第一話 呪い人
かつてポケモンは世界の人々から『魔獣』と呼ばれていた。
その
そして人々の中にも、そんな魔獣と心を通わせることのできる人間が存在していた。
けれど、彼らは魔獣を使う人間兵士、『魔獣使い』として子供、大人、年寄と関係なく招集されていた。
そう、魔獣使いの所有数によって戦争の優勢は決まったも同然だった。
そんな中、特に子供は今後の戦争を左右するとして研究、実験、洗脳が行われていた。
魔獣を使った戦争は長い、長い月日を費やされた。
その間におきた人間、
そんな戦争を止めたのは、伝説と呼ばれる
人間の手から解き放たれた
戦争と言う枷から解き放たれた人間たち。
彼らは、一からその関係を直していった。
魔獣たちはのちにモンスターと呼ばれ始める。
そして、そのモンスターをしまうボール「モンスターボール」に入るようになった。
それはポケットにも入る。
故にポケットモンスター。
縮めて『ポケモン』と呼ばれ、人間とより良い関係を築いていった。
中には、人間を嫌うモノたちもいる。
そして人間もまた、ポケモンを嫌う者たちもいる。
そんな曖昧で、けれど強い絆に結ばれた人とポケモン。
そんな人とポケモンたちの関係を見続ける一人の少女がいた。
彼女を知るポケモンは、戦争を終わらせた伝説ポケモンたち。
そして人間との関わりを嫌い、ポケモンだけの世界で静かに暮らす『隠された森』に棲むポケモンたちだけであった。
彼女は、
彼らは言う。
彼女は『呪い』を持っていると。
終わる事の出来ない長い呪いを受けた。
それは世界全てを敵に回した代償だと。
だからだろうか。
彼女は人にも、ポケモンにも
手を貸すが、
全ては彼女の気分次第。
彼女を知る人間は、彼女を『呪い人』と呼ぶ。
善人、善ポケモン、悪人、悪ポケモン……
彼女は気分次第で関係なく手を貸す。
その先にあるのは、彼女にも解らない。
けれど、彼女は救う。
彼女は見守る。
彼女は関わり、手を貸す。
この理由は、誰も知らない。
彼女を知る伝説のポケモンたちも。
それこそ、自分自身でさえも……
――とある森の中。
一人の少女が歩いていた。
透き通る紫色の長い髪を風になびかせ、ただ歩いていた。
風と共に、鈴の音が鳴る。
「リーン、チリーン」と優しい、それでいて落ち着く鈴の音が響く。
どれくらい彼女は歩いていただろうか。
彼女は、一人の小さな少年に出会った。
この森で出会った一匹の水ポケモンと仲良く遊ぶ子供。
黒髪に赤い帽子を被り、Tシャツと短パン、裸足で水たまりで遊んでいた。
彼女は、その子供に興味を持った。
「お前は、その子の友達か?」
目線を子供に会わせて少女は言う。
ポケモンの方は、少女を見て少し脅えていた。
だが、子供は真っ直ぐな綺麗な瞳で言う。
「ああ!」
「会ったばかりなのにか?」
「そんなの関係ない!」
「そうか……」
少女はポケモンに目を向ける。
脅えていたポケモンは脅えるのを止めた。
それは敵意を感じなかったからだ。
そして彼女はジッと見つめる。
小さく笑みを浮かべると、
「お前は、こいつと共にいたいか?」
「いたい!」
「なら、これをやろう」
少女は一つのボールを渡す。
それはモンスターボールと呼ばれる、ポケモンをその中にしまう事の出来る道具。
子供はそれを手に持つと、
「どうやら、そいつも、お前と共に居たいらしい」
「ホントか!でも、どうすればいい?」
「本来なら、ポケモン同士で戦わせ、弱らせてボールを投げるのが楽なのだが……心が通じ合っているのなら、それはいらない。そのボールをそいつの前に置いてみろ」
子供は言われた通りに、ボールを置く。
そのポケモンは頭を突く。
ボールが開き、中に吸い込まれ、ボールが左右に揺れて「カチッ」と言う音が鳴る。
少女はそれを持ちあげ、子供にもう一度渡す。
中には、共に遊んだポケモンが入っていた。
ニコニコ嬉しそうに笑っている。
「それを投げてみろ」
「ああ」
子供がボールを軽く投げると、中からポケモンが出てくる。
子供は目を輝かせてポケモンを抱きしめる。
「忘れるな。ポケモンにも、お前と同じ感情があり、意志がある。そいつにとって、お前は友であり、親であり、仲間だ。どう使うかはお前次第。そして、そいつがお前に従うかどうかも、そいつ次第。ポケモンは優しく、それでいて恐い生き物だ。だが、育ての親となるお前によって、そいつは良くも悪くもなる。要は育て方の問題だな」
「難しいな」
「ああ。難しいものだ」
「でも、ずっと仲良くする!」
「ああ。それでいい」
少女は子供の頭を撫で、立ち上がる。
手を差し出し、
「さあ、送ってやる。
子供は少女の手を取り、歩き出す。
森の出口に来ると、子供の見慣れた場所に出る。
少女は手を放すと、
「もう、
「?」
「そいつと仲良くな」
「ああ!あ、そうだ!ありがとな、姉ちゃん!オレの名前はーー」
子供の名前を聞き、少女は小さく笑みを浮かべて森に戻る。
――とある研究施設の家。
その部屋は資料や本、機械とたくさんのモノに囲まれていた。
機械や棚にはモンスターボールがある。
その中には色々な種類のポケモンたちが入っていた。
そこに一人の老人が白衣を着てパソコンを打っていた。
そして画面に映る数値やら、図やら、何やらを睨む。
と、「ピンポーン」と言う音が一つ鳴る。
老人が立ち上がり、扉を開けるとフードで顔を隠した者が立っていた。
「久しいな、ユキナリ」
「おお、お前か。久しぶりだな」
老人は彼女を招き入れる。
モンスターボールの中には多くのポケモンたちが入っている。
そのポケモン達は彼女を見ると、少し脅えていた。
彼女はそれを横目で見て、歩いて行く。
二階の奥部屋まで行き、彼女はソファーに座る。
そこにコーヒーを持ってきた老人が、
「いい加減、フードを取ったらどうだ?」
「そうだな」
彼女はフードを取り、マントを取る。
と、紫色の長い髪がパサッと落ちる。
赤い瞳が周りを映し出す。
胸には青く透き通った石が輝いている。
そこにはもう一つ。
銀色の鈴が付いている。
けれど、それには鳴る為の小さな球はない。
しかし、その鈴からはとても綺麗な鈴の音がなるのだ。
それに彼女は、変わった黒いコートに近い服を着ている。
どこかの軍服にも見えるそれを着た少女。
その腰にはバッグ。
そしてモンスターボールが六つ見える。
その内、微かだがポケモンが動くのが見える。
右手首には、通信機らしい機械をつけている。
彼女はコーヒーを一口飲むと、
「そう言えば、図鑑の構成が完成したそうだな」
「うむ。後は、ポケモンたちのデータを入れるだけだ」
と、目線が近くにあった赤い機械に向けられる。
そこには、二つの変わった箱のような形をしたモノがある。
「……三つできたのではなかったか?」
「一つは孫にやった。お前とは行き違いになったのだろうな」
「ふ。お前も、身内には弱いか」
「いや。あの子の実力をもってすれば、の話じゃ」
「そうか」
彼女はコーヒーを飲む。
「で、シオン。お前はどうしてここに?」
少女の名はシオン。
見た目的には十代そこらだ。
だが、その見た目とは裏腹に、彼女は目の前に居る老人よりも遥かに年上だ。
彼女を知る者は、彼女の事を『呪い人』と呼ぶ。
いつの時代からいるのか、はたまた実は人間ではないのか。
それは誰にも解らない。
シオンはコーヒーを揺らし、
「仕事だ。ポケモン協会会長に、“ジムリーダーの抜き打ち検査をしてこい”とな。ついでだから、お前のとこにも来た訳だ」
「うむ、そうか」
彼女は立ち上がり、ポケモン図鑑を手に取る。
そして再び座ると、操作を始める。
「いい感じに、出来ているではないか」
彼女は、それを老人に渡す。
老人はそれをポケットにしまい、
「だろう。ところで、お前のいつも連れているポケモンは一緒ではないのか?」
「あー……ああ。里帰りさせてる。あとはそうだな……マユラに呼び出しくらってな」
「むむ、マユラか……」
と、とある苦い思い出を思い出しているのだろう。
そして彼女は、ふと思い出したように、
「そうだ。ここにくる途中、お前の話を聞いた」
「話じゃと?」
「ああ。『町外れに住んでいる、へんくつじじい』とな」
「なんじゃと⁉︎」
「今や世に知れ渡る『オーキド博士』が、じじい呼ばわり……。だが、確かにそうかもな。あの頃と比べて、随分と歳をとったな」
と、彼女は目を細める。
そう、彼女の目の前にいるのはオーキド博士。
ポケモンについて研究している第一人者。
その名を知らぬ人はいない。
そんな人だ。
オーキド博士は腕を組み、
「逆に、お前は変わっとらんな。見た目も、中身も」
「それが私だからな。この服も、私が私であるための物だ。
「シオン。わしは今も昔も変わらん。ポケモンに抱く想い。彼らを知れば知るほど、わしは新たな発見と出会う。それがとても楽しい」
「お前らしいな」
と、話していると「ピンポーン」と言う音が何回も聞こえてくる。
