四宮あまねは咲かせたい   作:朕好こう

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四宮あまねは告られたい

 相利共生!!異なる生物種同士が同所で生活し、互いに利益を得ることが出来る関係性のことを指す。

 

 例えば、クローバーとミツバチ。

 

 例えば、ワニとハチドリ。

 

 例えば、人と家畜。

 

 互いの利益が噛み合い、更なる利益を生み出す。それこそが相利共生である。

 

 

 物語開始(急にどうした)

 

 

 何故、相利共生の話をしたか。聡明な諸君らなら気付いたかもしれない。

 例え話だが、美少女が風呂に入り、リラックスした状態を晒すのを想像して欲しい。しかも着ているパジャマは可愛らしいものだ。

 

 とどのつまり、白銀圭とパジャマ、湯上り姿は四宮あまねにとって致死量級の奇跡的相性(マリアージュ)であった!!

 黄金の右ストレートを受けたかのような破壊力に、四宮あまねは最高にハイになる!

 

『えっっっっっっっっちだわ!!?可愛すぎる!!ふへっ、圭からいい匂いする…って不味いわ。頬が緩んでしまうのを抑えられない!かぐや姉さんにバレるのは末代までの恥だし、圭にもバレたら自刃するわ…!?でも、この可愛さを目に焼き付けて死ねるなら、それもそれで本望…』

 

 携帯で写真を連写しようとする手を、必死に止めながらあまねは考える。

 

『ここで圭に写真を撮ろうと言うのは、かぐや姉さんに何か言われる可能性も高いし、萌葉さんは嬉々として勝手に映り込んでくる。ならば、最初から全員で写真を撮って、そのあと、ごく自然に2人きりで写真を撮る。完璧なプランね!』

 

 まず写真撮影に誘えたらの話である。

 圭はあまねを見ると、隣に腰かける。あまねは圭から漂うシャンプーの香りに意識が飛びかける!だが、咄嗟に舌を噛むことによって、意識を強制的に呼び戻す!!あまねの鼻息が若干荒いが、圭は気にしていないようだ。正直、逃げた方がいいと思う。

 

「あの、あまねさん」

「…何かしら?圭さん」

 

 あまねは天使のような微笑を湛え、圭と目を合わせる。だがその裏ではキマッており、目もほぼ焦点が合っていない。

 

「その、可愛いですね」

「…ぇ、?」

「あ、えっと、パジャマが!」

 

 圭は顔を赤らめながら言う。思わず、あまねは勘違いしかける!このまま押し倒して、キッスしたくなる衝動を太腿を抓って抑え込む。そして、パジャマが褒められ、悲しいような、自分を見て貰えて嬉しいような気分になる。

 

「…」

 

 妙な雰囲気が2人を呑み込む。同性同士なのに、なんと言うか甘酸っぱいような…

 

「圭ちゃんとあまねちゃん、何話してるのー?」

 

 だが、その雰囲気に堂々と入ってくる女が1人!藤原萌葉である!!藤原家には人の心が分からない、と言わんばかりに圭とあまねの間に割り込んで座る。

 

『…萌葉さん。そういうことをするんですね。今、すっごく言い流れだったのに!圭とキッス出来る流れだったのに!!もういいです。萌葉さんがどんなに困ろうと助けません。絶交です。さようなら、萌葉さん…』

 

 言いたいことと気持ちはわかるが、一方的な友人関係の終了を告げるあまね!そして、全くそれらを察していない萌葉。圭も先程の雰囲気に当てられ、恥ずかしがって何も喋らない。

 

「そう言えばさ、私達、もう半年も居るんだし…()()()()止めない?」

 

 さん付け!老若男女、誰にでも使える便利な敬称のことである。あまり仲が良くなかったり、関係が発展途上の場合にも使われる敬称でもある。

 そして、何より呼び捨てにするのが気恥ずかしい場合に名前呼びにしながらも呼べるという救済的なものなのである!!

