なぜかこの作品に関しては筆が乗らないので次回から不定期になるかもしれません。
放課後。高校生たちの青春にとって重要な三大要素の一つだと個人的には思っている。ちなみにほかの二つは修学旅行と部活。異論は認める。
今ゆかりは三人娘を先に帰らせてCDショップに寄っていた。なおその途中で『零時迷子』のミステスである坂井悠二とばったり会ったと言っておこう。
始めて彼がミステスだと知った時のゆかりの悲痛な顔は記憶に新しい。かくいう俺も胸が痛くなった。
この通りもう調子は戻ったが。
「(ねえこれ見てよ、ビルボードチャート一位だって!)」
『(例のニューアルバムを買いに来たんじゃなかったのかよ。それにビルボードチャートってなにか知ってるのか…?)』
「(えっと…アメリカの奴だとしかわかんないなーてへへ)」
『(ほらな)』
「平井さんさっきからずっと黙ったままだけど、どうかしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
それにしても、なんか嫌な予感がするんだよな…。もしかして燐子くるのか?
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嫌な予感が当たってしまった。『封絶』の色は薄い白。間違いなく“狩人”フリアグネの燐子だ。
「え、どうして坂井君は動けてるの…!?」
そりゃあびっくりだろう。俺は悠二が『零時迷子』のミステスだとは教えてないし、そもそもティアやノトブルガ達も中身が『零時迷子』だとは知らない。
そもそもみんな宝具の知識自体そんなにないし、俺以外はあのバカップル…もとい『
「なんなんだよこれ!平井さんいったいこれはなんなんだよ!」
「え、えと…」
『悠長に話してるヒマはないぞ。すぐに燐子が来る』
新人フレイムヘイズのゆかりにこの世の本当のことを説明できるはずもない。ここは一度話をさえぎって目下最大の脅威に注意を向けさせた方がいいだろう。
「今の声は何!?」
「ちょっと黙ってて!」
情けないなあオイ!これがあんなんなっちゃうなんて想像できんよ。まあこれは俺が『念話』を使わなかったせいなんだけどね。
『そこのミステスを放っておくわけにもいかない。とりあえず気配を隠して身を潜めよう』
「了解。坂井君も動かないで。説明は後でするから」
「う、うん…」
たかが燐子と言えど、あの"狩人"フリアグネが作成したものだ。ゆかりにはまだ荷が重いだろうと俺は判断した。
まあそれとは別に、これからゆかりには気配を察知する訓練をもっとさせないとダメだな。今回も決して小さくない燐子の気配も『封絶』を張られるまで気が付かなかったのだからしかたない。いやこれは俺の教育方針がまずかったのか?どちらにせよ無事に帰ったら教育方針を見直す必要がありそうだ。
「(…ねえ、このままじっとしてた方がいい?)」
目の前まで燐子が迫っている。十中八九、これから人を襲って喰らうのだろう。
『(ああ。このまま戦っても勝てるかどうかわからないからな)』
俺としては勝率が低い戦はしてほしくない。身内に甘くなるのは悪い癖だろうが、教授が『討滅の獄』を仕込んだせいだとはいえ、『因果の殄滅』をうっかり落とした俺にも責任があるわけで…。
「(そっか…。ごめんヤマちゃん、私我慢できない!)』
『(なっ、ちょっと待てゆかり!)』
俺の制止も聞かず飛び出してしまった。
嵯峨崎様、リトバス様、高評価ありがとうございます!