インフィニット・ストラトス 転生者はSTRIKE   作:バルバトスルプスレクス

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十四話です。
 サブタイは真実を意味します。
  何の真実が何処で明らかになるのかは、お楽しみに


十四話 TRUTH

 

「父さん、今なんつった?」

 

 十月にもなりだいぶ冷え込んできたある日の事。大和カナードは父親からの電話の内容にそう返した。

 今日は休みでこれから簪の実家に挨拶に行く日で、待ち合わせ場所に一時間近く早く来た所ユーレンからカナードの携帯に連絡が掛かったのだ。

 

『もう一度いうけどさ、窓木と織斑千冬女史の見合いの席を設けようと思うんだけどどうかなと』

 

「……何で…また?」

 

『いやアイツも義理とは言え一児の父だぞ? そろそろ所帯をだね、持たせようと所長である私の考えで』

 

「…それは俺じゃなくて織斑先生か一夏に言ってくれないかな。 じゃあ俺は俺で用事があるので失礼しますぞ親父殿」

 

 言って通話を切ってバイブ機能を停止したマナーモードに設定し懐にしまう。それから間もなく簪と合流し、そのまま簪と共に彼女の実家へと向かう。

 二人が待ち合わせたのは簪の実家近くにあるモノレール駅の待合室。そこから駅を出てバスに乗り一時間も掛からないバス停で降り、更にそこから歩いて10分程経って更式家に到着する。都会のコンクリートジャングルの中でもその存在が良く解る日本屋敷がそこにあった。

 裏では対暗部用暗部組織であり、その表面上では『更識流武術道場家元』として通しているようでその看板もある。木製でとても味のある良い雰囲気の看板だ。その看板が掲げられている門を潜り、案内されてある部屋にカナードと簪は到着する。簪の方も入学してから一度も帰ってきていないらしく、実家にいるのに借りてきた猫のようだ。

 それもそのはず、目の前で腕組みながら正座でこちらを見る厳つい男、楯無と簪の父親は白髪交じりの蒼髪に左目の眼帯。カナードの印象からして、髪を蒼くしたキング・ブラッドレイである。違う意味で戦々恐々のカナードは、両手を膝の前について挨拶する。

 

「本日はこの様な若輩者の為にお時間を割いていただき、ありがとうございます。 私、大和生物機械技術研究所の大和カナードです。 簪さんとは同じ学年でクラスは違いますが、現在清いお付き合いをさせていただいております。 今日はそのご挨拶に参りました」

 

 深々と頭を下げたカナードに、簪の父は口を開く。

 

「ほぅ、今時の若者にしては礼儀はなっとるな。 私は更識刀眞(とうま)…16代目の元・楯無だ」

 

 口を動かす度に見事に整えられた見事な口髭が揺れる。反応からして良好と言っても過言ではない。

 それから刀眞は簪を下がらせ、遠ざかったのを確認するといきなりカナードの両手を取って一心不乱にしゃべりだした。

 

「大和君と言ったね、簪を好きでいてくれてありがとう。 あやつは刀奈の存在がコンプレックスで周囲からよく比べられいて……さぞかし心を痛めただろうな。 誰も彼も簪は楯無の妹とだけ見られていたが、君は……君だけは簪を一人の人間として、一人の女性として選んでくれた。 いまその事に私は猛烈に感動している! これからも、これからもずっとあいつを愛してくれるか?」

 

 突然の刀眞の行動ではあったが、やはり彼も簪の心の傷を気付いていた。気付いていたのだが、不器用なのかどうすればいいのか分からなかったようだ。

 

「無論です。 私は簪さんとはこれからも互いに支え合うつもりです」

 

「成程、ユーレン教授の言う通り出来た息子だ。 いや君のお父上とはつい先日初めてお会いしてな、彼の口から君の事を聞いた。 君になら、簪は任せられそうだ」

 

「恐縮です、簪さんのお父さん」

 

 そこから二人の話題は現当主楯無(刀 奈)に変わる。

 

