スリザリンの継承者―魔眼の担い手―   作:寺町朱穂

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86話 魔眼と御伽噺

「旦那様、盗人を連れてまいりました」

 

 クリーチャーはマンダンガス・フレッチャーを解放すると深々とお辞儀をした。

 

「ええ、旦那様には逆らえないからです。たった2日で探してくるなんて、無謀にもほどがありました。ああ、可哀そうな奥様。クリーチャーが奥様の気持ちを裏切った男のために仕えないといけないと知ったら――……」

 

 クリーチャーがぶつぶつ何か言っていたが、その間にマンダンガスはあたふたと立ち上がっていた。そして、そのまま杖を抜いたが、ハーマイオニーの速さには敵わなかった。

 

「『エクスペリアームス‐武器よ去れ』!」

 

 マンダンガスの杖が宙を飛び、ハーマイオニーがそれを捕らえた。マンダンガスは杖を失うと、狂ったように目をギョロつかせ、階段へとダッシュしていったが、ロンがタックルをかまし、鈍い音を立てながら床に倒れ込んだ。その隙に、ロンはマンダンガスをがっちりつかみこみ、床に押し付ける。

 

「何だよぅ!」

 

 マンダンガスはロンの手から逃れようと、激しく身を捩りながら叫んだ。

 

「シリウスの旦那、オレが何をしたってて言うんだ!」

「すまないな、ダンク。だが、ハリーが用事があるというのでね」

 

 シリウスが静かに言うと、マンダンガスの怒りの眼差しがハリーに向けられた。

 

「なんだよぅ?」

「マンダンガス、少し君に聞きたいことがあるんだ」

「俺が何かしたって言うのか? いや、おめえさんには何もしてないぜ? そりゃ、あの作戦には参加したくねぇってごねたけどよぅ、直接関係してねぇってもんだ」

「作戦のことじゃなくて、ロケットのことだ」

 

 「ロケット」という単語が出た途端、ぴたりとマンダンガスの動きが止まった。

 

「ロケットを盗んだのは君だろ?」

「まあ、盗んだというか、なんというか」

 

 マンダンガスは額に汗をかきながら顔を逸らした。

 

「まだ持ってるのよ!」

 

 ハーマイオニーは期待を込めて晴れやかな顔で言ったが、ロンはそれを否定する。

 

「いや、もう売り飛ばしたんだろ?」

 

 ロンが問いただすと、ややあってからマンダンガスは固く閉ざした口を開いた。

 

「契約で言えねぇよ! 破った瞬間、俺はアズカバンに行って魂を差し出さなくちゃいけなくなるんてんだ! 聞きたいなら、そこのしもべから聞けよぉ!!」

「クリーチャー」

「……クリーチャーはポッターの小僧の命令を聞きません」

「クリーチャー、ロケットとマンダンガスに関することを始めから最後まで、嘘偽りなく全て話せ」

 

 シリウスが言葉を選びながら問いただすと、クリーチャーは苦虫を潰したような顔になった。もごもごとごねるように口元を動かしていたが、やがて、シリウスが睨みつけると、観念したように話し出した。

 

 

 クリーチャーがヴォルデモートに連れられ、小島に行ったこと。

 そこで毒薬を飲まされたこと。そして、命からがら帰ってきたこと。

 今度はレギュラス・ブラックと一緒に小島に行って、レギュラスに毒薬を飲ませ、ロケットを掏り替えてきたこと。

 その後、どうやってもロケットを破壊するどころか開けることすらできず、何も出来ないまま、マンダンガスに盗まれてしまったこと。

 

「……ですが、その後、クリーチャーは見つけたのです。ホグワーツで、レギュラス様のロケットを」

「どこで見つけたんだ?」

 

 ハリーが疑問を口にする前に、シリウスが察して尋ねた。

 クリーチャーは答えたくないのだろうが、主人の命令には従わなければならない。静かに震えながら話し続ける。

 

「スリザリン寮の掃除をしていた時でした。……とある学生が、レギュラス様が洞窟に置いてきたロケットを眺めていたのです。クリーチャーはその人と話して、マンダンガスを探し出し、盗まれたロケットを渡しました。代わりに、クリーチャーはこのロケットを貰ったのです」

 

 クリーチャーはしわがれた声で言いながら、以前はレギュラス・ブラックの物だったロケットを指でいじっていた。

 

「それで、その後、盗まれたロケットはどうしたの?」

「穢れた血の質問には――……」

「クリーチャー、話せ」

「…………壊しました、ロケットを」

「壊した?」

 

 ハリーたち三人組は互いに目を見合わせた。

 シリウスは知らないが、分霊箱になったロケットは壊せない。バジリスクの毒のように、一人でに回復できないほど強い破壊力のあるものでなければならないのだ。そう簡単に壊せるわけがない。

 

「どうやって壊したんだ?」

「……ホグワーツの学生が、壊したのです。杖先で切りながら」

 

 その時、ハリーの脳裏に一人の女子生徒の姿が浮かび上がってきた。

 

