四宮あまねは咲かせたい 作:朕好こう
この物語の主人公は白銀御行と四宮かぐやではない!
これは四宮かぐやの異母妹である四宮あまねと、白銀御行の妹、白銀圭の(恐らく)恋(になる予定)の物語である!!
四宮あまね。清廉潔白、優美高妙と評される彼女は生徒会室で会長の席に座り、物思いに耽っていた。
その姿は一種の芸術にも等しく、物憂げな溜息は男性を虜にするだろう。
では、そんな彼女は何を考えているか。
『すっごく緊張するわ…!?お、お泊まり会って何を持っていけばいいのかしら!?洋服は勿論持っていくけど何着で足りるかしら。洋服タンスごと持っていった方がいいのかしら!?…待って、洋服タンスというのは昔で言う嫁入り道具だわ。つまり、これは結婚と言っても過言では無い!?』
過言である。
彼女は、意中の相手である白銀圭と友人である藤原萌葉とのお泊まり会で非常にテンションが上がっていた!!
傍から見れば芸術作品のような美貌を誇る彼女も、箱を開けば阿呆なことを考えていた。もうこいつ、神様に美貌返却しろよ…なんて口が裂けても言えないが、非常に残念である!!
『お泊まり会の醍醐味は一緒にご飯を食べたり、お風呂入ったり、遊んだりすることよね。でも、遊ぶって何で遊ぶのかしら。将棋、チェス、花札、クレー射撃、ゴルフ…?』
恐らく一緒にお風呂に入ることは無い。あと今どきの娘の大半は将棋や花札より、自撮りやバナナジュースに夢中である。だが、箱入り娘(笑)なあまねには、流行りなど理解出来ない。
「
「え、俺ですか?」
共用ソファで仕事をしていた爽やかな美男子が、あまねに急に呼ばれ驚いた表情で反応する。彼の名は菅原
「…貴方はお泊まりってしたことあるかしら」
「え?まぁ…何度か」
「そう。じゃあ、お泊まりに必要な物って何かしら?別に私はしたことが無いわけじゃないわ。でも、やっぱりこういうのって相手に失礼にならないように多数の意見を聞いとくべきだと思うの」
会長、お泊まりしたことないんだな、と嘘見え見えの話を聞いた菅原は苦笑する。だが彼は気が利く男。何処かの高等部会計とは違い、地雷に突っ込むようなことはしないのだ。
「そうですね…洋服、歯ブラシセットとかあちらで用意できないものは当然こちらで用意します。トランプとか遊び道具なら相手の家にもあるでしょうし、あまり持ってくものって無いと思いますよ」
「なるほど。いい統計が取れたわ。ところで、洋服ってタンスごと持っていくべきかしら」
「タンスごと!?」
「えぇ、洋服って汚れやすいし…」
菅原は困惑する。四宮あまねが常識に疎いことは薄々気が付いていたが、ここまでとは思っていなかった。頭を抱え、取り敢えずあまねに言っておくべきことを言っておく。
「えっと、寝間着と私服何着かでいいと思います。タンスごと持っていく必要は無いです」
「でも泥とか…体液とかで汚れるかも」
「無いです。体液で汚れるとか人を殺す気ですか?」
「そんな訳ないじゃない。菅原会計は面白いことを言うわね」
お前には敵わないよ。
菅原、大困惑!自分はなにも面白いことは言ってないし、寧ろこちらは大真面目に言っている。体液で汚れるなんてシチュエーションはほぼ有り得ない!この女は何を言っているんだ、と叫び出したいのを必死に抑える。
「そうですか…」
「そう言えば菅原会計は圭さんのことをどう思ってるのかしら」
菅原に突然のジャブ!菅原は突然のジャブがクリーンヒットし、動くことが出来ない。
「は?」
「は、では無くて、菅原会計は白銀圭をどう思ってるのかしら」
四宮あまねは白銀圭のことが好きである。これは揺るぎない事実であり、彼女自身も認めている。そして意中の白銀圭は、その容姿から男女問わずモテる。
菅原会計は優秀な人材とは言え、自分の敵であれば容赦無く叩き潰す。それが四宮あまねのスタンスだ。
『菅原会計は嘘を吐く時、右手を鼻に持っていく癖がある。と言っても彼が嘘を吐くときは優しい嘘の時ばかりだった。だから信用したいけれど、圭のことが好きなら話が別だわ』
「まぁ、白銀副会長は人間として好ましいですよね。努力家で、誇り高い。女性として気にならないかと聞かれたら、Noとは言いきれないです」
「…そう」
『残念だわ、菅原会計。ここでお別れになるなんて…』
「でも俺、他に好きな女性が居るので」
「本当に!?」
「はい。叶うかどうか分からない恋ですけど」
菅原、窮地を脱す!
そう、彼には既に意中の相手が居た。意中の相手は藤原
そして菅原創は生粋の年上好きであり、巨乳好き。故に白銀圭を人間的に好ましくは思っても、スタイル的に好きになることはない!
