四宮あまねは咲かせたい 作:朕好こう
恋愛。
甘い恋から、苦い恋。色んな恋愛がある。
だが、それらにはある共通点がある!!
恋人たちの間には明確な力関係が存在するということだ!
「うちの彼ピッピにネックレス、買ってもらっちゃったぁ」
「俺、彼女にクソ高いネックレス買わされて、金無いんだよね…」
搾取する側とされる側。
「今日、私が愛情込めてご飯作るから…もう何処も行かないでね」
「わ、分かったから包丁を閉まってくれ」
尽くす側と尽くされる側。
そして、勝者と敗者!!
もし、貴殿が気高く生きようと言うのなら決して搾取され、相手に尽くすような敗者になってはならない!!
恋愛は戦!!好きだと伝えた方が敗者なのである!!
四宮あまねはガチガチに緊張していた!!初の友人宅でのお泊まり。にも関わらず、この家の住人は良く言えば非常に友好的、悪く言えば馴れ馴れしかった。
対人スキルが上から目線で構成される四宮あまねにとって、このような対応は初めて。初対面の人間が会ってから数分で名前呼びする世界に、戦々恐々としていた!
「あまねちゃんって、かぐやさんの妹さんなんですよね?」
「は、はい…そう、です」
「かぐやさんとお家でお話とかするんですか?」
「…姉とはあまり仲が良くないので」
「あっ…そ、そうなんですかぁ……」
雰囲気は最悪!!嘘でも、「仲はいいんですけど、お互い忙しくてあまり話す機会は無いですね」、とでも言っておけばいいものを素直に言ってしまう!
そして部屋で色々用意している萌葉に代わって、あまねに対応している次女、藤原
『地雷を踏んでしまいました…普通に好奇心で聞いてしまいました。これは謝らなきゃ行けないですよね』
『どうしよう、素っ気なく言いすぎたかしら。萌葉さんのお姉さんに失礼な態度を取ってしまったわ。これは謝罪しなければ…』
一方、あまねはあまねで、自分の空気の読めない発言を後悔していた。そのままお互いが謝ろうとした時、思いがけないことが起きる!
「藤原さん、遅いですけど大丈夫ですか?」
何故か、かぐやが藤原家のリビングから登場!!あまねは思わず謝るのを中断し、大声を出してしまう。
「な、なんで…かぐや姉さんが!?」
「…貴女には関係無いわ」
「昨日話した時には、言ってくれなかったじゃない!」
「声を荒らげるなんてみっともないわ。静かにしなさい」
かぐやに窘められ、あまねはぐっと黙り込む。確かに驚いたとは言え、非常識な行動であったと反省する。だが、何故、自慢するように話した時は聞き流し、どうでも良さそうだった彼女がここに居るのだろうか。
かぐやがここに居る理由、それは今日の昼まで遡る。
四宮かぐやは仕事を終わらせ、白銀御行や藤原千花と談笑をしていた。
白銀がそう言えば、と思い出したようにかぐやに尋ねる。
「四宮、中等部生徒会にお前の妹は居るか?」
「…えぇ、居ますが」
珍しく歯切れの悪い回答に白銀は首を傾げる。そして、あることに思い当たる。
あぁ、四宮の妹も反抗期なのか、と。自身の妹である白銀圭もそうであるから分かるぞ、と深く頷く。
「私の妹がどうかしましたか?」
「非常に優秀だと聞いてな。中等部の学力向上、地域との密接な関係を半年で為すのは、俺でも難しい。是非ともその手腕をお目にかかりたいものだ」
「あまねはそんなに優秀ではありませんよ。褒めるとすぐに調子に乗ります。それに四宮家として優秀なのは当然。もっと結果を出してもいいくらいです」
「ふむ。随分、厳しいんだな」
「そうでしょうか。的確な批評だと思います」