「セレネだ!」

「ハリー?」

「セレネの直死の魔眼だよ。だから、セレネはロケットを壊せたんだ。そうか、ナギニを殺せたのも魔眼の力だったんだ!」

 

 4年生の時、ダンブルドアから直死の魔眼について教えてもらったことを思い出す。

 すべての死を視る魔眼は、シリウス・ブラックから永久に腕を失わせたように、分霊箱でも再生できないほどの破壊力があるのだろう。

 

「嘘でしょ!? セレネの魔眼って『直死の魔眼』だったの? 薄々思っていたけど、本当だったなんて!」

 

 ハーマイオニーが口を押えながら言った。反対に、ロンはぽかんと不思議そうな顔をしている。

 

「なんだい、その直死の魔眼って?」

「バロールの魔眼みたいに、一睨みしただけで死を確定させる魔眼よ。もっとも、セレネの様子からして、視ただけで万物の死の綻びを見定めるだけなのかもしれないけど」

「おっどろき! あの女、そんな気味悪い眼を持ってたんだ。僕は魔眼持ちじゃなくてよかった」

「……ロン、あなただって魔眼持ちじゃない」

 

 ハーマイオニーが呆れたように呟いた。これには、ハリーも驚いてしまう。

 ロンが魔眼持ちだなんて、考えたこともなかったのだ。ロン自身、少し虚を突かれたような顔をしている。

 ハーマイオニーは二人の姿を交互に見ると、眉根に皺を寄せた。

 

「貴方たち、少しは本を読んだらどうなの?」

「だって、君が本を読んでいるから、僕たちは読まなくても大丈夫だろ?」

 

 ロンが当然のように答えたので、ハーマイオニーは呆れたように肩を落とした。代わりに、シリウスが苦笑いをしながら答えてくれる。

 

「ホグワーツでゴーストが見えるだろ? あれは、この世にあらざるモノを視る『浄眼』があるからだ。少数派だが、ホグワーツ生の中にもゴーストが視えない者もいるだろうよ。ゴーストが視えないからといって、特別不都合はない。せいぜい、ピーブズの被害を避けられないくらいだ」

「特に、イギリスの魔法使いは異国の魔法使いと比べて、『浄眼』持ちが多いの。イギリスに残る神秘や伝承が多いからだと思うけど……もちろん、ランクは雲泥の差で、私やハリーなんてランクが低いからゴーストを視るのがやっとよ。

 だけど、ロン、貴方の浄眼はかなり高ランク。妖精はもちろん、精霊やこの世の神秘も視えるかもしれないわ」

「僕が?」

「瞳の色が青に近づくほど、浄眼のランクは高くなるの。特に魔法使いの血を重ねた純血の家系では、高ランクの浄眼持ちが出やすくなるわ」

 

 ハーマイオニーの話を聞いて、ハリーは今まで出会った人物を思い出してみる。

 目の前のロンはもちろん、純血を誇るドラコ・マルフォイは薄青色の眼をしていたし、アーニー・マクミランやセオドール・ノットも青い瞳だった。ダンブルドアの瞳も明るい青色で、シリウスの瞳は灰色が強いが、光の加減で青く見えなくもない。

 ムーディの持つ全てを見通す義眼「魔法の眼」だって、考えてみれば青色だった。あれも浄眼のレプリカなのかもしれない。

 

「すげー、僕、知らなかった」

「大事にした方がいいわよ。世界的に見たら、浄眼を持っていない魔法使いも多いんだから。

 ともかく、セレネがアレを破壊して回っていることがつかめて良かったわ」

 

 ハーマイオニーが脱線していた魔眼の話を切り上げ、分霊箱の話へと切り替える。

 

「セレネと繋がっているなら、マンダンガスからもう少し情報を引き出せるかもしれないわ」

「お、俺は何も知らねぇよ!!」

 

 マンダンガスは勢いよく首を横に振った。

 

「ハーマイオニー、開心術はできる?」

「ええ、理論は知っているわ」

 

 ハーマイオニーがマンダンガスの鼻の頭に杖を突きつけた。

 

「セレネが漏らしていなかった? なにか、例えばそうね……ホグワーツ創始者の宝物についてとか」

「そ、そんなこと……い、言えるわけねぇだろ!? 契約で話せねぇんだ」

 

 マンダンガスは目を泳がせながら叫んだ。

 ハリーとハーマイオニーたちは目配せをする。

 彼の慌てっぷりからするに、情報を持っているのは確実である。ハーマイオニーはマンダンガスに杖を突きつけたまま一度、神経を集中させるように目を瞑り、そして、鋭く呪文を唱えた。

 

「『レジリメンス‐開心せよ』!」

 

 ハーマイオニーは数秒間、そのまま動かなかった。

 マンダンガスもあれだけ逃げ出したがっていたにもかかわらず、床に縫い付けられたように微動だにしない。

 その時間、わずか1分にも満たなかっただろう。 

 唐突に二人ともが息を吹き返したように揺れた。ハーマイオニーもマンダンガスも肩で息をしながら、互いににらみ合っている。だが、マンダンガスの方は悔しそうな色が強く出ているに対し、ハーマイオニーはどこか勝ち誇ったような微笑を浮かべていた。

