アメリカからの訪問者   作:夢幻遊人

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第4話

永遠のような時間が経過する。

 

すると、瑞鶴は「あーはっはっは~」と大声で笑い出した。

エンタープライズの殺気に気圧されておかしくなってしまったのだろうか。

 

「何がおかしい」エンタープライズは大声で問いかける。

「いやあ、エンタープライズの演技、女優さんもびっくりだよ」

「っ、私は本気よ」

「本気?本気だったら、なぜさっさとやらないの?恨み言のひとつすら言わないで」

瑞鶴はきっとした顔でエンタープライズを見据えながら言う。

エンタープライズと瑞鶴の視線が交錯する。

さらに時間が経過した後、エンタープライズは瑞鶴の眉間に定めていた矢の狙いを外した。

 

 

「・・先にエンタープライズが私を沈めようとした。それで私があなたを沈めても正当防衛が成立して私は処罰されない。・・考えたね」瑞鶴がつぶやく。

 

「・・私の負けね」エンタープライズは降参したように両手を挙げた。

「や~っとあなたに勝てた。・・でもなぜこんな命がけの芝居をうったの?」

瑞鶴の口調は、前半は冗談半分といたものであったが、後半は真剣そのものであった。

 

「実をいうと、あなたに矢を向けたとき、射貫くつもりだったのよ」エンタープライズは淡々と述べる。

「・・少しでもぶざまなマネをしていたら、迷わず射貫いた。でもズイカク、あなたは動揺するどころか私に真っ向から向き合ってきた。それなら逆にズイカクの言うように返り討ちにあってもいいと思ったけど、あなたはそれもしようとはしない。・・沈めることもできず、沈められることもなかった。・・私は、もうどうしたらいいのか分からない・・」

エンタープライズは放心したように言った。

 

「エンタープライズが、私や翔鶴姉に複雑な気持ちがあることは分かる気がする。・・でも、深海棲艦との戦いで、あなたのような強力な艦娘が味方になってくれるんだったら、私はうれしい。・・深海棲艦との戦いが終わるまででいいから、私たちと一緒に戦ってくれないかな。その後は・・エンタープライズの好きにしてもらっていいからさ」

瑞鶴はまっすぐエンタープライズを見ながら話した。

 

「あの戦争だけでなく、今さっきあなたを本気で沈めようとした私を信じるの?」エンタープライズが問いかける。

「沈めるつもりだったらできたのに、それをしなかった。私にはそれで十分よ」

「・・ズイカクは信用してもいい。・・でもほかの艦娘がどう思うかしら?」

「・・まず、私がエンタープライズを信じることを態度や行動で示す。でも、その後はエンタープライズ次第ね」

「ふふふ・・」

「私、何かおかしいこと言った?」

「いえ、ズイカクが『全員を説得する』って言わなかったから、逆に安心したの」

「私が説得したところで、私たちは通常6隻以下でしか行動できない。そんな数でお互いを心から信頼しあえなければ、確実にやられる」

「それはそうね」エンタープライズはうなずいた。

 

 その後、エンタープライズから報告を受けたアメリカは瑞鶴に直接謝罪した上、お詫びの意味も込めてさらに技術提供を申し出ることになったり、この年の余興でエンタープライズと瑞鶴の決闘(?)が演劇化され、それを半ば見させられた瑞鶴の顔から火が出ることになるのであるが、それはまた別のお話。

 

 瑞鶴が部屋に戻ると、翔鶴は空母たちの控え室に瑞鶴を連れて行く。すると赤城たち空母全員が待っていた。

翔鶴に促された瑞鶴は、エンタープライズとのやり取りを事細かく伝えた。

途中、エンタープライズが瑞鶴の眉間を狙った場面では翔鶴から殺気が出ていたが、最終的に瑞鶴がエンタープライズと共に戦いたいと言うと、空母たちはお互いに意見を交わし始めた。

すると加賀が話し始める。

「五航戦、いえ、翔鶴と瑞鶴。まずは2人に謝らなければならないことがあります・・」

「えっ、加賀さんが謝ることなんて・・」瑞鶴は言いかけて「しまった」という顔をする。

「『また、人の話を・・』と言いたいところですが、今回は私の言ったことが唐突だったと思うので、これ以上は言いません」加賀は続ける。

 

「・・実は、エンタープライズを見ていると自分自身を抑える自信がなく、翔鶴と瑞鶴の2人に対応を丸投げしてしまいました。そして、瑞鶴がエンタープライズに殴りかかる・・ごめんなさい、それ以上のことを密かに期待してしまいました。しかし、瑞鶴はエンタープライズに殴りかかるどころか冷静に対応し、過去を乗り越え、共に戦いたい、と私には到底思いつかないことを言い出しました。・・翔鶴に異存がないことが前提ですが、瑞鶴がエンタープライズを信じ、共に戦いたいというのであれば、私もエンタープライズを信じて共に戦おうと思います」

 

「私もエンタープライズさんと共に戦うことに異存はありません。・・もっとも瑞鶴に矢を向けたことには文句のひとつ、ふたつどころではなく、たくさん言いいたいのですが」翔鶴はあえて冗談のように言ったが、これは翔鶴が相当怒っているのを皆は知っていたため、瑞鶴はエンタープライズを翔鶴のもとに連れて謝罪させることになったのであるが、それはまた別のお話。

 

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