TSエルフさんの事象研究日誌   作:井戸ノイア

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書いてる内にタイトルが変わりました()
本当に書き出せばすぐなんですよ……


エルフさんの研究日誌 『スライムの生態系は?』

〇月§日

 

 ダンジョンは置いておいて、今日はスライムを調べたいと思う。

 適当に採ってきたスライムの切れ端だ。

 ダンジョン内において、スライムは無限に等しいと言って良いほど、いつだって、どこにだって湧いてくる。

 スライムが生態系において、最下層に位置することは知られているが、その生態については知られていない。

 所詮、いくらでも湧く栄養素程度の認識で詳しく調べる人間はいなかったのだろう。

 食べられることだけ分かっていれば、それ以上は命がけのダンジョン探索において、余計なこととして切り捨てられる発想である。

 だが、スライムの生態は考えてみれば、考えるだけ不思議だ。

 ヒエラルキーが最下層に位置しながら、ダンジョンという閉鎖空間で増え続けることが出来るのは、植物の光合成のように自身でエネルギーを作り出すことが出来るのか、はたまた何か別の現象によってエネルギーを得ているのか。

 

 そもそもスライムという形態自体が様々な種類がある。

 もちろん、この世界でスライムといえば、動きが遅く、粘性の液体の塊のことであるが、前世の記憶と照らし合わせると、ゲームや設定では様々なものがあった。

 某勇者のゲームのスライムなんて、顔が付いていて妙に愛嬌があるが、あれはどういった生物なのだろうか。もしかしたら、裏設定なんかが用意されているのかもしれない。

 もう一つよく見かけるのは、中心に核があるタイプのスライムだ。

 核を潰せば終わり。

 それを守る周囲の粘性液体はカタツムリなんかでいう殻の役割なのだろうか。それとも、スライムは超巨大な単細胞生物だったりするのだろうか。

 千差万別な強さと形態を持つ、スライムに思いを馳せると、思考が止まらない。

 

 だが、あくまでこの世界のスライムは上記で述べているように、核が無く、粘性液体の塊で、生態系の最下層に位置すると考えられ、栄養が豊富であるということくらいだ。

 もしかしたら、核が小さい単細胞生物なんかであるかもしれないと考察したが、それは私が採ってきた破片によって否定された。

 小さな破片は大きさを変えることなく、小瓶の中でうにょうにょと蠢いている。

 単細胞生物であるならば、切り取ったところで復活なんかはしないだろうし、私の知っている生物で当てはめるのならば、プラナリアなんかが近いのだろうか。

 半分に切ると、それぞれが頭を持ち復活するヤツ。小学校の理科の授業なんかでは人気者だったんじゃないだろうか。

 しかし、あの生物の存在は知っていても、その仕組みは私は知らない。

 しまったな、生物をもっと勉強しておくべきだったか。

 

 まあそんなことを今更考えても仕方がない。

 とりあえず、このスライムがプラナリアと同様の性質を持ち、破片が復活しているのだと仮定しよう。

 そうであるならば、この破片はいずれ元のスライムと同様の大きさにまで戻るのではないだろうか。

 ならば、それを観察するためには大きさを戻すためのエネルギーをスライムに与える必要がありそうだ。

 スライムは何を食べるのだろうか。何でも食べるようなイメージがあるが、どうなのだろう。

 研究というよりも、スライム育成日誌になりそうだ。

 

 

〇月¶日

 

 スライムに色々と与えてみた。

 が、何を与えてもスライムが吸収する様子は無い。

 始めは果物の破片から、ダンジョンの土、私の血、魔力を注ぐなどいろいろ試してみたが、変化は無い。

 心なしかスライムの動きも鈍くなっているように見える。

 小瓶の中にはゴミとしか思えないような破片やらが吸収されることもなく落ちていて何だか寂しい。

 魔力は小瓶に注いでみたところ、スライムに変化は無く、そのまま空中へと溶けていった。

 

 

〇月Ψ日

 

 結局スライムは何かを食べることも無く、動きがどんどん鈍くなっている。

 最初はうにょうにょと元気に蠢いていたのに、今ではプルプルと時々身体を震わせるくらいである。

 よく考えてみれば、スライムはある意味で栄養満点の食糧になり得る。

 簡単に増やせるのならば、今頃巷にもっと流行しているはずだ。

 

 不味いというのは一見マイナス要素に見えるが、それは食べ方が開発されていないだけなのではないかと私は思う。

 要するに、美味しい食べ方が何かしら存在するとしても、わざわざそこまでして食べる必要が無かったり、そもそも安定して確保することが難しいものは、食文化として成長していかないのではないかと思う。

 スライムは後者だ。

 ダンジョン内ならば無限に湧くといえど、ダンジョンの外で育成が難しいのであればわざわざ流通させる必要も無い。

 いくら弱いダンジョンでも、油断をすれば命を落とすこともあるのだ。

 常食にそんな危険なものを採用するはずがない。

 

 さて、スライムが何も食べずに弱るばかりというのは本当に困ったな。

 どうしてこうなるのだろうか。

 

 

〇月Σ日

 

 スライムは結局動かなくなってしまった。

 ダンジョンから持ってきて5日目の出来事であった。

 

 こうなったからにはここまでの観察で、仮説を立てなければならない。

 故に私はこう考えた。

 スライムはダンジョンと何らかの寄生もしくは共生の関係にあるのではないだろうか。

 

 まだハッキリとはしないが、私はダンジョンは生物であると考えている。

 そうであるならば、そのダンジョン内でのみ生息し、そして無限に等しいほどに湧いてくるスライムの間には何かの関係があるはずだ。

 スライムが一方的に利益を掠め取っているのか、ダンジョンにも良い何かがあるかは分からないが、ダンジョンから取り出しただけで、弱っていき、いづれ死ぬ。

 それは何らかの栄養をダンジョンから与えられていたのではないかと考えたのだ。

 

 そうか、もしそうだとするならば。

 

 

〇月Γ日

 

 ダンジョンにやってきた。

 スライムを前回同様に細切れにして、いくつかの小瓶に採取する。

 もし、ダンジョンから何らかの栄養素を得ているのであれば、しばらくしてからダンジョンに放せば個体ごとに変化が見られるはずだ。

 今回は10個ほどに分けて確保した。

 いくつかのパターンを見てみよう。

 

 

〇月ζ日

 

 スライムが若干弱ってきたので、ダンジョンへやってきた。

 今回はダンジョンの入り口において、小瓶から取り出し一定の範囲以上にいけないように囲った個体、小瓶に入れたままダンジョンへ置いた個体、厳重に密閉した容器に入れた個体、そしてダンジョンの外に置いたままの個体へと分けた。

 そして、一つだけだとそれが偶然なのか必然なのか判断も付かないため、二つずつ設置した。

 

 そして待つこと数時間。

 ダンジョン内に置いた個体はいずれも、元気を取り戻しているようだ。

 厳重に密閉したスライムでさえである。

 反対にダンジョンにほど近い位置に置いたスライムには変化が見られない。

 つまり、弱ったままだ。

 

 スライムはダンジョンから何かを供給されて、生きているのだろうということが分かった。

 保有魔力を見る魔道具を使用しても、スライムの魔力量に変化は見られない。

 魔力を受け取っているのではないのだろう。

 

 では何を受け取っているのだろうか。

 ダンジョンにはまだまだ私の知らない未知のエネルギーが存在しているのかもしれない。





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