「どうやら、客人のようだな」
「仕方ないのぉ」
彼は研究所の方へ歩いて行く。
オーキド博士はチャイムが鳴り止むのを聞いた。
だが、何やら研究室の方で話し声が聞こえてきた。
「ホラ。見てみろよ、ニョロゾ」
声からして幼い少年なのは解る。
そして、ガタガタと言う小さな音が聞こえてくる。
オーキド博士が扉を開けると、案の定少年が居た。
だが、問題なのは彼が手にしているモンスターボールだ。
あれは自分が現在世話をし、生態を研究しているポケモンが入っている。
それを持っていると言うことは……
「こんっの……、ドロボーめ!」
と、詰め寄った。
少年は慌てたように、
「あ、あの……。いや、オ、オレは……」
オーキド博士の鬼の形相でさらに詰め寄る。
少年は後ろに下がっていく。
よろけた彼は、ある機械の装置に当たった。
「わとと……」
「あああ‼それは!」
「えええ⁉」
カチッと言う音と共に、モンスターボールが一斉に開く。
ポケモン達がそれに合わせて、一斉に飛び出してくる。
「「うわぁあああ‼」」
叫び声が響き渡る。
二階に居たシオンは、コーヒーを飲みながら笑みを浮かべていた。
しばらくして、ドタバタと世話しない音が聞こえてくる。
そして、オーキド博士の声が響く。
「わしは少し出てくるぞ!」
彼女は立ち上がり、窓に近付く。
窓の外を見ると、オーキド博士が自転車を漕いでいるのが見える。
その横には、駆けて行く赤い帽子と上着を着ている少年が居た。
シオンは笑い出す。
「アハハ!これもまた、運命か……」
彼女は持っていたコーヒーカップを机に置き、
「さて、ユキナリが帰って来るまでに、ここのポケモン達を何とかするか。」
シオンはマントを持って、下の研究所に降りる。
彼女はモンスターボールを全て開く。
それと同時に、ポケモン達が暴れ出す。
が、彼女の鈴の音を聞くと落ち着きを取り戻す。
しばらくして、彼女はポケモン達をモンスターボールに戻す。
そこにタイミングよく、ボロボロになったオーキド博士が帰って来た。
「随分とお疲れだな。流石に老体で暴れるのは辛かったか?」
「全くじゃ……こんな事なら、お前にも手伝って貰えば良かったわ」
「だが、これはお前も悪いぞ。たまにはボールから出してやれ。ストレスが溜まっていたぞ」
「最近は手が離せなくてな」
「助手でも取ったらどうだ」
「そうしたいのは山々なんだがな。そうもいかんのじゃ」
「そうか」
シオンは彼のポケットを見た。
そこを指差し、
「
「ん?ああ、とても見どころのあるガキだった」
「では、楽しみにしておこうか。それと、ユキナリ」
「なんじゃ?」
「このマサラの地はどうだ?」
「とても良い。ここを選んだのは正解じゃ」
「ふ。なら良かったよ」
シオンはマントを羽織る。
扉に手をかけ、
「そうだ、ユキナリ。お前の孫の名は?」
「グリーンじゃ」
「覚えておこう。ではな」
「おお、またな」
シオンはフードを被って研究所を後にした。
――シオンはある場所に来ていた。
ここはどこかの深い森。
花畑に覆われた日の当たる一角。
そこには大小の幾つかの墓がそびえ立つ。
大きい方には数字が。
小さい方にはポケモンの名前が彫られていた。
膝を着き、その一つに触れ、
「今でも、お前たちの事ははっきりと覚えている。お前たちが散ったあの日を。けれど、人とポケモンの絆は今も続いている。恨むのなら、私を恨んで静かに休むといい。時は長い。私は、
そう言って立ち上がる。
後ろに歩き音が聞こえてきる。
「珍しい……あなたがここに来るなんて」
「何、今一度自分を確かめておこうと思ってな」
「まだ、彼らの事を覚えているのですか?」
「ああ。彼らを忘れると言うことは、自分を忘れると言うことだ。と、言っても……
「シオン……」
「それとな、マユラ。私は、とても興味を持った人間に出会えたよ。とても良い目をした子供に。昔と変わらぬ、あの子の目……アレに凄く興味がある」
「あまり目を掛け過ぎて、壊してはダメですよ」
「解っているさ。さて、私は仕事に戻る。アイツらを、よろしく頼むよ」
「ええ」
そう言って、シオンは歩き出す。
深い森の中をひたすら歩いていく。
一人、黙々と歩き、森を抜ける。
先程とは違う森へと出る。
さっきとは違う少し雰囲気が変わった森の中、歩くとあるポケモンにであう。
お腹を大切そうに護っているポケモン。
その中には、少し弱った子供ポケモンがいる。
シオンが近付くと、唸りを上げている。
だが、彼女の鈴が鳴ると、ポケモンは落ち着きを取り戻す。
「火傷を少ししているな。子供の方は……薬を貰ったのだな。だいぶ良くなっている」
ポケモン達の方に手を向ける。
彼女の胸元にある青く透き通った石が淡く光り出す。
二匹のポケモン達の傷も完全完治された。
「さて、ガルーラ。
――西の町ニビシティ。
ここには、『ポケモンジム』と言うポケモントレーナーとしての実力のある者が存在する。
ジムには『ジムリーダー』が存在する。
ポケモンの持つそのタイプのエキスパートだ。
そのジムリーダーには使命がある。
そう。
ポケモンジムは、ポケモン協会という組織が創り上げたポケモンと人を鍛える場所。
ポケモントレーナー達は強さを求めて、彼らにポケモンバトルを挑む。
彼らに勝ち、その証である『バッジ』を入手できる。
バッチを持つという事は、ジムリーダーにその強さを認められた事になる。
さて、このニビシティのジムリーダーの名は『タケシ』。
いわタイプのエキスパートだ。
そして、彼の持つバッジは『グレーバッジ』。
そのポケモンジムの前に来たシオン。
「さて、どうテストしようか……」
と、奥の方から声が聞こえる。
「おい、聞いたか!」
「ああ、あれの事だろ。とうとう始まるんだな!」
「その為に、今回ジム戦と言う形で挑戦者を募っているらしい」
「なら、俺らも気を引き締めていかないとな!」
「おうよ‼」
シオンは物陰に隠れて話を聞いていた。
そして顎に指を当て、
「なるほど……丁度よいではないか」
ーーそのバトルに参加するのか?
どこからか、声が聞こえる。
今彼女の傍には誰もいない。
けれど、声がする。
だが、彼女は何の違和感もなくその声にこたえる。
「いや、観戦させて貰う。それを見たうえで、どうするかを決めるよ」
彼女は歩いて行った。
三日後、多くのポケモントレーナーがジムに集まった。
シオンは一番高い観客席の後ろの手すりに寄りかかり、多くのトレーナー達の闘いを見ていた。
そこには、いくつかのリングがある。
そこでトレーナー達はニビジムの精鋭隊とバトルしていた。
このジムリーダータケシと戦うには、ジムの精鋭隊を倒さねばならない。
その予選を突破したものが、彼とのバトルをできる挑戦権を得る事ができるのだ。
「おや?あれがユキナリの孫か……」
ーーお前から見て、どんな奴だ?
シオンはジッと、バトルを冷静かつ淡々と進めていく茶髪で紫の服を着た少年を見る。
「そうだな……若い頃のユキナリに似てるよ。だが、弱いな。確かに、ポケモンを育てる才能はある。だが、戦いに関しては、あっちの彼の方が才能がある」
そう言って、少し離れた所でバトルをしている赤い上着を着た少年を見る。
そこには、二匹の瀕死になりかけの
彼はついこの間、オーキド博士から図鑑を授かった者だ。
シオンは笑みを浮かべて、
「ま。磨けばどちらも良く育つ、と言ったところか」
ーー随分と楽しそうだな
「これも、運命というヤツだ。なにより、私はとても興味がある」
そう言って、モンスターボールを一つ取り、中のポケモンをじっと見る。
彼らの闘いは続き、赤い上着の少年が挑戦権を得た。
勿論、オーキド博士の孫のグリーンも、挑戦権を得ていた。
彼が連れて来たポケモンは、まだ懐いていないピカチュウだった。
ジムリーダータケシの出すイワークの『いわおとし』。
繰り出される岩を華麗に避ける。
だが、その一つがコツンと当たる。
ピカチュウは怒りだし、トレーナーに襲い掛かる。
彼は、ピカチュウが出す電気を慌てて避ける。
シオンは、それをクスクス笑いながら見ていた。
だが、対戦者であるジムリーダータケシは怒りだし、イワークの『ロケットずつき』が繰り出される。
回転しながら、勢い良くピカチュウに突っ込んでいく。
それを、トレーナーである彼が身を挺して庇った。
ピカチュウを抱え、避ける。
ーー嬉しそうだな
「ああ、だって……彼はポケモンの心を掴むのが早い。そして気付くのも早い。それは珍しい事だ。だからこそ、あのピカチュウも心を開き始めた」
そう言って、横目でピカチュウを見る。
そこには、何かを決意していたピカチュウの姿。
再び、イワークの『ロケットずつき』が繰り出される。
だが、ピカチュウの電気が周りに広がりを帯びだし、思いっきり叩き付けた。
ピカチュウの『10万ボルト』が繰り出された。
電気の振動が全身に響き渡ったイワークは、崩れ落ちる。
「勝負あったな」
ーー行くのか?