 

『さん付けを止める!?つ、つまり、いつも心の中で呼んでいるように圭と呼び、圭からはあまねと呼ばれるということ!?そ、そんなのもう結婚と同意義じゃない!!つまり呼び捨てにすることは、敬意では無く好意を持って接するということで…!!』

 

 違う。呼び捨てにしただけで結婚には至らない。

 

『圭から呼び捨てにされる…!それはつまり、今まで有った壁を少し取り払うということ。それは、1歩だけでも彼女の心に踏み込むということ』

 

 あまねの心臓が異常なほど高鳴る。顔は上気し、目は潤む。喉を鳴らして、重い口を開く。

 今まであまねには友人と呼べる者はいなかった。呼び捨てにしているのも、自身の片割れのような存在で、従者である天宮羽衣くらい。

 

「…け、

「っ…!?」

 

 意を決して、白銀圭の名を呼んでみる。顔から火が出そうなほど、熱が発せられているがそれでも勇気を振り絞って呼んでみる。

 だが圭からの反応が一切見られず、不安そうにあまねは圭の顔を見てみる。

 

「あれ、圭ちゃんもあまねちゃんも顔真っ赤じゃないですか。2人とも、閉じ込めちゃいたいくらい可愛いなぁ」

 

 そう、萌葉の言う通り、両者の顔は茹でたタコのように真っ赤になっていた!

 

「ほらほら、圭ちゃんも言わないと」

「…うぅ」

 

 萌葉はにやにやしながら2人の反応を楽しむ。あまねは真っ赤な顔の圭を見て鼻血が出そうなほど興奮し、圭は圭で羞恥で顔を赤らめていた。

 

「あ、あまね…ちゃん」

「っ!!!!!?」

 

 その瞬間、あまねに激震が走る!!“さん”が無くなった途端に、心の距離が縮まった感覚を覚える!これが仲良くなるということ、と歓喜に打ち震える。

 喜んでいるなら何よりである。

 

「そう言えば、姉さん達は?萌葉さ…萌葉ちゃん」

 

 あまねは正気に戻ると、萌葉に問う。あまねがさん付けをしようとすると、萌葉は笑顔であまねと顔を見合わせてくる。嫌な予感がしたあまねは萌葉に対して、さん付けを止め、ちゃん付けにすると、満足そうに萌葉は答える。

 

「うんうん、今はちゃん付けでいいよ。それで、かぐやちゃんと姉様は別の寝室だよ〜流石に5人は狭いからね」

 

 あまねは頷く。確かに5人で寝るには狭い。だが3人もそこまで広い訳では無い。少し密着して寝ないといけないだろう。そう、密着し無ければならない!

 

『ここで重要なのは誰と密着するか。真ん中を狙えば確実に、圭と寝れるわ。だけど、それは萌葉ちゃんの横に居るということ!そしたらキッスも何も出来ないじゃない!!ここはどうにかして…いえ、そもそも真ん中に圭を置いても萌葉ちゃんにバレる可能性がある…!?八方塞がりね…』

 

 思考能力と時間の無駄使いにも程がある。だが、あまねにとってこれは死活問題。ここで、圭と隣になれないのは絶望的!

 

「あ、じゃあ、私真ん中!」

 

 絶望的!萌葉は空気を読んだのか、読んでないのか分からないが、真ん中を選択!これでは圭と密着して寝ることが出来ない!背に腹はかえられぬと、あまねが口を開こうとすると、先に圭が口を開く。

 

「私、真ん中がいいんだけど…ダメ、かな」

 

 圭の珍しい我儘!真意は計り知れないが、萌葉は少し考えると笑顔で了承する。あまねは私はどこでもいいですよ、と添える。圭が真ん中で寝る以上、あまねにとっては勝ったも同然!

