天使と悪魔のガンダムが共闘を行う数刻前のこと。
オルガ・イツカはあの白いモビルスーツを測りかねていた。
自分たちをモビルスーツから結果的に救ってもらう形になった訳だが、何もないところから唐突に表れた怪しさ満点の存在。
三日月に任せたモビルスーツに似ている形状、何を取っても不可解なことだらけで頭を悩ませていた。
だが、オルガ・イツカは今この戦場でたった一人の指揮官である。
オルガが1秒でも指揮を怠ればその分自分たちの仲間が命を散らしていく。
今この瞬間にもモビルワーカーによる戦闘は継続されており、オルガの指示をみんなが待っている。
だからこそ、オルガ・イツカは判断をつけられずにいた。
こちらの切り札である、三日月が想定よりも準備に時間がかかっていること。
例え間に合っていたとしても、例の白いモビルスーツが敵に回った場合勝算があるのか。
ここから先は自分一人の指示で味方があっけなく死んでいく。
それが重荷なっていた。
「おい、オルガこれ…」
そんな時だった白いモビルスーツとギャラルホルンのモビルスーツとの通信を拾ったのは。
ギャラルホルンも知らない機体だったためか、オープンチャンネルで通信を行なっていたことが幸いし、自分たちにも会話が聴けるようになっていた。
「これは、白いヤツとギャラルホルンの通信か?!」
「けどよ、オルガ白い方に関しては何言ってんのか全然わかんねぇぞ」
聞こえてくる単語には、ソレスタルビーイング、ガンダムマイスターなど生まれてから一度も聞いたことのない単語ばかりだった。
ギャラルホルンの方もそんなものを知らないらしく、白いモビルスーツを敵と見定めたようだ。
おお振りの攻撃を白いモビルスーツは危なげなく交わし、再度通信を続けている。
白いモビルスーツに乗るパイロットは今行われている惨状について、激昂していた。
通信越しではあるがその怒りがこちらにもヒシヒシと伝わってくるのがわかる。
俺たちは宇宙ネズミで代わりなんていくらでもいる。
たしかにギャラルホルンの言う通りだ。
俺たちみたいなやつは権力者や大人たちにいいように使われて死んでいく。
ロクな人生が送れることなんてほとんどない。
だけど、そんな俺たちの惨状を目の当たりにして、激昂している白いモビルスーツのパイロットをみていると、信用してもいい気がしていた。
少なくとも、今この戦場をくぐり抜ける間は。
それに、敵のモビルスーツは三機こちらはミカの一機だけ、だが、あのモビルスーツが味方をしてくれれば3対2数的不利は覆せないが、ミカの負担はその分下がる。
その時、CGSに眠る悪魔がオルガの前に降臨した。
「ごめん、オルガ起動に時間がかかちゃった、みんな生きてる?」
悪魔から聞こえる声はうちのエース三日月・オーガスのものだ。
「ああ、ミカ待ってたぞ、そっちはだいぶ手間かかったみたいだが、ちょっと状況が変わってな。」
「…オルガあの白い機体は何?敵?味方?殺してもいいの?」
ミカもどうやら気づいたようだな
敵か味方わからねぇがそれなら味方にしちまえばいい。
だから
「ミカ、頼みがある。あそこの白いモビルスーツに共闘を申し込んでくれねぇか?」
「…あいつ信用できるの?」
ミカの不安もわかる。
いきなり表れた謎のモビルスーツ。
だが、ここであの白いモビルスーツまで敵に回せば4対1。
初陣のミカにそこまで無理はしいれねぇ
それに回さなくていい敵ならそれに限った話はねぇ
「…信用できるかどうかはわからねぇ、けど!!俺たちの死に様を見て嘆いてくれたやつなんだ、だから、俺は信用してみる価値はあると思う。」
「…そ、オルガが言うなら信じるよ」
「すまねぇミカ、頼む」
了解と言い残し、ミカはモビルスーツの戦場へと向かった。
「頼んだぜ、ミカ」
こうして、天使の戦場へと悪魔が向かった。
ーーーーーーー
「な、何なんだこいつらはッ」
ギャラルホルンの指揮官であるオーリスは困惑していた。
上官から受けた任務は民間の武装組織にいるとされているクーデリア・藍那・バーンスタインを殺すと言う簡単な任務だった。
クーデリアは今や火星の独立運動の先陣をきっている大物。
しかも、その任務の指揮官に自分は任命されていた。
出世するチャンスだと思っていた。
相手は民間の武装組織、任務はつつがなく終了するはずだった。
それが、蓋を開けてみればどうだ、モビルワーカー隊は役に立たず、モビルスーツである我々も、敵の白いモビルスーツを狩りかねている。
本当にわけがわからん、こんなはずではなかったのに
「考えごとしてる暇なんてあるの」
背後から大型のメイスを振りかぶって来るのを確認し、全速力で前進する。