「更識生徒会長の学園最強の名は伊達ではありませんでした。 本の数回ほどですが、お恥ずかしい所私は一度も勝てませんでした」

 

「うむ、刀奈は幼い頃より簪と共に武術を叩きこんでおる。 何より優秀な師範代の功績だ。 それに今日は道場のほうにおる」

 

 会ってみるかと刀眞の申し出を受けるカナードは簪と合流し本音案内の元、道場へと向かう。

 更識家はカナードの好みの昔ながらの日本家屋の造りで、築百年かそれ以上と思われる。道場も同じだ。趣があって良い。中からカナードより年下の子供の掛け声が聞こえてくる。確か今日は小学生の体験日だと刀眞が言った。

 その道場の戸を開けると、体験中の小学生たちにそれ程難しくなさそうな『型』を披露して指導する袴姿の初老の男性がいた。

 その男はカナードと同じくらいの長い白髪を三つ編みにして一纏めにしており、額の方にも髪がアンテナの様に自己主張している。鼻の下には髪と同じ色の端がカールされている口髭。そして目は刀眞とは違ってギラリと開いていた。雰囲気からして『機動武闘伝Gガンダム』の『東方不敗マスター・アジア』と『鋼の錬金術師』の『アームストロング少佐』を足して2で割った感じだ。恰幅の良い筋肉質のこの男は体験者の子供達に向けて挨拶を促した。

 

「諸君、こちらの御仁がこの道場の家本であります。 さぁ諸君挨拶を!」

 

『よろしくおねがいします!』

 

 元気が良い子供達に機嫌を良くした刀眞も挨拶を返し、本来の目的を果たす。

 

「師範よ、今は大丈夫かね?」

 

「申し訳ありませんが、今はまだ体験者の子供達の指導を始めたばかりですぐには…」

 

 申し訳なさ気に師範代はそう言った。刀眞もこのあと外せない用事があるようで、予定が合いそうにない。仕方ない、と刀眞が言ってカナードには帰るように促した。因みに簪もこの後家の用事で席が外せないそうだ。

 道場から入り口の門までを簪と一緒に向かうカナード。そして更識邸を後にすると、今度は駅の方へと戻っていく。

 

 

 

 

 更識家から実家に帰宅したカナードは、所内に作られたテストルームにストライクを纏って立っていた。背面には先程完成した新型ストライカー・ガンバレルストライカーが装着されており、正面にはダミーバルーンが空中を漂っていた。

 テストが開始される。ストライカーから×の字に固定されていたポッドが本体から離れて変形すると、有線式のビットとなった。これがガンバレルの所以銃身(Gun Barrel)である。

 カナードの砲撃のイメージがイメージインターフェースを通じて有線ビットに指示を出し、的を続けて射抜いて行く。

 

『一次テスト終了。 続いて二次テストを開始する。 シャルロット、スタンバイ』

 

 別室での職員の声がスピーカーから通され、二次テストに移行された。

 カナードの目の前の扉から、ISを展開しているシャルロットが現れる。装備はカナードお気に入りのI.W.S.P.で、両手にはその太刀が握られている。対するカナードはガンバレルストライカー以外の武装はライフルとシールドのみではあるが、怯む様子は見られない。

 スピーカーから開始の合図が飛んだ。その瞬間、ガンバレルストライカーの有線ポッドが射出され、四方からシャルロットを囲む。迎え撃つシャルロットはレールカノンでポッドを撃ち落とそうとするが、カナードのライフル射撃で狙いが付けづらく破壊する事はままならない上に、ポッドから吐き出されたレーザーに撃たれてしまった。

 

「…セシリアのブルー・ティアーズの様にはいかねぇが、上手くいったかな」

 

「んー、精度は向こうが高いけど……すごいねカナード。 有線でもBT兵器を作るなんて」

 

「理論はブルーブースターやユニバースブースターのデータを使用して、それを主としてイメージインターフェースを通して追加指示ってやつだ。 なぁに、向こうが何言おうが俺は流す。 技術協力? んなもん知らん日本政府通せ…って感じだ」

 