嘘である!この女、意図的に白銀の意識を、自身の妹から遠ざけようとしている!!自身の妹にすら、会長を盗られる危険性を考慮し、近づいて欲しくないと強く思っている。
だが、仲が険悪であるとは言え、自分の妹が褒められるのは多少嬉しい。
「かぐやさんの妹さんですか…やっぱり、かぐやさんに似てるんです?」
「いえ、私とあまねは腹違いなので容姿自体はそこまで似ていませんね」
生徒会の空気が一気に冷え込む。質問を間違えた千花はあわあわと慌てだし、白銀も流石にフォロー出来ない。かぐやはそんな空気を察すると苦笑し、千花に大丈夫ですよ、とフォローする。
「別にそこまで気にすることでは無いですよ。実際、私も気にしていないので、皆さんも気にしないでいただけると助かります」
「そ、そうですか…」
「分かった」
白銀も千花も頷いて、それ以降は普通に対応してくれる。この2人のそういう所が、かぐやには好ましく思われる。
「そう言えば、藤原さん」
「はいー?」
さっきのことを既に頭の片隅に追いやり、折り紙で千羽鶴を作っていた千花は、かぐやの問いかけに首を傾げる。
「あまねが藤原さんの家に泊まりに行くと聞いたのですが…何か聞いていますか?」
「はぇ…?あ、そう言えば萌葉が友達が来るとか言ってたような」
「そう言えば、圭ちゃ…俺の妹もお世話になるみたいだな」
「じゃあ、今日はかぐやさんの妹さんと圭ちゃんが家に来るんですか!?」
「そういうことになるな」
「かぐやさん!」
「は、はい」
唐突に千花はかぐやの手を握る。かぐやは興奮している千花に驚いて、身を強ばらせる。
「私達もお泊まりしましょう!!」
「いいですけど…」
かぐやはチラッと気付かれないように、白銀を横目で見る。「会長と一緒にお泊まりしたい♡」…なんていう青春の1ページのような甘酸っぱいことは考えていない。
『お泊まりですか。男性が女性に対して、お泊まり会に参加したいと言わせるのは難しい。なら、生徒会の親睦を深める会食という形はどうでしょう。そういう形式的なものなら会長も断り難い…』
このように非常にめんどくさいことを考えていた!普通に会長ともお泊まりしたいと言えばいいのに、素直に誘えない!!妹のあまねにすら負けているという事実を、かぐやは知らない!
『問題はどう会長を動かすか、ですが…ここで私が会食という提案をするのは、藤原さんとのお泊まりを断っているようになってしまう。つまり、藤原さんに会長を誘わせるしかない。1度レールに乗せてしまえば、あとはこちらのものだわ』
かぐやは不敵に笑う。だが、かぐやはここであることに気づく!
『…これってまるで、私が会長とご飯が食べたいみたいじゃない!?べ、別にそんなことないわ。ただ会長だけ、お泊まり出来ないのはお可哀想なことだから…!!そう思っただけで!!』
その通りである。
「あ、会長もどうです?」
千花の好手が白銀に王手をかける!かぐやは親友である千花のその援護射撃に内心、歓喜する。この時ばかりは、千花を手放しで褒める!
『よくやったわ!藤原さん!!やっぱり私達、友達ね!!』
「いや、女子とお泊まりはちょっと、な。流石に気が引けるし」
白銀、即答!!だが、当たり前と言えば当たり前である。このご時世、誰が見ているかもわからず、根も葉もない噂が横行するのは当たり前。それに何か間違いがあってからでは遅いと白銀は判断した。
「そうですか。残念です」
「まぁ、また今度そういうのを企画しよう」
「あ、そう言えば以前、夏休みの旅行の話有りましたよねー」
「そう言えばそうだったな…あの時は山か海だったか」
ここで白銀の攻勢が始まる!!そう、ここまでの話は白銀がこの話に繋げるための布石だったのである!!