だが、死角からの一撃だったので、避けきることはできず、右腕は壊れ、右脚はうまく動かなくなっていた。
「くそくそくそくそなんだって俺がこんな目に!!クランク!!クランクまだか!?」
命からがら逃げ出しながらも、彼は味方のモビルスーツの応援を待っていた。
しかし、彼の単独行動による敵陣へ攻めすぎたのと他のモビルスーツ隊は後方へと待機させていたため応援には時間がかかっていた。
「くそ、こうなったらモビルワーカー隊応答しろ!?どうした、モビルワーカー隊誰でもいいから応答しろ!!」
しかし、どの隊からも返答が返ってこない。
おかしい。前哨戦や地雷で数は減りはしたもののかなりの数のモビルワーカー隊が残っていたはず、モビルスーツ隊よりも近くにいたため時間稼ぎに使おうとしていたのだが、どの隊からも返答が返ってこない。
だが、その時血塗られた天使が現れる。
血のようなオイルを全身に浴びる白いモビルスーツ。
天使の名を冠するガンダムエクシアが目の前に降臨した。
「エクシア敵のモビルワーカー隊の無力化に成功。続いてフェーズ2殺戮の原因を取り除く」
横払い一線。
真っ二つにされたギャラルホルンのモビルスーツは大きな爆発音を立てて塵となった。
「任務完了、これにて原因の排除に成功。」
オイルまみれだったエクシアの実体剣に赤いオイルも追加された。
ちょうどその時ギャラルホルンの応援部隊が到着した。
「オーリス隊長をよくも!!」
突っ込んで来た敵のモビルスーツの攻撃を実体剣で受け止める。
どうやら敵のパイロットはまだ青いらしいな。
指揮官がやられて激情するのは理解できるが、無策に飛び込むのは感情を理性で支配できない青二才のすることだ。
「アイン!!無闇に突っ込むな、オーリスの二の舞になるぞ」
どうやら、後ろの一機は熟練のパイロットとみる。
指揮官をやられても、激情にかられず、周りをよく見ている。
こいつは先の指揮官よりも手強いかもしれないな。
そこに、悪魔の名を冠するガンダムバルバトスが横に並び立つ。
「えくしあ?の人応援に来たよ。あんたが、モビルワーカーをやってくれたから、うちの隊はみんな引いてる。敵も後このモビルスーツ2機だけだからとっとと終わらそう」
「貴様ら!!許さんぞ俺たちの仲間を!!オーリス隊長を!!」
「は?何言ってんのあんた?あんたらが攻めてきたんだろ。そのせいでこっちにもかなり死人が出てる。許さない、それはこっちの台詞だ。」
お互いのモビルスーツが一触触発の時、敵のモビルスーツから通信が入る。
「その声、少年か?なぜこんな戦場に少年が?」
「なんでって、そんなのみんなを守るために決まってるだろ」
それだけならもういい?と言ってメイスを構える三日月。
「…いや待て、そちらにいるクーデリア・藍那・バーンスタインの身柄をこちらに引き渡してくれないか?そうすれば私たちはこのままここを去ろう。」
「クランク二尉!?」
青年のモビルスーツから困惑の声が聞こえてくる。
「…アイン、少年が戦闘をするなんて本来あってはならないことなんだ。だから、ここは堪えてくれ頼む」
「…クランク二尉」
尊敬する上司の言葉に心が揺れるアイン
敵の意見がまとまりつつある中、強い衝撃が機体に描き巡る。
「なっ!?これは…」
先程までメイスを構えていた白いモビルスーツがこちらの機体に攻撃を仕掛けていたのだ。
「な、何をする私たちは戦うつもりは…」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃ、うるさいんだよ。俺はオルガに言われたんだ。全員ぶっ倒せって」
脚が潰され、動けない
持っている斧ではあのメイスの攻撃を防ぐことはできない。
狙いはコックピット逃れようのない死が目の前に迫っていた。
「…すまぬアイン、逃げてくれ。」
「クランク二尉!!!」
こちらに向かって来るアインの機体を見ながら切にそう願った。
後数秒後にはこのコックピットをあのメイスが貫通することになるだろう。
その時確実に私は死ぬことになるだろう。
ゆっくりと死が迫っていた。
だが、ガキンと甲高い音が鳴る。
「…何で、邪魔するのエクシアの人?」
実体剣でバルバトスの大型メイスからギャラルホルンの敵モビルスーツを守るエクシア。
「これ以上の戦闘は許容できない、相手に戦う意思はない。それでも命を奪うというなら、その戦闘に介入させてもらう。」
「へぇ〜やるんだ、エクシアの人。いいよ、邪魔するなら3人纏めてあの世に送ってあげるよ」
悪魔対天使
バルバトスとエクシアの戦闘が始まった。