インフィニット・ストラトス 転生者はSTRIKE   作:バルバトスルプスレクス

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ハーメルン一作目です。とりあえず、頑張ります。


プロローグ

 

 明日から新社会人となるはずだった一人の青年は、突然神に見放されたが如くトラックに撥ねられて死んだ。母の手を離れ、坂道を下るベビーカーの代わりに撥ねられて死んだ。

 たまたま通りかかって、ヒーローの様に赤ん坊を救ったのに、彼はあっけなく死んでしまった。それでも彼は後悔しなかった。小さな命を救えただけでも、彼にはとても満足だった。

 

 

 

 

 人間は死後、魂は肉体から解き放たれ、輪廻転生の理によってまた違う命、また違う人間として生を受ける。

 彼の魂は、何もない虚無空間にいた。ここに存在する魂は生前の記憶をリセットされるのだが、彼はどう言う訳か生前の記憶を保ったままだった。何故こうなのか、何故そうなのか、理解できずにいた。が、考えても仕方ないと思った。

 おとなしく新しい命になるのを待とうとしたその時、いつの間に現れたのか、白い生地の服に草の冠、白鳥の様な翼を背中に生やした女がいた。彼から見ればいい歳こいた天使のコスプレイヤーか何か、と冷めた目で見つめていた。

 

「おい貴様。 我をゲスな目で見るな」

 

 錦糸卵の様なチリ毛な金髪の毛先を指でいじりながら、彼を睨んでいた。概彼女の言う事は間違ってはいなかったが、そこまで言うかと彼は溜息を漏らし、目の前の女に何者かと尋ねた。

 

「我か? 我は…信じられんかもしれんが、貴様らが神と呼ぶ存在…言わば概念だな。 ところで貴様、何故自分自身がここに存在するのか分からんか?」

 

「そんな事、むしろこっちが知りたいところだ」

 

 彼は神に言い返すと、神はふんぞり返って淡々と語りだした。

 

「貴様は死ぬ直前、トラックにひかれる直前の赤ん坊の代わりに死んだ。 が、あそこで死ぬはずだったのは本来ならばあの赤子だったのだよ。 それを貴様は強引に変えた。 因果すら凌駕する……とまでは言わないが、貴様のせいでこちらは様々な事の修繕に忙しかったのだぞ?! 個人の自己満足で我ら神々に迷惑をかけるでない!! ここで貴様を記憶を保持した状態で留まらせたのも、この事で言いたい事があったからだ!!! それに何が満足だ。 齢20年ほどの青臭い奴が、悔しいと思わぬのか? 貴様の死は我によってではない、貴様自身の手で起きたのだ! …まぁ、これくらいだ。 言いたいことは全て言ったぞ」

 

 神から説教を受けるという奇妙な体験をした彼は、申し訳なさげに目の前の神を見つめていた。対する神は、これから彼の処遇について語りだした。

 現在の彼は生前の記憶を宿した状態。本来ならば既に生前の記憶を無くしているはずなのだが、今の彼はもう生前の記憶を無くすことはできない。細かい所を言うと長くて難解だと神が言うので、彼は詳しい事を聴くのをやめた。この状態で輪廻転生を行うと、転生者と言う神々の間ではイレギュラーな存在に生まれ変わると神は言う。

 

「まぁそんな所だ。 最後にこれだけは言っておく、転生後の世界は我でも知らんランダムで決まる。 長々と話し込んで済まない。 では、さらばだ」

 

 そこで、彼の意識は消えた。

 

 

 

 

 気が付くと彼は、見た事もない場所で何かの研究員に囲まれていた。それだけではない。今彼は、何かの液体に付け込まれていた。それをガラス越し、ケース越しの研究員たちが計器類をチェックし、何かを操作していた。かろうじて、研究員たちの声が彼の耳に届いていた。

 

『成功ですね、ユーレン教授』

 

『見た目はな。 だが中身が良くならねばならん』

 

『既に五年も経過しています。 ここで不備を出すわけにはいきませんからね』

 

 彼はこの時点で、転生してから五年が経過していたのに気が付いた。しかし、今の自分の状況はおかしい以外の何ものでもない。普通の五才児ならば幼稚園の年中組で、友達と遊びまわっていることが普通だ。なのに今の彼の状況は違う。これでは自分が人間ではない何かだ、と彼は思う。

