インフィニット・ストラトス 転生者はSTRIKE 作:バルバトスルプスレクス
今回一年専用機持ちはカナード以外出ません
でも会長は出ます
IS学園にも当たり前の様に生徒会はある。この学園の実権をほぼ握っているとまではいかないが、普通の高校や普通の学園のそれとはどうも違うらしい。
この日カナードは生徒会室に呼び出されていて、今はその入口の前にいた。待機状態のストライクのディスプレイを表示する。指定された時間の5分前だ。生前の就活時代の癖が現在にも出ていることに、カナードは内心苦笑いする。
「一年一組、大和カナード、入ります」
ノックして学年と名前を述べると、ドアの向こうから入室の許可が出た。ドアを開け、再度学年と名前を述べ、ここに来た理由を口にしようとする前に彼を迎え入れた女子生徒…
「お話は聞いています。 会長は間もなく参りますので、そちらのソファにかけてお待ちください」
「失礼します」
促されてソファに着席して数分経つ。いつの間にかカナードの背後に人の気配がした。
カナードは振り返る事はせず、その人物に話し掛ける。
「気配が完全に消えてませんよ、会長」
「んー、やるねぇ一年」
バッと扇子が開く音がした事が正解を物語る。
向かい合って座るIS学園生徒会長更識楯無。開いた扇子には「お見事」と達筆で書かれていた。生徒最強を謡う彼女はロシア代表。日本人なのだが自由国籍を得てのことだ。この人物こそ、今日カナードを生徒会室に呼び出した張本人である。
「お初にお目にかかります更識生徒会長。 一年一組の大和カナードです。 本日はどのような御用件でしょうか?」
「固くならずリラックスリラックス〜♪」
「申し訳ありませんが、これが私です」
「頑固だねぇ。 今日呼び出したのは他でもないの。 妹と仲良くしてくれているみたいね、姉としてお礼を言うわ」
「いえ、私はただ倉持の姿勢に苛立ちを覚えたまでですので」
「謙遜ね。 ごめんね、こんな事で呼び出しちゃって」
一息入れる為か、虚が二人にリクエストを聞いた。楯無は虚お手製の紅茶、カナードもそれに合わせる。コーヒー党の彼でも紅茶を嗜むときもある。出されたのは暖かく優しい香りのする紅茶だ。口に含んだ瞬間、何とも言えぬ優しい味がした。
「虚の煎れるお茶って良い味してるのよね〜」
「恐縮です」
話は続く。楯無はカナードに何度か質問を投げ掛けるが、今度はカナードが投げ掛ける番となった。
「確か会長や簪の生家である更識家は対暗部用暗部で、会長は『楯無』の名を継いでいると聞いておりますが……」
「紛れも無い事実よ、続けて」
「貴女は頭首を継いですぐ、簪に言ったことを覚えていますか? 『私が護るから何もしなくていい』と言ったそうですね彼女から聞きましたよ。 それじゃあ彼女が役立たずと言っている様にも思えます。 同時に貴女は簪の目標である以上にコンプレックスでもあるんです。 貴女は簪の苦悩を想像したことはありますか? 『楯無の妹だから』『楯無の妹なのに』と何度彼女は貴女と比べられた事かっ! 貴女が努力する度に、貴女は簪の壁となり新たなプレッシャーを与えていると何故お気づきにならない?! ただ一言、ただ一言彼女に……簪に向き合って頂けませんか?!!」
その懇願を、楯無は険しい表情をする。彼女は虚を下がらせるとカナードが想像していた言葉が飛んできた。
「更識の人間でもない貴方が、何で知った風な事を言うのよ!」
生前の原作知識+αとは今の所口が裂けても言えなかったカナードは、敢えてその事を伏せる。しかし黙っているままでも埒はあかない。確かにカナードは更識の人間ではない。楯無の言う通りでもある。しかしカナードは黙っていられない、どう言う訳か黙ると言う選択肢が彼には無かった。
「確かに私は更識の人間ではありません。 ありませんが、私は一人の人間として、こうして言わせて頂きます」
しっかりと楯無だけを見据えた瞳をカナードは持っていた。少しでも、簪に楽になってもらいたいと言う一心が彼をそうさせていた。
対する楯無はいつもより険しい表情をする。何も知らないくせにと言いそうな目で、尚もカナードを睨みつける。自分は大切な人を守る為、死に物狂いで党首の座とロシア代表と言う肩書を手にし、それに恥じぬ様鍛錬を怠ったことは一度も無かった。たった一度たりとも。それを目の前の男は知らない。知らないくせに知った風な口をする。そのカナードの態度を楯無は気に入らない。
