パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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武器防具店ブラッディーストライク

 迷宮都市に暖かな昼の日差しが注ぐ中、私とリガスは大通りを進んでいく。

 活気の溢れた大通りでは冒険者から旅人、商人など、様々な人々が行き交い、大いににぎわいを見せている。

 

 ここに限らず、迷宮に隣接する都市は、基本的に多くの人が集まるものだ。

 なにせ迷宮は危険で謎の多い深淵である一方、迷宮からしか取れない特殊な素材やアイテムもあり、迷宮に現れる魔物は何故かどれだけ狩っても尽きることは無い。

 伝手さえあれば確実に商品を仕入れ、捌き続けることのできる理想の環境と言えるのだろう。

 もっとも、迷宮には先日のような異変が起きることもままあるし、迷宮から魔物が溢れ出し周辺地域にまで危害を加える大事故も稀にだが発生するので、デメリットが無いわけでもないのだが。

 まあ、それを承知の上で集まってきている商人達だ。

 冒険者程ではないにしろ、命知らずで剛毅な者達が多いのかもしれない。

 

 などと、行き交う人々に思いを馳せながら歩いていると、先導するリガスがこちらを振り返り、大通りに面した一つの店を指示した。

 

「あった、カミラさん、ここだよ。俺がよく行く武器と防具の店」

 

「ほう、なになに……最高の装備をお求めのあなたに……ブラッディーストライク……」

 

 私はそう書かれた店頭の看板を読み上げる。

 どうやらブラッディーストライクというのが店名らしい。ふむふむ。なるほど。

 ダッッッッサ!!!!

 あまりにも店名がダサい。というより店構えもダサい。

 全体的に黒めでなんだか赤くて意味ありげな紋章が店の外壁に刻まれている。

 私には到底受け入れがたいセンスだが、リガスは意外とこういったものが好みのようだ。はっ、お子様だな。

 キラキラした目でお気に入りのおもちゃを眺める子供のように、店頭に置かれたレプリカの鎧……これもいやに黒くてトゲトゲしていて実用性に疑問のある品だが……を眺めている。

 と、ふとその隣に目を向けると、見覚えのあるとんがり帽子の魔女が、やはり店頭のディスプレイを眺めている。

 

「はぁ……かか……かっこいい……いいなあ、やっぱりこういうのが似合うように……」

 

「……トゥーラ?」

 

「へひぃっ!?」

 

 思わず私が声を掛けると、トゥーラは驚いて体をビクリと震わせた。

 昨日の依頼が終わってから別れたきりだったが、まさかこんなところで再開するとは。

 

「ち、違うんですよ……私はただかっこいいなーって見てただけで……あ、カミラちゃん!?」

 

「昨日ぶりだな、トゥーラも装備を買いに来たのか?」

 

「は、いえ、それはそうなんですけど……このお店入ったことないので、ちょっと怖くてどうしようかなって……」

 

 と、トゥーラは俯いて目をキョロキョロと挙動不審に動かす。

 店頭のディスプレイにちょっと気になったものの、今まで入ったことの無い店に一人で入るのが少し恥ずかしいらしい。

 遠慮するポイントが正直よくわからん。我々は客なのだから、気になったら遠慮なく入ればよかろうなのだ!

 まあ、しかし、ここで出会ったのも何かの縁だろう。

 

「なら折角だし、私達と一緒に見て回るとするか!ふふん!光栄に思っていいぞ!」

 

「ふぇ、あ、ありがとう、カミラちゃん……で、でも良いの……?」

 

「うん?何がだ?」

 

 私が問いかけると、トゥーラはちらりとリガスに視線をやりながら、ボソリと答える。

 

「だってその……リガスさんとデート……してるんじゃ……」

 

「……はぁ!?」

 

「ああっ、ご、ごめんなさいぃ……!だだだ……だって二人で仲良く買い物に来てるから……!」

 

 どうやら、トゥーラは私とリガスが一緒にいるのを恋仲か何かだと勘違いしたらしい。

 そんなわけないだろうに、全く、少し考えればわからないか!?私は男だぞ!?

 あっ、いや、だが今は美少女か!

 だとすれば……ふん、私の美貌がついそう勘違いさせてしまったか!

 であれば、まあ、仕方あるまいが……しかし、くそ、恥ずかしい。

 第一、パーティメンバーが一緒に装備を買いに来たとて何ら不思議なことではないだろうに、それをすぐこうして恋愛に……ああ、これだから考えの足りない凡人というのは!くそっ、もう!

 私は勘違いされた恥ずかしさからか、顔が上気して些か赤くなるのを感じながら、未だにゴテゴテした鎧を眺めるリガスの尻を後ろから蹴飛ばし、さっさと入店を促すのだった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「かっ……こいい……!」

 

 店内に入ると、すぐさまトゥーラがそう呟いた。

 外見から想像した以上に広々とした店内は、店の外見とはまた違った印象を受ける。

 板張りの床は奇麗に磨かれ、その中央には赤地に金の装飾が施された絨毯が敷かれている。

 壁にはやはり、赤地の豪奢なタペストリーがいくつか掛けられ、その合間には間接照明として、魔力の込められたランプが仄かな光を放っていた。

 しかし、やはり異様なのは、そんな店内の各所に飾られた商品――武具の数々だろう。

 所狭しと壁に飾られた武器の黒々と光る刀身は、どこか危険な雰囲気を醸し出し、台座に飾られた防具もまた、見る者を威嚇するかのような威圧感を与えてくる。

 要するに――――やっぱりダサい!

 鎧の肩からやけにトゲが突き出している!いるか!?そのトゲ!?それで何を攻撃するんだ!?ショルダータックルでもするのか!?

 武器の方もそうだ!壁に飾られた剣なんか、何故か切っ先が二股に分かれている。なんだ?ハサミか?鞘にしまう時どうするんだ、それは。

 と、呆れながらも商品を眺める私を他所に、トゥーラとリガスは興奮した様子で語り合う。

 

「やっぱり、良いよね!こういうの!俺もこういうカッコいい武器使いたいなってずっと思ってて……」

 

「わかります、わかります!やっぱりこの赤黒い感じがこう……ロマンに溢れているというか……」

 

「わかる!だよね!ね!カミラさんもそう思わない!?」

 

 そう言いながら、リガスとトゥーラが満面の笑みでこちらに顔を向ける。

 なるほど、ロマンか……確かに、そういう目で装備を考えるのもアリなのかもしれない。

 見方を変えればこれも――と、私は目を閉じ、眼前の二人に優しく答えを返す。

 

「――いや、どう考えてもカッコよくは無いだろう!」

 

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