パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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防具なんか買わない!!

 趣味の悪い武具が所狭しと並ぶ店内で、リガスとトゥーラは二人で盛り上がりを見せながら商品を物色している。

 私はそんな二人とは少し距離を取り、壁にもたれながら、ぼんやりと店内を見回していた。

 意外にもこの店、客がそれなりに多い。

 現時点で既に私達以外にも五人程の冒険者が、同じように商品を物色していた。

 私も折角なので、一応はいくつかの商品を手に取って見はしたものの、いまひとつ好みには合わなかった。

 なにせここで売っている武器、どことなく禍々しい見た目に加え、いちいち炎なり氷なり、何かしらの属性が付与されている。

 別に属性攻撃の出来る武器、ということ自体は別に悪いことではない。

 ジョーの水流剣しかり、強力な魔剣には、えてしてそういう効果も付与されているものだ。

 が、この店で売っている属性武器は、そういった魔剣と似ているようで全く違う。

 ジョーの場合は水流剣の魔力の出力を調整したり、あえて水を止めたりということも行っていたのだが、ここの武器にはそういうことが出来ない。

 ただ武器に埋め込められた魔石から一定の量の魔力が供給され、放出され続けるだけなのだ。いささか実用性には欠ける。

 そもそも、私の場合は神聖攻撃術を使う時に武器に神聖力を流すので、そことも折り合いが悪いのだ。

 属性魔力と光の神聖力、両方をいっぺんに込められたら武器の方が耐えられまい。

 と、いうことで特に惹かれるわけでもなく、ぼんやりと店内を眺めていると、不意に鎧を纏った客……冒険者だろうか、に、声をかけられた。

 

「おやおや、そこな神官殿!どうなさいました?お探しのものが見当たりませぬかな!?」

 

 全身にやたらと赤黒く、ごつごつとした鎧を着こんだ冒険者は、見た目とは裏腹にはきはきと、しかし凛々しく高い声で話しかけてきた。

 しっかり兜を被っている為、男性かと思ったが、声からすると女性なのかもしれない。

 鎧の女性は尚もグイグイと私に迫る。

 

「ふふふ、何を隠そう拙者、こちらの店の常連なれば!神官殿のお目当てのものがあればパパッと探して見せますよ!いかがです!」

 

「はっ、必要ないさ、この店には天才神官たる私にお似合いの物は無さそうだからね!」

 

 私は鼻息荒く迫る鎧女を追い払うように、しっしっと手で払いながらそう告げる。

 実際のところ、本当にいらないので有難迷惑、いや単純に迷惑だ!

 と、そんな私達のやり取りを見ていたのだろうか。

 その鎧女の背後から、今度は丁寧な口調の男性の声が聞こえてきた。

 

「おやおや、ヌン殿、どうかなさいましたか?」

 

「あっ!店長!おはようございます!いえいえ、こちらの神官殿に是非ともこの店の素晴らしい武具をオススメさせていただこうかと!」

 

「ははあ、なるほど……ありがとうございます。ですが、押し売りのような真似はいけませんよ?」

 

「ハッ、それは確かに……失礼いたしました!神官殿!」

 

「ああ、いや、私は構わないが……」

 

 ヌン、と呼ばれた鎧女は、店長であろう細身の男の言葉にハッとしたように頭を下げ、謝る。

 まあ、反省しているのなら構わないが……なんだか奇妙な感じだ。

 こいつ冒険者のくせになぜこんなに武具屋の店主相手に下手、というか部下のような態度を取っているのだろう。

 本当は店員なのではないか?と、疑問を抱く私を他所に、店長と呼ばれた男が頭を下げる。

 

「うちの常連がご迷惑をおかけしたようで、申し訳ございません……おや、お客様、その首飾りは……」

 

 と、店長は少し驚いたような様子で、私の首元に下がる呪いの首飾りへと目をやる。

 まずい、ひょっとして呪い装備なことがバレたか!?

 

「あ、いや、これはだね……」

 

「ふむ……その首飾り……随分と上等なものですね!素晴らしい!可愛らしいお嬢様に美しい首飾り……ここに美しい防具が加われば更に完璧だとは思いませんか?」

 

「は?」

 

 と、店長がパチリと指を鳴らすと、いくつかの服を手に、どこからともなく店員が駆けつけた

 店長はその服をいくつか見ると、そのうちの一つを手に取り、納得がいったように頷くと、にこやかに私に語り掛ける。

 

「そうですね、お嬢様にであれば、こちらの装備がお似合いかと……先程うちの常連がご迷惑をおかけしたお詫びです。こちら無料で差し上げますので、是非ともお受け取り下さい」

 

「いや、別に必要は……いや待て、無料か……」

 

 その言葉に、少し心が揺れる。

 私は基本的に、タダの物は病気以外は何でも貰う性質の人間だ!いざという時の為に金を管理できてこその天才だからな!