 

「大丈夫、情報は手に入れたわ」

「くぬぅ……こ、これでいいんだろ!? 俺は明かしてないが、お前さんたちが勝手に俺から情報を盗んで行ったんだ! だから、俺をさっさと解放しやがれ!!」

 

 マンダンガスが呻きだした。

 ハリーたちは彼を解放すると、3人だけで上の階に上がった。

 

「『マフリアート‐耳塞ぎ』」

 

 以前、ヒッポグリフのバックビークが使っていた小部屋に入ると、ハーマイオニーが扉に向かって防音呪文を放った。

 

「シリウスには申し訳ないけど、これ以上、分霊箱に関する話を聞かれるわけにはいかないもの」

 

 ハーマイオニーは自身に言い聞かせるように呟くと、本題を切り出した。

 

「ハッフルパフのカップがレストレンジ家の金庫にあるらしいの。セレネはマンダンガスに盗み出してくるように頼んだんだけど、断られたみたい」

「ハッフルパフのカップ!」

 

 ハリーとロンは顔を見合わせた。

 ダンブルドアが予想していた分霊箱の1つだ。

 

「ホグワーツ入学前に、ハグリッドが教えてくれた。グリンゴッツは何かを安全にしまっておくには1番安全な場所だって」

「ええ、その通りよ。しかも、ベラトリックス・レストレンジはヴォルデモートの腹心の部下。彼女になら大切な分霊箱を預ける可能性も高いし、レストレンジ家の金庫なら隠しておいても安全だわ。」

「よーし! これで、分霊箱の在りが1つ分かった」

「セレネが分霊箱を破壊して回っているってこともね。これで、残すところ2つだ」

 

 ヴォルデモートの創り出した分霊箱は6つ。

 リドルの日記は破壊した。

 ロケットと蛇はセレネが破壊した。

 マールヴォロの指輪は先学期、ダンブルドアが破壊した物を持っていた。

 

「グリフィンドールかレイブンクローゆかりの品は分からないけど、ハッフルパフのカップはレストレンジ家の金庫にある」

「でも、どうやって金庫破りをするの?」

 

 ハーマイオニーが不安そうに尋ねてきた。

 グリンゴッツの金庫は、ゴブリンだけが開錠する方法を知っている。透明マントを使ってこっそり忍び込んだところで、金庫がどこにあるか探すこと自体が難しいし、そもそも開錠することもできない。グリンゴッツの大事な宝を隠してある最深部は、ドラゴンが守っているという噂もある。

 

「グリンゴッツのゴブリンに知り合いなんていないし、私たちはお尋ね者よ? 正面からも入れないわ。

 それに、セレネと違って、私たちには破壊する方法もない」

「セレネに守護霊を飛ばすことはできないかな? ほら、あの話す守護霊。セレネに事情を話せば、壊して貰えるかもしれない」

「冗談だろ?」

 

 ロンが口を挟んできた。

 

「スリザリン生だぜ? そりゃ、幾度か共闘したけどさ、完全に信じられるかどうか」

「ロン、セレネもお尋ね者よ? ハリーの隣に大きく出てたでしょ? 私たちと同じ境遇だし、絶対に味方だわ。……でも、連絡を取るのは難しいかもしれないわ。セレネが国外に逃げている可能性だってありえるもの」

「それはない」

 

 ハリーは断言した。

 

「セレネは逃げないよ。分霊箱探しを途中で放り出して、逃げるような人じゃない」

「だけど、どこにいるか分からないわ」

「1つだけ分かる方法があるぜ」

 

 ロンが言う。2人の眼がロンに向けられた。

 

「あいつがカップを手に入れるために、グリンゴッツを破れば新聞の一面さ。それでどこにいるか分かる」

「ははは、ね」

 

 ハーマイオニーが力なく笑った。

 グリンゴッツが破られた知らせは、まだ耳にしていない。ということは、セレネもまだ攻め込んでいないということだ。

 

「ロン、君のお兄さんがグリンゴッツに勤めていたよね?」

「ビルか……うーん、助けてくれるかな?」

「新婚生活はあまり邪魔したくないわよね。結婚式を潰された後だし」

 

 三人は額を合わせて考え込んだが、なかなか良い案は思いつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、セレネも分霊箱探しに行き詰まりを感じていた。

 

 あれから数か月経過したが、特に何も成果が上がらない。

 グリンゴッツの金庫破りなどしたが最後、ヴォルデモートに発覚してしまう。かといって、他の分霊箱の在りかは謎のままだ。

 

「この数か月で分かったことと言えば、蛇男の名前を出したが最後、人さらいがやってくるってことくらい」

 

