インフィニット・ストラトス 転生者はSTRIKE   作:バルバトスルプスレクス

13 / 27
今回色々とやっちゃってます。ご了承ください。

いつもの事?そうですハイ最近勢いがかっちゃってたりしてます。

今回から簪の喋り方が少し変わります


十二話 休みと大会と改造人間?

 

「そういえばカナード、シャルロットのISって結局……どうなったの?」

 

「ん? ああ、ラファール・リヴァイブ・カスタムの事か? 父さん曰く元々はフランスのデュノア社のISだろ? 機体はもうコアを初期化して返してあるらしいな」

 

 その他の生徒よりも先に、簪はカナードと共に朝食を共にとっていた。朝食のメニューはどちらも焼き鯖定食。これが本日の朝食のオススメだから二人は頼んだ。

 会話の内容は主にシャルロットに対してだ。良い友人でもある彼女が簪自身気になるのか、カナードに何度か質問を投げた。

 

「それと、何でシャルロットがカナードの義妹にならなかったの?」

 

「あ、それね。 小次郎さん……あ、俺と同じ研究員の人ね、その人とシャルロットが意外にも気があったみたいでさ、そうなった」

 

「何か、凄い……アバウト」

 

「俺もそう思う。 あと、シャルロット本人から聞いたんだが……俺とは兄弟姉妹の関係になるのが、考えられないそうだ。 良い友人という距離を保ちたいんだとさ」

 

 言って味噌汁を啜るカナード。本日は土曜で休日なのだが、今日は実家である研究所に呼び出されていた。翌日も休日である事から明日にまで学園には帰れないそうだ。

 

「呼び出された事は大体想像つく。 今のところ部外秘だけど」

 

「明日のいつごろ……学園に戻るの?」

 

「晩飯前ごろには戻れると思うよ。 ……って言うかさ」

 

「どうしたの?」

 

 同時に完食し、最後に緑茶が入った湯呑を持ってカナードは目を細め、心底嬉しそうに、それでいて穏やかな口調で、目の前の簪に答える。

 

「なぁんかこういうのって、新婚夫婦っぽい上に家庭的で、いいな」

 

 

 

 

 大和生物機械技術研究所の受付嬢が、久々に帰って来た研究所所長の息子を出迎えて世間話をしていると、左頬と額を赤くしている事に気が付いた。なんとなく事情を察した受付嬢は確証なしにカナードをニヤついた目で見始めた。

 それに感づいたカナードは訂正する。

 

「何勘違いしているか知りませんが、別に振られたって訳じゃないですからね」

 

「じゃあ何なんですか?」

 

「んー……まぁ、何て言うかその………彼女と二人で朝飯食ってる時に…『新婚みたいだな』って言ったら…向こうが恥ずかしがって……まだそう言うの早いって叩かれてから言われて」

 

「で、ビンタなんですね。 そのおでこはどうしたんですか?」

 

「学園を出る前に、その娘のお姉さんに事情がどこからか伝わって、扇子でデコピンされました。 無言で笑顔で」

 

「思った事を素直すぎる程に発言する、カナード研究員の悪い癖ですね」

 

 口元を手で隠しながら笑う受付嬢を横目で見ながら、カナードは自室へと向かう。道中に生まれたころから在籍している先輩研究員や学園に入学してから来た後輩研究員にも挨拶を交わし、目的の部屋の前に到着。部屋の衣服掛けに掛けてある員証が付けられた白衣を着用し、今日と明日に主に使う会議室へと向かう。

 そうして会議室のドアの前に立ち、IS学園に入学した時に両親に買ってもらった、ガラパゴス携帯とスマートフォンの間程の性能を持った携帯電話の待受画面を覗き、時刻を確認する。集合時間30分前だ。

 中途半端な時間帯だが、特に問題は無い。ドアにノックして中に誰かいないかを確認する。その際に、自身の研究員識別ナンバーを述べる。ある種のセキュリティーの役割で、場所によってはこの場合は口頭で、その他ではカードキー等で誰が入室するのかを知らせる役目もある。

 

「ナンバーNP3228、大和カナード入ります」

 

「どうぞ、お入りください」

 

 先に誰かが居たようで、カナードに入室を促した。入ってみると、先に窓木がいた。手元には今日と明日に渡って必要な書類が数冊単位で纏められており、山積みにされていた。それらを見たカナードは、一人相当なのか日数相当なのかを推理する。

 その様子を見ていた窓木は、答えをすぐには言わずカナードの答えを待っている。その様子はさながらクイズ番組の視聴者そのもの。

 