「喧嘩はダメだよ?」

 

 おしゃべりも程々にして次の作業に移るべく、二人は愛機を待機状態にして別室に移動する。戦闘データの採集などだ。どの時点でどう変わったのかを調べ、異常が出ればすぐにプログラムの修正を行い、なければ今度はシャルロットが機動テストを行うだけだ。

 因みにこの日篝が来ていた。ガンバレルストライカーに使われている自社部品の異常確認等の視察だ。良く仕事する社長さんだとカナードは評価している。贔屓目ではなく純粋な気持ちでだ。我ながら良い従妹だと思ったカナードは到着した自分のラボのパソコンを起動、キィを高速で叩く。画面では何かが構成されていき、一つの鎧となった。

 

「(…ISのコアをガンダムOOのGNドライブだと仮定して、コアを二基搭載して……制御は通常通りできるのか? それよりも一次移行すらままならない状態だったら……起動実験を使用にもそれに回す余分なコアが無い)…コアの数が増えればいいんだがなぁ……無いものねだりはやめるかこれは取り敢えず保留保留。 あーとーはー、ストライクなんだよなぁ、問題は」

 

 今まで表示していたデータを閉じ、別のデータを表示する。

 

「(問題はとうとうストライクの反応速度が鈍くなり始めた事だ。 つっても、俺が進化してるのかどうかは知らんが……まぁこの際理由は何でもいいか)取り敢えずは…この自由(フリーダム)を完成させなけりゃなんねぇな」

 

 先月頃から…いや、もっと言えばキャノンボールフィストあたりから微かに違和感は感じられた。千分の一秒ほどではあるが若干のタイムロス。二度に渡る対М戦の敗北をそのせいにしたかったカナードは、黙々と作業を続ける。

 しかし、あと少しの所で行き詰ってしまった。マルチロックオンシステムだ。それは簪の打鉄弐式に使われている代物で、『山嵐』の肝である。複数の機体の照準を同時に行うそのシステムはカナードにとって作れないことは無い…のだが、何故だか指が進まない。理由は解らないが、何故だか進まない。行き詰ったままではまともな代物は出来上がらない事を知っているカナードは、これまでの作業工程を保存し、ラボを離れた。

 

 

 

 

 数日後のIS学園。放課後のアリーナでは、ガンバレルストライカーを装備したカナードは、BT兵器では先輩にあたるセシリアと模擬戦に励んでいた。カナードの場合はイメージインターフェースを用いた有線式誤差修正機能付き自動追尾砲撃型、セシリアの場合は完全イメージインターフェースで四基を無線で自由自在に操る。

 自動(オート)手動(マニュアル)でそれぞれ四基のビットを操る二人は、常に相手を意識し分身たちに指示を送る。

 その様子を少し離れた方でシャルロットがタブレット端末を持ってガンバレルストライカーの調子を調べていた。指示伝達速度や駆動系統で異常がないかの確認で、インカムを通してオープンチャネルでカナードに随時連絡する。受けたカナードは「ああ」と「了解」の二通りだけである。

 模擬戦終了後、ISを待機状態にしたカナードはセシリアから感想を聞き出した。

 

「取り敢えずどうだったセシリア。 感想を聞きたい」

 

「そうですわね……カナードさんのガンバレルは自動追尾型であってますわね?」

 

「ああ。 つかむしろ完全手動程の技術は英国(そっち)の方がお得意だろうが」

 

「ですわね。 で、感想なのですが…一度に四基を操る事に慣れていらっしゃらないようなのでまずは二基で制御してみてはいかがでしょうか?」

 

「成程な、参考になったよありがとうさんお疲れ様」

 

「はい、お疲れ様ですカナードさん」

 

 模擬戦相手に感謝とねぎらいの言葉を掛け、カナードは更衣室で着替えを済ませ、観客席のシャルロットにデータの確認を取り、その後は自室へと向かう。道中で簪と合流、そのままカナードは彼女を部屋へ招き入れる……のだが、部屋の主がドアノブに手を掛けたその瞬間に脳内が一瞬に閃いた。