 セレネは紅茶を一口飲むと、はあっと息を吐いた。

 この情報は自分で手に入れたものではなく、グリンデルバルドの配下となった死喰い人がもたらした情報だった。他にも、ヴォルデモートがなぜか外国へ行っているという情報も同じ出所からである。外国と言っても、義父を転院させたアジアではなく、ヨーロッパを回っているらしいので一安心だ。

 

「素朴な疑問だが、どうして『あの人』が外国へ行くんだ?」

 

 セオドールが本を読みながら尋ねてくる。

 彼にも分霊箱に関する情報を明かしたが、特にためになる話は出てこなかった。

 

「バカンスでないことは確かですね」

 

 セレネはもう一口、紅茶を飲んだ。

 

「ハリーが、外国の杖職人 グレゴロビッチについて話していました。もしかしたら、彼を探し求めているのかもしれません」

 

 ハリーはヴォルデモートの考えていることを垣間見ることが出来る。

 グレゴロビッチの名前も、そこで見たのだろう。そうでもないと、魔法史はもちろん、杖職人自体に興味がない青年の口から、グレゴロビッチの名前が出てくるわけがない。

 

「きっと、杖に関する情報を得るためですけど……あのサイコパスが『最強の杖』なんて眉唾物を探し求めているとは思えません。ですが……」

 

 8人のポッター作戦の後、ハリーが零していた言葉を思い出す。

 

「ハリーの杖が何故かサイコパスの杖を打ち負かしたらしいです。だから、ハリーの杖に対抗するため、最強の杖を探し求めているのかも」

「可能性としては考えられるな。ところで、だ」

 

 セオドールは本を閉じ、セレネの前に広がるテーブルに目を向けた。テーブルの上には、ダンブルドアの杖が置かれていた。

 

「そっちの杖を託された意味は分かったのか?」

「全然」

 

 セレネは空になったカップをテーブルに置くと、ため息をついた。

 グリンデルバルドに相談してみたが、彼は詳細を述べず、目を輝かせながら「その杖は、特別な杖だ。私の方が使いこなせる。預かってもいいが?」と言われたので、丁重に断った。

 ダンブルドアから「保管しておいてくれ」と託された品物を世紀の大悪党に譲渡するわけにはいかない。

 

「ただ、グリンデルバルドが見せた執着からして、噂の『ニワトコの杖』かもしれません」

「御伽噺に出てくる最強の杖か?」

 

 セオドールが訝し気に眉間に皺を寄せる。

 

「三兄弟の物語の?」

 

 セレネは頷いた。

 

「死を滅ぼす杖。だからこそ、なおさら、私に託した理由が分かりません」

 

 セレネの記憶が正しければ、ダンブルドアは「死を恐れてはいけない、避けようとしてはいけない」と口酸っぱく言われた気がする。おそらく、セレネが2年間も「」に浸り続け、直死の魔眼を開眼してしまったことをダンブルドアは気にかけていたのだろう。

 

 故に、どうして「死を滅ぼす杖」を渡されたのか理解に苦しむ。

 正直、今だって死が怖い。魔眼で視えてしまう世界も、現実に迫って来るであろう死も背筋が震えるほど怖い。いずれ、あの「」に落ちる未来を避けられるなら避けたい気持ちは大いにあった。

 

「ダンブルドアは、私に何を言いたかったのでしようか?」

「本当に生前、何も言われてないのか?」

「いくら考えても何も……はぁ、ピースの見つからないパズルをしている気分。というか、独力なら杖の正体すら絶対に辿りつけませんでしたよ」

 

 正直、グリンデルバルドがいなければ正解に辿りつくことはできなかっただろう。

 そう考えると、少し心がむかむかしてきた。

 

「だいたい、御伽噺の杖を実在すると信じ、受け入れる方が難しいです。

 長靴をはいた猫やラプンツェルが実在するなんて考えられません。いや、グリム童話には、青髭みたいに実在の人物をモデルにした話はいくつかありますけど」

「あら、グリム童話?」

  

 セレネが今は亡きダンブルドアに文句を言っていると、チャリティ・バーベッジ先生がクッキーの缶を持ってきた。

 

「私、グリム童話は好きよ。マグル文化の中に根付く魔法の痕跡はとても興味深いわ」

 

 バーベッジ先生の眼が光った。

 彼女はマグル学の教師だった。もちろん、過去形である。現在のマグル学の先生は死喰い人のルックウッドが就任したらしい。ホグワーツのマグル学はマグル協調路線ではなく、死喰い人によるマグル蔑視な教育が行われていることは確実である。

 なお、校長は死喰い人のスネイプ先生らしい。

 だが、セレネからしてみれば、もうどうでも良いことだった。お尋ね者になってしまったので、ホグワーツ特急に乗ることもかなわず、中途退学という形になってしまっている。セオドールもセレネに付き合ってホグワーツ特急に乗らなかったため、同じく中途退学だ。申し訳なさでいっぱいになるので、普段はあまり考えないようにしている。

 

