TSエルフさんの事象研究日誌   作:井戸ノイア

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平日はあまり書く時間が無いのです。
在庫持たずに書き次第放流するスタイル。





ダンジョンとは何ぞや ①

 ダンジョンとは何だろうか。

 

 冒険者がよく探索する洞窟のようなもの。

 壁は自己修復され、一定周期で宝物が生成される。 

 中には魔物が湧いており、奥深くまで続いているが、最奥に何がある訳でも無く行き止まり。

 ただし、徐々に大きくなっていく。

 

 古代文明の遺跡であるとか、魔力が溜まったことによりスポット的な異界が生じているなど、多くの意見があるが、そのどれもが証明には至っていない。

 

 

 

 

 ゴブリンの論文を発表した一週間後のことである。

 相も変わらず安宿に泊まり、人に役立つ、有り体に言ってしまえば金銭に換わる研究とは何だろうか。

 そんなことを考えながらボーっとしていた。

 不可思議なことは前世に照らし合わせてみれば、いくらでも思い浮かぶというのに、それらは解明したところで何が役に立つのか分からなかったり、途方もない時間がかかりそうな手探りでしなければいけないことが多い。

 まあ、だからと言って切羽詰まっている訳でも無いので、ダラーっとしている。

 精力的に働くのは嫌だ。

 

 とまあ、グダグダしていたら宿の女将に呼ばれた。

 何でも会いに来た人間がいるらしい。

 街に知り合いなどいないし、誰だろうかと部屋を出て、未だに使用したことが無い食堂へと顔を出すと、一人の青年が座っていた。

 

 眼鏡をかけて、白衣を身に纏った黒髪の青年は正に研究者という出で立ちであった。

 その若さを除けば。

 どうにも衣装に着られている感じが抜けない。

 

 閑話休題

 

 その青年こそが私に会いに来た人間らしく、元気な挨拶をされ、名刺を渡された。

 異世界に来てまでこんなものを渡されるとは。人の行きつく先は似たり寄ったりなのだろうか。

 

「ケンキ・ユースル・ネッシーン?」

「どうもお初目にかかります! ケンキと申します」

 

 研究者らしく無い彼が語った経緯はこうだった。

 どうやら彼はこの国の貴族の四男坊で、継承権など皆無であるからと、自身の趣味も兼ねて国に様々な未解明のものを究明する研究所を作成したらしい。

 現在そこに勤める人間は彼含めて三名。

 簡潔に言うと、研究所へのスカウトだった。

 

「貴女が提出してくださった『ゴブリンの生殖について』という論文……研究日誌? にですね、非常に可能性を感じまして。我々とは異なる感性・視点を持ち合わせているであろう貴女に是非とも研究所へ来て頂きたく」

「嫌だ」

 

 こいつ貴族の癖にやけに丁寧に喋るな、なんて考えながらも否定は即答だった。

 働きたくなくて、好きなことやっていたくて研究しようとしているのに、何で組織なんぞに所属しなければならないんだ。

 私はノルマだとか、決まった時間に行動だとかしたく無いんだ。

 組織に所属するくらいならば適当に魔物を狩っていた方が気楽な生活を送れるだろう。何せ朝好きなだけ眠っていられるのだから。

 寝なくても良いと、二度寝の気持ち良さは結び付かないのだ。普通に二度寝が恋しい。

 

 と、そんなことをつらつらと語ると、嘱託扱いならどうだろうかと言われた。

 何でも、まだ出来たばかりの組織であるがために、実績が欲しいとのことで、いくつかのテーマを定めており、それらの見解や調査を纏めることで情報を買い取ってくれるというのだ。

 研究所へ行く必要も無く、テーマ以外にも有用な情報が得られればギルドのように買い取ってくれる。唯一デメリットがあるとすれば、それらの実績はいちおう研究所所属という形で発表されるくらいらしい。

 いや、普通に美味しいじゃないか。

 ギルドはあくまでも、冒険者の生存率や、直接的に金銭に結び付く情報にしか価値を見出してくれない。

 しかし、ここならば例えば、前述の「ゴブリンの生殖について」に関しても価値を付け、少額ながら金銭が支払われるらしい。

 まあ、既にギルドに提出してしまっているが故に、今から買い取るなどは難しいそうだが……

 

 と、そんな訳で。

 美味しい話に釣られた私はまんまと研究所の嘱託所属員となったのである。

 生活的には何も変わっていないが、未来が明るくなるのを感じる……!

 

 で、せっかくなので現在のテーマを聞いてみた。

 

「まだ、人数が揃っていないところもありまして……。実はテーマの方もざっくりとしたのがたった一つあるだけなんですよ。増えればいくつか設定し、チームに分けて調査とかしたいと考えているのですけどね。とりあえず、現在のテーマは『ダンジョンについて』になります」

 

 ダンジョン。

 そういえばそんなものもあった。

 この世界のダンジョンはゲーム的なものを思い浮かべて、そこからいくつかの要素を抜いたようなものになっている。

 

 まず、入り口は複数ある。

 何キロも離れた場所と繋がっていたり、すぐ近くに現れることもある。

 形態としては地下洞窟状のものしか確認されていない。

 そして、ゲームで言えばお決まりといったボス部屋みたいなのは無いし、扉とかも存在しない。ひたすら歩きにくい道が続いているだけだ。

 そして、魔物は棲み着いているが、奥に行くほど強くなる訳でも無く、最奥に何かがある訳でも無い。

 しかし、宝物は点在する。ランダムに豪奢な剣であったり、金塊であったりが転がっているのだ。

 

 ゲームで言えば、それはダンジョンだからで終わってしまうし、小説でダンジョンを運営するなどと言ってもそれらの不思議な現象は魔力の一言で片づけられてしまう。

 いやはや、考えれば考えるだけ興味深い。

 エルフの里から抜け出す時にも使ったというのに何故忘れていたのだろうか。

 いやまあ、巨大過ぎて研究対象には不適と勝手に脳内で振り分けていたのかもしれないが。

 

 で、詳細を聞くにまだプロジェクト自体は始動しておらず、残りの二人もスカウトに走っているらしい。

 もし、この研究に協力するならば、以前の研究を買い取れなかったことを考慮して、研究資金を少額ながら出しても良いとまで言っている。

 

 いや、そこまで言われたらやるしか無いでしょう!

 さあさあ、この世の謎を丸裸にしてやろうじゃないか。

 

 研究のタイトルはそうだな……

 『ダンジョンとは何ぞや』

 

 かな。

 

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