道に迷い、人生に迷い、ふと顔を上げると、俺は見知らぬ並木道にいたんだ。
これからする話は、そこで体験した、ちょっと面白おかしい話だ。
インタビュー開始
…俺は、夢を見ていたのかもしれない。
俺の目の前に、1軒のレストランがある。街路樹の並ぶ道を抜けて、やたら高い電柱の傍を通り、てっぺんが見えない電波塔の下を潜り、常に変化する道路標識に導かれるまま進む。たった1本だけの街灯に照らされた店先には、こう書かれていた。
「ねこのレストラン」
店の扉をくぐる。…中は質素な作りだ。至って普通のレストランだ。…一部を覗いては。
ドンドン、と叩かれる扉。開けるな、と書かれた扉等。本棚には本が並んでいる。…1つの本に目が行く。「終わらない英雄譚」か。中々不思議な名前の本だ。壁には2枚の写真が飾られている。これは…軍隊か?モノクロ写真なのに、一部にだけ色がついている。もう1枚は、綺麗な雪山の写真だ。棚の上には、ルビー?のような赤い宝石が嵌められた首飾りが飾られている。店内の隅にはケージが置かれ、中には兎が1匹飼われているようだ。後は…梟か?ストリートアートのような絵が壁に書かれている。店内なのにストリートアート、というのはおかしいだろうか。
「ねぇ、お客さん来てるわよ?」
ふと、どこからが声がする。ちら、と目を向けると、レジカウンターの上に変な形の生き物がいる。顔だけが浮いているようだ。…それに、何となく、2次元感がある。巫女装束か?あれは…。
「いらっしゃいませ、ねこです、よろしくお願いします。さぁどうぞこちらの席へ。あぁ、そちらの椅子には座らないように。吹っ飛ばされても責任はとりませんので」
変なことをいう店員だ。それにここはメイドカフェか?猫耳に猫の尻尾を付けた店員がいる。その店員に導かれるままに、俺は席に座った。
「さて、当店にはメニューがございません。全てはいろいろと気まぐれになります。その日に出せる、最も良い品を出すのが、当店のルールです。お代は…まぁざっと2000円程でしょう。その分、満足出来る品はお出しします。」
そう言うと彼女は、おもむろにカウンターの方に向かった。冷蔵庫を開けるとケーキを取りだし、自販機?に見える機械にティーカップを置くと、俺に紅茶とコーラ、どちらがいいか聞いてきた。まぁケーキには紅茶だろう、と、紅茶を選ぶと、その自販機から紅茶が出てきた。…どれだけサボるのだ、この店は。
「どうぞ、ケーキや飲み物はおかわり自由なので、いつでも言ってください」
出されたケーキと紅茶。ケーキはさておき、紅茶からは、とてもいい匂いがする。あんな機械から出てきたようには思えないほどに。
ケーキを一口。うん、美味しい。普通のケーキだ。そして紅茶を…。…やはり、美味しい。インスタントとは思えない。まるで、しっかりと温度を測った上で、絶妙なタイミングで入れられた紅茶のようだ。
「さて、当店でのメニューの決め方はこれです。」
そう言うと、彼女はサイコロを出した。Yes.No.Maybeの3つしか書かれていない。本当に、適当なレストランだ。…だがまぁ、仕方ない。
「肉と魚、どちらがいいですか?それを思い浮かべながら、サイコロを振ってください」
そう言われたので、俺はとりあえず肉がいいと思い浮かべながらサイコロを振った。結果は…No。
「では魚ですね。少々お待ちを」
肉がいいと思っていたのに…と文句を言おうと思った刹那、俺の頭に、急に魚が食べたいという感情が湧き出した。ダメだ、肉じゃない。魚が食べたい。
…数分後、チン、というトースターの音と、キッチンから2回殴打音が聞こえたが、無事料理が出てきた。トースト2枚、魚のムニエルと、野菜のサラダ。そして、俺の大好きなつみれ汁。まぁジャンルはバラバラだが、美味しそうな事に変わりはなかった。
「どうぞ、お水です。さぁ召し上がってください」
まずはムニエルに箸を伸ばす。味は…なんだろう、初感覚の魚だ、だが美味しい。サラダも、トマトの味が効いてて実に美味だ。つみれ汁も、優しい味がする。…母の作ったつみれ汁にすごく味が似ている。
「デザートはこちらです。どうぞ。」
食事の途中で出されたデザートはマフィン。「あ!それ私の」と巫女装束のよく分からない生き物が言うが、彼女は無視して出した。流石に人の物を食べるのは良くないと思ったため、「さっきのケーキはないか?」と訪ねた。すると彼女は「分かりました。」と言い、キッチンへ下がった。
改めてテーブルの上を見る。ふと見ると、彼女が持ってきたのか調味料が複数置かれていた。どこにでもあるような食塩と胡椒、醤油。食塩だけ「一言言ってから使ってください」と書かれたシールが貼ってある。…まぁもうかなり食べてしまったからいいか。
彼女が持ってきてくれたケーキを食べて、紅茶をもう一杯飲んで、ようやくお腹いっぱいになった。厨房からはあの巫女装束の生き物の「すんぐぉぉぉぉぉぉぉおいのねこれ!早く食べましょう!」という声が聞こえてきた。何が凄いが気になるが…まぁ、お腹いっぱいだしいいか。
「おかえりになるのですね。ではこちらに」
帰る意思を伝えると、彼女はレジカウンターに俺を案内した。…カウンターの傍には、血塗れの紙が置いてある。「けてる」とはなんだろう。まぁ、触らない方がいいか。
「ケーキ代はサービスします。999円ちょうどでいいですよ」
彼女は手元の電卓を使って計算して、お代を言ってきた。999円をちょうど、と言えるのかと疑問に思ったが、あれだけ食べられて999円なら安いものだろう。俺はトレイに999円を置き、ご馳走様と告げて店を出た。帰り際に飴玉をひとつ貰った。味は…覚えていない。美味しかったのは覚えている。
猫塚博士:なるほど、非常に興味深い話ですね。ちなみに、帰ってきた時はどのような道を通ってきたのですか?