 

『なんだ、私がなにかしなくても良かったのね。まぁ、私は神に愛されてるし、圭にも愛されている。圭が私と寝たくなるのは当然ね!』

 

 あまねはうんうん、と頷きながら、見よう見まねで布団を敷く。四宮本家は和風建築だが、あまねに本家で就寝する資格は与えられていない為、近くのホテルで寝泊まりをしている。つまり、敷布団は初めてなのだ。

 

「…これが敷布団。意外と厚みが無いのですね」

 

 敷布団というのは大抵、薄い。これでは体を壊してしまいそうだと、あまねは思いながらもお泊まりというプチ旅行感によって、そんなことは即座に消え去る。

 

「じゃあ、電気消すね〜」

 

 萌葉が電気を消すも、全員お泊まり会特有のテンションが上がっている状態であり、全く眠気が襲ってこない!

 

「皆、起きてる?」

「…起きてます」

「起きてる」

 

 萌葉は全員起きていることを確認すると、部屋の外に漏れぬように小さな声で話す。

 

「そう言えば、2人って好きな人って居るの?」

 

 恋バナ。古来より男性は狩猟、女性はコミュニティ形成とそれぞれ性別に応じて分業してきた。その中でも好きな人というのはいつの時代でもコミュニティの話題に上がりやすい!理由は様々だが、好きな人が被っていた場合の牽制や応援などが挙げられる!

 

「好きな人、ですか」

 

 あまねは横に居る圭を見て、どんな返答をしようかと頭を働かせる。

 

『ここで居る、と答えれば、萌葉ちゃんに根掘り葉掘り聞かれるのは確実。居ないと答えれば、この雰囲気は冷めてしまうし、なにより圭の好きな人を知ることが出来なくなってしまう』

 

 そう。恋バナにおいて、居ると答えれば執拗な追跡が、居ないと答えれば急激に雰囲気が冷え込むという地獄が待っている!

 その為、好きな人の存在を匂わせつつ、のらりくらり躱さなければ行けないのである!!

 

「そういう、萌葉さ…ちゃんは居ないんですか?」

「うーん…気になる人は居るよ」

「…それって、私達も知っている人ですか?」

「うん。圭ちゃんもあまねちゃんも知ってる人だよ」

 

 あまねが知っている人は限られてくる。白銀圭、天宮羽衣、四宮かぐや、菅原創、藤原千花…あと数人くらいだ。その中で萌葉が知っているのは明確に名を挙げた者のみ。

 

『まさか、圭…!?』

 

 確かに、白銀圭だと仮定すれば、萌葉があまねと圭の間に横は入りすることが多い理由も説明が付く。だが、あまねも成長している。早計に物事を考えず、萌葉に問う。

 

「髪色とか性格を聞いてもいいかしら?」

「えー?ていうか意外にあまねちゃん、恋バナに食いつくんだね」

「…そうですね。恋に疎いとは言え、憧れてはいますから」

 

 ここで若干、恋してみたいと言う情報をサブリミナル気味に投入することで、白銀圭に自身がフリーだと伝える!

 

「私の好きな人は、努力家でぇ」

『圭のことだわーッ!?』

 

 早計である。

 

萌葉ちゃん(不調法者)

「ん?何?あまねちゃん」

「今、なんか変なルビが…?」

「私たちは中等部生徒会よ。お付き合いとかそういうのは、生徒の模範として控えておくべきだと思うわ。それにもっと成熟した女性らしい身体つきに育つまで…育つ、まで…」

 

 あまねは唐突に萌葉の身体を思い出す。自分や姉とは比べ物にならないスイカを実らせた彼女の身体を。

 

「成熟した精神性を持った女性に育つまで、そういう交際は早いと思うわ。身体が出来ていたって精神が未熟だとその後が大変だもの」

 

 あまねは唇を噛み締めながら訂正した。持たざる者である以上、持つ者に勝つには自分の土俵に落とさなければならない。

 だが、あまねは気づいていない。自分も相手を諭せるほど、精神が成熟している訳では無いということに。

 