男って最低ね…
そしてそれはあまねにとって朗報でもあった。性別が男で性格も良く、容姿も良い彼が白銀圭を狙っていないということは、四宮あまねに敵が居ないということと同意義!!このまま告白すれば、四宮あまねの成功確率は90%以上(予測)。
『…ふふ、私としたことが杞憂だったようね。勿論、菅原会計のことは信用していたもの。これは勝ったわ。後はどうにかして、圭の方から告白させればいいだけ』
だがしかし、四宮あまねは根本的に自分から告白することは無い。好意を認めることは出来ても、好意を伝えることは出来ないヘタレである!!
『あー心配して損したわ。これで今日のお泊まり会は完璧ね。圭とも萌葉さんと円満なお泊まり会が出来そうだわ』
…まぁ、前回、お泊まり会に誘えただけ、姉のかぐやより進んでいると言えるが。
四宮家と
彼らは四宮家の自分本位な姿勢に対し、強い嫌悪感と憎悪を抱いている。
四宮家も上位の存在である自分たちに噛み付いてくる愚者として、強い侮蔑と嘲笑を彼らに向けている。
それは娘である四宮かぐや、あまねや四条
幼い頃から四宮憎し、四条愚かで育てられてきた彼女たちは、お互いに距離を保っている。
だが、四宮あまねと四条眞紀の仲は…
「それで、今日、圭とお泊まりなの。眞紀ちゃん」
「良くやったわね、アンタ」
「ふへへ…」
「その笑い方やめた方がいいわ。早急に」
「えっ!?」
非常に良好であった!
四宮あまねと四条眞紀は非常に相性が良かった。眞紀からすれば、かぐやと比べて素直なあまねは可愛い妹みたいなものだ。
四条眞紀から見て四宮あまねは続柄で表すと、再従祖叔母に当たる。これは祖父母の兄弟姉妹の孫という関係であり、ぶっちゃけ他人に近いのである!友達の兄弟姉妹の友達くらい遠い関係である。
ちなみに伯母は基本的に年上を表し、叔母は年下を表すので間違えると大変なことになる。
かぐやのことは敵視するあまねも、自分に優しくしてくれる眞紀は非常に好ましく思っている。
四宮家から離反した四条家自体には、ある程度侮蔑を持っていなくもないが、それはそれ、これはこれである。それを眞紀に伝えるほど、あまねは酷い人間では無いし、家と個人を分けて考えられるくらいには良識がある。
「ところで、眞紀ちゃんは田沼先輩とは…」
「…あはは、最高に死にたくなる話題を振ってくるわね」
「え?でも、前言ってなかったかしら。田沼先輩には彼女居ないって。だから頑張るって話では無かったの?」
「……翼くんが私の親友に告白したんだぁ」
三角関係!しかも親友が意中の相手と付き合うという最悪の事態!!そしてその告白シーンを目の前で見せられるという苦行!!!
四条眞紀が何をしたのかと言わんばかりに、最悪のパレードである。
「…」
「あはは…笑ってよ、こんな哀れな敗北者を。壁ダァンなんていう変な技に負けた私を」
おかげで辺り一帯、お通夜状態。眞紀は虚空を見つめて空笑いを繰り返し、あまねも笑えず俯くばかり。
「…あまねも、後悔しないようにした方がいいわよ。告白されるなんて夢物語。自分から動かないと始まらないわ」
「それ、眞紀ちゃんが言うのね」
「私だから言っているんでしょ!?」
「ご、ごめんなさい…」
経験者はキレる。
「学生の恋愛なんてお
「でも、そのピークって何時までかしら?眞紀ちゃん」
「黙りなさい!!とにかく、最後に私の傍に居てくれたらそれで満足なの!!」
「…そういうものなのね」
あまねは深く頷く。だが、それは理解したことによる首肯では無い。
『まぁ、私はそうならないけれど。だって圭と私はお泊まり会を経て、結婚まで行くもの。眞紀ちゃんには悪いけれど先を越させてもらうわ』
何処からそんな自信が湧いてくるのかと疑問になるくらいの自信で、眞紀の話を流し聞いていた。
『圭は浮気なんてしないし、彼女の方から「あまね様!!結婚して!!」と来るに決まっているわ。同年代に敵なしと言われた私以外に魅力的な人なんて居ないもの!』
自画自賛が過ぎる。
あまねの悪い所は自分を過剰に褒め称えることと、大切な人のことになると盲目的なまでに信頼してしまうこと、かぐやより素直なことで騙されやすいということである。
「もうこんな時間ね。私は帰るわ。今日は話聞いてくれてありがと。ちょっとは楽になった」
「えぇ、眞紀ちゃんとの話なら歓迎するわ」
「そう?じゃあまた話に来るわ。今日のお泊まり、楽しんで」
夕陽もすっかり落ちかけ、辺りは暗くなりつつある。眞紀は立ち上がり、手を振って帰っていく。
「ふぅ…」
そして静寂に包まれた生徒会室で、四宮あまねは。
「どうしよう。凄い緊張で震えてきたわ」
お泊まり会への緊張で震えていた。小刻みに震え、希望と緊張が入り混じる。
次回!ドキドキっ!お泊まり会スタート!