猫腹さん:いや、それが覚えていないんだ。気づいたら街中にいた、というか。つまるところ、言いたいことはさ、ねこがいたってことなんだよ。メイド服の。
インタビュー終了
SCP-001-JP-J 猫塚博士の提言-つまるところ、猫はいる-
object class:Thaumiel
当SCPは現在発見されておらず、猫腹博士がとある一般人から聞いたインタビューの内容を元に提議、提言、提唱されたSCPです。
当SCPは1軒のレストラン、及びその敷地内です。
当SCPの持ち得る能力は、全てのSCPを無力化した状態で召喚できる事だと考えられています。当SCPの半径○○km圏内がその適用範囲であると考えられていますが、現在発見には至っていません。
また、インタビュー内容によれば当SCP内部には巫女装束を着た未知の生き物と、猫耳を生やしたメイドが居たという報告があり、巫女装束の謎の生物は未確認のSCPと考えられています。また、猫耳を生やしたメイドは、インタビューの記録から姿が「SCP-040-JP」に酷似していると考えられています。
当SCPを利用すれば、どれだけ危険なSCPも安全に研究する事が出来ると考えられているため、財団は現在、最優先で捜索を続けています。
当SCP内部に入った財団職員は猫腹博士及びO5に直ちに報告することが義務付けられています。
補遺1:○月×日、アメリカ、ノースカロライナ州に1人の日本人男性が飛んで来たことが確認されています。しかし、SCP-1475-JPが同時期に使われた記録はありません。
補遺2:現在、当SCPに似た動画が某動画サイトに投稿されており、財団職員は投稿され次第動画を確認する事が義務付けられています。
補遺3:当SCPは発見できたとしても収容は不可能だと現在考えられており、財団職員は当SCP内に侵入できた場合、内部にいる人間との協力関係を築く為の対話をすることが求められています。
補遺4:当SCP内部に入ったことによるミーム汚染等は確認されていません。また、当SCP内部からSCPが脱走したという事実も、現在確認されていません。
補遺5:現在、当SCPの能力はSCPの能力を無効化して召喚、ではなく、操作して召喚していると考えられています。一部のSCPは効力を持ったまま召喚されますが、その効力もまた当SCPは操作可能であると考えられています。
???「ミーム汚染がない、ですか。いいえ、既にあなた方はミーム汚染されているんですよ。補遺2がそれを物語っています。補遺2こそが、このSCPのミーム汚染なんですよ。ふふ、それではどうぞ、よろしくお願いします」
この小説はSCP財団のSCP-040-JP(http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp)を中心としたSCP二次創作SSになります。
この作品は、SCP-040-JP「ねこですよろしくおねがいします」に対して独自の解釈が有ります。
このコンテンツは、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンス(http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja)の元で利用可能です。
またこの小説は、YouTubeチャンネル「ねこのSCPレストラン」の応援小説です。
「ねこのSCPレストラン」に対しての独自の解釈が多く含まれています。
「ねこのSCPレストラン」チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCsUE9GXFRsb1ISA2PE0q96A
「ねこのSCPレストラン」Twitter
@040_jp_resto
以下文中登場SCP及び関連物品(登場順)
SCP-461-JP「隠れ樹」
SCP-062-JP「生存権」
SCP-910-JP「シンボル」
SCP-183-JP「繁栄の街灯」
SCP-006-JP「あけろ」
SCP-2317「異世界への扉」
SCP-268-JP「終わらない英雄譚」
SCP-8900-EX「青い、青い空」
SCP-096「シャイガイ
SCP-963「不死の首飾り」
SCP-524「雑食うさぎのウォルター」
SCP-1155「人喰いストリートアート」
SCP-1475-JP「標的はノースカロライナ」
SCP-871「景気のいいケーキ」
SCP-294「コーヒー自動販売機」
SCP-1125「アンサーダイス」
SCP-426「私はトースター」
SCP-エビ-JP-J「>サンマ<」
SCP-504「批判的なトマト」
SCP-348「パパの贈り物」
SCP-007-J「生きているマフィン」
SCP-043-JP「何でも食べられる調味料」
SCP-055-DE-J「でっかいハム!」
SCP-444-JP「◻️◻️◻️〔アクセス拒否〕」
SCP-004-JP「矛盾なき電卓」
SCP-999-JP「I am No.9」
SCP-330「君にふたつだけ」
SCP-040-JP「ねこですよろしくおねがいします」
分かりにくくて申し訳ありません…,。