「もしかしてその資料、一人相当ではありませんか?」

 

「正解。 いや、ホント丁度いい時に来てくれたねー、とりあえず今あるこの分を人数分コピーしてきてね」

 

 窓木の指差す先、カナードが入って来たのとは別のドアの向こうには数台のコピー機がある。

 原本を受け取って印刷作業に入る。これは骨が折れるぞ、と後ろで窓木が言った。

 それから間もなく、会議の主要メンバーが次第に集まっていく。その中にはシャルロットや篝の姿さえも見えた。特にシャルロットこそが今回の会議の主役とも言えよう。この会議は、シャルロットが研究所に所属を移した時から計画されていたらしい。現在シャルロットはパイロット科に変わらず在籍しており、実機訓練の際には量産機のラファールを使用。学園祭襲撃事件の際には、オータムとは一戦も交えてはなかったが、訓練機を纏って生徒の避難誘導に徹していた。

 しかし、今日の会議次第でシャルロットに関する環境が変わると言っても過言ではない。

 人数分の資料を整えたカナードは、ユーレンの隣に立つシャルロットに一度視線を向け、手元の資料にあった設計図に目を走らせる。

 

「知っている者もいるだろうが、窓木シャルロットが私たちの仲間となって間もなく、デュノア社はイギリスのメーカーの傘下に入った。 それと同時期に、国際IS委員会から我が研究所に新たにISコアが一基割り当てられた。 これを、このコアを二人目のテストパイロットシャルロットの専用ISに使う」

 

 ユーレンのその言葉に、少なからず同様を隠せないカナード達研究員。準備が良すぎる。グッドタイミング過ぎる。何か裏があるのではないかと、誰もが思うが、今は気にしない事にした。

 会議の本題はストライクに続く二機目の開発についてだ。コスト・時間・人員などの問題や、一度シャルル・デュノアとして表に出た現窓木シャルロットを再び表舞台に出す必要があるかを彼らは検討する。政府や委員会などには他人の空似、学園の方には真実を伝えてはいる。

 

「さて、シャルロット。 君はどのようなコンセプトを望む?」

 

 言ったのは小次郎だ。養父として、上司として彼はシャルロットに聞いた。

 

「私としては、以前の……ラファールの様な機体を望みます」

 

「となると、高速切替(ラピッド・スイッチ)か……だったらこれはストライクのデータを流用すれば出来なくは無いよ」

 

 カナードが即座に提案を入れ、それが賛成となった。ストライクを製作したカナード自身もシャルロットのラファール・リヴァイブ・カスタムの高速切替を、ストライカー換装システムのヒントにしていた。

 案の定会議も順調に進み、それにつれあっという間に時間が過ぎていく。

 

「大和所長、続きは翌日に移そう。 明日の午前中には会議は終わりそうだ」

 

 篝が、明日刃機業代表と言う立場としてユーレンに提案。それが了承され、この日の会議は終了した。

 退室する者全員は資料を手に取って持ち場に戻る。カナードもその一人で、資料を手にラボへと向かう。その道中、シャルロットと篝が付きそう。

 

「明日の午前中に会議を終えて、すぐさま機体作成するにも時間がかかる。 一応資料の設計図を見っと、俺のストライクに近いな」

 

「それはE型…進化(Evolution)(タイプ)だな。 素材はストライクのとは違って、やや軽めでその上丈夫な素材、一部にはカーボンナノチューブが使われている」

 

「進化したストライク……ストライクE型かぁ」

 

 資料の設計図を見て感想を漏らすカナード、その説明を述べる篝、未だ見ぬ新しい専用機を待つシャルロット。

 E型、Evolution型は文字通り進化を意味している。大まかなシルエットはストライクに類似しているが、武装面などに変更点が見られる。E型はアーマーシュナイダーを小型のレーザーライフルショーティーに変更。更に肩部アーマーも形状を変更している。しかしその反面、ストライカーの換装に関しては一部の制限が設けられていると言う。と、言うのも、まずE型の肩部には突起があり、ランチャーやソードの様な肩部ユニットの換装がストライクに比べ百分の一秒単位のタイムラグが生じる為だ。その他にも様々な面もあるが、発展機でもあるので、設計に漕ぎ着くことが可能となった。

 通常と同じように、エールストライカーかI.W.S.P.のどちらかを場面によって換装する事が出来るが、現状ではこの二種類しかない。なのでカナードの担当はE型専用のストライカーの設計及び開発だ。

 

「…んー、中々難しい機体だな」

 

「資材に関しては最大限援助するぞ」

 