 その他で唯一、ホグワーツに関することで気になるのは、親衛隊の隊員たちのことだ。

 願わくば、大っぴらにスネイプ政権に対する反対運動をしていないことを祈る。カロー姉妹達過激派が「ゴーント先輩をお尋ね者にした死喰い人たち許すまじ!」と暴走しているかもしれないが、下手に反対運動をして処罰を受けて欲しくない。

 そのことに関して守護霊を送ろうと考えたが、万が一、見つかって騒ぎになっても悪いので我慢する。

 

 セレネがそんなことを考えている間、バーベッジ先生は楽しそうにグリム童話について語っていた。

 

「シンデレラを変身させた魔女は実在したかもしれないし、長靴を履いた猫は『動物もどき』だったかもだし、ラプンツェルは髪を変身術で長くしていたのかもしれないわ。小人の靴屋がマグルに仕える屋敷しもべ妖精だったら面白いわよね」

 

 バーベッジ先生は心から楽しそうに話している。セレネは目尻を緩めると、先生に微笑みかけた。

 

「先生は、本当にマグルが好きですね」

「当然よ。私にはマグルの血が流れているの。有名なマグルでね、たしか、チャールズ・バベッジというんだけど……ご存じかしら?」

「解析機関のですか!?」

 

 セレネは驚きのあまり、立ち上がりかけてしまった。確かに名前が似ていると思ったが、まさか血の繋がりがあるとは思いもしなかったのだ。

 

「コンピューターの父の?」

「有名なのか?」

「有名ですよ!」

 

 セレネはセオドールに向き直ると、チャールズ・バベッジの凄さについて語った。

 

「天才数学者です。高度な計算をするための演算装置を創ろうとした人ですね。実際、機械式演算機を創ったり、世界初のプリンターも創り出した人です。

 この間、マグルの本屋で立ち読みした雑誌によると、地球人ではなく、宇宙人で新円卓の一員だったとか」

「……よく分からないが、最後の説だけは違うな」

「私の先祖は凄い人なのよ」

 

 バーベッジ先生はどこまで理解できたのか分からないが、幸せそうに頬を緩めていた。

 

「それがきっかけで、私はマグルについて深く調べていたの。ホグワーツで教鞭をとれたのは、ここ7年だったけど幸せだったわ。マグル生まれの子ともたくさん知り合えたし……

 あ、でも、今も幸せよ。あの人の傍で働けるのだから」

「あー……そうですか」

  

 セレネは目を逸らした。

 バーベッジ先生はグリンデルバルドを白馬の王子様と勘違いしているのだ。もちろん、実名も知った上でこの様である。先生はグリンデルバルドの世話を甲斐甲斐しく焼き、家事も進んで行っている。相手が闇の魔法使いとはいえ、紳士的で顔立ちの良い男性に、命の危機を鮮やかな手口で助けられたら惚れてしまうかもしれないが、いささかメルヘンな思考だと思った。

 

 もっとも、この部屋にはもう一人、メルヘン脳の人物がいる。

 

「……おい、なんか良くない想像をしただろ」

 

 メルヘン脳の男が咎めるように言ってくる。意外と勘のいい人物だ。セレネは素知らぬ顔でダンブルドアの杖を鞄に戻すと、ルーンに関する本を呼び寄せる。

 

 分霊箱探しが上手くいかない現状、セレネに出来ることは魔法の練習くらいだった。

 グリンデルバルドに教えを請い「悪霊の火」など闇の魔術の手ほどきを受けたり、ルーン文字の研究に励んだり、賢者の石の研究を再開したりしている。

 特に最近、セレネの興味を引いているのは、ルーン文字だった。

 以前から使ってきた文字だが、調べれば調べるほど奥が深い。何より、杖なしで発動できるところが面白い。たまに、セオドールも一緒に学んでいるが、彼はルーン文字との相性が悪いらしく、セレネほどの効果を発揮しなかった。

 

「ああ、お戻りになったわ!!」

 

 セレネが本を読んでいると、バーベッジ先生の声が浮足立った。

 それだけで、誰が帰ってきたのか分かる。セレネは少し視線を上げ、その人物を見つめた。最初はパーシバル・グレイブスの恰好だったが、部屋に入るにつれて変身術が解け、いつものソファーに座る頃には、すっかりグリンデルバルドに戻っていた。

 

「フロイライン、暇そうだな」

「魔法の勉強中です」

 

 セレネがツンっと言いかえす。気が付くと、セオドールが隣に座っていた。最初の頃よりはグリンデルバルドに対する警戒心が薄まったが、まだまだ拒否感を抱いている。セレネとグリンデルバルドが同じ空間にいるとき、セオドールは必ず隣に陣どっていた。

 

「そうか。実は、面白い物を手に入れてきた」

 

 グリンデルバルドは一通の封書を掲げてみせた。グリンデルバルドが杖を一振りすると、ふわりと封書が浮かび上がり、セレネの膝の上に落ちた。セレネは本を閉じると、封書を受け取った。セオドールも興味があるのか、覗き込んでくる。

 

「……招待状、ですか?」

「懇意の死喰い人が、運よく手に入れた招待状だ」

 

