アメリカからの訪問者   作:夢幻遊人

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第2話

 提督と入れ替わりにエンタープライズがマイクの前に立つ。

「ただ今ご紹介にあずかりました航空母艦エンタープライズです」イントネーションが金剛に似ているところはあったが、流ちょうな日本語に艦娘たちは息をのんだ。

 「・・私は、わが国が貴国に使節を送るということを聞き、志願しました。司令長官をはじめ皆から『あの戦争で沈めた艦娘が多い日本は避けた方がいい』と心配されましたが、私はそれを押し切ってやって来ました。・・正直、皆さん、特に空母の皆さんは私を恨んでいると思います」

 エンタープライズは空母の方を見渡しながら言葉を続ける。

「そういった私や、ひいてはわが国への恨みなりわだかまりを解消させなければ、日米で共同戦線を組むことはできないと思います。みなさんの司令は、『私たちへの無礼は許さない』とおっしゃってくださいました。大変ありがたいことだと思います。しかし、私をどうしても許せないという方もいらっしゃるかもしれません。そんなときは、どうか遠慮なく私の前に現れてください。・・私は、何をされても決して誰にも口外しません」

 艦娘たちは、提督が言っていたエンタープライズの覚悟の意味をエンタープライズ自身の言葉で理解した。

 長門が手を挙げて発言を求めた。提督がそれを許可する。

 「私は、あの戦争で、旗艦として『ニイタカヤマノボレ』の開戦指示を出した戦艦長門です。私は、あなた個人が憎くてあの戦争を始めたわけではないし、皆もそうだと思います。確かに、あの戦争であなたの艦載機に撃沈させられた艦は少なくないし、私自身もあなたに思うところが全くないと言えば嘘になりますが、あなたの覚悟には感心しました」と話した。

 瑞鶴は、このやりとりは、提督と長門が事前に打ち合わせてやっているのではないかと思った。しかし、その一方で、わざわざ誇り高い武人である長門に演技をさせることはないので、長門が本心から話していると思った。

 

 エンタープライズは、提督に伴われて空母の控え室にやって来た。エンタープライズの覚悟を知り、空母たちも素直にエンタープライズを受け入れたものの、皆どう対応すればよいのか分からないというような表情であった。

 「アカギさん、カガさん、ソーリューさん、ヒリューさん、ショーカクさん、それにズイカクさんで間違いないですか?」エンタープライズは空母全員の顔と名前を一致させていた。

提督は、エンタープライズが空母のみならず、鎮守府全員の顔と名前を覚えてきていることを告げた。すると、エンタープライズは一瞬恥ずかしそうな表情を見せたが、すぐに講堂で見せた緊張したような表情に戻した。それは、エンタープライズもどのような表情をすればいいのか探っているようでもあった。

 「エンタープライズさん」加賀が口を開く。「ごめんなさい。私は、やはりあの戦争のことを忘れることはできません。そして、あなたがあの戦争のことをどう思っているのか正直に話してください」加賀の言葉はいつもと少し違い、とまどいやためらいといった感情が混じっているように瑞鶴には思えた。

 「・・真珠湾が攻撃されたと聞いたときは、宣戦布告前に攻撃するなんて、とんでもない卑怯な奴だと思いました。そんな卑怯者を何としても叩きのめすんだと思っていたので、ミッドウェーでアカギさん、あなた、ソーリューさん、そしてヒリューさんを沈めたときには喜びしかありませんでした」エンタープライズは淡々と話した。

「な、何てことを・・」瑞鶴は怒りにまかせて立ち上がった。

すると、加賀が「瑞鶴。人の話は最後まで聞きなさい」といつにもまして冷静な口調で諭す。普段は決して名前で呼ばず、「五航戦」と挑発するように言う加賀がそう言ったため、瑞鶴は驚いた表情をした。

また、翔鶴も瑞鶴に向かってうなずいたため、瑞鶴は頭を下げて座った。加賀がエンタープライズに話を進めるよう促す。

「・・しかし、ショーカクさんやズイカクさんとの戦いは3年近く続きました。戦っているうちに妹のホーネットを失い、その仇をとりたいという気持ちと・・ずっと戦っていたいという気持ちが入り交じっていました。

そして、レイテでズイカクさんを沈めたとき、妹の仇をとったという喜びもあったのですが、自分の半分が失われてしまったような喪失感の方が大きかった。私にとって、あの戦争はレイテで終わりです。・・あとはもう戦争じゃない・・」

みんな黙ってしまった。そして瑞鶴は、遂に及ばなかったエンタープライズが翔鶴や自分を認めてくれていたことに驚きもあった。




話の途中で、間違って一度投稿するという大ポカをやらかしてしまいました。申し訳ありません。
慌てて一区切りできるところまでで区切って投稿したところ、表記ミスを発見しました。情けない・・
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