「助かる。 んじゃ、シャルロット色々と数値とか見ないとな、さっさとラボ行くぞ」

 

 カナードに促され、付いていく二人。

 到着してカナードは待機状態のストライクにケーブルを差し込み、キィを叩く。ベースはI.W.S.P.にしてそれを簡易化し、ストライクE型に合うスマートなストライカーに設計し直す。余談だが、カナードは個人的にI.W.S.P.を好んでいる。

 作業はそのまま滞りなく進み、夜が更けていく中、ドリンク剤を片手にカナードはキィを叩くスピードを一旦止め、先に寝落ちした二人を見た。

 (いびき)をかきつつ、めくれ出たへその辺りをポリポリと掻く篝と、安らかな寝顔で身体を丸めたシャルロット。

 どちらも見慣れた寝顔だ。小学校時代に見た篝と、数か月前にルームメイトだったシャルロット。それらを見てどことなく微笑ましく思うカナード。そこに、夜食を持って来た静子が寝ている二人を極力起こさない様に気を遣いつつ、カナードの好物の一つ、きつねうどん(油揚げ二枚)を載せたトレーを手渡した。

 

「カナード、頑張るのも研究員技術屋としては良いけど、一息つけなさい。 体調崩しちゃ元も子もないわ」

 

 篝とシャルロットの耳に入らないような小さな声で、カナードにそう言った。

 

「そろそろそうしようかと思ってた所だよ。 っただっきやーす」

 

「今夜は少し冷えるそうよ、毛布持って来た方がいいかな?」

 

「頼むよ母さん、俺暫くは手ぇ離せないと思うし」

 

 早速麺を啜って提案するカナード。それを二つ返事で了承した静子は毛布を取りにカナードのラボを出た。

 

 

 

 

 翌日の会議終了後の研究所内に作られたカフェテラスで、目の下に隈が出ていたカナードは、少し恨めしそうに同じテーブルの篝を睨んだ。当の本人は冷や汗を掻きながら特盛チャーハンに手を付ける。

 訳が分からないシャルロットは、とりあえずカナードに聞いてみる。

 

「昨夜俺仮眠取ろうとしたのよね、んでどっかの従妹の鼾でね、一睡できなかったんですよ」

 

「す、すまんカナード…」

 

「おや、俺ぁ一言も篝って言ってないんだけど? まぁ自覚してるんだったら……ねぇ…。 まぁそれ以上言わない事にするよ」

 

「ま、まぁまぁ……今夜ゆっくりと眠ればいいよ。 篝も悪気があったわけじゃないんだし」

 

「そ、そうだぞカナード」

 

「……ま、いっか。 所でシャルロット、今日はいつ頃学園に戻るんだ?」

 

「明日の朝までかな。 義父(とう)さんや色々の人と一緒に色々とやる事が多いんだ」

 

「俺は今日中に学園の方に戻る。 基本ストライカーの設計や着工は研究所(こっち)学園(あっち)でも出来るしな」

 

 言ってほうじ茶を啜るカナードは手荷物を纏めて席を立つ。

 

「時間まで少しやってるよ。 んで篝、あまりシャルロット苛めんなよ?」

 

「苛めんわ!」

 

 

 

 

 それから数時間後、海原に赤い夕陽が沈む頃。IS学園にモノレールが停車する。

 

「予定より早めに着いたな……まぁいいか」

 

 モノレールを降りてIS学園の敷地内に足を踏み入れたカナードは、そう言って寮の自室へと足を運ぶ。その道中でカナードは某白い契約魔(インキュベーター)の着ぐるみを着た本音に遭遇。本音もカナードに気が付いた。

 どうやら彼女は今朝方カナードとシャルロットがいない事に疑問を持ったらしい。そのおかげで『大和カナードと窓木シャルロット、愛の逃避行』等と言う珍妙な噂が流れた事態が起きたと言う。そのおかげで簪も御冠だそうだ。そして本音は簪のルームメイトだけあってこれから部屋に戻ると言うので、カナードは本音に同行する。

 

「ちなみにかなかな〜、変わったシャツだねぇ」

 

「俺の中では漢字シャツがブームだったりする」

 

 現在のカナードの着用しているシャツの背中部分は『自由人』と達筆に描かれているデザインだ。その他にも、『隠者』や『運命』等のデザインも持っている。

 

「でゅっちーは〜?」

 

「明日の朝辺りに戻るそうだよ」

 

「お土産は〜?」

 

「近所の駄菓子屋のまいう棒ならあるぞ」

 

「味は〜?」

 