 セレネが一見するだけでも、ただの招待状とは異なり、かなり古式なものだと推察できた。 

 水晶のような紙片に真紅の封蝋が押されている。この封蝋が薄気味悪く、車輪と眼球を連想させる印章だった。宛名も差出人の名前もない。

 内側を開け、入っていた書状は思った通りの内容だった。つまり、「自分たちの宴に万障の巡り合わせで参加していただきたい」といった内容のことが、達筆な筆記体で書かれている。

 そして、最後にはこんな署名が記されていた。

 

「『魔眼蒐集列車、支配人代行』……?」

 

 あまりにも不吉な名称である。セレネが不快そうに呟くと、隣でセオドールが驚く気配が伝わってきた。

 

「知らないのか? 魔法の列車だ!」

 

 セレネが視線を向けると、彼はどこか弾んだ声で教えてくれた。もしかしたら、セレネの知らないことを知っていたことが嬉しいのかもしれない。

 

「母上から寝物語で聞いたことがある。北欧の霧の森を走る魔眼のオークション専用の列車だ。薔薇を司る吸血鬼が支配人で、夜な夜な自らの魔眼コレクションを自慢しているらしい」

「半分正解だ、少年」

 

 グリンデルバルドが言う。少年、と呼ばれるのが不快なのか、セオドールは一変して不機嫌な表情に変わった。

 

「数年前にトラブルがあったらしくてね。なんでも、日本人の魔女と使い魔が大暴れしたとか……その結果、支配人は手を引き、支配人代行がオークションを続投している。いまは北欧だけでなく、欧州全体を走っているそうだ。

 今回はイギリスで開催されることになったらしい」 

「それで、そのチケットが手に入ったということですね」

 

 セレネは書状を封書に戻すと、グリンデルバルドへ返した。

 

「私の魔眼をオークションに出せと?」

 

 セレネは眉間に皺をよせ、全力で嫌だと訴える。直死の魔眼は大切な武器だ。もちろん、死の世界が見えてしまうのは嫌いだし、頭痛がする。不快この上ないが、それを差し引いてでも失いたくない魔眼である。

 

「だいたい、ダンブルドアが言っていました。この眼を潰したところで、視えてしまうものは視えてしまうと。

 つまり、この眼を摘出したところで、移植した相手に同じ効果が発揮されるとは限らないのでは?」

「ほう、ダンブルドアがそんなことを言ってたのか」

 

 グリンデルバルドは口ひげを上げた。

 セレネは小さく頷いた。

 まだホグワーツに入学する前、自分が魔眼に怯えて両目を潰そうとしたとき、ダンブルドアが止めてくれたのである。両目を潰さないようにするための作り話なのかもしれないが、今では本当の話なのではないかと思えていた。

 

「ダンブルドアの言う通りだろうな。脳髄まで摘出しなければ意味がない。いや、脳髄を移植したところで、直死の力が発揮できるか疑問だがね。

 もっとも、それでも売りたいなら話は別だ。直死の魔眼ともなれば、値段は付けられない。恐ろしいほど高値で売れるだろう」

「だから、お断りします。私、絶対に売りませんから」

 

 そもそも眼球を摘出するなんて、震えあがりそうになるほど恐ろしい。

 下手にヴォルデモートとやり合うより、ずっと恐怖を覚えた。

 

「そもそも、オークションをやるほど人が集まるのですか?」

「集まるさ。魔眼は貴重だ」

 

 グリンデルバルドは手を広げた。

 

「イギリスの魔法使いは価値に気付いていないが、魔法使い全般で見れば浄眼を持っていない者も多い」

「つまり、ランクの低い浄眼ですら欲しがる人がいるということですか」

 

 セレネは腕を組んで招待状を見下した。

 列車の旅は浪漫があるが、魔眼を摘出し、それを欲しがるなんて薄気味悪い集団のように思えた。ないものはない、あるもので努力することはできないのだろうかと考えてしまう。

 もっとも、自分もない物ねだりをしていることがあるので、あまり一概に悪いとは言えない。

 

「この列車では移植まで完璧に行える。魔眼の移植は危険が伴うが、魔眼蒐集列車は違う。ここでは安全に完璧なる摘出と移植ができるのだ。だから、人が集まる」

「……では、貴方の未来視を売ると?」

 

 セレネはグリンデルバルドをじとっと見つめた。

 彼の片目は未来が視える。それを若かりし頃は悪用して魔法界の平定を推し進めた。もしかしたら、彼が牢獄にいた最後の夏、セレネが面会に来ることも視ていたかもしれない。

 

「まさか。私は魔眼を売らない。これには、利用価値があるからな」

「では、何故?」

「気分転換さ。ここで考えあぐねても脳が茹で上がるばかりで、何も解決できない」

 

 グリンデルバルドは少し楽しそうに言ってくる。まるで、ピクニックを計画する子どものように明るい口調だ。だからこそ、警戒心が強くなる。この男がタダで楽しい行事を提案して来るとは思えない。何か裏があって、この封書を手に入れて来たに違いない。

 

