パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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ヘムロック魔道具店

「いやあ、良い買い物をしたな!」

 

「買ってはいないよね」

 

 後ろからツッコミを入れるリガスを無視しながら、私は先程の武具店、ブラッディーストライクで貰った装備を手に、意気揚々と大通りを歩く。

 あれだけの性能の防具が無料で貰えるとは、今日は良い日だ。

 とはいえ、あの装備でそのあたりをうろつくのは少し恥ずかしいので、服はもう元の法衣に戻している。

 あの装備を真面目に使うなら露出を隠せるような外套も買っておいた方が良いかもしれない。

 

「しかし……店に入る前は貴様らの方がはしゃいでいたのに、結局買い物をしたのは私だけか」

 

「う~ん、俺も色々と欲しかったけど……どの属性武器もカッコ良くて結局コレ!ってのが無かったんだよね」

 

「ふへぇ……品揃えが良すぎるのも問題ですねぇ……私は元々、今日は別に装備を買う気ではなかったので……」

 

「なんだなんだ、優柔不断じゃあないか!それでは私のように立派な冒険者にはなれないぞ!ふふん!」

 

 顎に手を当てて悩むリガス達に振り向き、私は堂々と言ってのける。

 私はこういう時にあまり悩まないからな!何故なら悩んでいる時間が勿体ないからだ!

 即断即決!それもまた天才としての素養である!

 

「と……しかし、リガスの装備が心もとないのは困るな、あの店のトゲトゲ鎧では流石に大げさすぎるが……鎖帷子か何かくらいどこかで買っておくべきだろう」

 

「やっぱりそうかな……俺の場合そう簡単に大ダメージ負えないしね」

 

「ふぇ、そ、そうなんですか?戦士なのに?」

 

「あ、いや、それはその……」

 

 リガスが不用意に余計なことを言ったばかりに、隣のトゥーラが不思議そうな表情でリガスの顔を覗き込む。

 馬鹿め!迂闊に自分から正体をバラすようなことを言ってどうする!

 何故か出会っちゃったせいで一緒に行動しているが、別にトゥーラはパーティメンバーでも何でもないんだぞ!

 と、慌てて口ごもるリガスに助け舟を出してやろうと、私は咄嗟に話題を変えるべく話に割り込んだ。

 

「そうそう、そういえば私の行きつけの魔道具屋が裏路地に入ったところにあるんだ。店主はいささか人間性に難があるが、たまに掘り出し物が眠っていることもある。行ってみるか?」

 

「あっ、う、うん、そうだね!そうしよう!トゥーラさんも!」

 

「ふへっ?あ、は、はい……私は良いですけど……」

 

 ううん、と不思議そうな表情を浮かべたものの、トゥーラはそれ以上に突っ込むつもりは無いらしい。

 以降は何ともない日常的な雑談を交わしながらも、私達は大通りから脇道へ、そこから更に枝分かれした裏路地へと進んでいく。

 そうして進んでいくとやがて、どこか薄気味の悪いじめじめとした路地に立つ、怪しげな雰囲気の小さな店が視界に入った。

 さて、ここの店主もしばらく前に会ったきりだが――

 と、そこまで考えてハッと気付く。

 

 女の子になってから、ここの店主に会ったこと無くない?

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 薄暗いその魔道具店の店先には、これまた薄気味悪い奇妙な小鬼のミイラが飾られ、申し訳程度に掛けられた看板は、表面が掠れて店名すらよく読めなくなっていた。

 本当にこんなところがカミラさんの行きつけの店なのだろうか?

 カミラさんのことは信じているが、さっきの武具店、ブラッディーストライクの派手さ、華やかさと比べると、どうしても少し不安になる。

 こういった裏路地の隠れた店はいかにも一見禁止、という雰囲気があるのも少し怖い。

 まあ、そこはカミラさんがいるから大丈夫だろうが――と、俺の後ろで腕組みをして立つカミラさんが、思い出したように口を開く。

 

「そうそう、リガス。私はこの店には入れないから、貴様とトゥーラだけで入るといい!」

 

「ふへぇ!?」

 

「ええっ!?」

 

 隣でしげしげとミイラを眺めていたトゥーラさんと共に、つい驚いて素っ頓狂な声を出してしまった。

 実際のところ、それはちょっと困る。

 俺はカミラさんが一緒に来てくれるとばかり思っていたのに……

 思わず俺はカミラさんに問い返す。

 

「入れないって……なんで?カミラさんの行きつけの店なんじゃ?」

 

「それはそうなんだが……うむ……ええい!いいから早く入ってしまえ!大丈夫だ!店主は自分が認めた冒険者には優しいぞ!ツケで迷宮産の魔道具を譲ってくれたりする!」

 

「そのツケって借金なんじゃ……っと、とと、ちょっ、カミラさん!?」

 

「良いから早く行けというのだ!私は外で待っているからな!」

 

 言いながら、カミラさんはグイグイと俺の背中を押して早く入店するように促す。

 どうやら、どうしてもこの店には入りたくないらしい。

 まあ、嫌がる女の子に無理矢理頼むのも気が引けるし、これはこれで仕方ないか……と、俺は意を決して、ボロボロの木製のドアに手をかける。

 ギィ、と軋む音を立てて開いたドアを抜けると、店内もまた雑多で怪しげな雰囲気だ。

 何に使うのかも分からない道具がそこかしこに雑に置かれ、武器のような物もあれば薬のような物もあり、カウンターには犬のぬいぐるみのような物まで置いてある。

 

「あ、こ……これ、可愛いですね……!」

 

 と、ぬいぐるみを見かけたトゥーラさんが興味深げに手を伸ばした。

 すると、手が触れた瞬間、ぬいぐるみが大きく口を開け、目から綿を撒き散らしながら、地獄の底から響くかのような恐ろしい悲鳴を上げる。

 

「ふへっひぃ!?」

 

「うっわ!だだ、大丈夫?トゥーラさん!?」

 

「だ……だだだ……大丈夫、です……ふぇ……」

 

「ヒヒヒッヒヒヒヒヒヒヒヒヒッヒイヒヒヒヒヒヒヒヒッヒヒヒヒヒヒヒッヒヒ!!!!」

 

 腰を抜かして倒れそうになるトゥーラさんを間一髪のところで支えると、ぬいぐるみは今度は楽し気にけたたましい笑い声を延々と発し続ける。

 怖い。

 正直もう出てしまっても良いんじゃないか、この店。

 そんなことが頭を過ぎる中、またしても突如、バン!と勢いよくカウンターの裏から手が伸び、ぬいぐるみの頭を叩き付ける。

 驚いて何も言えない俺達を他所に、手の主……どうやらカウンターの裏でしゃがんで作業していたらしい、髪の禿げかけた恰幅の良い老人が、けだるげに立ち上がる。

 

「ああ~~~~……うっせぇわい……」

 

 立ちあがった老人は、面倒臭そうな様子で頭をボリボリと掻くと、ギロリとこちらに視線をやり、ぶっきらぼうに言い捨てる。

 

「ようこそ、ヘムロック魔道具店へ」

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