 出る前までは鍵を閉めた筈が不思議と開錠されており、蝶番に仕込んでいたシャープペンの芯が折れた状態で足元に落ちていた。明らかに怪しい。そこでカナードは簪に口元に人差指を当て、懐から携帯電話を取り出してある人物の番号を表示してからドアを開く。

 

「お・か・え・り。 何にしま…え、あれ、簪…ちゃん?」

 

「あ、織斑先生ですか? はい大和ですお疲れ様です。 お忙しいところ申し訳ありませんが、私の部屋に不審者が侵入しておりまして、しかもそれが生徒会長なので……ええ、はい…分かりました拘束しておきます」

 

 部屋の中にいたのは水着エプロン姿の更識楯無。楯無は何の用かカナードの部屋に侵入した上に変わった行動をして、今はカナードに通報され実の妹からは冷たい視線を浴びていた。

 数分もしない内に千冬が現れ、楯無をアイアンクローした上にそのまま引きずっていく。その姿をハンカチを振って送り出したカナードは、無言で簪を部屋に招き入れ先程の異常事態をなかったことにした。

 他愛ない会話の内容は特撮ヒーロー談義から、現在カナードが開発している物に変わる。

 

「ツインコア?」

 

「そ、ISのコアを二基搭載し、常にコア同士をプライベートチャネルで繋げて通常搭載型の二乗分の性能……ってところだけど、余分にコアが手元にないから今設計図止まり。 まぁ、もしツインコアシステムが出たら位置付けはそうさなぁ……第五世代ってところかな」

 

「何かダブルオーみたい」

 

「あ、わかるか? もちイメージそれよ、何年先何十年先…もしくは何百年先になるかもしれないけどね」

 

 笑いながら言うカナードはいたずら小僧の様な表情をしていた。

 

 

 

 

 所変わって束が潜伏している移動型ラボ『吾輩は猫である(名前はまだない)』では、主の束がキィを高速でたたきながら嬉々とした表情でモニタに映るある物を見ていた。

 両肩のバインダーらしき部位にはISのコアを内包しているようになっていた。それはカナードの設計した仮第五世代型である『ダブルオー』の設計図で、束はそれを嬉々とした表情で眺めていた。自分が考えもしなかったコアの使用法をいとも容易く考え付く少年『大和カナード』を束はますます気に入っていた。更に彼のデータに深く深く侵入すると、仮第六世代とも言うべきISの設計図が束の目に入った。

 

「これはこれは……」

 

「何かいいものでも見つかりましたか、束様」

 

 好奇心に駆られている束にそう言って声を掛けたのはクロエ・クロニクル。束の右腕的存在である意味なくてはならない存在でもある。尋ねられた束は気を良くして子供の様にはしゃぐ。

 

「束さんね、見付けたんだよ! 束さんの理想を実現してくれる子にさ!!」

 

「そうですか」

 

 子供の様にはしゃぐ束とは違い、クロエは大人の様な振る舞い且つ無表情で返した。

 まるで正反対な二人ではあるが、二人は互いを信頼している仲で束はクロエに『ママ』と呼ばせている様にしてはいるが当の本人は頑なに様付で束を呼んでいた。

 

「んもー、束さんの事はママって呼んでって言ってるのにー」

 

 笑いながら言った束の目はモニタから離れていない。今は設計図を脳内にコピー中で目が離せないでいた。実に興味深く、すぐにでも取り掛かるつもりだ。と言うよりも別のモニタに既に我流でツインコア搭載型第五世代の設計図を書き表していた。中盤頃にカナードに向けてこの旨の連絡を入れていた。

 

 

 

 

 同時刻、寮の自室でコーヒー豆を砕きながら束からの通信を受けているカナードは一瞬思考が停止しつつも、束の話を聞いていた。いきなりストライクにプライベートチャネルで通信を入れて何事かと思えば、『ダブルオー』の建造を任せて欲しいと言いだしたのだ、驚かないのも無理な話だ。

