今後書く予定の作品に、おまけとして積み上げる予定で書き溜めた代物です。気が付いたら増えてるかも。

同おまけコーナーで実験的に全て会話文の形を取ろうと思ってるので、必然的にこちらもほぼ会話文です。

高校数学程度の知識でわかる内容メイン。
(成績優秀枠筆頭の)有咲との絡みがほとんど。

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モンティ・ホール問題

「有咲、モンティ・ホール問題って知ってるか?」

 

「アレだろ?3択の内、最初に1つ決めて、それ以外のハズレが1つ開けられたとき、変えた方が得か、変えない方が得かっていうやつ」

 

「答えは?」

 

「変えた方が当たる確率が2倍」

 

「正解。説明できるか?」

 

「最初に選んだ選択肢が当たりだったとする。そのとき、変更後は必ず外れる。そして、これは$\frac{1}{3}$で発生するから、$\frac{1}{3}$で外れる」

 

「そうだな」

 

「次に、最初に選んだ選択肢がハズレだったとする。このとき、開けられるハズレは、選択されていない残り1つのハズレだから、選ばれても開けられてもいない最後の1つが当たりということになるから、変更すれば必ず当たる。最初にハズレを選ぶ確率は$\frac{2}{3}$だから、$\frac{2}{3}$で当たるってことになる」

 

「よくできました。……実はそれに関して、性差別まがいの大論争があった」

 

「え、何それ……」

 

「そもそもこの問題は、アメリカのテレビ番組のモンティ・ホールでのゲームを、数学的に考えたものなんだ」

 

「へぇ」

 

「どっちが得か、を真面目に考えた人はいなかったんだろうが、ある日、この問題をアメリカのニュース雑誌『Palade』のコラムの1つ『Ask Marilyn』に投書した人がいたんだ」

 

「『Ask Marilyn』って?」

 

「直訳して『マリリンに聞く』だとか、センスの問題なのか『マリリンにおまかせ』っていう日本語訳になってたりするんだけど、世界最高IQの228を記録したマリリン・ボス・サバント*1っていう女性が、読者からの質問に答えるコラムなんだ」

 

「それで彼女は?」

 

「即答した*2よ。『変えた方が2倍当たるのだから変えた方が得だ』って。そうしたら全米から1万通の批判メールが届いたんだ。あ、メールって言っても当時eメールのシステムは無かったから全部封書だったらしい」

 

「マジかよ……」

 

「しかもその中の1000人程度は博士号保持者だったらしい。直感に反する答えが気に食わなかったんだろうな」

 

「うへぇ……」

 

「彼女は、おとなしく読めば納得できる説明も何度かしてるんだが、『彼女こそ間違っている』っていうジェンダー問題に絡んだ感情的な大論争に発展した」

 

「最終的にどうなったの?」

 

「コンピュータを使ったモンテカルロシミュレーション*3によってマリリンが基本的に正しいと確認された。自分もこないだ表計算ソフトで試行回数10万回を繰り返しやって平均を取ってみたところ確率は66.67%くらいになった」

 

*1
Marilyn vos Savant

*2
要出典。とはいえ、持論を最後まで擁護し通したところを見るに迷いはなかった模様。

*3
ランダムな乱数を使用してモデルを大量に生成し、その実測値で確率に迫ろうとする手法。論理より結果優先だが、立派な数学的手法の1つ



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