「ん?ああ、彼に少しあってからな」
そう言って、建物の外に出る。
入り口の方からは、赤い上着の少年が掛け出て来た。
「おっと」「うわっ⁉」
シオンは彼を支え、
「すまない。まさか、走って出てくるとは思わなかった」
「いや、俺も悪かったよ」
「それにしても……随分とポケモン達がお疲れのようだ」
と、彼の持つモンスターボールを見る。
彼は頬を掻きながら、
「ホントはジム戦をやる前に、ポケモンセンターに行きたかったんだけどさ。なんかトラブルが起きて使えなくて」
「なるほど。少し見せてみろ」
「え?はい」
少年は、持っていたモンスターボールを三つ渡す。
彼女は、中のポケモン達をじっと見る。
胸元の青く透き通った石が光る。
「君のバトルは見させて貰ったよ。とても面白いね、君も。彼も」
「もしかして、グリーンの事か?」
「ああ。君達には期待している。これも、運命だろうからな」
そして、モンスターボールを彼に返す。
シオンは歩き出し、
「では、君の旅路に良き出会いを祈っておくよ、
レッドと呼ばれた少年はキョトンして、
「え?俺、名乗ったけ?あ、そっか。名前聞いてたのかもな。あれ?うーん、わかんねーや」
そして自分のポケモン達を見る。
そこには元気はつらつとした姿があった。
「え?ええ⁉」
彼の驚きの声が響き渡る。
シオンはそれを聞き、笑みを浮かべる。
彼女は戦いも終わり、観客も挑戦者も居なくなったジムの中へと入る。
ジムの中に入ると、
「なんだ、お前は」
「バトルをしに来た」
と、モンスターボールを一つ手に取る。
精鋭隊は怒りだし、
「今回の挑戦権はもう終わった。次に来るんだな」
「そうも言ってられんのだ。こちらも
「んだとぉ‼」
「では、君たち全員を倒したら、ジムリーダーと戦わせて貰おう」
彼女はモンスターボールを開く。
そこから一匹のポケモンが出て来る。
綺麗な鬣を揺らし、咆哮を上げる。
「私の使うポケモンは、炎タイプのウインディ。先行はくれてやるよ」
「ええい!やっちまえ‼」
彼らは岩タイプのイシツブテやノーマルタイプのガラガラなどを出してくる。
シオンは少し首を傾げると、
「ウインディ」
「ウオォオン‼」
彼らの繰り出す攻撃を避け、ウンディは彼らを睨む。
ポケモン達はビックと一度反応する。
シオンは左手を腰に当て、
「ウンディ、かえんほうしゃ」
ウンディの口から、強力な炎が噴き出してくる。
「へっ!岩タイプに炎タイプの技は効かないぜ!」
「本来ならな」
岩タイプに炎タイプの技は効きにくい。
だが、ウインディの繰り出す炎は勢いをさらに増していく。
そして相手ポケモン達は吹き飛んだ。
壁に叩き付けられ、戦闘不能となる。
「バカな⁉」
「さて、ジムリーダーを出して貰おうか」
「くっ!」
と、精鋭隊は眉を寄せる。
しかし、当の本人の方から姿を現した。
「オレなら、ここに居る」
「来たか……」
彼はイワークを出す。
が、シオンはジッとジムリーダータケシとイワークを見て、
「……やめだ、ウインディ」
ウインディは一歩下がって、シオンにすり寄る。
そのウインディの頭を撫でる。
ジムリーダータケシは眉をよせ、
「今更、怖気づいたのか」
「いや。どうやら今日は、もうイワーク自身が限界のようだ。それに、君の闘い方、実力は今日のジム戦で見ている。まぁ、ジムリーダーとしては合格だな。ま、今回はお互い思うところもあったしな」
と、ウインディをモンスターボールに戻す。
「あ、そうそう。私の事は他には言うなよ」
ジムリーダータケシはさらに眉を深くして、
「お前は一体何者だ」
シオンはある金のバッジを見せる。
そのバッジを見たジムリーダータケシは別の意味で眉を寄せる。
「そ、そのバッジは⁈」
「ではな。せいぜい、
「っ⁉」
シオンはそれをしまい、歩いて行く。
ジムリーダータケシは腕を組み、
『あれが
それは全ての地域においてジムリーダー、そしてその上に居る四天王とチャンピオンよりも強い存在。
ポケモン協会にとって、最終兵器にして、最強のトレーナー。
そう、ポケモン協会においては最後の砦だ。
ポケモン協会創設された時代より存在すると言われている。
が、その本人の正体を知る者は会長以外にはいない。
唯一、その証拠としてポケモン協会の金のバッジ。
他のポケモン協会の役員たちは銀のバッジを付けている。
――シオンは森の中でウンディを背に頭を乗せて寝ていた。
と、腕に付けていた機械がチカチカ光る。
それに気付いたウインディが、
ーーシオン
「ん?」
シオンは目を覚まし、機械に気付いた。
それを操作して、
「何だ、お前か」
「お前に聞きたい事があってな」
「……聞こうではないか」
「つい最近、カントー地方で何やら不穏な動きがある。一部のジムリーダーだけでなく、四天王たちの方にも動きがあると聞く。その辺に付いて、何か知っている事があれば教えて欲しい」
「…………ジムリーダー達の件については、ポケモン協会は抜き打ち検査を行っている。四天王の方はまだ大きな動きはない。それに、彼らはジムリーダー達とは別件問題となる。協会も、その辺のことはまだ動くに動けないようだ」
「そうか……。それと、カントー地方で暗躍している『ロケット団』と言う組織の事を知っているか?」
「
「いや、彼らは何やら得体のしれない実験を行っているという情報を得たのだ。その実験研究に、かのオーキド博士も必要になるとかどうとか」
「……成程な。解った。私の方でも少し調べてみよう」
「すまない。そして感謝する。情報の提供、ならびに協力。本当に感謝するよ」
「別に、お前に感謝されてもな」
「何⁉」
「冗談だ。では、切るぞ」
「ああ」
シオンは通話を切った。
空を少し見上げて見た後、機械を操作する。
「……ユキナリか?」
「うむ。なんじゃ」
「なに、お前に少し警戒しておけと忠告をしようと思ってな」
「何をじゃ?」
「最近、このカントー地方では厄介な事が起きている。『ロケット団』という組織に注意しろ」
「ロケット団?」
「ああ。少し厄介な組織でな。ポケモン達で闇商売をしたりしている秘密結社だ。最近では、生体実験も行っているみたいだ」
「なんと⁉生体実験じゃと⁈」
「ああ。そう考えれば、オツキミ山にある『月の石』とかは狙い目かもな。あれはポケモンの強化、進化に関係するものだ。なら、アイツらもその生体実験とやらで使いたがるかもしれん。ま、ポケモンについて詳しいお前も、その対象になっていると言うことだけ頭においておけ」
「うむ。解った」
通話を切ると、
ーーすぐに連絡を取るとは、そんなにあの人間は大事か?
「まあな。それに、ユキナリはマユラとも縁が深いからな」
ーーそ、そうか……
「どちらにせよ。こちらも、
シオンは立ち上がる。
ウインディも立ち、シオンはその背に乗る。
ーーどこに行く?