「カラメルプリン味と味噌カツ味とナポリタン味と山葵(わさび)醤油味…どれ食う?」

 

「カラメルプリンいただきま〜す!」

 

「ほら」

 

 ぶかぶかな袖から華奢な手を出して包装を破いて中身にかじりつく本音。その道中に同行するカナードは漸く目的の部屋に到着。ノックしようとするカナードだが、その前に扉が開き、中から簪が迎え出た。

 

「よっ!」

 

「…帰って来るの、早いね」

 

「意外とね。 ほいお土産…つっても実家近くの駄菓子だけどよ」

 

 先ほどのまいう棒の入ったレジ袋を簪に手渡したカナードは、改めて簪の部屋着に目をやる。視線に気づいた簪は恥ずかしさで顔を赤らめつつ、カナードに問う。

 

「え……、と。 カナー…ド?」

 

 その言葉に、カナードは一拍二拍おいて口を開く。ちなみに、この時の簪の私服は本音と同じもの。

 すると、カナードは簪の両手を取って言った。

 

「俺、君となら契約できる!」

 

 その後、満面の笑みではあるモノの両頬が赤く腫れたカナードと、顔を赤く染め上げた簪の姿が寮で数日間見られたと言う。珍妙な噂はこの時点で瓦解されたらしい。

 

 

 

 

 とある休日。それも9月27日の今日、カナードは紙袋を提げて織斑邸へと歩を進めていた。今日は一夏の誕生日。しかしその日はキャノンボール・ファスト当日のはずで、それも専用機持ちタッグトーナメントよりも前の日。この世界では順序が入れ代わっていた。これもイレギュラーによるモノなのだと無理に理解するカナードは、何も考えずに歩いていた。

 既に周囲は暗くなっており、一夏には遅れるとすでに伝えてある。

 その途中で、自動販売機の前を通り過ぎるその時、ふと嫌な予感を感じた。必死に思考を巡らせ、ついには原作知識までもが総動員。

 一夏の誕生日、自動販売機。そして目の前には一夏の姿。

 

「あ、おーいカナード!」

 

「…うぃっす。 つ~かどーしたよ、今日の主役さんよ。 あれか、もてなされてばかりで皆に申し訳ねぇからってみんなの分のジュース買いに来たんだろ?」

 

「ずいぶんと正確だなぁカナード。 お前探偵やったら?」

 

「あほか金にならん。 それと俺が言えた事じゃねぇが……男性IS装着者がそんなに気軽に外に出るなよ。 例えば……居るんだろ、出て来いよっ!」

 

 落ちていた空き缶を近くの茂みに蹴り飛ばすと、そこから勢いよく人影が飛び出した。その人物の目的を知っているカナードは、一夏に避難の声を出そうとしたがそれよりも先に、一夏の額に黒く冷たく堅いモノを押し付けた。誰が見てもそれが拳銃だと言う事は一目瞭然である。

 それ以上に、その拳銃以上に視線を奪うのはそれを携行した人物の顔である。

 

「ち、千冬姉……?」

 

 織斑千冬にその人物の顔が酷似していた。

 

「いや、私は織斑千冬ではない。 私は……織斑マドカだ」

 

 マドカ。そう名乗った女性は視線を一夏からカナードに移す。冷たく、鋭く、獲物を狙う獣の様な残忍な目を彼女はしていた。

 勝ち目がない事を理解しているカナードは、大人しく両手を上げる。

 

「ったく、いつから日本は法治国家じゃなくなったんだ?」

 

「……貴様のその声、何処かで聞いたな」

 

「ったり前よ。 一夏、良い事教えてやる。 コイツは学園祭襲撃の折に現れたイギリス開発BT兵器二号機サイレントゼフィルスの装着者だ。 合ってるかい、マドカ?」

 

「馴れ馴れしくファーストネームで私を呼ぶな。 しかし貴様の推測は当たりだ」

 

「やりぃ」

 

 とにかく今は時間を稼ぐしかない。

 カナードの介入により、セシリア、シャルロット、ラウラ、簪の四人に一夏への好意を芽生えさせない事が出来た。これがどう言う事かと言うとつまり、助けに入る人間がいないと言う事だ。ならばカナード自身でこの状況を覆すしかない。

 未だに銃口は一夏の額を狙って放さない。それなのにマドカは器用に一夏とカナードの両方に注意を向けている。

 

「なぁる、空間認識能力がお高いようで。 どーりでセシリア以上にビットを扱うのがウマい訳だ、コツがあるんだったら…いつの日かご教授頂けるかい?」

 

「時間稼ぎのつもりか? しかし無駄だ、タイムオーバー!」

 

