそれを感じてくれるなら、親としては喜ばしいことこの上ない。
「では、ここでゲストをご紹介しましょうっ! 一人でママ、パパをやる傍ら、作詞作曲、演奏なども手掛ける恐るべきなんでも屋! わがすぱしーばのワンマンアーミーとの異名を持つ可憐なバーチャルミャーチューバー! 立花アスカちゃん、でーすっ!!」
『うええ? ちょ、古詠未ちゃん。そんなハードル上げないでぇっ!』
画面の向こうでは、立花アスカがわたわたと慌てふためいている。
「アスカちゃんがいるって事は? とーぜん、今日は『お歌配信』です! 今日は時間いっぱいまで歌うから、みんなもちゃーんと聞いていてね♪ 途中に他のゲストも呼んじゃうから、アーカイブで後から見ようなんて勿体ないことしないでねー。」
俺は歌だけの配信はして来なかった。
レパートリーが少ないし、懐メロカテゴリーしか歌えないしな。
「では、一曲目はこちらっ……せーの♪」
「「♪君にもたぶん泣きたい日があるでしょう〜♪」」
アカペラから入る、その懐かしい曲。
深夜ラジオからデビューした、当時新人だった二人の声優の、初のシングル。
思い切り懐メロに属するこの曲を一発目にするとか、さすが俺の娘というべきか。
「「♪信じるものに、試される日があるー♪」」
軽やかな電子オルガンがメロディを奏で、もう一人のパートをアスカが歌う。
やや高く伸びがあるアスカと、低音域が残る子供声の莉姫との相性はとてもいい。
「「♪モウデキナイと、立ちすくんだ心にー♪」」
横を見ると、瞳を潤ませるアイリスがいた。
自分のお腹を痛めて産んだわけではないが、紛れもない彼女の娘。
その姿には、感慨もひとしおだろう。
「「♪ゲンキダシテと、言う もう一人の私〜♪」」
ダイニングからはプリムラ、ダマスケナが見ていた。その二人に抱かれて、声を出さないように、我慢しながら見守るのは万理花と瑠莉。
もう一人の俺が歌う『もう一人の私』。
ただ、眩しく。
その姿を見て、歌声に耳を傾けていた。
──蛇足?
「いやあ、いい配信だったね」
「一曲目で止めていたら、素晴らしかったと思います……?」
とあるマンションの一室で。
同じ姿をした女性が語り合う。
どちらも黒を基調にしたドレス姿で、前髪が瞳を隠していて、全く同じ人物にしか見えない。
「親戚のお子さんが入るのは、まあいいですけど……親御さんが歌うのは止めたほうが良かったと思いますよ?」
「家族カラオケの配信場面だったもんねぇ♪ いや、愉快だったよ」
「ま、まあ……面白かったですけどね」
子供たちのアンパ○マンとかド○えもんとかは、微笑ましかったけど。
母親のアイリスさんの天城越えとか……うまかったけどね。
「あのパパの懐メロはほんとスゴかったね。鋼○ジーグとかメカン○ーロボとか。演奏してる立花くんの顔が目に浮かぶよw」
「ある意味、彼女が一番株を上げましたよね……」
ひとしきり笑ったあと。
彼女はふっと立ち上がる。
「では、もう行くよ」
「私は別に気にしませんから……ずっといても、かまいませんよ?」
「変わった子ばかりだね。やはりこの世界は面白い。でも、他にも観測してる所がいっぱいあるし、そういうわけにもいかないんだ」
「そうですか……また気が向いたら、いつでも来てくださいね?」
「君には迷惑しかかけてなかったけど、楽しかったよ。これは偽らざる真実さ」
そう言って、一人の女性の姿がかき消える。
後には、涙を堪えるもう一人の女性しか残されていない。
「お元気で……」
その存在に名前はなく、知り得る存在はただ『観測者』としか呼ばなかったという。
途中グダグダしながらもようやく書き上げる事が出来ました。これも読んで下さって、感想をくれた皆様があったればこそかと感じます。
どうもありがとうございました
m(_ _)m ペコリ