「まずはハナダシティに行く」
ーージムリーダーの件か
「ああ」
ーーわかった
そのまま、ウインディは物凄い速さで駆け出していく。
水の町ハナダシティ。
そのハナダシティのジムの名は『ハナダジム』。
ジムリーダーの名は「カスミ」。
ポケモンバッチは『ブルーバッジ』。
ポケモンジムに着くと、
「ジムリーダーはいるか?」
ウインディを連れたまま中に入る。
すると、一人の少女が出て来る。
「私がハナダシティジム、ジムリーダーのカスミよ」
「丁度良かった。ジムバトルがしたい」
「は?」
「私の使うポケモンは、ここにいるウインディ。先行は譲ろう」
「ふざけているの。私は
「ああ。安心しろ。私のウインディは、
「まあ、いいわ。来なさい」
シオンはウインディと共に奥へと進む。
周りは水はけの良いタイルの床で覆われた場所。
彼女はスタミーを出す。
「バブルこうせん!」
「かえんほうしゃ」
それは互いに譲らない威力だった。
カスミは眉を寄せて、
「ウソ⁉どうして⁈」
シオンは目を細めて、顎に指を当てる。
そして何かを考え込むと、
「ウインディ、げきりん」
「うおぉぉおお‼」
ウインディは咆哮を上げると、炎の中を駆け抜けてスタミーを攻撃する。
避けるスタミーだが、ウインディの方が速い。
スタミーは地面に倒れ込む。
「そ、そんな……」
「ウインディ」
ウインディは頭を一振りすると、シオンの元に寄る。
そしてシオンは、何も言わずに去って行こうとする。
「ま、待ちなさい!」
「ここでの用はもうすんだ」
そう言って、歩いて行った。
そこにメイドが一人入れ替わるように走って来る。
「カスミ様!」
「どうしたの」
「カスミ様のギャラドスが見つかりました!」
「ホント⁉」
彼女はメイドと共に駆けて行く。
シオンはジムを出て、木の陰から彼女が駆けて行くのを見る。
ーー判定は?
「不合格」
ーー手厳しいな
「あれはまだ、駄目だ。が、きっかけ次第では何とかなるかもな。その時に、もう一度くらいは判定するさ」
そう言って、ウインディにシオンは乗る。
ーー次はどうする?
「そうだな。研究所に行ってみるか。その前に、オツキミ山に行ってみるか。おそらく、二つ仕事が同時にできる」
ーーわかった
ウインディは次の目的に向かって走り出す。
次の目的はオツキミ山。
着くと、黒服に帽子、大きく赤いRのマークの服を着た者たちがいた。
ーーどうする?力でねじ伏せるか?
「いや。あちら側に行くのなら、
そう言って、マントを脱ぎ、軍服を裏表変える。
黒から白へと上着が変わる。
長い髪を結い上げ、マントを着る。
目元だけ隠れる仮面をつけて、
「さて、これでいい。行くぞ、ウインディ」
ーーああ……
シオンは彼らの前に出る。
「だれだ、貴様!」
「お前らの指揮官に伝えろ。
「
下っ端たちは互いに見合う。
そして、一人が洞窟内へと駆けて行く。
奥から同じような格好をした一人の男性が出て来る。
彼らと少し違うのは、スカーフをしている事だった。
「お前が、あの
「ああ……」
「何用だ」
「なに、少しお前と戦ってみたいだけだよ。ロケット団三幹部のキョウ。それとも、セキチクシティのジムリーダーキョウと呼ぶべきか?」
そう。
目の前の集団は今、カント―地方で騒ぎを起こしている『ロケット団』という組織。
しかも、彼はそのロケット団の幹部にして、どくタイプのエキスパートのセキチクシティのジムリーダーでもあるのだ。
彼のジムバッジは『ピンクバッチ』。
ロケット団幹部キョウは眉を寄せ、
「……貴様はどうやら本物らしいな。目的は本当に、オレとのバトルか」
「そう言っている」
「ふん」
彼はゴルバットを出す。
「先行はお前にやる」
「後悔するなよ!ゴルバット、つばさでうつ!」
ウインディは、翼を広げて突進してくるゴルバットを避ける。
そのまま、
彼のクナイを避け、蹴りを入れる。
彼はわき腹を抑え、
「ぐっ!ゴルバット、どくどくのキバ!」
「ウインディ、守る」
その攻撃を、ウインディは光に護られる。
「ウインディ、かえんほうしゃ」
「ゴルバット、守る!」
炎がゴルバットを包み込むが、ゴルバットもまた光に護られた。
だが、それが終わった時、ウインディの姿はなかった。
「はっ!ゴルバット、上だ‼」
「遅いな、ウインディ。はかいこうせん」
高くジャンプしたウインディは『はかいこうせん』を繰り出した。
地面に叩き付けられたゴルバットは目を回していた。
「くっ!」
「……用は済んだ。行くぞ、ウインディ」
寄って来たウインディに、彼女は乗る。
そして、すぐに駆けて行った。
ロケット団幹部キョウは腕を組み、
「くそっ!」
と、怒っていた。
それを見た新人ロケット団員は、
「あ、あの先輩」
「なんだ」
「
「ああ、お前は知らないんだったな」
「はい」
「
「ですが、まだ若い気がしましたが?」
「ああ、それなんだがな……噂によれば、あの姿のまま生き続けているとか、実は中身は入れ替わっているとか、言われているらしい」
「そ、そうなんですか……」
と、下っ端たちは話していた。
だが、ロケット団幹部キョウは指を指し、
「何をしている!早く月の石を捜すんだ!」
「は、はっ‼」
下っ端達は慌ただしく走って行く。
ウインディの背に乗って、シオンは野原を駆けていた。
ーーあいつは出来たな
「ああ。合格だ」
ーーだが、あれは世では悪とされるものだろう
「それがどうした。私の今回の仕事はどちらも調査だ。ありのままを報告する」
ーー……で、何を奪ったんだ?
「ああ。さっきのこれか」
と、シオンは先程ロケット団幹部けん、ジムリーダーのキョウに蹴りを入れた時に奪ったモノを取り出す。
それは注射器。
その中には液体が入っている。
それを太陽に透かしながら、
「今研究している強化薬とやらだ。噂では、これを討てば進化さえもできると聞く」
ーー試すのか?
「お前たちではやらないさ。無論、他のポケモン達にもな。私はあいつらとそういうは
ーーまさか……
「マユラには内緒な」
ーー無理だ
「だろうな。だが、こういうのは慣れている」
と、シオンはそれを自分の腕に刺した。
それを少しだけ体に注入し、注射器をしまう。
腕を抑え、瞳を瞑る。
胸元の青く透き通った石が光る。
瞳を開けると、
「確かに、あれと近いモノではあるが……まだ未完成だな。これでは、ポケモンによっては暴れ出すモノもいるだろう」
ーー体に影響は?
「これといってはない。だが、そうだな……少し体がだるい」
ーーどこかで休むか?最近は力を使い過ぎだ。
「研究所の件が終わったら、報告がてら休むさ」
ーー全く……
と、腕に付けてある機会がチカチカ光る。
それを操作し、
「何だ、ユキナリか。どうした?」
「いや、なに……お前に頼みたい事があってな」
「珍しいな。で、何だ」
「うむ。実はゼニガメが何者かによって盗まれてしまってな」
「……その割には落ち着いているな」
「ある程度、予想はついているからな。で、頼みたいのは、そのゼニガメを持った子を気にかけてやって欲しいのじゃ。それと、わしに報告してくれると助かる」
「何か思うところがある、と言うことか」
「ああ……」
「わかった。私も動いてやる」
「頼むぞ」
通話を切ると、シオンはため息をつく。
ーー大丈夫か?嫌なら、嫌と……
「いや。そういう訳じゃない」
ーーならいいが……
そうこうしている内に、タマムシティに着く。
ウインディから降り、ボールに戻す。
そしてこの街にあるゲームコーナーに歩いて行く。
中に入り、チラシの裏に隠れているボタンを押す。
壁が開き、階段が現れる。
そこを下っていく。
そこは薄暗い研究室。
大きな長方形の水槽がある。
そこに一体のポケモンが眠っていた。
体は半分以上構成されていない。
それをじっと見て、
「ミュウの遺伝子を使って創られたポケモン、か……」
「誰だ‼」
そこに白衣を着た眼鏡の白いひげを左右に生やした男性がやって来た。
シオンは彼を見て、
「グレンジムリーダー、カツラ。……いや、今はロケット団研究者カツラと言うべきか」
目の前にいる研究員は、ロケット団の研究者にして、ほのおタイプのエキスパートのグレンタウンのジムリーダー。
彼はバッジは、『クリムゾンバッジ』。
研究者カツラは警戒を強め、
「お前は……」
「私は
「何だと⁈」
そう言って、パソコンの前に歩いて行く。
そして勝手にそれを操作していく。
ーーあいつとは戦わないのか?
