気付いたらVTUBERを強要されていたおっさんJC 〜お空に監禁されて仕方なく〜 作:二三一〇
今回は今宵視点となっております。
毎度のことながら、誤字報告ありがとうございます。
ちゃんと見てるつもりでもやらかすので……。
悲しいときは泣いたほうが良いと、どこかで聞いたことがある。嬉しい時も泣いたほうが良いという。私のことだから、どちらもどこかのアニメからのものだろう。
そのどちらとも言えるし、言えない感情に流されて大泣きしてしまったのだが……結果としてはまずまずと言えた。
「……落ち着いたか」
背中をさすり、あやすようにしていた彼がそう言った。気が付けば胸を借りて泣いていたのだから世話はない。前世がおとこだとカミングアウトして、それをあっさり受け入れられて。
たぶん、安心してしまったのだろう。
自分は生きていていいのだと。
黒音今宵として居ていいと、許された気がしたのだ。
そして、自然に男の胸を借りるなどという事をしていたと気付いても……特に違和感を感じなかった。前世が男だとしても、私はすでに女だったのだと理解できた。
痩せてる感じの胸板が意外と逞しいとか、首筋の辺りのラインがきれいとか。
この男特有の匂いも……別に嫌いではない。煙草やお酒の匂いがしない、まともな中年。
それは自分の前世とは全く違うイメージであり……きっと顔も知らない今宵の父親の姿に近いのだろう。
た、たぶん。
ファザコンなんだろうなっ、わたし。
黙っているのもアレなので適当に言葉を言う。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして」
私の言葉に、彼は穏やかに答えてくる。
とくん……
あ……えっと……。
ま、まずい。なんだか、へんな感じがするっ
遠慮がちに離れると、彼は自然に腕を離してくれる。ぅ……も少し、ていこうしてもいいんじゃないのかな? 有り難いけど嬉しくはない……なんなの、これ。
「その……スマン。デリカシーとか無いらしくてさ。今宵にとっては凄く大きな問題だったろうに、軽く言っちまって」
そんな謝罪に少し溜飲が下がる。
確かに軽く言われたのもショックではあったし。
しかし言われて気付くこともある。
そんな拘る所だったのかな、と今更ながらに考えてしまう。もっと早めに誰か、お母さんとかに話しておけば良かったかな、とか。
「ちゃんと泣けたね、今宵ちゃん」
そう言ってきたのは莉姫だ。部屋から出てきて私の側まで来てくれた。ちっちゃいのに気が利くナイスガイ……あ、女の子かw
隣の椅子に座って肩も貸してくれるし、手も握っててくれる。あー……やわっこい♪
「やらしーことしてないよね?」
「するわけないだろ、殺されるわ」
「う、うん。ちょっと胸元借りたけど……」
ジト目で父を威嚇する莉姫に、私はそう答える。彼女は大げさにフンッと息をついて「どーだか」と言い放つ。
「男ってのは女の子に触れると『いい匂いだなー』とか『柔らかいなー』とか、そんな事しか考えないんだから」
「「うっ」」
莉姫の言葉に、ギクリとする。
わ、わたしもそんな事しか考えてなかった気がするぅ……。あ、でも彼も図星のようだったから、おあいこかな?(喜)
「親父さぁ、こんなに可愛い娘が抱きついてもあんな顔しなかったのに、今宵ちゃんだともうメロメロなんだもん。少し嫉妬しちゃう(プンスカ)」
あ、そうなんだ?
ふふーん♪ やっぱり私は美少女なんだねっ? そう思ったら、少し余裕が出てきたかも。
「当たり前だろっ 娘に欲情するバカいるか」
「まーそうだよねー。元々自分の身体だもんね。欲情なんかしないよねー」
「わ、バカ」
ん? なんか変な単語が聞こえた気がした。
「親父さ、今宵ちゃんにだけカミングアウトさせるの?」
「い、言う必要ないだろ」
「親父が言わなきゃ、僕が言うよ?」
「うぐっ」
力関係がもうバレバレだ。お父さんは娘には勝てない。これ、真理(哲学)
諦めたように彼が椅子に座って頭をかく。手を繋いだ莉姫が促すので私もそれに倣うと長い「あー」というセリフから話が始まった。
「実は……俺は女だったんだ」
は……?
なんか隠してる事を告白するみたいな流れだったのに、なんで分かりやすいウソ言うの?
思わず怒鳴りつけようとしたら、私の手を握って止める莉姫。黙って聞いてろってこと?
でも、それは違った。彼女は目を三白眼にして父親へと毒舌を放った。
「親父さ。説明下手過ぎっ」
「グホォッ!」
「いきなり核心から入るとかなに? プレゼンとかと勘違いしてる?」
「……いや、そんなことは……」
愛娘からの一撃で困憊している彼。どうしよ、ちょっと面白いw
すると、莉姫が椅子から立ち上がって彼の側に行き、後ろからハグをする。
「お、おい。何だ」
「プレゼンなんでしょ? なら、スライドとか見せたほうが早いよね?」
そう言うと、彼の頬にキスをする莉姫。
おおっ、生のキスを見るのはなんか久しぶりな気がするっ!