対するカナードは、先程から表情も姿勢も崩さずにいた。
「…先程から貴女を責めている事は謝罪いたします。 ですが、一度簪とゆっくりと話してあげてください」
「……今更あの子に何て言えばいいのよ」
「ただ一言。 ただ一言…自分が守る、だから傍に居てと」
それだけ言うと、カナードはソファから立ち上がり、楯無に一礼して生徒会室を出た。入れ違いに虚が紅茶のお代りを持って入室。楯無の僅かな雰囲気の変わり具合を察した彼女は、紅茶の茶葉を変える。
◇
学生の夏休みにはやはり課題と言うものが付き物で、カナードは空調が効いている自室でシャーペンを走らせていた。因みに原作メンバーはと言うと、一夏は箒と共に織斑宅の掃除で鈴音も同行、セシリアは自国に帰省、シャルロットとラウラはショッピングモールで買い物、簪は本音ら一組の女子数人と合同で女子会をしている。
しかしだからといってカナードはこの状況をとても満喫していたし、拒んでもいなかった。
喧騒もトラブルも何一つ無い昼下がりを、彼はとても好んでいたのだ。平和一色とは言えないが、この穏やかな日々がこれから先長く続かないモノかとカナードはしみじみ思うが、そう簡単にいかないのがこの世界の常だ。
原作の小説では秋の文化祭にキャノンボール・ファスト、アニメでは京都への学年旅行とどれもあの
澄み切った青空を見上げて、ふと待機状態の愛機の時計を見る。12時を少し過ぎた頃だ。
「飯にするか」
因みに、今日のオススメメニューは冷し中華だそうだ。
◇
平らげた冷し中華の皿を返却したカナードに、三年生を示すリボンを制服に付けた先輩女子生徒が文字通り立ちはだかった。
聞けば男なのにISが扱えるというのが気に入らない女尊男卑主義者の様で、故にカナードや一夏の存在も、その上専用機を持っている事実も気に入らないと言う。三年でしかも代表候補でない彼女達からは嫉妬と憎悪しか感じられないカナードは、そう言うならどうすれば良いのかを聞いた。勿論帰ってくる言葉は容易に予測出来た。初日のセシリアと同じ事を言うに違いない。
「ふん、そんなの言わなくてもわかるでしょ? 下僕よゲ・ボ・ク。 解るぅ〜?」
「理解しております。 そんなに私が気に入らない様でしたら、貴女方三人の内のどなたかと私とでアリーナで勝負しませんか? 勿論ISを使ってですよ? 貴女方が勝てば私を下僕にするなりお人形にするなり好きに出来るし、私は私で先輩方の技量を学ぶことが出来てちょうど良いギブアンドテイクですよね。 どうします? 受けますか、受けませんか?」
半目でやや挑発的なカナードの申し出に、三人の堪忍袋の緒が切れかかる。しかしあくまで冷静さを保ちつつ彼女達は了承。三年女子生徒三人対カナード一人の対決が決定された。ただしアリーナのセッティングや訓練機の貸出申請はカナードが全てやることとなった。
◇
運よくアリーナも訓練機もどちらも申請が降りた。と言うのも…。
「まったく、目を付けられたと思えばこんな事…」
織斑千冬が事の経緯を聞き付けてこうなった。千冬自身このような世界を作り上げたモノに手を貸してしまった事を今でも後悔していたからであろう。
『私自身も言い過ぎたなとは思いますが、まさか学園内に女尊男卑主義者が…それも先輩方にいたとは』
画面の向こう、ストライクを身につけカタパルトに足を固定しているカナードが言った。
『主義者の存在は予想していましたが、ある意味で予想外でした』
「御託はもういい、相手方は既に出ている。 お前もそろそろ出ろ。 射出タイミングを譲渡」
『大和カナード、ストライク行きます』
ピットから放たれた白い流星は、三機編成のラファールの前に着地した。それを見届けた千冬は、管制室の壁に掛けた時計を見てポツリと誰に言うまでも無く呟いた。
「一時間はかからないな」
それは千冬が換算した試合終了時間を示していた。
◇
選択したのは基本のエールストライカー。そのカナードの選択に対戦相手の彼女たちは予想通りだと顔をニヤつかせた。
程なくして試合開始のブザーがけたたましく鳴り響き、同時にカナード達も動き出す。ラファール三機はフォーメーションが取れており、三種別方向からの狙撃が彼女たちの売りのようだ。それをカナードは身を捻ったりシールドを掲げて防いでいく。