 コアが製造できるのは現存開発者の束のみで、その彼女が作り上げようと言うのだ。

 

「…とてもありがたい話ではありますが……世間はどう思うでしょうか。 コアが増えたという事実で新たな火種になりますよ…それこそ第三次世界大戦の開戦も有り得なくはありません。 ただでさえ主義者たちは…!」

 

『そんなことならのーぷろぶれむ! IS学園(そ こ)に送り付けるから問題はないよ。 各国の政府(分からず屋)の連中にはてきとーに脅したりするから問題ないよ』

 

 言って彼女はそこで通信を切った。一方的にだ。

 

「……何やってたんだよ俺は………戦火の火種が彼女であることを忘れちゃ駄目だろうになぁ…アンチが多い訳だこりゃ」

 

 独り言ちるカナード。彼の今の心境は、ダブルオーの建造に対しての『期待』と、それが新たな火種になり兼ねない事の『不安』で一杯だった。改めてとんでもない人物に気に入られてしまったと、手を組んでしまったと、知り合ってしまったとカナードは背筋が一瞬凍ったかの様に感じた。

 気が付けば待機状態のストライクに手をやってしまう。正直な話不安しかない。むしろそれ以外何と言い表せばいいのだろう、今のカナードにはそんな感情しかないのだ。気を紛らわせるように砕いたコーヒー豆をドリップしてマイカップに注ぎ、昨夜行っていたフリーダムの設計を再開していた。キィを叩くスピードはいつも以上に速く強くたたき、ランチャーの火力、ソードの剣技、エールの高機動を継承させていく。パーフェクトを簡略化したI.W.S.P.。それを更に簡略化したノワールストライカー。そしてそれを更に進化させ、機体と一体化したのがこのフリーダムなのだ。

 このカナードの姿を傍から見れば戦争の道具を作る科学者に見えかねないが、あくまでカナードがやっているのは、戦争の道具になりかかっているISを本来のあるべき姿に戻す事で、今はそれに向けた技術向上でしかないのだから。戦争をする気等毛頭ないカナードは一旦作業を終了させると、重い足取りで食堂へと向かう。その道中、カナードは箒と一夏の二人とばったり出くわした。

 

「よぉご両人……俺はとんでもねー天災科学者(マッドサイエンティスト)と手ぇ組んじまってたようだ」

 

「それは今更だぞカナード。 あの姉さんに気に入られたんだ、少しは腹を括ればいいものを……」

 

「俺らに科学者の苦労話が理解できるわけないだろカナード」

 

「のやろ……。 所で二人はダンガンロンパ知ってるか? 原作がゲームのアレ」

 

「あぁ、アニメも見たぞ。 特に霧切というキャラは気に入ったな」

 

「俺も見たけど…苗木とモノクマの声優さん初めて聞いたな……なぁカナード、その二人って新じ…」

 

「だまらっしゃいワンサマーが!!」

 

 カナードのエルボーが一夏の脇腹を捉えた。効果は抜群だ。

 

「てめーには旧ドラえもん映画シリーズとエヴァンゲリオンシリーズの映像ディスク貸すからみっちり見とけ、緒方さんと大山さん馬鹿にすんな!!」

 

「これは一夏が悪いな。 ネットの方でもお前と同じ過ちをした者もいる。 半端な知識をむやみやたらと口にしない方がいいぞ、一夏」

 

「なんとなくだが俺が悪いのは良く解るぜ」

 

 珍しく勘が冴えていた一夏は自分の非を一応認め、エルボーされた脇腹を摩る。

 

 

 

 

 翌日。

 アリーナではカナードが頭を抱え、千冬はいつも以上に不機嫌になり、その他の専用機所持者たちの表情はこわばっていた。彼ら彼女らの前には――

 

「あるぇー? 何で皆変な顔してるのかなー?」

 

 ――カナード設計束開発の新規コア二基搭載型第五世代新型IS『ダブルオー』と、現状をよく理解できていない稀代の天災科学者(マッドサイエンティスト)の篠ノ之束が立っていた。