「本当に、私の魔眼を売るつもりではないと? 行ってから『実は売り飛ばすつもりでした』はなしですよ?」

「もちろんだ。魔眼のオークションとは実に興味深い。一度参加してみたかったものだ。

 君もどうかね、フロイライン? 参加者1人につき、2人までなら同行できる」

「……いいんじゃないか?」

 

 セレネは唖然とした。その声は隣の青年から聞こえてきたのだ。

 普段からグリンデルバルドに警戒心を抱く彼が、よもや賛成するとは思いもしなかったのだ。セレネが意外そうに見上げていると、彼は心外そうに呟いた。

 

「『あの人』に関係しているとは思えないし、これを逃したら、もう二度と機会がないかもしれない。悔しいが、あいつの言う通り、家に閉じこもっているより生産的だ。

 それに、御伽噺に出てくる列車に乗れるんだ。ちょっとわくわくしないか?」

「それは、そうかもしれませんが……」

「彼の言う通り、オークションを見ているだけでも勉強になるのではないかね? しかも、列車には売り手も乗ってる。もしかすると、他の魔眼の持ち主と知り合うことで、魔眼の新たな使い方が学べるかもしれない」

 

 一理ある。

 すべて正論だ。納得のいくもので、断る理由がなくなる。

 それに、ヴォルデモートの配下が気になるなら、変身術で姿を変えればいい。髪の毛の色を変えるだけで、意外にも別人のように見えるのだ。さらに、フードか何かで顔を隠してしまえば、よもやお尋ね者魔女とは思われまい。

 ここ数週間、滅多に外に出かけることはない。いささか気分が晴れていないのは事実。丁度良い気分転換になるだろうし、魔眼の新たな運用方法についても学べるかもしれない。なにより、オークションはともかく、汽車の旅自体は魅力的である。

 

「……そうですね」

 

 だが、なにかがおかしい。

 喉の奥に魚の小骨が刺さっているかのような違和感を覚える。

 なによりも、グリンデルバルドの優美な微笑が引っかかる。怪しい。とてつもなく怪しい。あの男が「気分転換に」なんて理由で、このような怪しい列車に乗せるか? 常識的に考えれば否である。

 分霊箱として、グリフィンドールかレイブンクローの魔眼でも出品されるなら話は変わって来るが、彼らが特別な魔眼持ちだったとは聞いたことがない。それに、さすがのヴォルデモートでも魔眼を分霊箱にはしないだろう。いや、蛇のように生き物を分霊箱にしていたから、ありえる、のか?

 

「行きたくないなら構わない。私一人で行く」

「いえ、あなた一人では行かせられません」

 

 セレネは反射的に答えていた。

 いかにも胡散臭いグリンデルバルド一人で怪しげな列車に乗せる? そのようなこと、見逃すわけにはいかない。絶対、列車内で怪しげな取引をしてくるに決まっている。ただでさえ、彼の手綱を握れているのか不安になるときがあるのだ。

 これ以上、妙な真似をさせるわけにはいかない。

 

「フロイライン、つまり同行するのだな?」

「もちろんです」

「オレも行くぞ。お前が妙なことに巻き込まれないか、見張らないといけないからな」

「……まあ、そうなるでしょうね」

 

 セレネは疲れたように肩を落とした。

 セオドールが、セレネとグリンデルバルドの二人旅を許すはずがない。

 

「まあ、とても楽しそうだこと」

 

 バーベッジ先生は、ころころと鈴の鳴るような声で笑っていた。

 

 

 

 

 それから三日後。

 いつもより霧が濃い夜、セレネたち三人はロンドン郊外の古い駅を訪れていた。

 駅と言っても、とっくに放棄されている。当然、構内も閉鎖されており、人っ子一人いない。ペンキが剥げ、十数年前に流行った化粧品の色褪せたポスターが物悲しく風に揺れている。もちろん、入り口も閉ざされていたが、グリンデルバルドは特に気にする様子もなく、柵を乗り越え、中へと踏み込んでいく。

 

「ところで」

 

 セレネも柵を乗り越えながら、グリンデルバルドを見上げた。

 

「何故、眼鏡を?」

 

 グリンデルバルドはパーシバル・グレイブスの恰好をしていたが、不思議なことに眼鏡をかけていた。彼は「よくぞ聞いてくれた」と言わんばかりに微笑むと、眼鏡のつるを持ち上げた。

 

「魔眼殺しだ。魔眼の中には、一方的に契約を結んでくるものもある。それ避けだ。用心に越したことはない」

「それなら、彼にもつけさせるべきでは?」

 

 セレネは後ろから柵を乗り越えてくる青年を指さした。

 自分は既に魔眼殺しをかけているから良いとして、何の対策もしていない一般人が後ろにいるのだ。いまの話は聞き流せない。

 

「彼は大丈夫だろ。いいかね、フロイライン。この三人組の中で、誰が代表に見える?」

「……悔しいけど、貴方ですね」

 