「今の奴はダメだ。闘う資格さえない」
シオンはそれを操作して、情報を隅から隅まで見て行く。
と、ミュウのデータをまとめたモノを見つけた。
それをフロッピーディスクに焼き付けたモノを見つけた。
『……これは消させて貰うか』
パソコンをいじり、データを消していく。
そのしばらくしてすぐ、研究員たちはデータが消えている事に気付いた。
シオンは知らん顔で、捜査を続けていく。
そして、『ブルー』と言う一人の少女がミュウのデータの入ったディスクを持って逃走していった。
『……あれが、ユキナリの言っていた者か。それに、あの子はもしや……』
数日、シオンはここに留まりデータを見て行く。
今あるすべてのデータを見たシオンは立ち上がり、水槽を見る。
前の時より大分体の構成ができ始めていた。
「私の一部をあげよう。それで、
シオンは右手で青く透き通った石に触れ、左手で水槽に触る。
光が水槽の中に入って行き、そのポケモンの中に入っていった。
と、そこに少人数が入って来た。
シオンは水槽の影に隠れる。
その少人数の中に見知った少年を見た。
彼の瞳に映るポケモン。
しかし、そこに警報が鳴る。
この前、ミュウのデータを奪った少女を捕らえる命令だった。
シオンはどう出たらいいか迷っていた少年の元に歩いて行く。
「君は新人か?」
「え?あ、ああ!じゃなくて、はい!」
「ついて来い。ここの出方を教えてやる」
「お、お願いします!」
外に出ると、既に何人かのロケット団団員が集まっていた。
シオンは少年の耳元で、
「あまり無理はしてはいけないよ、少年」
「え?」
シオンは小さく笑うと、手を振って歩いて行く。
少年は眉を寄せ、
「あいつも、ロケット団の仲間……なんだよな?」
悩むも、少年はロケット団の団員たちと共に駆けて行く。
シオンは少し遅れて、彼らのいる場所に行った。
そう、いつもの格好で。
そして物陰から彼らを見る。
一人の少女を囲い、ロケット団団員たちは苦戦していた。
それは彼女が大切なミュウのデータが入ったフロッピーディスクを、カメールに加えさせたまま闘っていたからだ。
だが、敵のリーダーがケンタロスを出す。
あのケンタロスは、尻尾でポケモンを操る事ができるようだ。
その速さに、彼女はついていけない。
フロッピーディスクを奪われ、さらに攻撃される彼女。
彼女は慌ててポケモンを入れ替える。
カメールから、メタモンへ。
『メタモン、か……なるほどね』
だが、彼女は崖の片隅に居る。
そこにケンタロスの『とっしん』。
当たりそうになった所を、ロケット団団員に紛れていた少年が助ける。
ポケモンは落ちていったが、彼女に怪我はない。
だが、崖から落ちたケンタロスが姿を現す。
しかし、再び尻尾で指示を出すケンタロスの指示は見方を攻撃する。
というより、ポケモン達は意味なく暴れる。
その間に、彼らは空へと退避していく。
ケンタロスはメタモンへと変わり、彼女のモンスターボールへと戻っていく。
シオンはそれを見て、彼らの先回りをする。
そこは草原。
ーーシオン。何をする気だ?
「ん?ああ。ミュウのデータを見る限り、アイツらはミュウを捕らえるのに必死だ。そして、あの子供たちもまたこの件に突っ込んでくるだろうと思ってな。一番厄介なのは、
と、しばらくすると案の定彼らがやって来た。
シオンはそれをじっと見て、
「……来たか」
そこに風が吹き荒れる。
『サイコキネシス』による空気の乱れ。
二人はミュウの捕獲に取り掛かり、捉える事に成功した。
が、そこにロケット団団員達が現れた。
敵のルージュラの『サイコウェーブ』によって、捕らえていたミュウが転がっていく。
シオンはミュウを抱え、それを解く。
彼らの間に来ると、
「え?あんたは!」
「やぁ、久しぶりだね。レッド君」
シオンは笑いかける。
そしてシオンはロケット団団員達を見据える。
横では、レッドと少女ブルーが見合う。
「知り合いなの?」
「ああ……一応?」
「一応って」
頬を掻くレッドを、呆れながら見るブルー。
と、敵のルージュラの『ふぶき』。
「ウインディ、かえんほうしゃ」
敵のルージュラの『ふぶき』とぶつかり合う。
爆発が起き、煙が立ち上がる。
「貴様!何者だ!」
「なに……通りすがりのポケモントレーナーだ」
シオンは右手を腰に当てて、左手を顎に当てる。
目を細めると、
「ウインディ、はかいこうせん」
「ルージュラ!守る!」
咄嗟に防御壁で防ぐ。
「ウインディ、かえんほうしゃ」
「バカな!はかいこうせんの後は、動きが一時止まるはずだ!」
「さてな」
ウインディの動きは止まらず、『かえんほうしゃ』を繰り出す。
と、シオンはクラッとして頭を抑える。
ーーシオン!
「問題ない」
そこにルージュラの『れいとうビーム』が、シオンの足元を凍らせる。
次第にシオンの体温を奪い、凍り始める。
さらに敵のルージュラの攻撃が繰り出す。
シオンはルージュラを一睨みすると、胸の青く透き通った石が赤いヒビのような模様が浮かび上がる。
それと同時だった。
ルージュラの攻撃を見たレッドが慌てて、
「ヤバイ!ニョロボン、メガトンパンチ!」
ニョロボンを出す。
だが、相手ルージュラの『れいとうビーム』によって凍ってしまった。
それを見たミュウがムッとした顔になり、『ふぶき』を繰り出した。
ロケット団団員達は氷漬けとなった。
それが解け、倒れ込む。
ミュウはシオンを見てから、レッドとブルーを見て飛んで行った。
シオンはウインディに寄りかかり、
「助けに入ったつもりだったが、助けられちゃったな」
「姉ちゃん、大丈夫か?」
「なに、少し
「そんなことねぇよ。助かったのは事実だし」
「そうか。そうそう、これは私の連絡先だ。二人とも、何かあれば連絡してくれ。手助けくらいはできるだろう」
「ありがと。でも俺、姉ちゃんの名前を俺知らないけど」
「私も知らないわ」
二人はシオンのメモした紙を受け取りながら言う。
シオンは二度ほど瞬きをした後、
「ああ、そうか……それはすまない。シオン。それが私の名だ」
シオンはウインディに乗り、そう言った。
二人を見て、
「ではな。レッド君。ブルーちゃん」
シオンはウインディに乗ったまま、駆けて行った。
タマムシティ郊外にまで来た。
しばらくして、ウインディは止まる。
そこにはレッドの手持ちポケモンを持ったオーキド博士の孫がいた。
彼はレッドのポケモン達を鍛えていた。
ウインディから降りたシオンは歩いて行く。
「そこのポケモン達は、もしかしてレッド君のかな?」
「あ?ああ」
シオンはジッとレッド達のポケモンを見る。
数時間の間に彼のポケモンは強くなっている。
きっと、彼の育て方が上手いからだろう。
「ユキナリの孫は随分と育て方がうまいな。だが、まだまだだな」
「おじいちゃんを知っているのか。しかも、おじいちゃんをユキナリなんて呼ぶなんて……」
「君の祖父とは古い中でな。あいつがオーキド博士と呼ばれる前からの仲だよ、グリーン君」
「俺の名前……それにあんた、嘘をついている。一体何者だ。なにより、おじいちゃんとお前とは年齢が違いすぎる」
「名に関しては、ユキナリから聞いているからね。何者か、と言われても答えようがないな。だが、私を知る者はこう言う……“呪い人”。と言うワケで、コレ」
「なんだ」
「私の連絡先だ。ユキナリの孫なら、いつでも連絡を寄こしてくれて構わないさ」
「…………」
彼はジッとメモ紙を見て睨んでいた。
シオンは首を傾げ、
「ユキナリのことは嫌いか?」
「そんなことはない。おじいちゃんの事は好きだ。だが……おじいちゃんの孫と言うことで見られるのは、あまり好きじゃない」
「なるほどね。なら、一つ謝ろう。私は、君がユキナリの孫だから目をかけている。そして、一つ誇っていい。私は、君自身にも興味を持っている。だからこうして、
「は?」
「まぁ、己の想うがままに旅をすればいい。
シオンはウインディに乗って、歩いて行く。
少し森林に入ると、
ーーここで休憩する。無茶しすぎだ
「ああ。わかった、わかった」
シオンはウインディから降り、その背に頭を乗せて横になる。
モンスターボールを一つ取り、
「ラフレシア、見張りよろしくな」
ーーはいですの
ラフレシアは頭を下げてお辞儀する。
シオンは胸元の青く透き通った石を上げて見る。
少し赤みがったヒビのような模様が浮き出ている。
「しばらく寝るかな……」
彼女は寝始める。
どれくらい寝ているだろう。
ウインディは自転車のこぐ音を聞いて起きる。
そこに慌ただしく自転車をこいできた少年。
その後ろを三体のポケモン達が駆けていた。
少年はブレーキをかけて、こっちにやって来た。
勿論、ポケモン達も一緒だ。
シオンはまだ寝ている。
「やっぱり、シオンの姉ちゃんだ!」
ーー小僧、それ以上近付くな