 無情にもマドカは拳銃の引き金を引いた。

 空の薬莢が吐き出され、それはコロコロと転がり自動販売機の下に転がり込み、一夏の体が重力に従って腰を落とす。しかし、血は流れていない。ここでカナードはある事を思い出す。

 

「遅いと思ったら何やら我が弟まで危険にさらされていたとは……その報い、受ける覚悟はあるのだろうか?」

 

 銃口はあらぬ方向へと、ドイツの軍人で自称カナードの姉ことラウラの手によって向けられた。一夏も生存している。

 イレギュラーがあったとしても、ストーリーは大まか原作通り。故に、ラウラが一夏の危機を救ったのだ。

 

「……救われたな」

 

 マドカは自分の任務を失敗したのだろうか、表情を少し歪めて逃げ出した。

 取り敢えずは助かった。それだけは確かだ。

 未だにこの事態に困惑している一夏に、カナードはラウラにも聞こえるように話す。

 

「良いかテメェら。 俺たちは偶然ここで落ち合ったし、特に何も起きなかった。 いいな?」

 

 軍人であるラウラは理解力が高いようでそれに同調。続いて一夏も戸惑いつつ賛成の意を表し、そのまま織斑邸へと向かう。

 

 

 

 

 翌日。教室は今年度のキャノンボール・ファストの話題で持ち切りだ。そこにカナード達専用機持ちが来た瞬間、あっという間にクラス中の女子生徒たちが群がってきた。

 今年度のキャノンボール・ファストは異例中の異例で一年の専用機持ちが特別に参加することとなっている。その為か、今日はやけに一夏とカナードに詰め寄って来る女子が多い。振って来る質問を適当に受け流し、やっとの思いで席についたカナードは、携帯電話の画面に表示されているニュースページに目を走らせる。

 デュノア社が日本のとある研究所と共同開発した(・ ・ ・ ・ ・ ・)第三世代ISが発表されたというニュースだ。名前の部分を見る前に、千冬が教室に入り、カナードは授業の準備に入った。

 始まってすぐに、千冬がフランスの第三世代量産型ISを話題に出した。

 

「諸君らも知っての通り、デュノア社が大和の生家である研究所と共に開発された第三世代量産型・エテルネルの情報が解禁された。 機体スペックを見る限りでは、従来のラファールを上回るほどである事が分かる」

 

 しかしまだ発表されたばかり。これが販売にまでこぎつければ、数か月もしない内にIS学園でもエテルネルを配備するだろう。

 因みに、エテルネルはフランス語で永遠を意味している。

 

 

 

 

 それから数時間経った昼休み。昼食はいつも一年専用機持ちが集って居る場合が多い。しかし今日だけは違った。代表候補でもないのに専用機を持っている事、また未登録コア搭載の第四世代ISを持ってる事で一夏と箒は席をはずしており、今頃は職員室辺りにいるだろう。それとは別にカナードはどう言う訳か生徒会に呼び出されていた。

 残った五人は少し広めのボックス席で昼食をとっていた。かき揚げ蕎麦のかき揚げの食べ方で小さい諍いがあったが、鈴音とシャルロットが制止して事なきを得る。

 

「ねぇ、簪」

 

「何?」

 

 塩ラーメンのチャーシューを一口齧った鈴音が、かき揚げ蕎麦の麺を啜る簪を呼ぶ。投下された爆弾に、簪は思考は一時停止状態に入ってしまった。

 

「アンタさー、いつからカナードと付き合ってんの? 箒はマル分かりだけどさー」

 

「 」

 

 それに同調するかのようにセシリアにシャルロット、そしてラウラも一斉に詰め寄ってしまう。

 そして観念した簪は洗いざらい話すしかなかった。

 時はゴーレムⅢ襲撃事件。簪が楯無の見舞いを済ませ、退室するとカナードと合流。寮までの道のりを一緒に歩きながら好きな話題で盛り上がるなか、道中カナードが意を決して簪に向かい、思いの丈を吐き出したと言う。その時の光景がとても恥ずかしかったようで、思い出すと顔がとたんに赤くなってしまうと言う。

 

「それで……どんな告白だったの?」

 

「えと、『機動武闘伝Gガンダム』って見た事ある?」

 

「あ、それならアタシ前にカナードから借りたの見たわ。 ちょっと待って、『告白』で『Gガンダム』って……、まさかっ…?!」

 

「……その通り」

 