だが、この物語は白銀圭と四宮あまねの物語であり、これ以上の高等部での恋愛頭脳戦は控えよう。
取り敢えず、簡潔にかぐやがここに居る理由を述べれば、藤原千花に誘われたから、ただそれだけである。
「…」
沈黙が藤原萌葉の部屋を支配する。萌葉の部屋には睨み合う四宮姉妹の姿があった。
圭は居づらそうに俯き、千花はどんなゲームをしようかなぁと考え、萌葉は四宮姉妹を屈服させたいと考えていた。
碌でもないヤツらばかりである。
「あ、現実ゲームしませんか?ゲームの内容は人生ゲームとほとんど変わらないんですけど」
千花が唐突に切り出す。圭はこれに乗らなければ一生、この沈黙が続くと判断!首が折れそうなほど頷く!!
「う、うん。千花姉ぇ、それ、いい考えだね!」
千花姉ぇ、と聞いた瞬間、四宮姉妹は一斉に藤原千花を凝視する!
『千花姉ぇ?へぇ、圭と萌葉さんのお姉さんってとっても仲がいいのね。仲が良いって言うのはどの程度かしら?もしかして、もう何度も遊んだりしてるのかしら。ショッピングして、遊園地や観光地に行ったり?そう、萌葉さんのお姉さんって凄い強欲ね。傲慢とも言えるかしら。あぁ、私の圭に手を出そうとするなら色欲とかも似合うわね。その胸で色んな人を誑かして来たのでしょう』
『千花姉ぇ?…ふぅん、藤原さんって私以外にもそういう友達を作っているんですね。そうですか、そうですか。良く判りました。藤原さんって私が持っていないもの全てを持ってますよね。優しく仲のいい姉妹関係、暖かな家族、胸もあるし可愛くて性格も良い。にも関わらず、会長の妹にまで好かれるなんて…強欲にも程があるわ』
『『…こういう人が地球を滅ぼすんだわ』』
四宮姉妹は非常に思考回路が似ていた!藤原千花をこの世の悪認定し、姉妹で
「えぇ、凄くいい案ですね。藤原さん」
「私も丁度、現実ゲームをしたいと思ってました」
2人は先ほどの睨みあいが無かったかのように笑顔になる。圭は急に仲良くなった四宮姉妹を、若干訝しがりながらも安堵し、萌葉と千花は現実ゲームの準備をする。
現実ゲーム!!その進行は殆ど人生ゲームと変わらない。振ったサイコロの目だけ進み、ゴールを目指しつつお金を稼ぐ、そんなゲームである。
「じゃあ私から」
順番は四宮あまねからスタートし、白銀圭、藤原萌葉、藤原千花、最後に四宮かぐやで終わる。
四宮あまねはサイコロで6を出し、コマを進める。
「えっと、“好きな人に振られ、その反動から勉学に励む。異性恐怖症獲得、秀才獲得”………」
好きな人に振られるというマスを引き絶望するあまねを他所に、他の者達もサイコロを転がす。
ゲームは進行し、あまねはベンチャー企業の社長、圭は社長秘書、千花は芸術家、萌葉は犯罪者、かぐやは大手企業の社長となっていた!
そして、大人になってからがこのゲームの真骨頂である!!
「うっ、住宅ローン未払い…」
「萌葉さんのお姉さん、私が立て替えて差し上げましょうか?」
「藤原さん、私が立て替えてあげますよ」
例えば、借金!
「刑期が終わらないよー」
「萌葉さん、釈放金幾らでしょう。払って差し上げますよ。その後、あまねグループで働きませんか?」
「萌葉、私が払ってあげます。勿論、お金を返す必要はありません。かぐやグループで働く必要もありません。ただ、少しだけ私のお手伝いをしていただければ、ね」
例えば、買収!
「圭さん、私の秘書になりませんか?好待遇で貴女を雇用して差し上げます」
「…私の会社の方があまねより、稼いでいます。私を選んだ方がお得ですよ」
「姉さんの会社が儲かるのは今だけ。将来を見すえている私の会社の方が今後の売り上げ幅が大きいわ」
「えっと…」
例えば同盟関係の裏切り、優秀な人材のヘッドハンティング!