 突然現れていきなり第五世代を引っ提げてきたのだから、驚きを隠せることはできない。

 

「………あの、設計した私自身が言うのもナンですが、規格外にも程がありますよね、つい昨日ですよね私の所から設計図を閲覧していたのは。 だとしても早すぎやしませんか? 今更貴女にどうこう言う筋合いが無いのは分かってます分かってますけどもぉ…! 流石に限度と言うモノがありますでしょうが!! じゃああれですか、その気になればゲッターでもアクエリオンでもデスザウラーでもエネルガーでもグレンダイザーでもファフナーやその他のスーパーロボットもISにする気ですか貴女は?! ですが私は絶対に設計しませんよ、この腐った世界のバランスを更にぶっ壊してとんでもないことになるのは薄々気づいていますし、何気に亡国機業の連中が目ェ付けそうなのは予想してますが、今この瞬間にその様な連中が襲撃にでも来てしまったら貴女は一体どうするおつもりなんですか? っていうかそもそも私自身言えた事じゃないって事は重々理解してますけどもぉぉぉぉぉ!!」

 

「やばい、カナードが壊れた」

 

 ポツリと一夏が言うが、束はそんなの気にしない風で続けた。

 現在ダブルオーはまっさらな状態ではあるが、正式な搭乗者は決めていないそうだ。亡国機業に関してだが、未だにこの事については掴んでいないらしく、今も尚束製特殊AIがISのコアネットワークを監視しているそうだ。

 

「んでんで、このダブルオーなんだけどねー、並の人間じゃ扱えないらしいんだ。 コアを二つも使ってるんだから後は分かるよねー」

 

「二基のコアの情報量に人間の容量(キャパシティ)を超えてしまうと言う事なのか?」

 

「まぁそんなもんだよラウラ。 設計した俺と開発した束さんが言うんだ、間違いはない。 それに、ダブルオーの真価は戦闘じゃなく、()()。 その為だけの機体なんだ」

 

 コーン状の隔壁の中にあるISのコアは常にプライベートチャネルで繋がっており、それら二基のコアの共振状態によって、特定範囲内のIS複数機のコアネットワークに侵入し、強制的にプライベートチャネルを開始する。それがダブルオーの特性だ。その為、武装は必要最低限のレーザーダガーを二基のみ搭載している。

 その説明がカナードの口から発せられた。それがカナードの見付けたISの戦い以外の使い道であると確信した一夏達は改めて彼の腕を再認識していた。

 

「で、ですがカナードさん、一体何故ダブルオーの建造を企画したのですか?」

 

 セシリアの質問。

 

「ま、ぶっちゃけ女尊男卑主義者の連中に対する対抗策さ。 手前の認識を押し付ける奴にゃ効果的だ」

 

 今度は鈴音から質問が飛んだ。

 

「だったら、そもそも何でアンタはそんなに主義者が嫌いなわけ? あんな連中気にしなきゃいいのに」

 

「気にしちまうんだよ、虎の威を借る狐が嫌いなんだ。 おかげで今日までどれ程の男たちが冤罪などで苦しんだことか……。 あとは、兵器転用する連中の多くも嫌いなんだよ。 気にすんなってのも無理な相談だ」

 

 質問終わり、とカナードが手を叩いて再びダブルオーに視線を向けた。青を基調にした装甲が太陽光を反射してその存在を主張する。

 千冬以外の誰もがその存在を眩しげに見ていたが、彼女だけはある種の殺気を感じ取った。

 刹那、アリーナ上空から小径の砲弾の雨が降り注いだ。砲弾はダブルオーとカナード達に当たらない様に放たれていた。降り立ったのは、金色に輝く装甲のゴールデン・ドーンとスーツ姿の壮年の男性だ。彼は紳士的な佇まいを漂わせながらカナード達に近づいてくる。その男の姿を見て、千冬は苦い表情をしながらカナード達を守る盾のように立ちふさがった。

 

「素晴らしい……二基のコア搭載型を設計する少年と、それを形にする天才科学者。 良い人材だ、スカウトさせてくれないか千冬」

 

