インフィニット・ストラトス 転生者はSTRIKE   作:バルバトスルプスレクス

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夏休み編二話です。

前回の後書きにありましたクイズ的な何かですが、予想以上に回答してくれる方がいなかったのが凄い残念です(笑)

それでは、答え合わせも兼ねて七話の始まりです


七話 遊びと決意

 

 レゾナンスの一角のコーヒーチェーン店。一夏はその一席でブラックコーヒーを飲んでいた。彼は人を……カナードを待っていた。男二人で何処か遊びに出かけようとの事だったのだが、提案した言い出しっぺがまだ来ていなかった。まぁたまにはこういうのも良いかと、カップの中の黒い液体を胃に流し込んだ。

 そろそろ来る頃か。そう思い店の入り口の方へ顔を向けると、以前まで同室だった同門の姿が見えた。私服姿の箒だ。彼女も一夏に気が付いたようで、互いに手を振る。最近二人で出掛ける事も多い訳で、お互いに気恥ずかしがらずに隣同士に座り合う。

 聞けば箒は簪にどこか遊びに行かないかと誘われ、待ち合わせにこのコーヒーチェーン店を指定されたと言う。自分も同じだと答える一夏。

 

「もしかすると一夏、これは……」

 

「ああ箒、もしかしなくてもこれは……」

 

「はぁい首謀者とーじょー! いぇーい!」

 

「…いぇーい」

 

 言いながら後ろを見ると、そこには奇妙なポーズでハイタッチするカナードと簪の姿があった。

 この二人も合流し、首謀者は詳細を語る。

 

「何が目的かってお二人さん、ダブルデートって奴ですよ」

 

「…まだ二人きりは……慣れてないから」

 

「俺は今衝撃的な事実を聞いた気がするぞ」

 

「一夏、恐らくそれは気のせいだ。 気のせいであってほしい」

 

 短めのコーヒーブレイクを終えた一行は店を出てこれからどこへ行くかを相談する。カナードはゲームセンター、簪はアニメショップ、一夏は博物館、箒は植物館をチョイスする。

 この時期のゲームセンターは人の熱気で充満する恐れアリとの事で除外。植物園は高校生らしくないとの事で除外。博物館は今日は休館。結果行先はアニメショップに決定した。一番近い場所でモノレール一駅隣だと言う事が分かり、カナード達は早速モノレールに乗り込んでいく。

 流石夏休み。モノレールの乗客の一部にIS学園で見知った顔も少なくない。それ以外に、茶髪のロン毛の男女がカナードの隣に連なって座る。その二人をカナードは知っている。一夏の中学時代の友人の五反田弾と妹の蘭だ。彼らも一夏も互いに存在に気づき、挨拶を交わしていた。

 

「お、一夏」

 

「おー、弾」

 

 数日振りと会話するこの二人は互いの近況報告を交わす。夏休みに入る前に何度か会っているのだが、ほぼ女子高で過ごしている一夏にとって、学園の外の男子がある意味ストレスの解消だと思われる。しかし勘違いしてはいけない、一夏は同性愛者ではなく……同性の同級生がカナードを除いて少ないせいで精神が某ビダンになりかけているだけだ。

 互いにそれぞれ連れを紹介する。弾は妹の蘭を、一夏は箒と簪そしてカナードを紹介した。その際周囲に迷惑を掛けないように。

 

「ところで弾と蘭はどこに行くんだ? 俺たちは次の駅で降りるんだが」

 

「俺たちも同じだ……何か最近蘭の奴が『京アニ』てぇの? 何かそう言うのにはまってさー」

 

「『京アニ』つったらまず有名なのは『けいおん!』辺りだな。 でも蘭ちゃんで『京アニ』だと『Free!』じゃないかな」

 

「最近じゃあ『日常』も有名(メジャー)だよな」

 

「『氷菓』もオススメだな」

 

「…どれも捨てがたい」

 

「………IS学園って、オタ多いの?」

 

 五反田兄弟の二人は、いつの間にか変わってしまった一夏に唖然としていた。

 そんなこんなで目的の駅に到着した事を彼らは確認し、モノレールを降りると、突然カナードの調子(コンディション)がフルスロットル。いつもの口撃にも磨きがかかっていた。

 

