私は変わり者のエルフだ。
変に前世の記憶などというモノを継承してしまったがために、エルフの時間間隔に馴染めないでいる。
例えばだ。エルフの寿命は前世であったヒトとは比べ物にならないほど長い。中には数千年を生きるエルフだって存在する。
なら、そんなエルフの暮らしはどうなのだろうか。
正解は単純。ひどくのんびりとしている。
おおよそヒトの一日を数日間に引き伸ばしたかのような暮らしである。
魔力なんてものが存在し、その魔力を使用することで、一年程度なら何も食べなくとも生きていける。
そんなことも相まって、社会性は皆無であり、皆好きなように生きている。
子を持ったにしても、ほとんど放任。
野生の血が濃いのか、生まれて数年程度でエルフは自立を覚え、私から見れば怠惰にしか見えない生活を始めるのだ。
さて、エルフの時間間隔に馴染むことの出来なかった私は人間社会へと身を置くことにした。
人の街に住むエルフは総じて、変わり者であると言われる。
そりゃ、必要の無い社会性を求めるのだから変わり者であることに否定はしない。
そんな街に住む変わり者の私であるが、果たして時間は腐るほど存在したが、やることが無かった。
私の生は気が遠くなるほど長い。
そんなに長い時間を戦いを生業とする職業で過ごす気もしなければ、かといって定職に就くというのもパッとしない。
こちとら、平和ボケした元日本人なのだ。働くということに疲れた日本人なのだ。
何故必要も無い就労を、生まれ変わってまでしなければならないのか。
だが、やることが無い。
趣味をするにしても金は要りものだ。
で、私はふと思った。
この世界。魔法があるから、で済まされてしまっている事象が多すぎやしないか?
一番身近なところで言えば、この身体だろう。
数千年生き、一年以上何も摂取しなくても問題が無い。
そんな生物いるのだろうか。
いや、いるにはいるのだろうが、それにしてはエルフの身体は造りが複雑過ぎやしないか。
そもそもどういう進化をしたら、ヒトと類似した姿形でこれほどまでの寿命を得たのか。
調べてみると答えは、魔力によって身体が補完されているからと考えられるみたいな文献が一個だけ見つかって、それ以外には大したものは出て来なかった。
魔法が使えるのは、魔力があるから。
エルフの寿命が長いのは、魔力があるから。
魔物が特殊な能力を得るのは、魔力があるから。
いやさ、魔力があるからで思考放棄しているでしょう。
だから、私は決意したのだ。
この長い長い寿命は、世界の神秘を暴くことに使おう。
前世では、ほとんどの事象は科学で証明されてきた。
つまり、あらゆる事象にはそうなり得るべくして、なった過程が存在するのだ。
理不尽に事象のみが起こっているのではない。
それを証明してやるのだ。
これは、私が疑問に思い、その過程を暴いてきた論文である。
もしかしたら、この知識が後世を救うことになるかもしれない。
だから、私は私が体験してきたことと共に、この世界の事象の真実を暴いて、この論文に残していく。
論文と言いつつも、学があまり無いがための論文的では無い文章には目を瞑って読んで欲しい。
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