 カナードの告白光景を察した鈴音は額に一筋の冷や汗をたらし、未だに訳が分からないでいる残りの三人に解説を始める。

 所謂『三大恥ずかしい告白』と言うもので、口にするのも模倣するのも大変恥ずかしい行為であることを鈴音は簡潔に説明する。

 

「――つまり、カナードと簪の二人がどちらも話したいことを提示して、簪がカナードに発言を譲った際に『簪、お前が好きだ! お前が欲しいぃ!!』と言ったのか?」

 

 ラウラが確認も兼ねて簪に問う。間違いないと簪は首を縦に振った。大体合っているようだ。

 

「まぁ、他には月面にでかでかと二人の名前を彫ったり、電波に乗せてご近所に聞こえるくらいの告白劇があるくらいだから、まだいい方なんじゃない?」

 

 ポンッと簪の方を軽くたたきながら鈴音はそう言った。

 

「それにしても、良くまぁ……」

 

「私もカナードは好き。 だから……だからこそ、告白してくれたことが嬉しくて…」

 

 俯きながら指先を突きながら鈴音に答える簪。

 この時点で、簪自身も相当カナードにお熱である事をセシリア達は気付いた。

 

 

 

 

 同時刻、生徒会室にてカナードは向かいに座る学園最強と謳われる生徒会長更識楯無と話をしていた。内容は今年度のキャノンボール・ファストについてだ。

 一体何なのか、カナードは出された紅茶を飲みながら話の内容に耳を傾ける。

 

「実は今年度のキャノンボール・ファストなんだけど、今回は特別措置としてISを扱う男子同士のタイマンレースが企画されてるの。 勿論まだ企画段階で、国家IS委員会(う え)からのご通達よ」

 

「……つまりは私と一夏のレースは見世物、って事ですか。 主義者達からの反対声明は出なかったのですか?」

 

 主義者と言うのは女尊男卑主義者の事を示し、ISがこの世に出てから急に増えだした女性たちの事である。もともとISが女性にしか反応しないそれだけで優位に立っていると錯覚しているのが特徴とも言える。正確に言えば、本来ならISを扱える人間が優位なだけなのだが、そうでもないただ普通の女性達が現代社会に政界にも多い。

 下らない思想の下で、今日まで何人の男性たちが食い物にされただろう。カナードはそう言った人種が嫌いだ。男がISを扱うのも気にくわないと言う連中もそうだ。ISと言う名の虎の威を借りる女狐と言い表した方が適切なのかもしれない。

 

「その点なら問題ないわ。 委員会っていうのは比較的公平な立場であって、主義者たちはいないのよ安心した?」

 

「なら良いのですが……」

 

「主義者たちが嫌いなのね」

 

「見栄を張る人間や虚栄心の多い人間が嫌いなだけです」

 

 言ってカナードは出された紅茶を飲む。

 

「所で覚えているかしら? 私があなたを初めて生徒会室(こ こ)に招いた日、あなたは三年の女子生徒達から喧嘩を買ったか売ったかとか?」

 

「あながち間違ってませんね。 昼食を採り終えた瞬間ですよ。 男なのにISを扱える上に専用機を持っている事が気に入らないとかで」

 

「その先輩方なら織斑先生の地獄的指導の後、反省文数十枚程書かされたらしいわ」

 

「気のせいか反省文の方がマシなのは気のせいでしょうか?」

 

 互いに冷や汗を垂れ流し、その光景を想像する楯無とカナードの顔が次第に青ざめてくる。彼女の恐ろしさを知らぬ者はこの学園には存在しないだろう。それこそ口にすれば出席簿が飛ぶ。

 話は戻ってキャノンボール・フィストについて。VIPとしてユーレンに出てもらいたいとの事。例のデュノア社の第三世代ISの共同開発の件で、ダヴィッドの代理としてVIPとして出て欲しいそうだ。

 

「そうですか。 分かりました、近い内に父から返事を受け取って参ります」

 

 カナードの返事に納得した楯無は彼を下がらせた。

 

 

 

 

「―――ってな訳だって。 父さんは出るの? デュノア社社長の代理で」

 

 部屋に戻って最初にしたことは父親に楯無の提案をそのまま伝えたカナードは、電話越しの父親の返答を待った。答えはもう分かり切っている。研究者と言うのはそれほど暇ではない。研究所の所長でもあり、今も生物遺伝子組換における詳細なメリットとデメリットについての論文を纏めている最中だろう。

 故に、この案件は断るだろうと茶を啜る。

 

『ダヴィッドの代理ねぇ……出るよ』

 

「ぶふぉっ! げほげほっ……!」

 

