俺の隣には『
暇つぶしの話し相手くらいにはなるかと思ったが、ずっと無気力状態なので話もできない。これならアクアテラリウムの魚を眺めていた方がずっと暇をつぶせる。
さらにまずいことに戦いの余波に巻き込まれないように四方を『長城』で囲んだせいで、伝言なんて来ない。俺やらかした。
こればっかりは自分で自分の尻を拭う他ないので、昔酒の肴にガヴィダから聞いたドナートの話を一部改編して伝えた。
「で、お前さんはここから出てくのか?」
「うん。私は見たい、私は触れたい、私は確かめたい。ドナートの描いた、私の絵を。だから、私は出ていくよ」
「わかった」
それが聞ければ十分。
俺は自在式を消して鳥籠を破壊した。
「…いいのかい?私を出して」
「構わないさ。それよりさっさと行きな。これ以上ここにいると戦いに巻き込まれるぞ」
「…そうか。因果の交差路でまた会おう」
「機会があればね」
消えた『長城』の跡を後目に、リャナンシーは去って行った。
「…『大命詩篇』、俺が起動させるのか」
今気が付いたバカがここにいる。
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「アシズ!さっさとしろ!」
「今やっている!」
今俺はアシズとともにいる。『両界の嗣子』を生むために必要な過程のうち、アシズとティスの一部を合わせるまではすんでいるのだが、肝心の両者の融合がまだ出来ていない。
しかもフレイムヘイズ兵団がブロッケン要塞の近くまで来ている。これはかなりやばいな、うん。まったくもって時間が足りない。
「チッ!『炎髪灼眼』が来たか!」
ここで『天破壌砕』を使われたらここまでの苦労が水の泡だ。させるわけにはいかない…!
「アシズ!俺は『炎髪灼眼』を足止めしてくる!その間にティスの同化だけでも終わらせろ!」
さて、どのくらい足止めすれば良いのだろうか……。
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「ふう…」
『あとは『九垓天秤』だな。』
「そうね」
今、『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールは『とむらいの鐘』の徒をあらかた片付け、ひと息ついていた。最強のフレイムヘイズと呼ばれる彼女にも休息は必要だ。
だが、敵はそんな暇を与えるつもりはない。今まで倒して来た徒の存在が霞むほど大きな気配を持つものが急接近する。そう、俺だ。俺は周囲を炎で囲み、マティルダの逃げ場をなくす。
『黒紅色の炎だと!?』
「なに、アラストール!」
『なぜ今まで気が付かなかったのだ!』
さあ始めるとしよう。
「『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメール、“天壌の劫火”アラストール。こんなところで会うとは思わなかったぞ?」
気配を隠しながら、背後から声をかけた。
「ッ!あなたは!?」
いきなり背後から声をかけられて驚いたようだ。飛び退き剣を向ける。
『“群頸の長蟒”ヤマタノオロチ!』
名乗ろうとしたのに先にいわれてしまった。かなしみ。
『気を付けろマティルダ!奴は『九垓天秤』以上の紅世の王!気を抜けば殺されるぞ!』
どんだけ警戒されてんの俺。そんなにフレイムヘイズ殺したっけ?ティスとかカムシンから逃げた覚えしかないよ。
『貴様!何故ここにいる!』
アラストールが問う。
「アシズに協力してくれと頼まれたからだ。ここにいる理由などそれだけで良いだろう?」
「…あなた、変わってるって言われない?」
「ははは、実は結構ある」
まあティスとアシズの子どもを一目見てみたい思ってるのもあるけどね☆
きっとかわいい子なんだろうな。もう親戚のおじさん気分だ。
と言うわけでお前らの邪魔をさせてもらうワケダ。悪く思うなよ?
「さあ、勝負だ!」
俺は『因果の殄滅』を構え、マティルダは『
だがそれは悪手だ。
マティルダの『
「『
『いったいなにをした!』
「ふふ、俺の自在法、『悪食』はいかがかな?自在法や燐子を喰らう、自在法だ。」
名前はいま考えた。
「なら!」
マティルダが大剣を持って突撃する。
「喰われる前に仕留める!」
こちらも『因果の殄滅』で受け止め、数瞬でマティルダの大剣が消え、そのまま後退させるために剣を振るう。
「さすがにすぐには喰えないようね」
あっさり弱点を見抜かれた。さすが。だが俺の自在法はそれだけではない。
「じゃあこれはどうかな?」
『帥鴉』でマティルダを取り囲む。さすがに逃げ場をなくされてはどうしようもないだろう。
「このっ!」
マティルダが『炎弾』を放つ。が、俺に当たることなく消える。
「やっぱり燐子をどうにかしないとだめみたいね」
「できると思うか?」
「やって見なきゃわからないじゃない」
よく言うよ。
「ハァ!」
大剣や槍を消える前に振るい、燐子を破壊する。一点突破。割とあっさり包囲網を抜けて見せた。
「口程にもないわね」
「まさか罠を用意していないとでも?」
マティルダが立っている地面が爆発する。
「なっ!?」
爆発に巻き込まれる前に退く。
「さあ襲え!」
『帥蜂』によって生み出された無数の蜂がマティルダを取り囲む。
マティルダは『
実際消える前に紅蓮の炎になって蜂を焼いている。虫だから炎に弱い。
もしかしたら策士策に溺れるってやつか?俺ちょっとやばいな。『帥鴉』と合わせて襲わせる。
まあぶっちゃけ蜂も鴉型の燐子も存在の力の供給がある限り無限に増える。
そして『悪食』でマティルダの『
つまりマティルダが『
などと調子に乗っていたらいきなり七色の光線が飛んできた。直撃したらまずい。 『長城』を斜めに配置して受け流す。
「マティルダ・サントメールは俺の獲物だ、お前なぞに狩らせはしない」
来ましたメリヒム。どんだけマティルダ好きなんだよあんた。
「わかったよ、好きにすれば良いさ」
客将の俺が最高幹部のメリヒムに突っかかるメリットはない。サッサと立ち去ることにする。
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ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!
俺は今、『両界の嗣子』となる青い結晶を持って全速力で戦場から逃げている。
何故かと言うとマティルダが『天破壌砕』を使用してアラストールが顕現したからだ。一応アシズが戦っているのだろうが力の差がありすぎる。無謀だ。
てゆーかお前なんで5パーセントしか融合させてねーんだよふざけんな。
ティス50パーセントアシズ5パーセントとかおかしいだろせめて10パーセントにしろよ後の45パーセントどーすんだよ!まさか俺の存在の力ぶっこめってか!?そんなことしたらほぼティスと俺の子じゃん!お前それで良いのかよ!まあ悪くてもやるけどさ!呪うなよアシズ!
十分戦場から離れた俺は、探知や覗き見をされないように自在法で結界を張った。これでシャヘルの神託は下らない筈。
青い結晶に己の存在の力を注ぐ。膨大な存在の力を持つ俺でも少々キツイ。
青い結晶はやがて赤ん坊の姿に変わり、産声をあげた。ここに“一人の少女”と“紅世の王”の『愛』がカタチとなった。
俺に子守しろってか!?なんてこったい!どうすりゃいいんだァァァァァァ!!!