ウインディは唸り声を上げる。
少年は一瞬止まったが、
「俺だよ、俺。レッドだよ。ついこないだ会ったろ?」
ーーだから何だ。とっとと、去ね
ウインディは相変わらず唸り声を上げる。
レッドは頭を掻いて、
「そんなに唸るなよ。何をそんなに怒ってるんだ?」
ーー貴様が来たからだ
と、未だに唸り声を上げるウインディ。
だが、そこにラフレシアが奥から歩いて来た。
レッドの前まで行くと、ラフレシアは彼に頭を下げる。
それを見たレッドは驚きながら、
「お。なんか礼儀正しいな、お前」
ポケモン図鑑を近付ける。
データが現れ、
「へぇ、ラフレシアか。で、シオンの姉ちゃんも言ってたけど、ウインディって言うポケモンか」
ーー気安く呼ぶな
ウインディは唸る。
が、ラフレシアがウインディを見て、
ーーいけませんよ、ウインディ
ーーだ、だが……
ーー
ーーだが、ラフレシア……
ーー
ーー……わかった
ウインディはレッドに唸るのをやめる。
レッドは座り、
「お、なんか大人しくなった」
その横に、ポケモン達も座る。
レッドはジッと眠っているシオンを見て、
「体が弱いって言ってたもんな。大丈夫かな?」
と、自分のポケモン達を見る。
ポケモン達も、心配そうにシオンを見る。
特に、ニョロボンが……
しばらくして、シオンは目を覚ます。
伸びをして、横を見る。
と、見覚えのある少年がポケモン達と眠っていた。
「……随分と警戒心がないな」
ーーお前が言うか
ウインディはそっぽ向く。
シオンはウインディの頭を撫でながら言う。
「はっはっは。で、ラフレシア。私はどれくらい寝ていた?」
ーー五日よ
隣で座っていたラフレシアは、笑顔で言う。
シオンは頰を掻きながら、
「今回はそんなでもなかったな」
そして、ラフレシアはその笑顔のまま、
ーーけど、五日日も寝てたのよ。と言うワケで、この事はマユラに報告させて貰うわ
「あー……まぁ、そうなるな」
と、シオンはボフッとウインディに倒れ込む。
だが、すぐに身を起こすと、
「さて、レッド君が寝ている間に仕事を済ませるか」
腕に付いている機械をいじる。
空中にモニターとキーボードが浮かび上がる。
それを左手で操作し、
――中間報告
まずはジムリーダー適正について
ニビシティジムリーダー・タケシ 合格
ハナダシティジムリーダー・カスミ 不合格。しかし見込みはあり
セキチクシティジムリーダー・キョウ 合格
グレンタウンジムリーダー・カツラ 現在において資格なし
タマムシティ・クチバシティ・ヤマブキシティ・トキワシティジムリーダー 現在調査中
続いて、四天王について
今現在も、沈黙を継続
引き続き調査する
機械を切ると、シオンはレッドを見る。
彼も、ポケモンもまだ夢の中だ。
再び機械を操作すると、
「……元気か」
「随分と、機嫌がいいではないか」
「少し、な。さて、いつぞやの話をしようと思ってな。『ロケット団』の方だが……確かに、随分と危ない研究をしている。ついこの間は、ミュウの遺伝子データを使って生命体を創っていた。名は『ミュウツー』」
「なんと……」
「それ以外にも、なにやら動いているみたいだ。ま、また解れば連絡してやる」
「ああ。頼む」
そして通話を切る。
シオンは隣を見る。
彼はまだ寝ている。
と、腕に付けている通信機にメールが届く。
その内容を見て、少し眉を寄せた後一つため息をついた。
もう一度、寝ている彼を見る。
とても気持ちよさそうに寝ている。
シオンは少し笑うと、レッドの頬を突く。
レッドは「うーん」と唸ると、目を覚ます。
「やあ、レッド君。おはよう。随分といい夢を見たのかな?」
「シオンの姉ちゃん!見た見た!」
と、笑顔の彼。
だが、ガバッと起き上がると、
「じゃなくて!体は大丈夫なのか?すっごく寝てたけど」
「あはは。大丈夫、大丈夫。レッド君は優しいな」
「ほ、ホントに大丈夫か?」
レッドはシュンとなって、シオンを見上げる形になる。
シオンはクスッと笑うと、レッドのおでこに自分のおでこを当てる。
「大丈夫だよ、レッド君。確かに、
そして、彼からおでこを離す。
シオンは彼のニョロボンを見て、
「……そういえば、進化したんだね。他の子達も、そして君も、成長したようだ」
「ああ、そうなんだ!」
「ハハ。
「ん?」
「いや。こちらの話だ」
シオンは立ち上がる。
「さて、そろそろ行くよ」
「本当に大丈夫なのか、シオンの姉ちゃん」
「ああ。今の君に、
「……また会えるかな?」
「会えるさ」
シオンはウィンディにまたがり、ラフレシアを抱える。
彼に手を振って、離れて行く。
ラフレシアはシオンを見上げ、
ーー随分と、あの子供のを気に入っているのですね。確かにこれは、ウインディが機嫌を損なうのも無理はありませんね
「そうなのか?」
と、シオンはウインディの背を撫でる。
ウインディは走るスピードを上げる。
ーー……
「ははっ。それはそれは……だが、それこそお前の方が私を知らぬぞ。
ーーだが!
「まぁ、私はお前の事も気に入っている」
ーーむぅ……
ウインディはなおも駆けていく。
着いた場所はある研究所。
シオンはウインディを撫で、
「さて、お前はここで待機だ」
ーーわかった
シオンはウインディを残し、ラフレシアを連れて中に入る。
そこには、ロケット団員、研究者がぞろぞろいる。
「なんだ、貴様!」
「なに、
シオンは鋭い瞳で辺りを見渡し、小さく微笑む。
団員達はモンスターボールを取り出し、
「侵入者だ!」
「捕まえろ!」
と、集まりだす。
シオンはラフレシアを見降ろし、
「ラフレシア。ねむりごな」
ラフレシアは一歩前に出て、緑の色の粉を振りまく。
それを浴びた団員、研究者達はクラクラしだし、ついには眠ってしまった。
シオンはラフレシアと共に奥へと進んで行く。
ある部屋の前に立つ。
扉が開くと、そこは実態研究場。
そこに足を踏み入れ、机の上の資料を見る。
『……ああ。なるほどな……』
その資料をしまう。
シオンは機械につながれているあるポケモンを見る。
そのポケモンの名は『イーブイ』。
イーブイは痛みと恐怖に耐えながら、シオンを睨む。
シオンはジッと見続けていた。
ーーシオン。どうしましたか?
「いや。……………私は君を連れだしに来ただけだ」
そう言って、イーブイを機械から外す。
抱えて、来た道を戻っていく。
ーーそいつか?
「ああ」
ーーどうするんだ?森に?
「いや……森には連れていけないな。まだ……」
ーーでは、どうするのです?
「………ひとまずは、ここから離れてからだな」
シオンはイーブイを抱えたまま、ウインディに乗って走る。
だが、ウインディが急ブレーキをかける。
シオンはラフレシアに抱えていたイーブイを預けて、ウインディから降りる。
身をかがめ、気配を消して茂みからその場を伺う。
そこには、モンジャラとラフレシアを連れた少女を先頭に集まっている集団。
「エリカお嬢様。この先のはずです!」
「ええ。皆さん、注意を――」
だが、先頭にいた少女は眉を寄せて、
「誰です!」
ラフレシアによる『花びらの舞』が繰り出す。
シオンは前に避け、横目で彼女を見る。
「………なるほど。噂通りのようだな。タマムシシティジムリーダーエリカ」
彼女はタマムシシティのジムリーダー。
草タイプの
ジムリーダー以外にも、彼女は大学勤務などを行っている。
実力ともに、強力なジムリーダーの一人。
彼女の持つジムバッジは『レインボーバッジ』。
ジムリーダーエリカはジッとシオンを見つめ、
「あなたも、できる方のようですね」
彼女はラフレシアと共に次の技を繰り出せる状態にある。
そして、彼女の連れてきていた者達も既に戦う準備できる状態だ。
シオンは彼らを見ている目がさらに鋭くなる。
「………
シオンは立ち上がり、指笛を吹く。
茂みからウインディが現れる。
「さて、タマムシシティジムリーダーエリカ。
「頼み、ですか?誰ともわからぬあなたの?」
「そうだな……私の事はニビシティジムリーダータケシにでも聞いてみればいい。私から他言するなとは言ってあるが、お前にならいいだろう」
「……ひとまずは、話を伺いましょう」
シオンはラフレシアからイーブイを預かる。
そのポケモンを抱え、彼女に近づく。
緊張と警戒が強まるが、彼女がそれを制する。
「このポケモンの保護を頼みたい。詳しくはこれを見ればわかるだろう」
そういって、眠っているイーブイとその資料を渡す。
ジムリーダーエリカはイーブイを預かり、資料に目を通す。
「なっ⁉ここまでだったなんて……」
「では、頼んだぞ」
「待ちなさい!」
だが、シオンはすでにウインディに乗って駆け出していた。
シオンはしばらくして、休息をとっていた。
ウインディの背に頭を預けて夜空の星を見上げていた。
ーーシオン。先ほども何やら考え込んでいましたが、やはりなにか?