 今の彼は、冷静すぎていた。何故だか分からないが、下手に暴れたら処分されると思ったからだ。

 

『最終チェック、入ります』

 

『第1パルス、正常』

 

『第2パルス、正常』

 

『第3パルス、正常』

 

『最終パルス、正常。 おめでとうございますユーレン教授、生体コードCの完成です』

 

 研究員たちが何を言っているのか、彼にはさっぱり見当がつかなかった。ユーレンと呼ばれた男がパネルを操作すると、彼は液体とケースから解放された。

 ユーレンは彼を抱きかかえると、父親のような表情で彼を見つめていた。

 

「五年もの間、外に出せなかった父さんを許してくれるか、カナード」

 

「カナー……ド?」

 

「あぁ。 お前の名だ」

 

 それが、この世界で新しく生を受けた自分の名前。

 

 

 

 

 あの日から更に五年の月日が経った。小学校四年生になったカナードは自分の通う小学校から自分の家である研究所…大和生物機械技術研究所に帰宅していた。父はユーレン・大和、母は大和静子の第一子として、カナードは新たな家族と共に今日まで過ごしていた。研究所に勤めている研究員達とも家族の様に接してきた。しかも彼は、転生の恩恵なのか技術者としての才能が開花され、小学校入学と同時にここの研究員になっていた。

 自宅でもあるこの研究所は、カナードが小学生になると同時に機械技術にも力を入れ始め、生体研究と機械技術研究の二種を掛け持つようになった。

 帰宅してすぐ、彼は自分の部屋に戻ると学校から出されていた宿題のプリントに、鉛筆を走らせていた。精神年齢既に三十路近い彼にとって小学四年生の問題など、造作もない。

 

「よし、こんなもんか」

 

 大して時間も掛からなかった事に気付いたカナードは見直しも行い、小さなミスを探していた。

 それが終わると、彼は部屋に備え付けられたテレビの電源を付けると、カナードの表情が強ばった。

 画面の中には空中で静止する白い鎧を纏った女性が、自分の身の丈ほどの剣を片手で持ち、2341発のミサイル群を切り落としていた。しかもそのミサイルは日本以外の国々から何ものかにハッキングを受け放たれたモノだと、テレビが告げていた。

 すると彼はテレビの電源を落とすと、私服の上から白衣を着て部屋を飛び出して、研究施設へと向かった。

 その道中で、彼は父親と合流する。

 

「父さん!!」

 

「カナード、お前も見たのか?」

 

「父さんには、あれが何に見える? 僕にはSF漫画のメカにしか見えないよ!!」

 

「私もだ。 だが詳しくはみんなが揃ってからだ!」

 

「はい!」

 

 そして、大和親子と研究所の主要メンバーが一堂に会していた。その会議室で、ユーレンは壇上に登る。

 

「皆も知っているだろうが、先程ここ日本に向け世界各国の軍事基地からミサイルが放たれた。 だがそれらは全て何ものかのハッキングを受けたからだ。 しかし、それを全て撃ち落としたのは……インフィニット・ストラトス、通称ISと言う代物だ」

 

 ここでカナードは、自分が『インフィニット・ストラトス』の世界に転生したのに気が付いた。と言う事は恐らくあの白い鎧は『白騎士』。転生してから今日までここが何の世界か気が付くのに、時間がかかりすぎていた。

 ほかの研究員たちはあれが何なのかは知らなかった。当たり前だ、彼らはその世界の住人なのだから。

 

「以前学会で、篠ノ之束と言う女性が提唱したモノだ。 質量保存を無視したかのような仕組みを持った…SF作品に出そうな代物だ。 当然学会でも彼女のそれに賛成する者はだれ一人いなかった」

 

「…じゃ、じゃあ先程のテレビに映っていたのは……」

 

「恐らくそれだ。 恐らく、これからの日本…いや、世界はこれから変わっていくのだろう」

 

 ――ISを中心に。ユーレンは最後にそう付け足していた。

 この時誰も、カナードが第二のISが扱える男性として世間から脚光を浴びるとは考えもしなかった。

 

 

続く

 




次回から本編です
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