 実質的には、セレネがリーダーだが、外面だけ見ると立派な成人男性であるグリンデルバルドが代表だ。実際、彼の同伴者として自分たちは連れてこられている。

 

「このような場合、使い捨てにできる従者よりも、代表を狙うのが常だ。だから問題ない」

「そうですか」

「もっとも、魔眼殺しが1人分しか用意できなかったということもあるがね」

 

 グリンデルバルドはそう言いながら、駅構内へと進んで行く。

 不思議なことに、廃棄された駅にもかかわらずガス灯がひとつ、ふたつと光を投げかけている。おぼろげな光を覆うように霧が立ち込め、石造りのアーチが並ぶ中、薄い霧の奥に大小の人影が佇んでいた。その風情自体が、まるで百年も昔の光景のようであり、絵画の世界に迷い込んだようだった。

 

 薄暗いホームにはセレネたちを除けば、あの2人しかいない。

 死喰い人かもしれない、とセレネは警戒した。グリンデルバルドの死喰い人情報では、死喰い人は魔眼蒐集列車に一切関わりを持たない、とのことだったが、本当かどうか分からない。

 

 一応、セレネは変身術で髪を明るい茶色に染めていた。背中まで伸びていた髪も肩辺りで切った。それでも、ばれたら面倒なのでフードを目深にかぶっている。ポリジュース薬で変身した方が楽だったかもしれないが、何日分も同じ人の髪を用意できるはずもない。

 バーベッジ先生に頼めば、三日分の髪の毛くらい提供してくれたかもしれないが、悲しいことに、先生も死喰い人から追われる身だった。

 

「あら、貴方たちも列車待ちですこと?」

 

 霧の向こうから、凛とした声が聞こえてきた。

 つかつかと小さな影と大きな影が近づいてくる。現れたのは、10歳前後の少女と2メートル近くある大男だった。一瞬、森番のハグリッドを連想したが、あそこまで毛むくじゃらではない。モヒカンとサングラスが印象的で、マフィア映画にでも出てきそうな男だ。

 

 けれど、この男が主人ではない。間違いなく従者だ。

 一目でそう判断できるほど、10歳前後の少女は優美さと威厳を感じさせた。目の覚めるような青いドレスはサファイアを思わせ、同じ色のリボンで金髪の縦ロールをまとめている。なによりも、同性の自分でさえ眼を惹く美貌。

 たった10歳程度にもかかわらず、少女の在り方は鮮烈だった。

 

「駅にいるのだから、列車待ちというのは当然だろう」

 

 グリンデルバルドは平然と余裕を持った態度で、彼女の問いにに答えた。

 

「同じ列車だとお見受けするが」

「わざわざこのような貧しい田舎駅まで足を運んでいるのですから、当然、同じ列車でしょう」

 

 後ろの大男ではなく、少女が華やかな声で受け答えをしている。少女の手には、グリンデルバルドの持っているのと同じ招待状が握られていた。

 

「私はパーシバル・グレイブス。アメリカ出身です。以後お見知りおきを、レディ」

 

 グリンデルバルドは胸に右手を当てると、静かに偽の名前を口にした。

 

「あら、アメリカの方ですのね。アメリカ人は少々雑な方が多いと聞いていましたが、噂とは違い、随分と紳士的ですこと」

「それは光栄」 

 

 たがいに微笑を交わし合っていた。

 否、そのように見えるだけだ。実際は、鍔迫り合いのような張り詰めた雰囲気を漂わせている。お互いに格を見定め合っているような緊張感だ。

 

「自己紹介が遅れました」

 

 少女は軽く咳ばらいをすると、上品な狩人のような面持ちでグリンデルバルドを見つめた。

 

 

「私はエーデルフェルト家次期当主、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。フィンランド出身ですわ」

 

 

 

 

 




〇魔眼について
言及するのは、53話以来。
浄眼の説明をするうえで、原作や映画で色々な人物の瞳の色を確認してみたところ、本当に純血魔法使いに青い瞳が多くてびっくり。
それとも、単にイギリス人に青眼が多いだけ?

〇魔眼蒐集列車
2018年秋、本作の執筆再開にあたって、新たに構築し直したプロットに組み入れたストーリー。
ロード・エルメロイ二世の事件簿の文庫化、FGOコラボイベント、おめでとうございます。
でも、イベントの周回が辛い。林檎ェ……

〇ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
北欧における純血一族の跡継ぎ。97年なので、年齢は10歳前後。
このタイミングで登場させれば、触媒的な何かが働いて、我がカルデアにルヴィアやライネスが召喚できると思い、投稿時にガチャを回したが、聖晶石が爆死しただけだった。

彼女の登場は、例えるなら映画版や外伝にのみ登場するゲストキャラ。
物語本筋に絡んでこないし、暗躍もしてないし、純粋なオークションの買い手。
投稿が反映されたら、また懲りずにガチャを回す予定。

令和最初の更新、いかがでしたでしょうか。
令和の目標は、誤字を限りなく減らすことです。
次回以降も楽しみながら書きたいと思います。今後もよろしくお願いします。



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