「………いや。特にはないよ。ただ……」
そのまま、シオンは黙り込んだまま夜空の星を見上げていた。
ラフレシアはそっと、彼女に寄り添う。
『ただ……昔の――』
夢を見た。
子供の泣き声だ。
それとも一つ。
あれは……誰の声だった?
しばらくして、違う声が聞こえる。
もう、決して会うことはできないだろう声の主。
ーー僕がずっとそばにいてあげる。約束だ
けれど、この約束は果たされることはなかった。
悲しくはない。
いや、最初は悲しかったのだろう。
だが、今の自分には到底理解できない感情だ。
時同じくして、タマムシシティジムリーダーエリカは、ニビシティジムタケシに連絡を取っていた。
「お久しぶりです」
「ああ。だが、どうした?」
「お聞きしたいことがありまして……」
ジムリーダーエリカは少し間をあけ、
「ウインディを連れた少女を知っていますか?」
「………具体的には?」
「戦ったわけではありませんが、とてもお強いです。そして、我々と同じ組織を追っている。いえ、もしかしたらすでに知っている者かもしれません。その少女が、自分の事はあなたから聞くようにと言われました」
「……なるほど。オレも会ったのは一度だけだ。あれは……
「なんですって⁈本当に実在したなんて……ですが、それなら頷けます。一瞬とはいえ、恐怖を感じた。あれが、ポケモン協会の最終兵器。最強のポケモントレーナー……」
「気持ちはわかる。オレも一瞬だけ死を覚悟した。あの目はただ強いだけとは思えない。」
「ええ。それに、彼女は本当に
「それは、オレにもわからん。だが、今はできる事をするしかないだろう」
「そうですわね……」
そう言って、通信を切る。
ジムリーダーエリカは眉を寄せて、
『そう、本当に彼女は味方となりえるのか……』
それからしばらく経って、シオンはタマムシシティに向かっていた。
その道中、ジムリーダーエリカと鉢合わせた。
「………あなたでしたか」
「その様子では何かあったのか?」
「はい。実はお預かりしていたイーブイが――」
「逃げ出したか?」
「え?」
「それとも、奪われたか?」
「……いえ、まだ奪われてはいません。ですが、逃がしてしまいました」
「それなら、それで構わない。大方、取り返しに来たのだろうが……」
シオンの瞳がスッと鋭くなり、
「そちらは私が何とかしよう。イーブイは任せておくが、どうなっている?」
「それなら、ある少年に今任せています。今後、私達の仲間となりえる少年に」
シオンは彼らに背を向け、
「………なるほど」
そう呟いて歩いて行った。
小さく笑みを浮かべ、
『仲間、ね……』
シオンは歩みを止めて、
「こんなところにいたのか、君は」
膝をつく。
そこには一匹のイーブイがいる。
イーブイはすり寄ってくる。
「………ああ。知っているよ」
と、話声が聞こえてくる。
『……この声はレッド君か。そうか……』
シオンはイーブイの頭を撫で、
「私はもう、君を連れていくことはできない。君は君のしたいことをすればいい。その一つとして、あそこに行ってみるといい。君が心を許せる人間が現れたのなら、君の好きにすればいい。それすらなかったのなら、その時は私が君が
シオンは立ち上がる。
イーブイは躊躇いながらも走っていく。
シオンは振り返り、冷たい表情をあるところに向ける。
「さて、いつまでそこに隠れているつもりだ。ヤマブキシティジムリーダーナツメ。いや、ロケット団三幹部のナツメ」
「あらら。いつから気付いていたのかしら?」
「………さて、いつからだろうな」
「まあ、いいわ。そこをどいてくれるかしら」
「断る。なにぶん、
「……残念ながら、こちらも仕事なのよ」
互いにモンスターボールを取り出し、ポケモンを出す。
シオンはウインディ。
ロケット団三幹部ナツメはユンゲラー。
シオンが戦おうとしているのはゴールドバッチを持つヤマブキシティジムリーダーナツメ。
彼女はエスパータイプのエキスパートである。
ウインディは唸りを上げている。
「ウインディ。かえんほうしゃ」
「ユンゲラー。守る」
炎が収まると、そこにはウインディのみがいた。
ロケット団幹部ナツメは警戒をしながら、辺りを伺っていた。
そして、ビクッと反応して動きが止まる。
それは背中に刃物が当たっているからだ。
「まさか、ここまでやるとはね。あなた、何者よ」
「………通りすがりのポケモントレーナーだ」
「まぁ、いいわ。今だけは引いてあげるわ」
「………
「ふっ。あなたはどちらの味方なのかしら?」
「
「……ふーん、そっ」
そう言って、歩き出す。
そしてロケット団幹部ナツメはユンゲラーに乗り、テレポートで消えた。
シオンは視線を横にする。
「どうやら、あちらも方がつきそうだな」
それは丁度、レッドがイーブイを抱えて走っている姿だった。
シオンもまた、ウインディに乗る。
ついた場所はジムリーダーエリカの場所。
しばらく物陰に隠れて待っていると、元気になったイーブイと共にレッドが出てくる。
シオンはそれを見ると、小さく笑う。
「よかったな」
その場をそっと離れるのだった。
そして彼女の目には鋭い眼光があった。
「さて、そろそろ
シオンはウインディに乗って駆け出した。
ーーディグダの穴
シオンはある人物と会っていた。
黒いスーツに身を包んだ男性だ。
そして睨み合いをしていた。
「久しぶりだな」
「そのようだな。お前の事は色々聞いている。
「っふ。何か、言いたそうだな」
「なに、あるとしても言わないさ。
と言って、さらに二人は睨み合う。
だが、そこにシオンにとっては聴き慣れた声が聞こえてきた。
「えーと、ここか?」
と、岩陰から顔を出したのはレッドだった。
レッドはキョトンとした後、
「あ!シオンの姉ちゃん!」
「……やぁ、レッド君。久しいね」
こちらに駆けて来たレッドに、先ほどとは打って変わって笑顔を向けた。
と、レッドはシオンのそばにいた男性を見て、
「この人は?」
「ああ、そいつは……ここで会ったーー」
「化石を探しているただのトレーナーだよ」
シオンは横目でその男性を見た。
彼もまた横目でシオンを見ていた。
それに気付いていないレッドは目を輝かせて、
「化石⁉︎ここにあるの?」
「それを探しているところだ」
「それ、俺も手伝っってもいいか?」
「ああ。私は構わないよ。彼女は知らないが」
「……なに、私も構わないさ。少しぶらつく予定だったしね」
「いえーい!」
と、一人盛り上がりを見せるレッド。
その後、数日をついやして化石を掘り出すのだった。
ニビ側出口
日の光が出口から泥だらけで出て来たレッドの元へと注ぎ込む。
レッドは手で日を遮りながら、
「うはっ!ま、まぶし〜っ!ピカ、ここまでサンキュウな」
頭の上にいる、洞窟では光になってくれていたピカチュウにお礼を言う。
シオンも外に出て、
「……確かに眩しいな」
「おじさんも早く!」
「ハッハッハ。そんなに急かさないでくれよ。だが、全く……。元気だな君は。しかし、こんな事に付き合わせて悪かったね。旅の途中だったのだろう」
「ううん。ついて行きたいと言ったのはオレだし。スッゲェ、ワクワクできたし!」
と、レッドは男性に近づき、
「昨日掘り出した石の中に、何か凄い発見があるといいね!」
「ハッハッハ。だといいがなぁ。ただの石ころという事もあるからね」
「ええ〜っ」
「さあ、ニビの博物館へ急ごうか」
と、歩き出す。
シオンも彼らに合わせて歩いていると、
「そういや、シオンの姉ちゃんは大丈夫か?」
「ん?なんでだい」
「ほら、移動の時はウインディに乗ってたじゃん。体弱いって言っているし」
「……ああ。今は体調がいいんだ。君は気にしなくていい」
「そっか!よかった」
と、無邪気な彼の笑顔を見たシオンは小さく笑っていた。
それを見ていた男性は、
「ほう。
シオンは彼を睨みつける。
と、今度は先ほどの洞窟とは違い、明るい外に出た事で彼の顔がマジマジと見ていた。
「う〜ん、やっぱりおじさんとどっかで会ったことある気がするんだよな〜。でも、どうしても思い出せないんだけど……。本当にオレと、一度もあったことなかったっけ」
「またその話か……君が思い出せないのに、私が思い出せるわけがないだろう?」
困った顔になり、苦笑する。
レッドはケロっと笑い、
「まっ、いっか。きっと、ポケモン好きのおじさんに会って、他人とは思えないだけだな、うん!」
「……ポケモン好きね……」