このゲームは非常に現実的である!!子供時代まで蝶よ花よ、と甘やかされていた者に待ち受ける社会の非情さ!借金地獄に人間関係の悪化!この世の悪い所を凝縮したかのようなゲームである。
「あ、私、結婚するみたい」
萌葉が手を挙げて申告する。萌葉は刑務所から脱獄後、身を隠しながらアルバイトを転々としている人生だ。
「えっとー、私に1番近いのは…圭ちゃん!私と結婚しよ!!」
萌葉は嬉しそうに圭に抱きつき、圭自身も照れながらも満更では無さそうな反応だ。
その反応に怒り狂っている人物が居た!
『は…?圭と萌葉さんが結婚??…そう。藤原家は揃いも揃って不調法者ね。害虫は駆除するに限るわ…燃やす?それとも氷漬け?東京湾にコンクリ詰めでも有りね』
我らが主人公、四宮あまねである!!!思考は完全に犯罪者である!
「じゃあ、皆、ご祝儀代頂戴!6万円!」
萌葉が笑顔で差し出してくる手を噛みちぎってやろうかとあまねは思案する。こんなのでいいのか、主人公。
すっと流れるように、あまねは財布から6万円を取りだし、唇を噛み締めながら萌葉と圭に差し出す。
「あまねさん、現実のお金じゃないです。ゲーム内の紙幣ですから閉まってください」
「そう、なのね…」
その後もゲームは続く。あまねは海外進出、圭はあまねグループの秘書に抜擢、萌葉は定住し工場で働き、千花はホームレス、かぐやグループは巨大複合企業へと進化していた。
「あ、出産しました」
「どうやって、妊娠したんだろうね、圭ちゃん」
「…そういうこと考えないの」
妊娠と言う言葉に少し頬を染める圭を見て、あまねは大興奮する!!
『おかわわわわ!!?しゅごすぎる!!圭が頬を染めるの可愛すぎるわ!!写真に収めたい!ふへっ…えっちだわ!凄くえっち!!若者がよく使うやばいってこういう時に使うのね!やばいわ!』
やばいのはお前の頭だ。
「あ、これもご祝儀払うみたいですね〜私、ホームレスなので全くお金無いですけど」
「仕方ありませんね。私が肩代わりしますよ…」
「ホントですか?かぐやさん大好き!」
「全く…今回だけですよ」
あまねは財布から6万円を取りだし、萌葉と圭に差し出す。だが、その顔は興奮しきった顔だ。
思わず、圭も萌葉も後ずさる。当然である。ここはキャバクラではない。
「だ、だからあまねさん。
終盤!あまねは社長を辞任後、会長に。圭も秘書を辞職、デパート勤務。千花は冬の公園で凍死。かぐやは未だ社長の座に居座っていた。
そして萌葉は……
「あっ、捕まりました。もう、あまねちゃんが指名手配なんかするから」
「ごめんなさい。でも犯罪者を野放しにするのはいけないでしょう?」
「ぶー、あまねちゃんはゲームでも真面目だなー」
そんな正義のためではない。実はこのゲーム、牢獄に送り込まれると関係がリセットされる。つまり、圭と萌葉の関係は離婚したということになる!
『勝った…!私の勝ちね。あとは結婚マスを踏んでゴールするだけ』
そして、あまねの豪運が結婚マスを引き寄せる!!
「あら、結婚マスですね。さて、私と1番近いのは…」
全ては彼女の計算通り。圭が1番近い時に結婚マスを踏んだのだから。
「圭さんですね」
心の中でガッツポーズ!自画自賛の嵐!!だが、繰り返すが、現実は非情である。このゲームは現実の法律を1部採用しているのだ。故に、現実ゲーム。
「あまねちゃん、女性は懐妊中に離婚したら100日間再婚禁止です。萌葉との間に儲けた子供がまだ圭ちゃんのお腹にいるので。なので…」
「…私と、ですね」
そう。再婚禁止期間により、圭と結婚は不可。そして、次点で近い者と結婚することになる。それは姉であるかぐやである!!
あまね、撃沈!!期待していたことが何一つ叶わず、ゴール!!
「…死にたい」
次回、お泊まり会の定番、就寝前の恋バナ!