筆が乗れば、数時間で書けます。。。
「論文のタイトル付けるセンス無いですね!」
「煩いわ!」
なんかまだ居るし、タイトル呟いたら罵倒された。
いや、私にセンスが無いことは分かっているのだが、独り言に対してそこまで言わなくてもいいじゃないか。
「もし、研究所の方へ顔を出して頂けたら、書き方とか色々お教えしますよ! これ、場所と研究資金です。それでは」
と、余計なことばかり言ってケンキは帰っていった。
誰が、行くものか。
いや、でも論文作ったら行かなければならないのか……?
まあ作ってから考えよう。
研究資金として、置いていったのはざっと100
きっと、今後貢献していけば、もう少しは出してくれるはずだ。
で、この資金でどうしようかと考えた。
ダンジョンの研究をするならば、最低限ダンジョンへ出向いて実地調査とかしなければ、話にならないだろう。
だって、この世界の文献大したこと書いてないのだもの。
何なら冒険者同士の噂話とかの方が興味深い話が聞けるくらい。
下手に万能な力を誰もが使えると、そこに疑問を覚える人や、発展させようとする人がなかなか出てこなくなるらしい。
街こそ立派な出で立ちをしているが、魔力が無ければ原始生活とほとんど変わらないような文化水準だ。
さて、頂いた研究資金は少量の食べ物と、魔力灯、それとサンプル採取用に小瓶やナイフ、それらを仕舞うポーチを買ったら無くなってしまった。
研究資金というよりも、これから研究するための装備を整えて終わってしまったな。
食べ物いらないとか言われるかもしれないが、娯楽は大事なのだ。
それにエルフでも一年くらい何も食べなければ、段々と弱ってきてしまう。
……まだ、ほぼ丸々一年は大丈夫だけれど。
という訳で実地調査に赴こう。
ダンジョンにはそこに生息する魔物の強さによってランク分けが存在する。誰も踏破したことの無いS級から、ゴブリンなんていう低級の魔物しか出てこないF級までに分けられており、世界中に点在しているのだ。
ランク分けにダンジョンの深さは関係が無い。あくまでそこに棲み着いて生態系を築いている魔物の強さによってのみ分けられる。
自然に湧くわけでは無いため、時にはダンジョン内の魔物が一掃されることもあるが、どこからともなく、いつの間にか魔物が侵入して増えていくため、全く魔物が現れないダンジョンは、街中にある国に管理されたダンジョンくらいだ。
それらは国の財産として、大切に管理されているのだ。
向かう場所はそんな国の管理している安全なダンジョン……は、一般人には公開されていないため、町の近くに存在するF級ダンジョンだ。
出掛ける前に調べたのだが、エルフの里から抜け出す時に使ったダンジョンはD級に数えられるらしい。
つまり、そこを特に何も思わず抜けてこられたのだから、D級以下のダンジョンならば調査をしていても、魔物の襲来などに気負わずに調査が出来るというものだ。
街の近く故に当然、すぐに魔物は狩られていき、昔はE級ダンジョンだったらしいが、今ではF級として少数のゴブリンが巣くうのみのダンジョンだ。
旨味こそ少ないが、国が管理しているわけでもないため、一攫千金を狙った人間が多数出入りをしている。
このダンジョンは大した深さではないため、その程度であるが、遠方にある非常に地下深くまで続いているF級ダンジョンは、宝の類も深さに比例して現れるため、連日連夜大盛り上がりらしい。
これは、冒険者たちの噂話。
で、急ぐわけでも無いため、テクテクと歩くこと十数分。
巨大な穴の前にいくつかの屋台が賑わい、ちょっとした広場になっている場所へとやってきた。
ここがダンジョンの入り口だ。
街と違い、城壁などに囲まれてはいないため、野生動物や魔物が近寄ってきそうなものだが、そこはF級であってもダンジョンの入り口。
野生の狼や、ゴブリン程度なら簡単に伸してしまう冒険者ばかりが集まっているのだ。街の周りなどという人の生存権に棲まう動物などでは手も足も出ない。
何なら変なのが出てきてもすぐに街にまで逃げ込める。
巨大な穴と称したダンジョンの入り口。
それは地面にポッカリと開いた文字通りの穴である。
穴の周囲には10cmほどの地面の盛り上がりが出来ており、半径にして数メートルはありそうな巨大な穴。
底は暗く、最初に飛び込んだ人間は何を考えていたのだろうか、などと考えてしまう。
このダンジョンは底まで大人二人分くらい、大体3メートル前後らしいが、中には底にたどり着くのも、地上に上がってくるのも魔法無しでは不可能な数百メートルもの大穴が入り口となっているところもあるらしい。
さてはて、調査といってもまずは何からしようか。
穴の周囲の盛り上がりが気になり、近くにいた人を適当に捕まえて聞いてみると、各国が行っているダンジョンと、ただの大穴などと見分けるための目印らしい。
特にダンジョンそのものとは関係が無いようだ。
じゃあ、降りるしかないか。
『風よ』
魔力を練り、自身の周囲に軽く上昇する気流を発生させた。
それを身に纏いダンジョンの中へ飛び下りる。
上昇気流と合わさり、ゆっくりと降下し、そしてすぐに底に着地した。
魔力って不思議だよね。
例えば私が、同じ『風よ』っていう詠唱を唱えても、意思一つで攻撃から、上昇気流、追い風と全く別の現象を起こすことが出来るのだもの。
そもそも、詠唱の言葉だって、各々が独自のものだし、魔法陣何かが現れる訳でも無い。
誰に教わる訳でも無く、使える人は使えるし、使えない人は何も分からない。
ちなみにエルフはほぼ全員が風を使える。
それでいて、そういうものとなっていて、師弟関係で教えるとかもなければ、習得方法なんていうモノも無く、感じられるヒトにとっては手足のように、ただただ使える。
それなのに起きる現象は、自然ではあり得ない、むしろ個人で起こすこと自体が奇跡のような力ばかり。
魔法が使えない人間も鍛えるだけで、それらに対抗出来るほどに強固な身体を手に入れることが出来るのだって、意味が分からない。
あ、いや思考が全く別の方向へ飛んでいた。
今はダンジョンを調べることに集中すべきだろう。
いくらF級とはいえ、危険が存在していることに変わりはないのだから。
私は魔力灯で周囲を照らしながら、ダンジョンへの一歩を踏み出した。