『汚いな。 前に言ったと思うんだよ、生物遺伝子の論文だけどもう終わってるんだよね、それで今徹夜明けで寝ようとしたトコ』

 

「お疲れのところ申し訳ありませんでした親父殿ぉっ!!」

 

 電話片手に日本古来から伝わる最上位の謝罪の姿勢、土下座しながら電話の向こうの相手にカナードは謝罪の言葉を投げた。

 

『あ、いや…謝れても父ちゃん困るよ? 大丈夫だよ段々目は冴えて来てるし』

 

「それ過労まっしぐらコース! じゃあ出るって事で良いね? お休みのところゴメンね! 直ぐにでも会長にも話すから!! もう切るから即座に寝てくださいよ親父殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 叫んで通話を切ったカナードは、そのまま携帯電話のアドレス帳にいつの間にか勝手に登録された楯無の番号に通話を掛けながらその足で生徒会室へと向かう。

 キャノンボール・ファストまで、あと数日。

 

 

 

 

 そして当日。晴天に恵まれた今年度キャノンボール・ファストのレースは三年、二年、一年と続き、いよいよある意味本日の目玉でもあるエキシビションマッチ。白式を纏う一夏と、I.W.S.P.を今回用にチューンアップしたストライカーを纏うカナード。二人が位置に付いた途端、黄色い声のブーイングと歓声が聞こえてきた。

 まさかこのような場所でヤジが飛ぶとは思わない一夏と、少なからず予想していたカナードの二人は気にする素振りを出来るだけ見せないようにした。したらしたで何かに負けた気がするからだ。

 レース開始のカウントダウンが始まる。ゼロになる瞬間を、二人の男は待ち望んでいた。その様子を選手控室では箒と簪、そして鈴音達が見守っていた。

 カウントがゼロになったその瞬間、二人は駆ける。

 スタートダッシュを制したのは一夏。しかし先にコーナーを制したのはカナードの方だ。

 スタートダッシュの一瞬に瞬時加速で差を付けた一夏だが、スラスターを使いコーナリングを制したカナードが首位に代わる。

 妨害ありのこのレース、先に相手のシールドエネルギーを無くすか自身がゴールするかで勝敗が決まる。

 

「……」

 

「くっ、……この!」

 

 最初の障害物。カナードは何も言わず針の穴に糸を通すような精密な動きを見せ、一夏は何度か障害物にぶつかりつつもカナードを追うようにしている。

 半周に差し掛かろうとした瞬間、上空からレーザーが降り注ぐ。勢いが殺せず、レーザーの合間をくぐり抜け減速して空を見る。サイレントゼフィルスが複数のビットを浮遊させて、上空で停滞していた。

 この時点で試合は中止、観客は総動員で避難しはじめ、VIP席の重役達も係員に従って退路を進んでいく。

 ストライカーをエールに換装したカナードは、サイレントゼフィルスに向けオープンチャネルで会話する。

 

「学園祭以来だなぁ……何が目的だ? つっても何も言わないなそうだろうな」

 

「解りきった事を…」

 

「あーららーららー…敵意剥き出し……」

 

 シールドエネルギーの残量を確認しながら、カナードは千冬にプライベートチャネルを掛けて指示を仰ぐ。帰って来る千冬の声はいたって冷静。別の場所で奪取されたアラクネーが出現し、二年と三年の生徒達が対処しており、現在箒達は出撃準備中だそうだ。

 チャネルを閉じ、相手の出方に気を付ける。慎重になるカナードに対し、一夏は雪片弐型を構え突撃。サイレントゼフィルスに切りかかる。しかし腕前の差は歴然。一夏の斬撃は掠りもせず、避けるだけで精一杯のようだ。シールドエネルギーの面も心配になって来たカナードはライトニングストライカーに換装し、一夏に指示を送る。

 

「一夏、奴から距離をとれ! シールドエネルギーの残量にも気を付けろ!!」

 

「分かった!」

 

 雪羅から放つ荷電粒子砲の出力を下げた威嚇射撃で距離を取り、カナードの近くに移動する一夏。そう簡単に行かせないとМが追うが、カナードのカノン砲がサイレントゼフィルスのビットを落としていき、その戦力を落としていき、距離を取らす。

 サブタンクからシールドエネルギーを受け取った一夏は改めて雪片を構え、カナードはストライカーをランチャーに換装する。その間に箒達も合流、その中にはストライクEを纏ったシャルロットの姿もある。ストライカーは間に合わせ程度にエールが装着されている。

 

「形勢逆転か? ビットを殆ど落とされた気分はどうだ!」

 

 アグニの銃口がサイレントゼフィルスに向けられる。が、Мはバイザーから露出した口を三日月の様にして不気味に笑う。

 何がおかしいと言うのだろう、Мは今も尚狂ったように笑い続ける。

 

「ハハハッ、あっははははははっ! 形勢逆転? ビットを殆ど落とされた? アイツといい貴様といい篠ノ之束といい、貴様は本当におかしなことを言う!! 馬鹿が! 貴様が落としたのは一割にも満たん……」

 

「な、ん………だと…?」

 

 遊ばれていた?いつから?