「ハッハッハ。私はポケモン好きと言っても、研究者だからね。トレーナーとしては、君の方が優秀だろう?レッド」
「へへへ……まあね!たとえジムリーダーだろうと、オレには敵わないぜ!」
と、レッドはやる気満々で拳を上げる。
その言葉に、男性は視線を鋭くする。
もちろん、シオンもまたレッドを横目でスッと見据えていた。
だが、男性はすぐに表情を戻し、
「ジムリーダーでも敵わないか……、大きく出たなぁ」
「あーっ、信じてないでしょ!オレは、今までいろんな町のジムリーダーと戦ってきたし、ロケット団幹部級の連中にも勝ってきたんだぜ。なぁ、ピカ!」
「ピカッ!」
「あ!シオンの姉ちゃんは信じてくれるよな」
「ん?私か……そうだな。確かに、
「ほら!な、おじさん」
「ハッハッハ。わかった、わかった」
「チェー、なんか引っかかるなぁ」
と、ぷんぷん口を尖らせていた。
シオンはふと視線を先に向ける。
じっとその先の先を見つめ、
『ああ……これは……』
「それにしても、なんだか熱いな……」
「本当だ。そんなに歩いていないのに、凄く暑い……な、ピカ、暑くねぇか⁉︎」
と、頭の上にいるピカチュウを見ると、暑さでバテていた。
男性は汗を拭い、シオンを見る。
彼女はこの暑さの中、平然と汗一つ
『……相変わらず化け物か。この状況で、汗一つかいてないとは。だが、この暑さ……炎によるものだ。おそらく、野生のブーバーが一匹……いや、二匹か‼︎』
と、辺りを見渡す。
その先を進んでいたレッドが大声を上げる。
「ああ⁉︎科学博物館が燃えてる‼︎」
その先を見ると、確かに囂々と燃える科学博物館。
そのそばまで駆け出す。
「一体どうして……もしかして、ポケモン⁉︎ブーバーか‼︎こいつの炎が原因だな!」
その時、炎の勢いが増し、こちらに襲い掛かる。
同じくそばに来ていた男性の背中を押し、シオンの手を引きながら、
「おじさん、気をつけて!シオンの姉ちゃんも‼︎」
「おっとっと」
「忙しないな、レッド君」
「呑気なこと言っている場合じゃないの」
と、レッドは向きを反転し、モンスターボールを取り出す。
「よっし!ここはオレが、おじさんに実力を見せてやる!」
レッドは野生ブーバーの前へと出る。
男性はレッドの背中を見る。
『やっと、彼の実力が見れそうだ。さて、なにを出す?』
「いけ、ゴーン!」
レッドはカビゴンを出して、炎の壁にする。
「眠ってりゃ、ダメージを受けていてもすぐ回復できる!これで少し時間を稼いで……」
「カビゴンの壁……と言うわけか。少し強引すぎないか?」
「ちょっと待って!今、どうやって炎を消すか考えてるから‼︎」
と、他のポケモン達を見る。
男性は横目でレッドを見て、
『うむ……やはり子供‼︎決断力はあるが、先の読みがまるでない』
「あーあ、ニョロのやつはダメだ。体力が危ない。こんな時にしょーがねぇーな。どーすりゃいいんだよ」
と、頭を抱える。
男性はなおもレッドの行動を見ていた。
『この程度であるなら、相手にするまでもないが……』
男性は横にいるシオンを見る。
彼女は小さく笑っていた。
だが、その瞳はあまりにも冷たいのがわかる。
「よしっ!戻れ、ゴン!次はサンドだ!」
と、表情が変わったレッドは、カビゴンをモンスターボールに戻す。
そしてサンドを出した。
それを聞いた男性は驚いて、レッドを見た。
「そいつは、さっき捕まえたばかりじゃないか。
「いーの、いーの」
と、言いながらレッドは場所を移動する。
その場所は砂場。
「ここでなら、じめんタイプのポケモンが技を生かせる場所と言えば、砂場でしょ!それ!‘すなかけ‘‼︎」
サンドは砂を使い、技を繰り出す。
レッドはニッと笑い、
「それに砂なら、炎の威力を吸収する壁になるし……炎をすり抜け、攻撃する弾丸にもなるってこと‼︎」
『実力が低い分は、工夫で補うと言う寸法か!これが今までの敵を倒してきた‘ねばり‘‼︎しかし……』
野生のブーバーが怒りだす。
男性は悩んでいるレッドを横目で見た後、
「砂が当たっていても、きいているわけじゃないみたいだぞ。どうするつもりなんだい?」
「ん〜……今考えているとこ‼︎横からごちゃごちゃ言わないでよ!……ええと、こうなったら……走れ、サンド‼︎
『⁉︎やけでも起こしたか?』
サンドは野生のブーバーを囲いながら走る。
野生のブーバーは砂できた竜巻が襲いだす。
「よっし!攻撃そのものが効かないなら、足場を崩す!」
レッドはニッと笑い出す。
野生のブーバーはそのまま砂に埋れた。
サンドは嬉しそうにレッドの元へと帰ってくる。
そのサンドの頭を優しく撫でるレッド。
『やはり、今ここで始末しておかねば……』
男性はポッケに入れていたモンスターボールに手をかける。
だが、レッドはそれに気付いていない。
それどころか、サンドをモンスターボールへと戻す。
「ありがとな、サンド」
「……ブーバーにとどめはささないのか?」
「うん!もういいんだ。だって、こいつらはもう動けないみたいだし。なにより、そんな相手をこれ以上攻撃できないじゃんか!」
「…………『とどめはささない、か』」
男性はそれを聞いて、小さく笑う。
手にかけていたモンスターボールを離す。
そしていつの間にか、化石博物館の消化活動を終えたシオンがやって来る。
砂に埋れた野生のブーバーを横目で見た後、シオンはレッドに笑顔を向ける。
「……消化はできたが、使い物にはならないようだ」
「そっか……化石調べられなくなっちゃったね」
「なに、構わないさ。ただのガラクタだろうからね。さて、レッド。君とはもう会わないだろうから、この綺麗なやつを君あげよう」
「え?いいの。ありがとう、おじさん」
「なに、ほんのお礼さ。」
「ありがとう。オレも、この数日の旅は楽しかった」
レッドは笑顔で男性に答える。
と、シオンはレッドを見て、
「さて、レッド君。私と彼はもうしばらくここで用がある。君は先を目指すといい」
「そうなの?……そっか。わかった。じゃあね、シオンの姉ちゃん、おじさん!」
レッドは手を振りながら、駆け出していった。
彼が見えなくなると、シオンと男性は横目で睨み合う。
「……しかし、あの程度で勝った気になっているとは……甘い!甘すぎる‼︎野生のブーバーは凶暴で知能も高い。やられた相手を執念深く追う」
「…………」
そして、その後ろから殺気があらわになる。
砂から出てきた野生のブーバーが怒りをあらわにして、シオンと男性に襲い掛かる。
だが、それは一瞬だった。
野生のブーバーは凍り付いていた。
「あの甘さがある限り、我々が手を下さなくとも命を落とす」
そこには男性が、先ほどレッドに出そうとしていたモンスターボールが握られている。
そこから出てきたパルシェンが、襲いかかってきた野生のブーバーを氷付にしたのだ。
その腕は一眼で、只者ではないとわかる。
そして男性は、シオンに向けていた目を氷漬けになった野生のブーバーに向ける。
「とどめだ、パルシェン」
そう一言言うと、氷漬けの野生のブーバーは粉々に崩れた。
シオンは冷たい目で、小さく笑う。
「本当に、
「それは
「ああ。今現在、興味対象ではあるな。だが、彼を甘く見ない方がいいぞ」
「……あの程度で、か。さっきも、お前が睨みを効かせていなければ、すぐに殺られていただろうさ。でなければ、あれほど悠長にはできまい。なにせ、
「…………ふっ。それで、あの場所に居たのは化石が目的ではあるまい」
「なに、キョウやマチスが敗れたと言うので、どんな小僧か見にきただけだ。気に留めるまでもなかったがな」
そう言って、二人は再び冷たい目で睨み合う。
シオンは腰に手を当て、
「まぁ、いいだろう。私の目的を果たすまでだ」
「ほう」
「お前に三つ言うことがある。一つ、あまり図に乗るな。トキワシティジムリーダーにしてロケット団ボスのサカキよ」
シオンの目は鋭くなる。
そう、彼はグリーンバッチを持つ地面タイプのエキスパートのジムリーダー。
そして、
「それで?」
「……二つ、さっきも言ったが、彼を甘く見ない方がいい。足元をすくわれるぞ」
「ふっふっふっふ。本当に、気に入っているようだ」
「最後に、
「っ‼︎」
「どこにいるか、までは教えるつもりはない。そこまでの尽くしてやる気は無い。ああ、だが……手は貸してやる。だが、最後まで協力するかは、保証はできんな」
「お前‼︎」
「お前は、
そう言って、彼に背を向けて歩きだす。
ロケット団ボスサカキはシオンを睨みつけていた。
だが、彼も背を向けて歩き出した。