命知らずの義足のヒーロー   作:オクタン……いいよね!

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緑谷出久とオクタビオ!

「なぁ、イズク。俺は足は速えが頭が悪いんだ! そんでお前は足は遅いけど頭がいいだろ? だから俺がお前の代わりに走って! お前が俺の代わりに考えりゃいい! 俺達、パズルのピースみてえだろ!」

 

 

 いつの日か、オクは僕に言った。

 かっちゃんと2人で、僕を虐めていた奴らをぶっ飛ばして、手を差し伸べながらそう言った。

 

 

「もちろん2人だけでパズルじゃねえぜ、カツキ! お前は力が強くて頭が悪いからな! ……あっ、待てよ? そうなるとイズクが俺たち2人分頭良くないといけないのか? おいおい! イズクが大変じゃねえか!」

「誰が馬鹿だ! お前とは違って俺は頭も回ンだよクソ馬鹿! あと俺を勝手にお前らの仲間に入れるな! それにパズルのピースが3つじゃバランス悪ィだろ!」

 

 

 仲が良いのに仲が悪い2人組が早速喧嘩を始めて、なんとか間に入って僕が宥める。幼馴染3人組のいつもの光景だった。

 

 

「そりゃそうさ、3人だけのパズルでもねえ! いろんな奴が俺達と当てはまってよ、そんで最後にはデッケェ絵になるんだよ! どうだ! 夢のある話だろ?」

「馬鹿らしい」

「お前! 馬鹿らしいだと!? よっしゃ、競走だ! 位置につけ!」

「やるかよバ──ーカ!!!」

 

 

 

 そうやっていつも喧嘩をしていて、僕なんかとは比べ物にならないくらい強い2人の背中をいつだって追いかけていた。いつか、彼らに並べる日を信じて。

 

 

 

 だから、だから───

 

「なあ、イズク。イズクよぉ……俺の足はもうねえんだ……こんな……走れない人生なんて俺は……」

 

 ───そんな顔、しないでよ。

 

 僕の目の前にいるのは、今まででは考えられないほどに弱り切ったオクだった。

 ただ速く走ることに、自分の限界を超えること(Plus ultra)だけに生きる価値を見出していた彼は、(ヴィラン)によってその両足を失ってしまった。彼は今、病室で絶望の底にあるのだ。

 

「足があったとこがよ、凄え気持ち悪いんだ。何も無いとこが寒くて、痺れて……アドレナリンを流し続けないと狂っちまいそうになる。クソッ、こんなんどうすりゃ……」

 

 握った拳で足元のシーツを叩きつける彼。しかし……中に何も存在しないシーツは、ボスンと音を立てるだけだった。彼は表情を歪ませ、顔を覆った。

 僕はそんな彼にかける言葉が見つからなかった。なんて言えば慰められるのか、何を言えば傷つけないのか、口を開けても一つも言葉が出てこない。

 

 でも、彼は言っていた。俺の代わりに考えりゃいいと。そして今こそが、彼の欠けた穴を埋める時なんだ。

 

 

「オク、義足を作ろう」

「義足……?」

「そうだよ! 今は個性の影響もあって色んな技術も凄いスピードで発展してる! きっと生身の足より速く走れる義足だってあるさ!」

 

 

 顔を覆っていた手を外し、見つめる彼。少しずつ、少しずつだけど手を握っていって……最後には、その握り拳で全力で自分の頬を殴り飛ばしていた。

 

「義足! 義足! そうだ義足だ! ああ、なんで俺はこんな事を思いつかなかったんだ! 凄え義足をつければ速く走れる! もっと凄え義足をつければもっと速く走れる! もっと先にいける! よっしゃ、そうと決まればやるしかねえ! イズク、やっぱりお前は頭が良いなあ!」

 

 そう言うと、オクは強引に手を伸ばしてこれまた強引に僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくる。

 なんだか子供扱いされてるみたいだったけど、不思議と嫌じゃなかった。

 

 

 

 

 

 そして今、オクは高校生でありながらもヴィジランテとして活躍している。

 世界中に何十万人もファンがいて、どんな(ヴィラン)だって傷一つなく捉えて、どんなヒーローが追いかけてきたって逃げ切って見せる。

 

 

『うぉぉぉぉ!? やべぇミルコだ! レアキャラだ! よっしゃ来い! 今日も逃げ切ってやるぞこの野郎!』

「ははは……また差つけられちゃったなぁ……」

 

 

 それでもいつか、僕は彼らの隣に並びたい。

 ただそれだけなんだ。

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