 Мと言う人間から放たれる威圧感(プレッシャー)が次第に増していく。強く、黒く、重くなって増していくのをカナードは感じ取った。学園祭襲撃時よりも強い。

 勇猛と呼ぶべきか、蛮勇とも呼ぶべきか、鈴音がМの態度が余程気に入らないのか、双天牙月を繋げ、突貫する。それに続くは一夏と箒、更にセシリアだ。

 

「…馬鹿、敵う訳が……!!」

 

「くっ、シャルロット、カナード、援護に回るぞ!」

 

「うん!」

 

「簪は山嵐でビットを落とせ! 俺もミサイルやアグニで落とす!!」

 

「うん…!」

 

 大量に展開されたサイレントゼフィルスのビット数はセシリアのそれより数は多く、一基一基の大きさはそれの半分以下。その分威力は少ないが、機動性や展開性に制圧性を鑑みればサイレントゼフィルスの方が優位なのかも知れない。

 現在のカナード達のフォーメーションは3-1-4。一夏、鈴音、箒の三人が切り、その背後でセシリアがМの動きを出来るだけ抑え、ビットの動きを残ったカナード達がレーザーやミサイル、荷電粒子砲などで落としていく。

 

 

 

 

 会場の外…それも目立たない場所で、楯無とスコールがそれぞれミステリアス・レイディにゴールデン・ドーンを展開しており、既にこの時数十合い以上も打ち合っていた。

 互いに一旦距離を置く。どちらも手練れのようで、疲労すら見せていない。

 

「元米軍所属スコール・ミューゼル…確か十年以上前に死亡認定されたはずよね? 何故生きてるの…って言うより、老けた感じがないわね、オバサン(・・・・)

 

「あら、私が軍人だって知ってるのね。 褒めてあげるわよ、お嬢ちゃん(・・・・・)

 

 再び撃ち合う青と金の軌跡は、激しい衝突を見せた。

 楯無がスコールと初めて邂逅したのは観客席で隣同士。話していて気が合ったが、互いに名前を確認した時、互いが敵であることが判明。Мとオータムの襲撃時にスコールは避難している人の山に紛れ逃走。楯無はやっとの事でここに追い詰めることが出来たのだ。

 楯無は蛇腹剣構え、少し前まで気が合ったスコールに目的を問う。が、そう簡単にスコールは答えない。むしろ敵に情報をべらべら話すほどスコールも阿呆ではない。

 また十数合いほど打ち合って、スコールがプライベートチャネルで連絡を取り合っていた。撤退か?そう思った楯無はミストルティンの槍を呼び出し、矛先に相手を捉えて突撃を繰り出し、スコールの左腕を飛ばした。

 

「…そ、そんな…!」

 

 その断面を見た楯無は驚愕する。飛ばされたスコールの左腕の断面からパイプやチューブの様な物が数本覗いていた。

 

「驚かせちゃったかなぁ、お嬢ちゃん?」

 

 暗部の一員である楯無は何度か生身の人間の肉片や断面を見る事は何度かあった。しかし、今回の様な事は今日までの17年間では初めての事だった。次第に冷静になり、落ち着いた楯無は再度突撃を繰り出すが、紙一重に避けられ逃げられてしまった。

 同じように、会場の方からもISが二機離脱したのが確認できた。

 

「ま、ISがあるくらいだから……改造人間もどきが出てもおかしくないわね」

 

 愛機を待機状態にし、誰に言うでもなく呟いた楯無は会場の方へと向かう。実の妹と、未来の弟になるであろう二人の身を案じていた。

 

 

 

続く




京都旅行よりも早く会長とスコールがやり合っちゃいましたすいません

9巻出たらしいですが、カナードの原作知識は8巻とアニメ一期二期だけです。なので、8巻部分から先は完全オリジナルとなります

専用機トーナメントとキャノンボール・ファストの順を逆にしてしまいましたが、OVAの方でも逆なパターンでしたので気が付いたらこうなっておりました

まだまだ至らない大馬鹿野郎な私ですが、これからも応援よろしくお願いいたします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。