 それにほら、下々の物から献上された品を受け取らないというのも上に立つ者として失礼じゃないだろうか、いや天才は困るな!

 しかも見たところ、店頭に置かれたゴテゴテとした鎧などとは違い、この装備は神官用にちゃんと軽く、かつ丈夫な布で織られている。

 まあ、パッと見ところどころにフリルがついていたり、ミニスカートのように裾の丈が短そうなのが気になるが、実際のところ、他の商品よりは圧倒的に私に向いていると言えるだろう。

 受け取るべきか些か悩んでいると、私と店長のやり取りを気にして見に来たのだろうか、いつの間にか傍に来ていたリガス達もそれぞれに口を開く。

 

「カミラさん、これ無料で貰えるって?良かったじゃないか!俺も属性武器買おうかどうか悩んだんだけど、結構値段も張るし、どの属性にするか悩んじゃって……」

 

「私もです……えへへ……でも、その装備はカミラさんに似合いそうで良いと思います!貰ってみては?」

 

「う……ううん、しかし……」

 

「もしもサイズが気になるようでしたら、試着室もありますので、是非こちらに!」

 

 と、店長が手を叩くと、先程の店員達が私の手を取り、試着室に案内する。

 ま、まあ試着くらいなら構わないだろう……うん!

 などと私が考えている間にも、あれよあれよという間に店員達に脱がされ、先程の装備を着せられた。

 サイズは……まるで特別にあつらえたようにピッタリだ。

 ぴったりと張り付くように肌に密着したそれは、まるでもう一つの皮膚かと錯覚するかのように体に馴染む。

 しかも、どこか可愛らしい見た目の印象とは相反するように、生地の方も頑丈のようだ。

 試しに手で叩いてみると、叩いた衝撃は殆ど体に伝わらずに生地に吸収されていくのがわかる。

 恐らくは武器と同じように、この服にも魔力が込められているのだろう。

 生地の装飾に混ざってキラリと光る魔石が見える。

 なるほど、防御系の魔術の効果が付与されているのだとしたら、物理攻撃のみならず魔術攻撃にも強い耐性を誇るだろう。

 が……や……やっぱり、デザインが少し気になる!

 フリルのあしらわれた女性っぽすぎるデザイン!加えて少しその……食い込むようなというか、肌に馴染むだけに体のラインが出る上、何故だか太腿が妙に露出されている!

 これは性能云々というより、単純に男として少し抵抗があるというか……いや、今の私は美少女ではあるのだが!だからといってそう簡単に……

 

「如何でしょう、お嬢様!」

 

「うわぁっ!」

 

 などと頭を悩ましている私を他所に、試着室のカーテンが開けられ、店長が室内を覗き込む。

 くっ……ひ、人に見られるかと思うと猶更ちょっと恥ずかしい!

 思わず羞恥で顔が熱くなる私に、店長は満足そうな笑みを浮かべながらにこやかに話し出した。

 

「おお、やはり!思った通り、お似合いですね!見る者全てを魅了する愛らしさかと……!」

 

「然り!拙者も斯様に思います!神官殿、とても可愛らしくお似合いかと!」

 

「ふ、ふふ、そそ、そうか?まま、ま、まあ!?天才だからねぇ!?」

 

 口々に私の美貌を褒め称える店長と、ヌンとかいう鎧女を前に、思わず声が上ずってしまう。

 いやいや、下々の者が私を褒め称えるのは当然のことながら!?

 実際に褒められると、やっぱり違うというか?うん?まあ、それはまあ、嬉しいに決まっているとも!?

 と、つい顔を逸らす私の視線の先にリガスの顔が見える。

 リガスも今の私の姿に少し戸惑い、顔を赤らめながらも、目が合ったことで慌てて同じように口を開いた。

 

「あっ、え……ええと……お、俺も良いと思うよ、カミラさん、その、か、可愛いし……!」

 

「あはぁ……私も良いと思います……凄く良い……えっちで……このまま石化してもらえたら私はもう何も言うことが……ふへへへ……」

 

 トゥーラだけ少し着眼点がおかしい気もするが、まあ褒められていることには違いない。

 いや、これだけ多くの人を衣装一つで魅了してしまう、というのは困るなぁ!

 私の姿に人々が一喜一憂するかと思うと、身動きできない馬鹿に回復術をかける時とはまた別の優越感が心に湧き上がるというものだ。

 どこかゾクゾクする優越の快感に浸る私に、眼前の店長がまた、にこやかに笑みを浮かべ、問いかける。

 

「さて、それではそちらの商品――お受け取りいただけますか?」

 

「勿論だとも!!!」

 

 即答であった。

 

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