「っと着いたぜヒャッハー! おい、見ろよ見てみろよ小さいマスコット人形ちゃんがお出迎えてくれてんぞ、こうしちゃおれん早速記念写真………と言いたい所だが、ぅわっほーこいつぁスゲー今はもう絶版されてる漫画だぜ! あぁでも値段が高い手が出せねぇ仕方ねぇ諦める……って、おいおいおいおい『デジモンネクスト』全巻と『デジモンツイン』のツーバージョンが同梱だと?! っべー、非常に買いだ買いだよ買いだよね買うしかねぇな。 三幻神とホルアクティセットに三幻魔とアーミタイルのセットかぁ……これも駄目だ手が出せねぇ、特にホルアクティ………。 おっと、こいつは64ソフトの初代スマブラじゃねぇか! 欲しかったんだよなぁ…買えなかったんだよなぁ……ついでにあれとこれとそれと……ついでにこれとこれっと。 お、やっと見つけた『スパークレンス』だゲットだぜ! 後は研究所の皆のお土産にっと名物茶菓子買わないとな、なぁにがいぃかにゃー」

 

 この行動振りにア然とする一夏達。弾と蘭もア然としていたが、目的地がカナード達とは正反対の場所なのでここで別れる事に。

 そのカナード達は目的地に着くと、カナード&簪組と一夏&箒組に分かれる。別れて速攻カナードと簪は限定品の購入に急いで自分の用を済ませると、今度は一夏と箒組の尾行に入った。これが二人の本当の目的だった。他人の恋愛事情は蜜の味だと静子が言っていた。正しくは他人の"不幸"は蜜の味であるが、今の二人にはそんなもの関係ない御様子。

 目の前の二人の尾行を続けつつ、小声で会話を始めるカナードと簪。最初の話題はシャルロットについてだった。切り出したのは簪で、カナードは意外そうに簪の話を聞いた。

 

「…シャルロットは、結局どっちを選んだ……の?」

 

「本人は研究所に移る方針だ。 後はあいつの親父さんと話付ければ正式にって所だ。 父さんや母さんがシャルロットを養女として迎えるとか何とか言ってたからそうなると、シャルロットは俺の義理の妹か姉になる……な」

 

 尚も視線を一夏と箒から離さずに、質問に答えたカナード。それが最善の方法なのだろうかと質問した方の簪は一人納得する。そうなると、今の彼女の愛機であるラファール・リバイブ・カスタムはデュノア社の所有物なワケで返却しなければならない。それと同様に、シャルロットもフランスの代表候補から外れるのかもしれない。

 尾行している二人の事などお構いなしの一夏と箒の二人は第三者から見ても充分恋仲に見えていた。実際そうなのだが。

 尾行していく中、カードショップに入った二人は野良プレイヤーからタッグマッチを挑まれるも、抜群のコンビネーションで返り討ちにした。去り際に野良プレイヤーが 「光子皇竜と六武衆コワイ」 等と言っていたがカナード達には聞こえない。そのカードショップの次は隣の古本屋に行ったり、スイーツワゴンの隠れた人気スイーツを食べていたり、時間が経ってもカナードと簪の尾行に気付く素振りは見せていない。

 

「成る程な、ミックスベリーなんぞ存在しねぇと思ったら、苺とブルーベリーね(つーか、あのワゴン原作で確か、シャルロットとラウラが……まぁ良いか)」

 

「…だから、ミックスベリー?」

 

「ベリーメロンじゃないだけまだ良いよな。 つか金色懐かしいなぁ……最終回見逃したけど」

 

 原作の記憶を思い出しつつ、イレギュラーによる影響かと一人納得しつつカナードは言った。簪もそのミックスベリーを風の噂で耳にした事はあった。あったが、今日目にするまで所詮都市伝説と切り捨てていた。

 それから少しして、尾行に飽きたカナードは簪と共にモノレール乗り場へと直行する。その際一夏に連絡を入れてから。

 

 

 

 

 フランス。デュノア社の応接室に、ユーレンとシャルロットそして社長のダヴィッド・デュノアが向かい合って座っていた。間のテーブルには数枚の書類が並べられており、ダヴィッドはそれらを手に取って目を通しつつ、真向かいのシャルロットに視線を向けた。

 提示されたシャルロットの交換条件。それはカナードが作成した第三世代の流用データ。コンセプトもデュノア社のラファールを発展したものに近い。しかも表向きはデュノア社が開発した事にするとまで出されていた。

 ある程度見回したダヴィッドは、一息ついてユーレンを見た。

 

「…中々な物を。 これをそちらのご子息が?」

 

「自慢の息子でしてね。 それで、お答えを頂きたい。 我々はそちらに所属しています、シャルル・デュノアを引き入れたい。 代価は我々の持つ第三世代の技術です」

 

 表向きではまだシャルロットはシャルルの名で、男の性別で所属していることになっている。本当の性別を知っているのは社の上層部と学園の生徒のみである。それをそう簡単に、日本のいち研究所に引き入れともあれば、世間は黙っていないだろう。

 しばらく考え込むダヴィッド。やがて答えが纏まったらしくシャルロットに視線を向けた。

 