と思ったらなんだか二人が光り始めた。えっ、なにこれ? 特撮? それとも……
光が収まると、暦さんは居なくなっていた。
代わりに莉姫が座っているが、なんだかおかしい。髪の色は銀色になってるし、瞳は青ではなく黒になっている。付けていた髪飾りはそのままだけど、緩く二本に結んだお下げではなくて普通にストレートになっていた。さらに、着ているものも違っている。
さっきまでの彼女はふわふわのタートルネックセーターと膝上のフレアスカートにピンクのニーハイだった。
なのに、目の前のわたわたしている莉姫は暦さんの着ていたようなスウェットだ。しかも、サイズが全然合ってない……肩が落ちてるのが可愛いな♪
「ちょ、な、なんじゃこりゃ?」
『にゃっははー! おどろいた?』
驚く莉姫に、ボイスチェンジャーをかけたような莉姫の声が答えている。よく分からないけど……二人が合体してるの?
『ママがこの髪飾りを改造してくれてね。せっかくだから若い頃の親父の身体を再現して合体出来るようにしたんだー』
「なにしてんの? アイリスぅっ!」
「それよりホラ。今宵ちゃんにせつめーしないとっ!」
その言葉に、銀の髪の莉姫はこちらを向いた。その眼差しには、見覚えがあった。
「ど、どうも……女のコだった、暦です……」
「……あ、はあ……」
……なんとなく理解はした。
あのとき会ったのは、この子だったと。
今更ながらに気付いたのだった。
一息ついて、出た言葉は「リアル魔法少女とかないわぁー……」だった。
「デスヨネー……」
「ボクトケイヤクシテ マホウショウジョニナッテヨ!!」
「声真似ウマッ てか、どこから声出してんの?」
「今の僕は髪飾りが本体だよ。ちなみに外すと元に戻る仕様です」
「スッ」
「ちょい待ちっ!」
暦が戸惑いもせずに外そうとするのでバッと手を掴んで止める。
「と、止めるな。後生だからっ」
「わ、私はこのほうが喋りやすいの」
「ええ……?」
ちょっと引かれてしまったが、おっさんと可愛い女の子ではハードルが違い過ぎる。
「にしても……日本人なんだよね?」
「うん。もっとも、普通ではなかったけど」
話によると。
山の中で暮らす忍者のような一族の子供だったそうだ。一応義務教育とかは受けてたけど、通学に一時間かけて山を降りるとかあまり常識的ではない感じだ。
んで、ある日の通学の時に異世界に召喚され、そこでアイリスと出逢って……そのアイリス少年と入れ替わってしまったという事らしい。
うん、どこかのヘタクソなラノベみたい(笑)
「そこから戻ってきたら、山の中の家は廃墟になってて。山を降りた所を警察に保護されて、実家に戻ったら普通の家で驚いたんだ」
悪鬼羅刹のような父親は普通の剣道家になっていたし、家族もまともな人間ばかり。さらに暦少年は普通に受け入れられていたそうだ。
「それって……」
「たぶん、君の転生と似たようなものだと思う。俺は元いた世界から別の世界へと帰還していたんだ」
それは果たして帰還と云うのか?
その辺りを聞こうと思ったら。
「あっツゥッ」
「おお、生おしおきっ♪」
少女の暦は莉姫とあまり変わらないので、声も当然似ている。痛みに顔を赤める彼女には、莉姫には無い艶っぽさがあってなかなかにえっちだっ!(だめだ、コイツ。早くなんとかしないと)
「な、なんで? なんでおしおきできんの?」
「ふ、ふふん。僕がやってるに決まってるじゃないスか! とーぜん、僕も痛いッスけどね!」
「痛えならやるな、バカッ!」
「親父のかわいエッチな姿が見られるならこのくらいっ」
「きゃいんっ!」
「……ええ」
莉姫の自爆テロは凄まじく、目の前にはグッタリとして虚ろな目をする暦ちゃんがいた……やべぇ、事後にしか見えない(笑)
実は見えないように動画撮っているのだ。後でゆっくり拝見しよう。うん。
「おま……すこし、てかげんせぇや……」
「こ、こうかいは……していない……」
うん。よく分からないけど、莉姫の男らしさには脱帽だね。自分も痛いのにここまでやるとか……じゅるり。
その後シャワーを浴びにいった(事情は察する)ので、少し手持ち無沙汰になってしまった。
そんなタイミングでRINEに着信。湊からで『楽しんでる?』とあった。『いま、莉姫の自宅』と返すと『帰り、送っていこうか?』と返してくれる。まま好き♪
とりま通話をかけてみる。
「いま、平気?」
『電車は降りたからね。ご家族に迷惑かけてない?』
「今日はアイリスさんとか出掛けてて、莉姫と暦ちゃんだけだよ」
『暦ちゃんて……人様のお父さんをちゃんはないでしょw』
あ、そうか。
自然に言っちゃったけど、周りから見たら暦ってお父さんなんだよな。今の状態からは予想もつかないや。
『莉姫ちゃんもいるだろうから大丈夫だと思うけど、もし何かあったら連絡してね』
湊がまた心配性を出してくる。男の状態でもあんなにガチガチに緊張してた奴が手を出してくるわけ無いって。オマケに今は女の子だし。
……あ、ひらめいた。
「ね、どうせならこっち来れないかな?」
『ええ? ご迷惑じゃないかしら?』
「たぶん、そんな事は言わないよ? 莉姫のお父さん、すごいいい人だしw」
『あれだけ毛嫌いしてたのに……まあ、いいわ。すぐに着くから』
くふふ……。
いたずらって楽しいよね?
今宵さんは自身も妙な体験をしているため、暦の事情には理解があります。普通は「はっ? 何ふざけてんの?」と怒る所ですよw