セシリアのブルー・ティアーズ・ビットよりも狙いが正確だ。流石先輩方、とカナードは素直な感想を持つ。
「私ら三人いつも一緒!」
「だから口に出さなくても!」
「フォーメーションが簡単に!」
『とれるのよ!!!』
双子に三つ子はテレパシーのようなものがあると噂されるが、それを仲の良さだけで擬似的に出来る彼女達は学年に恥じぬ腕前だ。シールドとライフルを増やし、両腕で防ぎ両腕でレーザーを打ち出す。ツインライフル&シールドと言う。
グレネードが来ない事にふと疑問を持つカナードに彼女達が一人一人答える。
「私ら三年が!」
「一年で男であるアンタに!」
「負けるわけがない!」
驕り。彼女達から出るのはそれだ。が、カナードは笑みを浮かべ、エールストライカーと二つのシールドとライフルをパージする。この行為が彼女達にとって侮辱に感じた。組んでいたフォーメーションを変えて、三人一斉にカナードにライフルを照射する。打ち出されたレーザーはカナードに直撃すると、土煙が舞い上がり彼の姿を隠した。
やったか、と心の裡で舞い上がる彼女達に対し官制室の千冬は彼女達に呆れていた。
「ね、ねぇちょっと……」
「ヤダ、あいつ…」
「シールドエネルギーが……」
『無くなってない?!』
「いやはや、流石先輩方。 全力御指導ありがとうございます、それではこちらも全力で貴女方の実力にお応えしましょう!!」
掲げていた左腕にはアブゾーブシールド、背面には白いユニバースブースター、右手には専用のレーザーライフルが装備されていた。福音戦以来その姿を学園で見せていない装備を、カナードはしていた。
三人のレーザーをアブゾーブシールドで吸収したカナードは、パラメータを確認。まだ腹八分目。ちょうど彼女達も納得がいっていないようで、悪あがきの様にレーザーライフルを照射し続けた。しかしそれらはアブゾーブシールドに吸収され、推力などに変換される。
ある程度溜まった所で、カナードは溜めていたレーザーエネルギーを解放、前面にゲートの様な物を展開するとカナードはそれを潜り抜ける。可視化されたシールドエネルギーが翼の様に現出すると、それの恩恵かカナードは風よりも速く空を駆け抜ける。
福音を止めた切り札のフルバーストは使えない。使えるとすればこの高速移動に乗せた、アーマーシュナイダーによる斬撃。逆手に持ったそれを、相手の銃身や装甲の隙間に走らせる。溜めていたエネルギーは元あるストライクのシールドエネルギーとは違うのだが、そろそろつき掛けていた。
「I.W.S.P.!」
底をつく前にストライカーを代えると共に、三機のラファールの武装が殆ど破壊されていた。
「それではフィナーレと参りましょう!」
スラスターを吹かし、両手に太刀を握り絞めると三機のラファールに切りかかる。最後にレールカノンを数発打ち出した所で、千冬の声が飛ぶ。
『試合終了、双方共ISを解除しろ』
指示に従い、カナードは地表に降り立ちストライクを待機状態にする。相手方は学園から借りた訓練機であるため、ラファールから降りれば良いのだが、シールドエネルギーが切れているにも関わらず、彼女達は無理に体を動かそうと躍起になる。このテの人間はプライドだけはいっちょ前、女尊男卑の世の中で女である自分が男に負けると言うのが彼女達にとって、信じられるものでもなかった。
尚も悪あがきを見せる彼女達を見て、カナードはストライクを通して官制室の千冬に相談を持ち掛ける。
「いかが致しましょう、織斑先生…」
『放っておけ。 下らん思想などこの学園には通用しない事を身に覚えさせてやるが……なんなら同席するか?』
「謹んで辞退致します。 ストライクの機体調整などがありますし」
『なら仕方ないか』
言って千冬の方から通信が切断され、カナードは自分にかかる視線などお構い無しにその場を去った。後に残ったのは、喚き続けている三年女子生徒だった。
◇
自室に戻ったカナードは、軽めのストレッチ運動をして身体を解す。心なしか節々からポキポキと音がなる。精神年齢36歳な為か、それともそういう体質なのか理由は解らない。
こうなると明日はどうなるのだろうと思うカナードは、ルームメイトが戻るまで最新型のストライカーの着工に神経を集中していた。
続く
次回は、まだ未定です