「……シャルロットの正体に世間が気付くのも時間の問題だな。 シャルロット、最後に一つ聞こう」

 

「…はい」

 

「お前の本心は、腹の底は既に決まっているのだな?」

 

「…はい。 僕は……私は、日本に残ります。 今までお世話になりました、お父さん」

 

「……あった回数が五回に満たない私を、父と呼んでくれるか」

 

 気づけば、ダヴィッドはシャルロットを抱きしめていた。妾の子とは言え血を分けた娘には違いない。今まで碌に会う事も、それどころか愛情を与える事も無かった。プロパガンダに利用して済まない、利用して済まない、父でいる事を全うしなくて済まない。言いたいけれど言葉に出せない、今更過ぎるこの感情がダヴィッド自身今日まで抑えきれずにそんな感情を抱いていた。

 また、シャルロットもそうだった。父からの愛情に飢えていた。だからこそ、ダヴィッドを抱き返して嗚咽を漏らした。

 この瞬間だけでも親娘(おやこ)に戻れた二人にはもう充分過ぎていた。

 

 

 

 

 その日の夜。カナードは学園の自室でフランスに居る父からの連絡を受けていた。交渉は成立。シャルロットは明日から研究所職員で、窓木小次郎の養女となってカナードの義妹になる事は無いそうだ。

 フランスとの時差は七時間前、日本は現在午後9時なので向こうは午後2時である。これから飛行機にシャルロットと共に搭乗して日本へと帰国すると言う。

 

「成る程ね……じゃあ彼女に伝えておいてよ。 学友として研究所の仲間としてこれからもよろしくってさ」

 

 通話を終え、回線を切ったカナードは一次中断した作業を再開させる。パラメータの確認はもとより、武装展開時間、駆動系統など様々な部分をチェックする。この調子では二次移行は当分先頃になるだろう。焦る必要はないと感じたカナードは、作業を終了するとベッドに倒れて転生してから今日までの事を思い出して感慨深げに浸っていた。

 自分という存在はこれまでに様々なイレギュラーを生み出してきた。

 一夏に好意を向けていた者達は、彼の介入によって箒と鈴音以外は友情の念を抱きはじめた。

 それ以外には、簪の打鉄弐式が早めに完成したり、シャルロットがカナードの同室になったり、ラウラが一夏ではなく彼の自称姉を名乗った。

 これが生前ファース党一夏の嫁派だった自分が成してきた事なのだと思うと、改めて身震いしてしまう。

 

「……だが、問題は」

 

 篠ノ之束の存在が、彼にとって大きな問題だった。カナードという第二のISを扱える男というイレギュラーに興味を持っていてもおかしくはない。が、問題はどうしてカナードを転生者ということを知っているのかだ。告白すれば中二病患者扱いレベルに疑われても仕方ないくらいの事なのに、何故彼女は知っているのだろうか。考えに考えた末にカナードの導き出した答…というよりもそれしか思い浮かばなかった。

 

「まさか彼女も……俺と同じ…」

 

 束もカナードと同じ、転生者であった可能性が高いということだ。

 もしその可能性が当たっていれば、カナードの正体が転生者であってもおかしくはない。むしろそれしかないのだ。

 だとしたら束のあのキャラは演じているのか、それとも素なのか。所謂神のみぞ知るという奴だ。只のカナードには到底理解できない境地だろう。

 暫く思考の海に浸かっているカナードは、ルームメイトの一夏に声をかけられるまで時間が過ぎていくのを忘れていた。

 

「…何かお前、いつもより考え込んでたぞ」

 

「そうか? ま、そうなるわな、束さんの実態が気になった所で、簡単に明かせる訳じゃねぇのにな」

 

「それはカナードじゃなくても皆考え込むな」

 

 

 

 

 翌朝。カナードは一夏と共にアリーナを借りてストライク対白式の模擬戦を繰り広げていた。

 カナード側のセコンドには簪が、一夏側には箒が待機しており、パートナーの機体の調子をタブレットや投影ディスプレイで確認する。

 アリーナの地表ではソードストライカーを選択したカナードのシュベルトゲベールと一夏の主武装雪片弐型が、激しく火花を散らしてぶつかり合う。近づいては放れ、地を駆け、交差する度に火花が散る。入学したての頃より一夏の太刀筋は上達している。剣の腕が戻ったと、昔の彼を知っている者なら誰でも思うだろう。

 しかし、それと同じか以上にもカナードも成長している。転生効果でもない。鍛え上げた純粋な力だ。

 夏休みはまだ長い。この先カナードを待ち受けるのは、聖か邪か。

 

 

 

 

続く

 




さてさて次回も夏休み編です。

予告になりますが、次回は会長さん出ます。恐らくカナードが苦手とする人格者でしょう。

次回をお楽しみに
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