「今更私たち姉弟(きょうだい)の前に出たと思えば……」

 

「父親に向かってその態度。 いい大人がみっともない」

 

 父親と言ったその男は、千冬から一夏に視線を向きかえて表情をにこやかにした。

 

「一夏、お前はまだ小さかったら覚えていないだろうが、久しぶりだな我が息子よ。 お前と千冬の父、春十だ。 今は亡国機業の最高経営責任者をしている」

 

 その男、春十の口から亡国機業の名が出た瞬間、誰もが驚愕していた。勿論カナードもだ。彼の原作知識によると、テレビアニメ一期二期、原作八巻には存在は匂わせていても本人そのものは登場しなかった。しかし、カナードが今存在する現実には目の前に一夏の父は存在していた。

 春十の後ろで待機していたゴールデン・ドーンは展開を解いていた。派手なドレスに身を包んだ美女…スコールは澄まし顔でその場に留まっていた。

 

「俺の……父親…?」

 

 一夏が呟いた。物心ついた頃から無かった父との記憶。今ハッキリと父の顔を見ることが出来た彼は、少しの間放心状態に入ってしまった。いち早くそれに気が付いた千冬とカナード、箒の三人が一夏を囲む。

 

「まぁそう気を荒げないでくれよ。 父と娘そして息子が揃ったんだ、白式のコアの秘密を明らかにしようか」

 

 次に春十が語ったのは、白騎士事件以前に起きた事だった。

 まだ幼かった一夏と千冬を残し、織斑春十と秋百の夫妻は新たな命を宿したまま束と共にコアの開発に着手し始めた。

 当時の束はまだコアを一人で生成する事は出来ず、夫妻と共に開発に携わっていた。そうして出来上がったコア一号の完成時には既に新たな命が誕生していた。

 そして、コア一号の稼働実験の時、悲劇は起きた。

 テストパイロットとして秋百が試作型IS零号の稼働実験を行った瞬間、その場にいた春十達を残して秋百は消失したのだった。秋百の身体はどう言う訳か量子化されコアに吸収されてしまったのだ。拡張領域内を見ても量子化された秋百は発見できなかった。

 そしてそれが、奇しくもISのコアの誕生の瞬間だったのだ。

 

「その後に起きた白騎士事件…あの白騎士のコアは秋百を量子化吸収した物が使われたんだよ。 そして、その白騎士のコアは今は――」

 

「――一夏の白式に使われている…だから一夏はISを扱える……だなんて言う御積もりですか?」

 

「ん? その口ぶりだと、君は白騎士と白式のコアは同一であることに気が付いているね」

 

「”白式《びゃくしき》”を”白式《しろしき》”と読み替えると、アナグラムで”白騎士《しろきし》”になりますからね」

 

 春十とカナードが睨みあう。

 何とも言えぬこの状況下、一夏は春十の言葉に混乱していた。自分を産んだ母はコアに取り込まれ、そのコアは白騎士に使われて今は白式にそのコアが使われていると言われたのだから、直ぐに納得できる筈がなかった。

 そして今まで明かされなかった秘密。何故男の自分がISを扱えたのか。愛越学園の受験会場を間違えたあの日、あれは恐らく束が用意した切っ掛け…引き金にすぎなかったとしたら……。

 

「じ、じゃあ…俺が……俺が白式を…ISを動かせたのは……」

 

 非現実的なその答えに、いつも飄々としていた束の表情も曇り切っていた。

 様々な真実が明らかになったこの時を、この瞬間を、この日を一体誰が予測したのだろう。

 ただ一つ、明らかになったのは……一夏がISを動かせたのは、秋百の加護だと言う事だけだった。

 

 

 

続く




と言う事で何故一夏がISを動かせるのかを自分なりに考えた結果、エヴァ的になっちゃいました。

でもこれの方が妙にすっきりするんですよね。

両親が姿をくらました辻褄が合うだろうとの結果です。

最後になりますが、皆様の感想が自分の原動力になります。ご感想、お待ちしています。
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