「それに、一体どこが好きだと言うのかしら」

 

 あまねは必死に萌葉を潰そうと、好きな点を聞き出す。

 

「うーん。成績とかかな。私、頭が良い人が好きだから」

 

 あまねは鼻で笑う。所詮、中学生。俗世間に塗れた考えだと。

 ちなみに、お前も中学生である。

 

「あとは顔とか!」

 

 あまねは呆れて溜息すら吐く。その程度で白銀圭に対しての愛を語ろうなんて笑止千万だと言わんばかりに首を竦める。

 

「目付きはきつく思えるかもしれないけど、あれは気高い心の表れだと思うし、いつも何かに一生懸命だよね」

 

 あまね、大いに同意!夜でなければ立ち上がって拍手するほどの同意を示す!!

 

『わかるわ!圭のいい所ってそういうところだと思うの!!なんにでも一生懸命で、他人を助けることにも躊躇いがない。本当にかっこよくて可愛いの!!』

 

 萌葉の手を掴んで叫びたくなるのを必死に押え、軽く頷く程度に留めておく。

 

「ふ、ふぅん…随分本気ね」

「うん。本当に好きだもん」

 

 だが、ここで少し読者諸君には落ち着いて考えて欲しい。本当に、萌葉が言っているのは白銀圭か。

 否、萌葉は若干サイコパス気味だが、その趣向は異性愛者であり、実は白銀圭と似たような性格の異性が一人存在する。

 兄の白銀御行である。彼は努力家で、成績は高等部1位且つ全国2位、目つきも悪く、人助けに関わらず何事にも一生懸命になれる男である。そしてそれは、妹である白銀圭にも引き継がれていた。

 故に、これは勘違い!萌葉が話しているのは白銀圭では無く、白銀御行!!だがそれにあまねは気づくことは無い!何故なら、あまねはかぐやの策略によって1度も白銀御行に出会えてないからである。

 

『認めるしか無いわね…恋敵(ライバル)というものが出来たら抹消しようと思っていたけれど、まさかここまで分かっている娘だと思ってなかったわ。別に殺す必要は無いわね…中学生の色恋沙汰なんてどうせ、直ぐに飽きるもの』

 

 勘違いなので、飽きるとかそういう話ではない。

 

「圭ちゃんは?って…寝てる?」

「ぐっすりみたいですね」

 

 圭は兄と違い、健康的な生活を送っている。このように深夜に近い時間では、睡眠に入っている。その為、既に寝息を立てている。

 対して、あまね。姉のかぐやとは違い、ショートスリーパーである。深夜以降も、ある程度睡眠時間があれば活動が可能。

 

「あまねちゃんの好きな人って居ないの?」

「…先程も言いましたが、恋には憧れているのです。四宮家に生まれた以上、自由な恋愛が出来るとは思ってませんけど」

 

 あまねは圭の寝顔を堪能しながら語る。

 

 そう、四宮あまねは分かっている。自分がどれだけ白銀圭を愛していてもこの恋は実らないことを。

 同性だとかそういう問題では無い。そもそも四宮家の女性に自由など無いのだ。

 四宮あまねという人間が、四宮家の血を継ぐ者が、安易に愛を捧げてはならない。自分以外の者は、奴隷に等しいのだから。

 

 でも、四宮あまねは恋をしてしまった。自由が無いはずの身で愚かにも人を愛してしまった。

 

 四宮あまねは、白銀圭の努力家な部分が好きだ。

 四宮あまねは、白銀圭の正義感が強いところに憧れている。

 四宮あまねは、白銀圭の賢さを認めている。

 四宮あまねは、白銀圭の全てを愛している。

 

「私がどれだけ、その人を愛していたとしても。私が四宮あまねである以上、自由など認められない。告白する自由は無いんです」

 

 だから、四宮あまねは告られたい。

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